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2007.09.15
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テーマ: いい言葉(573)
カテゴリ: 文学・芸術
バラ戦争

赤と白のバラ

文学が歴史上の事件の名称を決めることがあります。1455~1485年にイギリスの王位継承争いによって起こった、封建貴族同士の内乱である バラ戦争 ですね。その名前の由来は、赤いバラを象徴とするランカスター家と、白いバラを象徴とするヨーク家が中心となって争ったからとされていますが、当時はランカスター家の象徴である赤いバラの紋章はまだ存在しなかったとの説が有力です。

ではなぜバラ戦争と呼ばれるようになったかというと、シェークスピアの戯曲『ヘンリー6世』の中で、劇的効果を高めるために紅白のバラを道具として使ったからなんです。もちろんこれは、シェークスピアの創作でした。

では、その場面をご覧下さい。ロンドンのとある聖堂の庭園で、プランタジネットとサマセットの間で、おそらく些細なことから政治論争が始まります。

PLANTAGENET
Since you are tongue-tied and so loath to speak,
In dumb significants proclaim your thoughts:
Let him that is a true-born gentleman
And stands upon the honour of his birth,
If he suppose that I have pleaded truth,


sinceは「~なので」。tongue-tied は直訳すると「舌が縛られた」ですが、「ものを言わない」「無口の」という形容詞ですね。二行目のsignificantsは名詞です。たいていの辞書にはsignificantという形容詞しか出ていませんが、意味は「That which has significance; a sign; a token; a symbol.」、つまり兆し、印、シンボルといった(重要な)意味をもったもの。In dumb significantsで「無言の合図で」というような意味でしょうか。「しゃべりたくないのなら、無言の合図で考えを示せ」とは随分勇ましいですね。四行目のstand uponは固く守る。訳は次のようになります。

プランタジネット
諸君は舌が固まり、言葉を発したくないようだから、
無言の合図によって各自の考えを示していただこう。
名門の家に生まれた真の紳士にして
その家門の名誉をなにより重んじられる御仁で、
私の主張に真実があると思われるなら、
私とともにこの枝から白バラを手折っていただきたい。

サマセットもこれに対抗します。

SOMERSET
Let him that is no coward nor no flatterer,
But dare maintain the party of the truth,
Pluck a red rose from off this thorn with me.



サマセット
卑怯者でなく、追従者でもない、
あえて真実を有するものに味方しようという御仁は、
この棘(いばら)から私とともに赤いバラを手折っていただきたい。

この「投票」によって、白のプランタジネットが勝つのですが、サマセットの怒りは収まりません。「血で白いバラを赤く染めてやろう」という主旨の捨て台詞を吐いて、二人の間の亀裂はますますひどくなります。

結局シェークスピアの劇では、この争論が発端となって紅白のバラ戦争へと突入していきます。このシーンがあまりにも印象的だったので、後世の人がバラ戦争と名づけたと考えられています。

ヨーク・アンド・ランカスター 」と名づけられました。

ヘンリー7世も、自分の紋章に白バラと赤バラを重ねたような図案を採用しました。その図案は チューダー・ローズ と呼ばれ、現在まで引き継がれているそうです。

(続く=続きは水曜日ごろになります)





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最終更新日  2007.09.15 22:23:06
コメント(9) | コメントを書く
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Re:薔薇シリーズ11(09/15)  
heliotrope8543  さん
ヨーク・アンド・ランカスターがそんな古い品種とは知りませんでした。どこかで見たような気がします。赤薔薇白薔薇なんてできすぎのような気がしていましたが、シェークスピアのせいだったのですね。 (2007.09.15 23:06:52)

Re[1]:薔薇シリーズ11(09/15)  
白山菊理姫  さん
heliotrope8543さん
こんばんは。

>ヨーク・アンド・ランカスターがそんな古い品種とは知りませんでした。どこかで見たような気がします。

ピンクっぽいバラですよね。グラデーションしている部分が、確かに赤と白を混ぜたようにも見えます。

>赤薔薇白薔薇なんてできすぎのような気がしていましたが、シェークスピアのせいだったのですね。

そう、シェークスピアのせいです。あまりにもシェークスピアの作品の完成度が高いので、実際の歴史よりも信じられてしまうんでしょうね。「ヘンリー・シリーズ」だけでなく、『ジュリアス・シーザー』しかり、『アントニーとクレオパトラ』しかりです。言葉(セリフ)や演出がかっこよすぎますね。 (2007.09.16 00:06:49)

Re:薔薇シリーズ11(09/15)  
ribon5235  さん
はじめまして。ヘリオトープさんのご紹介で参りました。私も古代史、薔薇が好きです。シェイクスピアは戯曲に意味のある植物をちりばめているそうですね。アンの家も名所です。よろしくお願いします。 (2007.09.17 10:19:37)

Re:薔薇シリーズ11(09/15)  
ほわいと さん
白山菊理姫さん、こんにちは。

ご無沙汰いたしております。新シリーズが始まったのですね。『薔薇シリーズ』、素敵なタイトルですね。

(2007.09.18 00:19:56)

Re:薔薇シリーズ11(09/15)  
ほわいと さん
続きです。(手違いで送信してしまいました)。

「失われた過去を求めて」の最終回で白山菊理姫さんが、お書きになられていらっしゃいます『未来に起きる出来事は実はこの瞬間にも既に起きている』を実感しております。この一ヶ月間近く、実にいろいろな展開がありました。不思議を通り越して冷静に受けとめられるようになっております。白山菊理姫さんのブログで学ばせて頂いた成果だと感謝申し上げております。 (2007.09.18 00:37:49)

Re:薔薇シリーズ11(09/15)   
furafuran  さん
白山菊理姫さん
こんにちは。

オールドローズの「ヨーク・アンド・ランカスター」にはこんなお話があったのですね。

シェークスピアにすっかりのせられていたことに、ようやく気がつきました。

30年の争いが、やわらかいピンク色に咲く薔薇で彩られ、チューダー・ローズ の紋章ができたことも、物語の結末を鮮やかにしているようで素敵です。 (2007.09.18 16:27:56)

Re[1]:薔薇シリーズ11(09/15)  
白山菊理姫  さん
ribon5235さん
はじめまして。

>ヘリオトープさんのご紹介で参りました。

ヘリオトープさんとは、政治的に似たような立場ではないかと思っています。ただし、私はつい熱くなってしまうので、余程の事がない限り書いておりません。

>私も古代史、薔薇が好きです。シェイクスピアは戯曲に意味のある植物をちりばめているそうですね。アンの家も名所です。

古代史とバラの組み合わせも面白いですね。シェイクスピアのみならず、詩人や作家は花からいろいろなインスピレーションを得て、作品の中にちりばめていますね。

アンの家って、カナダ・プリンスエドワード島の赤毛のアンの家のことですか? 赤毛のアンが好きな人にとっては、行きたくてたまらない場所ですね。残念ながら私は行ったことはありません。

>よろしくお願いします。

こちらこそ、よろしくお願いします。 (2007.09.18 21:04:02)

Re[1]:薔薇シリーズ11(09/15)  
白山菊理姫  さん
ほわいとさん
こんばんは。お久しぶりですね。お元気でしたか?

>新シリーズが始まったのですね。『薔薇シリーズ』、素敵なタイトルですね。

三回で終わる予定が、いつの間にか11回ぐらい続いています。そもそもバラの写真がたくさんあったので始めました。

>「失われた過去を求めて」の最終回で白山菊理姫さんが、お書きになられていらっしゃいます『未来に起きる出来事は実はこの瞬間にも既に起きている』を実感しております。この一ヶ月間近く、実にいろいろな展開がありました。

おや、それはそれは。何があったか気になります。未来と連動するようなことがあったのでしょうか。今度教えてくださいね。

>不思議を通り越して冷静に受けとめられるようになっております。白山菊理姫さんのブログで学ばせて頂いた成果だと感謝申し上げております。

お役に立てて、うれしいです。これからも何かの参考になるようなことを書いていければいいな、と思っております。 (2007.09.18 21:17:35)

Re[1]:薔薇シリーズ11(09/15)  
白山菊理姫  さん
furafuranさん
こんばんは。

>オールドローズの「ヨーク・アンド・ランカスター」にはこんなお話があったのですね。

出来すぎた話ではありますね。たぶん、バラ戦争が始まる前からあったバラを、新解釈して赤と白が混ざったバラが見つかったと、あたかも新種が見つかったかのように、人々が言い始めたのではないでしょうか。私たちが見るものは、すべて心の反映であるために、こういう現象が起こるのだと思います。

>シェークスピアにすっかりのせられていたことに、ようやく気がつきました。

文学作品が歴史を凌駕してしまったかのようですね。

In dumb significants proclaim your thoughts.
という言い回しも、非常に洒落ていて、すぐに覚えてしまう英文フレーズです。すっかりのせられてしまうわけです。

>30年の争いが、やわらかいピンク色に咲く薔薇で彩られ、チューダー・ローズ の紋章ができたことも、物語の結末を鮮やかにしているようで素敵です。

まさにロマンチックな結末ですね。だけど30年間も、よくも飽きずに殺し合いを続けたものです。本当に人間は野蛮ですね。その後の歴史でも、戦争が終わることはありませんでした。 (2007.09.18 21:42:25)

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