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2011.05.05
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カテゴリ: 歴史箱
統一王朝の正規軍とみられるナガスネ彦軍と日向族のイワレビコ軍の決戦については、面白いことに古事記ではほとんど触れられていないんですね。ところが日本書紀では結構、詳しく書いてあります。そこに至るまでの記述たるや、まさにイワレビコ側について武勲を成した部族の羅列の感じがします。きっと日本書紀を記す際、「うちのご先祖様が神武東征で勲を上げた人物だということを強調しておいてね」と頼んだ人たちも多かったのでしょう(笑)。逆に最後までイワレビコ軍にはむかった部族は、まるで野獣か化け物のように描かれたりしています。まあ、勝てば官軍負ければ賊軍ですから、仕方がないと言えば仕方がないですね。

それはともかく、ナガスネ彦軍とイワレビコ軍の最終決戦は、磐余(いわれ)の地(奈良県桜井市中部から橿原市東南部)であるのですが、双方の力が拮抗していたため、なかなか決着がつきません。そのとき、急に空が暗くなってきて、雹がふってきたというんですね。そこに空から金色の不思議な鳶(トビ)が飛んできて、イワレビコの弓の先にとまります。そのトビは雷光のように光り輝いたので、ナガスネ彦の軍は皆眩惑されて二度と応戦できなくなってしまったそうです。

この「超常現象」があったために、ナガスネ彦はイワレビコに使いを送り、「和議」をすることになります。では、この金色のトビ(金鵄)が何を象徴しているのか考察してみましょう。かなり多様に解釈できます。

金色のトビの神話は、現在でも金鵄勲章の名前の由来になっているぐらいですから、大変ありがたいものであることは推測できますね。素直に読むと、イワレビコ軍が太陽を背にして戦ったのでナガスネ彦軍は逆光に目がくらんでうまく戦えなくなった、となります。あるいは神々しく見えるように太陽を背にした作戦であったのかもしれません。そういえば、ヨーロッパのテレビドラマ『大聖堂』でも、キングスブリッジの修道院長フィリップスが十字架と太陽の光をうまく使って神々しく見せかけ、武装集団をたじろがせる場面がありました。意外と中世ぐらいまでは、そのような演出が有効であったのかもしれませんね。

次に、人間をほとんど傷つけないでほしいものをかすめ取ることができるという、トビの突出した能力に注目して解釈することもできます。トビは人に気付かれないように死角から忍び寄り、一気に急降下して人間の手に持っているものを取って行くんですね。その際、トビは視力がきわめて優れていますから、人間を傷つけずに目標物の食べ物だけをかすめ取ることができます。私も湘南の浜辺で、食べようとして親指と人差し指でつまんでいた、かんきつ類のひとかけらをあっと言う間に取られたことがあります。まったく私の指を傷つけることなく、かすめ取っていたので驚いたことがありました。それほど正確に人間を傷つけることなく、目標物を捕えることができるんですね。

そして、この「傷つけずに取る」というテーマに関しては、実は日本書紀に伏線がちゃんと敷かれています。ナガスネ彦との最終決戦の前、イワレビコが敵軍の多さに辟易しているときに夢を見ます。その夢の中で天神が現れ、「天の香具山の社(やしろ)の中の土を取って来て平瓦80枚を作り、同じくお神酒を入れる瓶を作り、天神地祇(てんじんちぎ)をお祭りせよ。また身を清めて呪詛をせよ。そうすれば敵は自然に降伏するだろう」と告げられます。

そこでイワレビコは、その夢のお告げが本当かどうか確かめるため、「武器を使わずに、いながらにして天下を平らげられる」かどうか、瓦や酒甕を使った占いをします。すると、武器を使わずに天下を平らげられることがわかり大喜びするという場面があるんですね。

このことから、「天の香具山の土」と「金色のトビ」との間には、どうやら何か関係があるということがわかります。
(続く)





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最終更新日  2011.05.05 22:10:29
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