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2007.12.20
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テーマ: いい言葉(573)
カテゴリ: 文学・芸術
▼薔薇は薔薇1

薔薇

私がイギリスの大学に留学していた1980~81年当時の英首相は、「鉄の女」の異名をとるマーガレット・サッチャーでした。サッチャーは医療や教育関連予算を大幅に削る一方、金持ちや大企業を優遇する経済・金融改革を進めた首相でしたね。彼女の政策に対する評価は今でも割れていますが、私にとっては忘れられない演説があります。

あるとき、大学寮のテレビ室で何気なくニュースを見ていたら、そのサッチャーがこんなことを言ったんですね。

Crime is crime is crime.
(犯罪は犯罪であり、犯罪以外のなにものでもない)

「~is ~is ~」などという構文は、日本の学校の英語では教えてくれなかったので、「へぇ~、英語にはこんな言い回しもあるのか」と妙に感心した記憶があります。

しかしこの言葉の裏には、冷血動物とも揶揄されたサッチャーの真骨頂がありました。当時北アイルランドのメイズ刑務所には、アイルランド独立闘争を繰り広げていたIRA(アイルランド共和国軍)の活動家が多数、“服役”していました。彼らは一般の囚人として扱われていたのですが、彼らにとっては、自分たちは犯罪者ではなく戦争捕虜であるというんですね。

そこで自分たちの「地位向上」を求めて、ハンガーストライキに突入しました。その中心人物がボビー・サンズという活動家でした。彼はハンガーストライキ中に英国議会の補選に立候補、見事当選します。

民意はボビー・サンズに味方したんですね。ところがサッチャーは、IRA活動家の要求を頑として受け付けません。そのときに発した言葉が先ほど紹介した「犯罪は犯罪」でした。IRAの活動家は犯罪者であり、特別扱いはしないというわけです。

一応、その前後の言葉も紹介しておきましょう。


(犯罪人として服役している特定のグループに対して特別扱いを検討するつもりはない。犯罪は犯罪であり、政治的なものではない)

サンズは66日間のハンガーストライキの後、1981年5月5日に餓死します。その年、サンズを含めて実に10人の活動家がハンガーストライキで餓死するんですね。

どうしてこのような悲惨な宗教闘争が起きたかというと、シェイクスピアを庇護した、あのエリザベス一世の時代までさかのぼるんですね。ヘンリー8世の娘であるエリザベスが女王となり、カトリックとプロテスタントの激突を避けるため中道政策を採ったことはすでに紹介しましたね。ところがこの女王の治世で、アイルランドに対しては、カトリック系住民を“駆除”して、代わりに植民者を送り込むという政策が推進されました。

エリザベス一世によって蒔かれたとも言える宗教紛争のタネは、17世紀のピューリタン革命の指導者オリバー・クロムウェルが反革命の拠点であるとしてアイルランドを征服、植民地化したことにより、大きくなります。そして、その後何世紀にもわたって、イギリスとアイルランドの大地は、血で血を洗う宗教闘争という暗雲に覆われることになるんですね。

1981年のイギリスの空も、そのような暗雲が立ち込めていました。女王の名もエリザベス(二世)です。エリザベス二世とサッチャーの政治的な思惑があったかどうかわかりませんが、10人の活動家が刑務所で次々と餓死している最中の7月29日、暗雲を払うかのようにダイアナ(・スペンサー)とチャールズ皇太子によるローヤル・ウェディングが執り行われたことも覚えておかなければなりませんね。私は翌30日、その結婚式が開かれたロンドンのセント・ポール寺院の前にたたずみ、紙ふぶきの残骸が風に舞うのを見ていたことを、今でも鮮明に覚えています。

前置きが長くなってしまいましたが、本題はここからです。実はサッチャーが使った「~is ~ is ~」という構文は、アメリカの女性詩人ガートルード・スタイン(1874-1946年)の「A rose is a rose is a rose is a rose」(薔薇は薔薇であり、薔薇であり、薔薇である)という詩の一節から来ているんですね。

今日はこの薔薇の詩を紹介しようと思ったのですが、前置きが長くなりすぎたので、明日のブログで詳しく見ていこうと思います。
(続く)





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最終更新日  2007.12.20 12:23:40
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