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2023.06.08
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カテゴリ: 観照

寝殿の階 には、 二人の武官 が居ます。巻纓 (まきえい) の冠をつけ、闕腋袍 (けつてきほう) を着ています。「袖から下の両脇を縫わず、後の身を長く仕立てた武官用の袍」 (資料1) です。そして、裾 (きょ) を背後に垂らしています。
                  

​胡簶 (やなぐい) に矢を入れて、背に​ 負っています。



        階より東側の庭には、楽人たち が居並んでいます。


この楽人たちに着目 してみましょう。

A



楽人の冠 がまず目に止まります。
手許の書 (資料1) には、「源氏物語画帖」の「青海波を舞う光源氏」の絵が掲載されています。
その絵の右下に楽人たちが描かれていて、この冠と同様のものを被っています。

横笛 を吹き、Bの冠を被る楽人は ​(しょう)​ を持っています。

前列の手前から二人目で笙をもつ楽人以外は横笛を手に持っています。



切り出した部分図ですが、 ​両端の楽人は篳篥 (ひちりき) を​ 手にしているようです。

この具現化展示では、 楽人たちは、笙、横笛、篳篥のいずれかの楽器 で演奏した設定です。
上記の光源氏の青海波の舞では、首に下げる琵琶を扱う楽人が加わっていますが。


最後列に座る左端の人は、 木の棒のような物 を持っています。 拍子を打つ楽器でしょうか
調べてみた範囲では名称は不詳です。

手許の書では、青海波の場合、垣代 (かきしろ) と呼ぶ楽人の中に、「 反鼻 (へんぴ) 」(木製の巴形の拍子を打つもの。「 反尾 」とも)を持ち、楽人と交互に演奏するという説明があります。 (資料1)
多分この反鼻と同様の役割を担う楽器なのでしょう。


左の二人は、袋に収めた物を 両手で捧げていますが、これも不詳です。

手許の書では、「反鼻」(反尾)を担当するのは、「大臣クラスの随身や滝口の武士などがあたるが、殿上人が加わることもある」 (資料1) と説明があります。

この3人の束帯姿を見ると、この説明に照応するようです。
後姿から、 冠は垂纓 ​(すいえい)​ と称する形です。
石帯と石帯の上手 がよくわかります。この革帯は 玉石で装飾 されています。
​三位以上の公卿が玉の帯、四位・五位の正装には瑪瑙 (めのう) の帯を着用した​ (資料1) そうです。

当日いただいた小冊子によると、「階の東脇で楽人の音楽が始まり、殿上人の公卿たちも思い思いの楽器を取り、一緒になって合奏が始まり、歌が歌われる。その席を盃が巡る」という饗宴の場ができて行ったそうです。
藤原実資の『小右記』がこの場面をどこまで具体的に記録しているのか、機会があれば読んでみたいと思います。



もう一点、 ​下襲 (したがさね) の裾をうまく見せている​ ところがいいですね。
意匠にも可能な範囲で美しく見せる工夫をしたのでしょう。

つづく

参照資料
1)『源氏物語図典』 秋山虔・小町谷照彦編 須貝稔作図 小学館
2) 当日いただいた小冊子:展示の解説ガイド(令和5年2月~ 展示) p2

補遺
笙の奏法と役割 ​   :「文化デジタルライブラリー」
横笛の奏法と役割 ​  :「文化デジタルライブラリー」
篳篥の奏法と役割 ​  :「文化デジタルライブラリー」
日本 笙のトップ ​  :「アジアの楽器図鑑」
日本 龍笛のトップ ​ :「アジアの楽器図鑑」
日本 篳篥のトップ ​ :「アジアの楽器図鑑」
行幸の演出 ​  :「風俗博物館」
源氏物語の音楽 ─平安・鎌倉時代の雅楽はこんな曲!?─ ​ 
             :「日本伝統音楽研究センター」(京都市立芸術大学)
4.『源氏物語』の楽器演奏 ​  :「春さんのHomePage」
藤原実資 ​  :ウィキペディア
小右記 ​   :ウィキペディア

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Last updated  2023.06.18 16:27:53
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