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2006.02.11
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カテゴリ: メディア
▼ポーズ、演出、やらせ


実は報道写真を撮るときも、「ポーズ」をさせることがある。笑顔、怒った顔、悲しい顔。はい、右手を上げて、左手を上げて。もう一度、同じポーズをとって、はい握手して笑って、などなど。舞台監督の演出のようだ。

政治家などは、こちらが演出しなくても、自分で演出して演じきってしまう。自作自演。本当は腹立たしく思っていても、会談がうまくいったと印象付けるために笑顔を見せる。内心ほくそえんでいるのに、苦虫を噛み潰したような顔をする。

私は共同通信に入る前は、報道写真はすべてあるがままの光景を撮るものだと思っていたので、いい写真を撮るために、こうした演出を頻繁にするのだとは知らなかった。確かに演出なしに撮った写真は、情報量が足りなかったり、迫力がなかったりする場合が多い。だから、もう一度同じような仕草を要求することもある。

ただ誤解のないように述べておくが、事件、事故などの報道写真は演出がないし、演出をする暇もない。その瞬間、その現場に居合わせて、シャッターを押したかどうかが勝負だ。問題となるのは、十分な時間があるときの写真取材である。

富山支局長が写真部出身だったおかげで、写真の撮り方をよく教えてくれた。しかし、どうしても“演出”には抵抗があった。そのせいでよく怒られた。この背景を入れて、こういうポーズをとってもらって撮影すべきだった、とのお叱りをよく受けた。

企画やヒマネタのように、緊急性よりも具体性や詳報性が重視される記事に併用する写真の場合、私もある程度の演出はしょうがないと思う。よりその記事がアピールするための演出が必要な場合もあるだろう。しかし、こと大きな、緊急性のあるニュースの場合、これをやられると受けての方はたまらない。騙された気分になる。いや事実、読者を騙しているのだ。

あるベテランカメラマンは、小笠原での取材の話をしてくれたことがある。戦後アメリカが占領していた小笠原は1968年に日本への返還が決まり、日本中が湧いていた。そのカメラマンと同僚の記者は小笠原に渡り、小笠原の島民が喜びに沸く様子を本土に伝えることになった。

しかし島のどこへ行っても、返還を喜ぶ人などいない。それはそうであろう。小笠原の島民は戦争中に疎開しており、戦後帰島を許されたのは、ハワイ・欧米系の島民だけであったからだ。彼らはアメリカの占領に十分に満足していた。



ありのままを撮るか。あるいは、返還にふさわしい写真を撮るか。

カメラマンは考えぬいた末に、島の子供たちに日の丸の旗を渡し、広場を自転車でグルグルと回ってもらったところを撮影した。子供は無邪気だから、喜んで旗を振りながら走り回るわけだ。かぎりなくやらせに近い演出である。「折衷案だったのだ」と、そのカメラマンは弁明する。写真では「喜び」の場面を撮ったが、記事では島民が必ずしも返還を歓迎しているわけではないことを強調した、と。

私はこの話を、バグダッドの広場で巨大な石像が米軍によって引き倒される場面――あの繰り返し流された影像を見ながら思い出していた。あの広場に集まった群衆も、米軍の行為に便乗して喜んでいるようにみえた。だがイラクの国民は、本当に喜んでなどいたのだろうか。





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最終更新日  2006.02.11 09:31:03
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Re:新聞記者の日常と憂鬱12(02/11)  
ほわいと さん
白山菊理姫さん、こんにちは。

任務、使命、事実、ジャーナリストの方々の内面の葛藤が伝わってくるようです。 (2006.02.11 13:19:34)

Re[1]:新聞記者の日常と憂鬱12(02/11)  
白山菊理姫  さん
ほわいとさん
こんにちは。

>任務、使命、事実、ジャーナリストの方々の内面の葛藤が伝わってくるようです。

難しい問題です。大衆に迎合する報道をしていては、ジャーナリストではなくなりますからね。読者が聞きたくないようなこと(自分の国の悪い点など)も書かなくてはなりません。むしろそこにこそ、真実があるのではないかとも思います。 (2006.02.11 17:40:48)

Re:新聞記者の日常と憂鬱12(02/11)  
真実と事実は違っているものですが、どういう風に見えるかによって、書く人の表現したいものがわかりますね。

読者の期待にこたえる場合、無理もあるのでしょうね。

テレビなどでも、不思議な場面って、時々みかけます。
ニュース番組などで。

白山菊理姫さんも、苦労されていたのですねえ。
(2006.02.11 18:45:53)

Re[1]:新聞記者の日常と憂鬱12(02/11)  
白山菊理姫  さん
きときとさん☆☆☆さん
こんばんは。

>真実と事実は違っているものですが、どういう風に見えるかによって、書く人の表現したいものがわかりますね。

どのように現実を切り取るかによって、その人の主張が表れます。たとえ話でよく引用される象の描写のようなものですね。

>読者の期待にこたえる場合、無理もあるのでしょうね。

読者が期待するように事実を捻じ曲げるのは絶対やめなければなりません。負けているのに勝っているといい続けた、大本営発表がその最たる悪い例です。アメリカでもひどい報道をしていましたね。

>テレビなどでも、不思議な場面って、時々みかけます。
>ニュース番組などで。

やらせに近い演出は、後を絶ちませんね。受け手側であるわれわれは、常に警戒しておくに越したことはありません。とくにNHKのニュースには注意した方がいいですよ。巧妙なので、なかなか見破るのが大変です。

>白山菊理姫さんも、苦労されていたのですねえ。

今でも、自戒しながら取材活動を続けています。できるだけ真実像に迫るよう努力しています。見えない部分をなるべく明らかにするように心がけています。 (2006.02.11 21:52:15)

Re:新聞記者の日常と憂鬱12(02/11)  
かめ さん
こんばんは

心理学で期待は裏切りにつながる・・・という言葉がありますが
まさにそんな感じが・・・

でも読者にも問題があるように思います
読者がもっと記事に対してフィードバックするなどして双方が意識を高めていく事は可能なのでしょうか?

ネットの普及で活字によって自己主張する練習は広まっていますが
今度は事実確認が後手になって信憑性にかけるネットニュースもありますし・・・

あるジャーナリストがなくなられたときに、どういうわけか取材が何件かきて
それがもう記事の文章はすでに出来上がっていて、それにそった質問に「はい。」と私が答えれば
『その人を知る関係者の話によれば』と書かれるのだろうなと思い取材拒否をしてしまいました

新聞社やTV局のプロデューサーさんのスタンスと当事者さんの関係によって
情報の提供者の姿勢や報道の方向性が変わるのは本当に思うところ大有りでした


(2006.02.12 00:55:11)

Re[1]:新聞記者の日常と憂鬱12(02/11)  
白山菊理姫  さん
かめさん
おはようございます。

>心理学で期待は裏切りにつながる・・・という言葉がありますが
>まさにそんな感じが・・・
>でも読者にも問題があるように思います
>読者がもっと記事に対してフィードバックするなどして双方が意識を高めていく事は可能なのでしょうか?

読者はどうしても、自分の国が正義の国なのであると期待してしまうから、そうではないニュースを見たがらない傾向があります。イラク戦争のときのアメリカがそうでしたね。政府を批判したジャーナリストは会社を首になり、フォックステレビのような極右の国威発揚チャンネルが歓迎された。小笠原返還の報道も同類と言えば同類です。

>ネットの普及で活字によって自己主張する練習は広まっていますが
>今度は事実確認が後手になって信憑性にかけるネットニュースもありますし・・・

ネットはガセネタも多いですね。注意しないといけません。

>新聞社やTV局のプロデューサーさんのスタンスと当事者さんの関係によって
>情報の提供者の姿勢や報道の方向性が変わるのは本当に思うところ大有りでした

新聞社にはそれぞれ思惑がありますから、上記のような例は多いです。コメントを取る際も、反対派と賛成派の両方を取り上げようとしますから、誘導尋問のような質問もあるわけです。コメント拒否はいい判断だったのではないかと思います。 (2006.02.12 10:17:18)

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