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2007.12.23
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テーマ: いい言葉(573)
カテゴリ: 文学・芸術
▼薔薇は薔薇4



Now listen! I’m no fool. I know that in daily life we don’t go around saying “is a … is a … is a …” Yes, I’m no fool; but I think that in that line the rose is red for the first time in English poetry for a hundred years.(Four in America)

まあ、お聞きなさい! 私は馬鹿ではないわ。普段の生活で「~は~で、~であり、~である」なんて繰り返したりしないことはわかっています。そんな馬鹿ではありません。だけど、英語の詩においては、この百年間で初めて薔薇が赤いということが、そのフレーズ(詩句)で示されたと思っています。

スタインは面白いことを言いますね。この前後の文脈を斟酌して説明しましょう。その昔チョーサーやホーマーの時代では、ものの名前は直接相手に伝わり、そのものが実際にそこにありました。たとえば、「月よ」「海よ」と言えば、それだけで月や海の純粋な美しさが実感できたのです。ところが、何百年も経ち、その間に何千もの詩が作られると、ものと直接結びついていたはずの原初の言葉は、使い古されてぼろ雑巾のようになり、手垢のついた言葉になってしまったと、スタインは言っているようです。

ここからは私の推論ですが、言葉を繰り返すことによって、その言葉にこびりついた「垢」をふるい落とし、純粋な響きや意味を持つ言葉に近づけることができるとスタインは考えていたのではないでしょうか。つまり、使い古されて生気を失った言葉を、斬新な構文や想いもよらない構文の中で使うことによって、その活力を取り戻そうとしたというわけです。

それは「原初の薔薇」を取り戻す作業でもあったのではないかと思われます。原初の薔薇と聞いて、ピンと来た人は凄い記憶力です。この薔薇シリーズの2回目で紹介したウンベルト・エーコの『薔薇の名前』で出てきましたね。その言葉を再掲しましょう。

Stat rosa pristina nomine, nomina nuda tenemus.
(原初の薔薇は名前とともにあり、私たちは裸の名前を持っている)

このrosa pristinaが「原初の薔薇」です。nudaには、「むき出しの」「裸の」のほかに「ただの」という意味があります。この文章も難解なのですが、スタイン流に解釈すると、「原初の薔薇は名前と直接結びついていたが、私たちに今あるのは実際の赤い薔薇とはかけ離れた、ただの名前」となるでしょうか。

原初の薔薇


(モーゼは思う)』です。

As Moses supposes his toeses to be!
A Rose is a rose is a rose is a rose is
A rose is for Moses as potent as toeses
Couldn't be a lily or a daphi daphi dilli
It's gotta be a rose cuz it rhymes with mose!
Moses!

モーゼは彼の“つま先“が薔薇であると思っても、
薔薇は薔薇で、薔薇は薔薇。
モーゼにとって薔薇は、つま先と同じくらいの力がある
ユリでも、月桂樹でも、ディリでもない

モーゼ!

ここではつま先(toe)ですら、韻を踏むためにtoesesとありえない形に変化しています。スタインの真意は伝わらなくても、薔薇のフレーズは多くの人の心を捉えたことだけは確かなようですね。

『雨に唄えば』はかなり古い映画ですから、観たことがない方もおられると思いますが、 こちら でご覧ください。1952年制作ですから、さすがに私も生まれていませんでした(たぶん)。
(続く)





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最終更新日  2007.12.23 16:56:28
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