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2006.05.18
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カテゴリ: メディア
黒三ダムの悲劇6

(解説)
第一段落:
24年前の原稿では具体的な場所が記されていなかった。黒部川ダムといっても第一から第四まである。最初の段落で、どのダムの建設の話なのかを明記しないのはよくない。しかも、いきなり吉村昭の小説『高熱隧道』が出てくる。ある程度有名な小説だが、読んでない人も多いので、こうした本を最初に持ってくるときは、書いている当時よほど有名な本でなければならない。すでに出版されて何年も経っている本を、最初の段落にもってくるのは好ましくない。

第二段落:
ここで初めて吉村昭の『高熱隧道』をもってきた。ポイントは次の「実際に工事に従事したのが、どういう労働者であったかは記録にほとんど残っておらず、わかっていなかった」の部分。吉村昭の小説や当時の新聞にも朝鮮人労働者がいたことは書かれている。だが、実際どれだけの朝鮮人労働者が働き、亡くなったかは記録がないのが実情である。この点を指摘しておかないと、「証言により大半が朝鮮人労働者であったことがわかった」というニュース性が弱くなってしまう。

第三段落:
ここでは実際の生々しい証言を紹介して、原稿全体の意義付けをしている。ここまでの三段落が新聞記事のリードと呼ばれるもので、必要な要素と原稿の意義付けが盛り込まれていなければならない。つまり、ここまでがニュース価値があるとして勝負しなければならないところである。

問題点:
・このリードの問題は、いったいどこまでが新事実であるのかわからないところだ。第二段落で記録がほとんど残っていないことを強調しているが、初めてわかった事実があいまいになっている。実はこれが、24年前に原稿を完成させることができなかった最大の理由でもあった。

・ここでいちばん欲しい新事実は、亡くなった人のうち一体何人が朝鮮人労働者であったか、であろう。また、一体何人ぐらいの朝鮮人労働者が徴用され、うち脱出した人や怪我をした人が何人いたかがわかれば、さらにいい。残念ながら証言からは具体的な数字が出てこない。唯一、雪崩で亡くなった84人のうち60人ぐらいが朝鮮人労働者であったという証言ぐらいだ。実際の朝鮮人労働者の証言から衝撃の事実が出てくれば原稿にしやすいが、そこまでには至っていない。結局、手元にある証言から書ける原稿はここまでであった。

・もう一つ、出稿できるチャンスがあるとしたら、地元の郷土史家が黒三ダム工事の真実を知ってもらいたくて、証言を集め本や冊子などを作成したときであろう。その人に焦点を当てて原稿にすることはできる。当時の私もそういう人がいないか探したが、見つからなかった。

結論としては、ニュース原稿として配信するには、ちょっと弱かったかもしれない。

24年前、私は原稿を完成させることができなかった。しかし世の中には、ちゃんと真実を伝えていこうという人が必ずどこかにいるものである。その後1992年に、内田すえの、此川純子、堀江節子の三名が、高熱隧道に携わった朝鮮人の足跡を探究し、雪崩事故に遇った朝鮮人遺族を尋ねて 『黒部・底方(そこい)の声-黒三ダムと朝鮮人』(桂書房)





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最終更新日  2006.05.18 10:01:12
コメント(16) | コメントを書く


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Re:新聞記者の日常と憂鬱93(05/18)  
黒4ダム以外殆ど知りませんが、御陰様で一端を知ることが出来ました。

ブログだけでは一寸勿体ない感があります! (2006.05.18 10:13:30)

ありがとうございました  
AKIKO0845  さん
今回、白山菊理姫さんがブログに綴られたことにより、
少なくとも私はこの事実を知ることができました。
ありがとうございました。 (2006.05.18 11:55:00)

Re[1]:新聞記者の日常と憂鬱93(05/18)  
白山菊理姫  さん
カーク船長4761さん
こんにちは。

>黒4ダム以外殆ど知りませんが、御陰様で一端を知ることが出来ました。
>ブログだけでは一寸勿体ない感があります!

1992年に「黒三ダムと朝鮮人」という本が出版されていたことを、今回このブログを書く際、初めて知りました。私がやれなかったことを、その10年後に誰かがやっていてくれて、うれしかったです。肩の荷が下りました。

訂正です。国会図書館にはちゃんと所蔵されていましたので、「国会図書館も所蔵していないこの本」を「今や絶版状態となったこの本」に差し替えます。桂書房によると、在庫はありませんが、富山の図書館に置いてあるそうです。桂書房は富山関連の本を出版する会社のようです。ホームページに「富山ふるさと文庫」と紹介があります。 (2006.05.18 12:08:04)

Re:ありがとうございました(05/18)  
白山菊理姫  さん
AKIKO0845さん
おはようございます。

>今回、白山菊理姫さんがブログに綴られたことにより、
>少なくとも私はこの事実を知ることができました。
>ありがとうございました。

いいえ、お読みいただきありがとうございます。少しは供養になったかもしれませんね。

歴史に埋もれた、あるいは抹殺された人たちを取り上げるのは、私のライフワークでもあります。被征服者である縄文人やアイヌの立場に立った歴史の見直しを進めようと思っています。とりあえず、竹内文書の続編を書かなければいけませんね。アイヌの取材をしているのもその一環です。
(2006.05.18 12:12:56)

Re:新聞記者の日常と憂鬱93(05/18)  
こんばんは

日本の中にある人種差別や先住民族の方々が受けた仕打ちを思うとやるせない思いです

>肩の荷が下りました
白山さんが多くの取材の中で声を大にして仰りたかったことのこころの層を感じます
人や人のしたことに深く関わっていると
自分だけの思いでは完結しないこともありますよね
そのために取材や記事があるのかな・・・とふと思いました

(2006.05.19 00:49:59)

Re:新聞記者の日常と憂鬱93(05/18)  
母の田舎の家からは武甲山という石灰が採れる山が見え、子供の頃遊びに行くと発破をかける音が聞こえていました。祖母が昔採掘場で働いていた朝鮮の人はすごく差別されていたけれど親切な人たちだったと話していました。 (2006.05.19 01:59:06)

堀江さんたちの活動  
ほわいと さん
白山菊理姫さん、おはようございます。

冷静な解説ですね。新聞記事になるまでのプロセスを知りました。
堀江節子氏とは、YMCAの活動で何度かご一緒させていただいております。堀江氏より頂戴したブログに関する当時の資料を探してみます。 (2006.05.19 06:55:48)

Re[1]:新聞記者の日常と憂鬱93(05/18)  
白山菊理姫  さん
かめちゃん☆さん
おはようございます。

>日本の中にある人種差別や先住民族の方々が受けた仕打ちを思うとやるせない思いです

悲惨な事件・出来事は多かったですね。勝者・強者が勝手に歴史を語っていくのは間違っています。

>>肩の荷が下りました
>白山さんが多くの取材の中で声を大にして仰りたかったことのこころの層を感じます
>人や人のしたことに深く関わっていると
>自分だけの思いでは完結しないこともありますよね
>そのために取材や記事があるのかな・・・とふと思いました

原稿になるかどうかは別にして、取材だけはしておかないと、後悔しますね。千葉に住む元朝鮮人労働者には、もっと詳しく話を聞いておくべきでした。 (2006.05.19 10:09:13)

Re[1]:新聞記者の日常と憂鬱93(05/18)  
白山菊理姫  さん
ヘリオトロープの小部屋さん
おはようございます。

>母の田舎の家からは武甲山という石灰が採れる山が見え、子供の頃遊びに行くと発破をかける音が聞こえていました。祖母が昔採掘場で働いていた朝鮮の人はすごく差別されていたけれど親切な人たちだったと話していました。

秩父の武甲山ですね。無残な姿に変容したと聞きます。どこの現場でもいちばん過酷な仕事に従事させられていたのは、大半が朝鮮人労働者であったようです。ホームレスの人もそうですが、社会的な弱者には優しい心の持ち主が多いと思います。 (2006.05.19 10:13:13)

Re:堀江さんたちの活動(05/18)  
白山菊理姫  さん
ほわいとさん
おはようございます。

>冷静な解説ですね。新聞記事になるまでのプロセスを知りました。

今書いている『留学のための英語論文・ペーパー作成術』もこんな感じで書いています。早く仕上げないと・・・。

>堀江節子氏とは、YMCAの活動で何度かご一緒させていただいております。堀江氏より頂戴したブログに関する当時の資料を探してみます。

著者の堀江節子さんをご存知なのですか。昨日図書館で本を借りてきたのですが、プロフィールには1948年富山県魚津市生まれで、富山市在住としか書かれてありません。一体、どのような人なのでしょうか? もしご存知なら教えてください。本は今週末に読んでみるつもりです。 (2006.05.19 10:18:50)

問い合わせます  
ほわいと さん
白山菊理姫さん、こんばんは。

堀江氏は、当時、堀江硝子の社長夫人でした。とても細い体型の方でした。どこからあれほどのパワーが出てくるのかと感心しておりました。
明日、YMCAか、富山の友人に問い合わせてご連絡いたしますね。 (2006.05.19 23:15:59)

Re:問い合わせます(05/18)  
白山菊理姫  さん
ほわいとさん
こんばんは。

>堀江氏は、当時、堀江硝子の社長夫人でした。とても細い体型の方でした。どこからあれほどのパワーが出てくるのかと感心しておりました。

そうでしたか。富山では有名な方なんでしょうね。

>明日、YMCAか、富山の友人に問い合わせてご連絡いたしますね。

わざわざありがとうございます。何かわかりましたら、お教えください。
(2006.05.20 00:29:00)

徴用に関する時期について  
だれぱんだ さん
管理人様。朝鮮人に対する徴用ですが1939年に戦時動員の「募集」が始まり、1942年に「官斡旋」、1944年に「徴用」となるが実際に朝鮮人が徴用されたのは1944年9月からです。
と言う訳で黒三ダムの工事に関しては時期的に強制のない募集のみです。過酷な労働や事故に遭われた方はお気の毒ですが、この件は戦前の日本が強制的に朝鮮人をさらって日本に連れてきた工事ではありません。 (2006.09.19 03:48:35)

Re:徴用に関する時期について(05/18)  
白山菊理姫  さん
だれぱんださん

ご指摘のように、法律的にはその通りです。厳密に言えば、”徴用”とカッコつきが正しかったですね。しかし、当時の証言者が明らかにしているように「半ば強制的」に朝鮮人労働者が集められた事実は残っています。真実を知るには、官の発表の裏側を調べないといけませんね。

>管理人様。朝鮮人に対する徴用ですが1939年に戦時動員の「募集」が始まり、1942年に「官斡旋」、1944年に「徴用」となるが実際に朝鮮人が徴用されたのは1944年9月からです。
>と言う訳で黒三ダムの工事に関しては時期的に強制のない募集のみです。過酷な労働や事故に遭われた方はお気の毒ですが、この件は戦前の日本が強制的に朝鮮人をさらって日本に連れてきた工事ではありません。
-----
(2006.09.19 08:26:10)

Re[1]:徴用に関する時期について(05/18)  
だれぱんだ さん
管理人様、お返事恐れ入ります。もし機会があるのでしたら裏側を調査されると面白いと思います。戦前・戦中の朝鮮人労働者については京都府宇治市のウトロが有名ですが朝鮮人住民達は始め強制連行されたと自ら言っていましたが1943年に飛行場建設に携わっていた事が明らかなので辻褄が合わなくなり、今は単純に「出稼ぎ」だと言質を変えています。 (2006.09.19 17:08:50)

Re[2]:徴用に関する時期について(05/18)  
白山菊理姫  さん
だれぱんださん

最後にこれだけは言っておきますが、どこそこの工事で働いた朝鮮人は強制連行にあたらないから問題にすることはないとか、”自由意志”で日本に稼ぎにきた朝鮮人に対しては社会的、道義的に負い目も責任もないといった議論を展開する連中がいることは、私もよく承知しています。

しかしそうした議論は、当時の朝鮮の人々が置かれた状況をまったく無視した暴論です。日本の侵略によって植民地支配され、農地を奪われ、文化や経済を破壊され、兵站基地として食料を含むあらゆる物資を奪われ、生きるために流民化を余儀なくされた事実を切り捨てることはできませんね。つまり、人間の心を持っていれば、加害国として「お気の毒様」で済ませることはできないはずです。

>管理人様、お返事恐れ入ります。もし機会があるのでしたら裏側を調査されると面白いと思います。戦前・戦中の朝鮮人労働者については京都府宇治市のウトロが有名ですが朝鮮人住民達は始め強制連行されたと自ら言っていましたが1943年に飛行場建設に携わっていた事が明らかなので辻褄が合わなくなり、今は単純に「出稼ぎ」だと言質を変えています。
-----
(2006.09.20 08:17:34)

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