偐万葉田舎家持歌集

偐万葉田舎家持歌集

2016.06.28
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カテゴリ: 銀輪万葉

(承前)

 上宮遺跡公園を出て法隆寺へと向かう。
 すでに正午を過ぎていたので、国道25号沿い、産直市場「めぐみの郷」の向かいの「信州そばサガミ法隆寺店」に入って昼食。
 昼食を済ませて、法隆寺南大門前到着が午後1時12分。

法隆寺 (6)
(法隆寺・南大門)※ 法隆寺・Wikipedia

 南大門前には修学旅行の小学生たち。何処から来たの、と尋ねると、愛知県の白木小学校、と一人の女の子が教えてくれました。
 <参考追記>
  白木小学校で検索したら、この小学生たちの法隆寺での写真がありましたので
  追加でご紹介して置きます。 法隆寺1 法隆寺2 法隆寺3

 法隆寺は小生は何回目かの訪問になるが、久々のことなので伽藍配置もよく分からず、さて、何処から見て回るかと言っているうちに西院伽藍の前を素通り、東大門に来てしまった。門の向こうに八角形の建物。東院伽藍の夢殿である。

法隆寺夢殿 (同・夢殿)

 夢殿の東側が中宮寺。先に中宮寺に立ち寄る。
 現在、中宮寺のご本尊、半跏思惟像は東京国立博物館へ出張中
特別展 日韓国交正常化50周年記念  ほほえみの御仏ー二つの半跏思惟像ー 2016.6.21~7.10. にて、本堂に鎮座ましますはそのレプリカとのことで、拝観は無料であった。 

中宮寺
(中宮寺・本堂 南西側からの写真)※ 中宮寺・Wikipedia

会津八一歌碑(中宮寺境内) (中宮寺の会津八一歌碑)

みほとけの あごとひぢとに あまでらの
            あさのひかりの ともしきろかも (会津八一)

 (注)ともしきろかも=「ともし」は「羨ましい」又は「心惹かれる」の意。
            その連体形に接尾語「ろ」と詠嘆の助詞「かも」が付い
            たもの。「心惹かれることだなあ。」

 本堂は南向きに建っているから、東側の開口部から、堂内の御仏に朝の光が射し込んだのであろうか。国宝の仏像に日光が射し込むというのも考え難いから、朝のお勤めの燈明の光が顎と肘とを静かに照らしている、という光景でしょうか。
 再び、東大門から西院伽藍の方へと戻る。
 鏡池の畔にあったのは、正岡子規の句碑。

柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺 (正岡子規)

 この句は1985年(明治28年)10月26日に奈良旅行の際に子規が句帳に書きとどめたもので、同年11月8日の海南新聞で発表されたのが初出。1985年9月6日の海南新聞には「鐘つけば銀杏散るなり建長寺」という夏目漱石の句が発表されているから、子規は漱石のこの句が頭のどこかにあって、柿食へば、の句を作ったのではないかなどとも言われているということは、以前の若草読書会で凡鬼さんから教えて戴いたことである。
 この時、子規の体は死の床まで彼を苦しめることとなるカリエスの最初の兆候を左腰骨に感じていたのであってみれば、この句に何やら寂しさ、悲しさのようなものも感じなくもないと言うものである。司馬遼太郎の「坂の上の雲」ではこのように描かれている。
 十月十九日、子規は漱石とも別れて松山を発った。帰京するつもりであったが、まっすぐにはもどらず上方のあちこちを見ようとおもった。広島から須磨まできたころ、にわかに左の腰骨のあたりが痛みだし、歩行もできなくなった。子規の晩年をくるしめたカリエスがここで症状を露わにしたのだが、子規はこのときはさほどの重症とはおもわず、痛みのうすらぐまで須磨で保養し、やがて、大阪と奈良にあそんだ。
 大和路をあるき、法隆寺まできて茶店に憩うたとき、田園に夕のもやがただよっていかにも寂しげであった。
  柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺
 という句は、このとき心にうかぶままを句帳にとどめたものである。

正岡子規句碑(法隆寺境内) 会津八一歌碑(法隆寺境内)
(法隆寺境内の正岡子規句碑と会津八一歌碑)

 西院伽藍の西側にあったのは会津八一の歌碑

ちとせあまり みたびめぐれる ももとせを
            ひとひのごとく たてるこのたふ (会津八一)

法隆寺 (1) (法隆寺・西院伽藍の五重塔)

 どうやら、今回の散策は斑鳩三塔がその目的であったようですから、西院伽藍に入って五重塔をじっくりと眺めなければならないと言う次第。
 中でもこの塔は、十年一日の如く、どころか1300年を1日の如く建っている塔なのであるから(笑)。

法隆寺 (3) (同・大講堂 左:五重塔、右:金堂)

 下の写真は大講堂側から眺める金堂と五重塔ですが、カメラレンズの悪戯か、1300年1日の如くあるべき塔が左に傾き「斜塔ポーズ」を取ったのでありました。

法隆寺 (5) (同・大講堂側から見る金堂と五重塔と工事中の中門)

 小生の心を読んで、余り受けなかったことを感じたか、直ぐに元の通りの直立姿勢に戻りました。1300年或は1400年もの直立不動は疲れると言うモノ。時にストレッチもしなくてはならないのでしょうね。

ちとせあまり みたびめぐれる ももとせの
            直立不動 かたもこるらむ (粟津八二)

法隆寺 (2) 法隆寺 (4)
(同・五重塔、左・南側からの眺め、右・北側からの眺め)

 法隆寺を出て、西隣の藤の木古墳にも立ち寄る。

藤の木古墳 (1)
(藤の木古墳)※ 藤の木古墳・Wikipedia

藤の木古墳 (2) 藤の木古墳 (3)
(同・墳丘測量図)

 藤の木古墳の北隣の畑にはコスモスの花が咲き始めていました。
 はやも秋の風を感じさせもする眺めです。
 会津八一さん風に詠えば、

いかるがの さとのコスモス さきそめて
           かぜにゆれそよ あきちかみかも (粟津八二)

(注)さきそめて=咲き始めて
   かぜにゆれそよ=風に揺れそよ。「そよ」は「そよと吹く風」の「そよ」
           と、「そ(代名詞)」と「よ(助詞)」が複合した感動詞
           の「そよ(まったくその通りです。)」とを掛けている。
   あきちかみかも=秋近みかも。「形容詞+み」は「~なので」「~だから」
           の意。秋が近いからだなあ。

でしょうか。

藤の木古墳隣のコスモス畑 (1) (藤の木古墳北隣のコスモス畑)

 藤の木古墳を出て、法輪寺へと向かう。
 はい、斑鳩三塔の2番目法輪寺三重塔です。

法輪寺三重塔
(法輪寺・三重塔)※ 法輪寺(奈良県斑鳩町)・Wikipedia

法輪寺の沿革 (法輪寺の沿革)

 法輪寺境内にも会津八一の歌碑がありました。

会津八一歌碑(法輪寺境内) (法輪寺境内の会津八一歌碑)

くわんのんの しろきひたひに やうらくの
           かげうごかして かぜわたるみゆ (会津八一)

(注)やうらく=瓔珞。宝石などを連ねて編んだ、仏像の頭・首・胸などにかけた
        飾り。

法起寺講堂
(法起寺・講堂)※ 法起寺・Wikipedia

法起寺聖天堂 (同・聖天堂)

法起寺三重塔 (同・三重塔)

 法起寺三重塔です。これで、法隆寺、法輪寺、法起寺の斑鳩三塔巡り完了です。
 ひろみちゃんは、この三塔が一緒に撮影できる撮影ポイントを探し求めて居られたようで、法輪寺の方にそれを尋ねて居られましたが、かつては自転車道の高みから撮影可能な場所も存在したが、今は建物が建て込んで、そのような場所はないとのことでした。
 法起寺境内の池には、睡蓮が花を咲かせていましたが、荘厳な有難き雰囲気にて、花萼も黄金色を帯びているようなのでありました。

睡蓮(法起寺境内の池) (1) (法起寺境内の池の睡蓮)

 そして面白かったのはこの羊歯。
 小万知さんが最初に気付かれたのですが、確かに奇怪な葉です。
 寺の方にシシヒトツバという羊歯だと教わりました。

シシヒトツバ (1)
(同・シシヒトツバ)※ ヒトツバ・Wikipedia シシヒトツバ

シシヒトツバ (2) シシヒトツバ (3)
(同上)

 普通は左のようなんだろうが、成長するにつれて右のように先端が「枝分かれ」、いや、葉だから「葉分かれ」と言うべきか、二股、三股に分かれて、奇怪な面相になるという面白い植物である。通常の茎というものを必要としなくなった植物が枝分かれというシステムを葉の方に応用したということでしょうか。そもそも、通常の草花の茎と葉の関係をシダ植物に当てはめるのは無理ということですかね。

ノキシノブ (同・ノキシノブ)

 シシヒトツバの隣に生えていたノキシノブもよく見ると先端が二股になっている。シシヒトツバの真似をし出したのだろうか。
 ブロ友のウーテイス氏は植物にも「意思」があるという考えをお持ちですが、このノキシノブも隣のシシヒトツバを見ているうちに、「ワシもあんな風にやってみたい」と念じて、遂にそれを成し遂げたのがこの姿なのかも知れませぬな。

のきしのぶ ししひとつばの ごとあれと
            念じてつひに 葉をや分けたる (忍家持)

 これにて斑鳩の里散策終了。帰途は西名阪道路経由、途中SAで珈琲ブレイクのあれこれのお喋りを経て、小万知さんを錦織公園付近までお送り申し上げてから外環状道路で、瓢箪山駅近くまで。そこで解散でありました。駅近くに預けてあったMTBで自宅へ。銀輪万葉とは言え、銀輪を走らせたのはこの部分のみでありました。

<完>






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最終更新日  2016.06.29 17:25:17
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