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2007.12.06
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テーマ: いい言葉(573)
カテゴリ: 文学・芸術
シェイクスピアから生まれたバラ3(ヴェニスの商人

バラ

この劇で悪役になっているシャイロックの言葉にも耳を傾けましょう。

SHYLOCK. Hath not a Jew eyes? Hath not a Jew hands, organs, dimensions, senses, affections, passions, fed with the same food, hurt with the same weapons, subject to the same diseases, healed by the same means, warmed and cooled by the same winter and summer, as a Christian is?

シャイロック:ユダヤ人には目がないとでも言うのか? ユダヤ人には手がないか? 鼻や耳や口は? 人間のような形をしていないのか? 五感や感情や情熱は? キリスト教徒と同じように、同じものを食べ、同じ武器で傷つき、同じ病気にかかり、同じ薬で治るのではないか? 同じ冬を寒がり、同じ夏を暑がるのではないか?

ここは韻文ではなく、散文になっていますね。単語で難しいのはdimensionsでしょうか。直訳すると「寸法」とか「大きさ」となりますが、「人間の形」と解釈しました。

同じ人間ではないかと訴えるシャイロックの言い分はもっともですね。実はキリスト教徒のアントーニオは、シャイロックのことをいつも馬鹿にします。シャイロックが損をすれば笑い、得をすれば嘲笑します。なぜそのようなことをするか? それはユダヤ人だからだと、シャイロックは言います。今では考えられないことですが、当時は金を貸して利子を取ることは蔑まれていたんですね。そんなことをするのはユダヤ人ぐらいだと考えられていた。時代が変われば変わるものです。今ではキリスト教徒がたらふく利子をむさぼり、利子を取らないのはイスラム教徒ぐらいになっていますね。

次も有名な台詞です。裁判官に扮した聡明なポーシャがシャイロックに慈悲を説く場面です。ここはテスト(!)に出ますので、必ず覚えてくださいね。

PORTIA
The quality of mercy is not strained.
It droppeth as the gentle rain from heaven

It blesseth him that gives and him that takes.
Tis mightiest in the mightiest. It becomes
The thronèd monarch better than his crown.

ポーシャ
慈悲は強制されて施すものではない。慈悲は、天から降りそそぐ柔らかな恵みの雨のように、大地を潤す。慈悲は二重に祝福される。それは与えた者を幸せにし、受け取った者も幸せにする。慈悲は、もっとも偉大な人々の、もっとも偉大な美徳。この徳が王に備われば、王冠よりも輝くのだ。

5行目のbecomeは「~にふさわしい」という他動詞です。直訳すると「慈悲は王冠よりも王にふさわしい」となりますね。ここも見事な弱強5歩格になっています。シャイロックの台詞を散文で書き、ポーシャの台詞を韻文で書くのも、強欲なシャイロックと聡明なポーシャを際立たせる効果があります。そのせいか、「強欲なシャイロック」というバラもありません。

最後は、駆け落ちしたジェシカがロレンゾーと「ちょうどこんな夜だった」という言葉遊びに興じるロマンチックな場面です。

LORENZO. The moon shines bright. In such a night as this,
When the sweet wind did gently kiss the trees,
And they did make no noise-- in such a night,
Troilus methinks mounted the Troyan walls,

Where Cressid lay that night.

ロレンゾー:月が明るく輝いている。ちょうどこんな夜だった、甘い風が音を立てずに、そっと木々をなでていたのは。ちょうどそんな夜だった、トロイラス王子がトロイの城壁によじ登り、クレシダ姫が眠るギリシャの陣営の方を向いて、深く、切ないため息をもらしたのは。

これに対してジェシカも「こんな夜だった、~のは」と応じて、しばらくこの言葉遊びが続きます。その中のロレンゾーの台詞にpretty Jessicaという言葉が出てきて、それがバラの名前となりました。

さて、『ヴェニスの商人』の評価ですが、異教徒のユダヤに対する差別が根底にあったことは確かでしょう。現在でも、形を変えて差別は続いています。たとえば今日では、9・11テロ後のブッシュの十字軍発言を聞いてもわかるように、イスラムに対してキリスト教徒の一部は同じ差別意識を持っていますね。一方ユダヤ人は、第二次世界大戦中には迫害され、ホロコーストを経験します。しかし、現在のイスラエルのパレスチナに対する迫害、弾圧、虐殺行為を目の当たりにすると、とてもイスラエルを支持する気にはなりません。

被害者が今度は加害者になる。虐殺をされたものがなぜ、今度は虐殺をするのか。その狂信的な行動を突き動かしているのが宗教だとすると、宗教とは結局、その程度のものではないかと思えてきます。現代における宗教問題を考えるうえでも、『ヴェニスの商人』は格好の教材になるのではないでしょうか。






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最終更新日  2007.12.06 10:04:34
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