この時
1 動物の世界、2 自然の精霊 の2冊を読みました。
2 自然の精霊 の 中から
『竹の精のかごや姫』
を 転載させていただきました。
むかし、ずっとむかし、あったとな。
爺さと婆さが、あったとさ。
風が吹いても、雨が降っても、爺さは山さ竹かりに、
コンカドコンカド竹をばかって、きれいなかごを作っておった。
ある日のこと。爺さが山へはいったれば、不思議な竹が一本、キンカラキンカラ光っておった。
「まんずまんず、何年も何年も竹かって暮らしてきたども、こったら光る竹、見たこともね。
裂かねように、傷つけねように、すっかり気ィ張ってかるべし」
光る金の竹をばかると、爺さは急ぎ家さもどった。
「ばんば、ばんば。この竹。見ろちゃ」
「あれあれ、こんげに光る美しい竹なの、見たこともね」
ふたりして話しながら、竹のもとの方を割ったれば、なんと、親指ほどの女ゴわらしが出はったと。
「あれや、めんこい女ゴわらしじゃ。おらたに子がねさけ、神さんの授かり子かもしんね。
んだらばはえく名をつけなんねべ」
「ほだども、おらたはかご作るかご屋だもの、かごや姫、とでもつけるがええべ」
「かごや姫、かごや姫、めんこい名だ」
貧乏な爺さと婆さは、自分の食うもんもかごや姫に食わせて、姫や、姫や、めんこい子やと、育てたと。
したらかごや姫は、まま食うたびにムクムクと大きくなった。
大事に育てられて一つが二つになり、物をいうようになって十になった。
今では人並みに背も高く、美しいこと限りなし、天女もかなわねほどの
りっぱな姫さまになったから、爺さも婆さも片時も目を離すことができなんだ。
「あれ、あれ。こんげ、美しい娘になって、はア、こんだば婿どんの口断わりにも苦労すべ」
「おらえでひとりの娘だもの、嫁けろって、どんな長者さま、お大臣さまでも、嫁にけるわけなんねし」
そうするうちにも、年が来たり暮れたりして、かごや姫は十五になった。
十五の春、姫はふッと物いわねくなり、家のすみでうつうつと涙コこぼしてばかりいるのだった。
爺さも婆さも死ぬほど心配して、やれ頭痛むか、胸痛むだかと、
仕事も手につかず抱いてばかりおったが、そのうち秋になった。
ある日、涙コふいて、かごや姫はいった。
「おふたりさま、どうぞ、聞いてけらんせ。
長い間、こんげに、こんげに大きく育ててくれて、ほんとうにありがとさんでした。
実は、おらは天の国のものですなや。
この十月十五日に、天から迎えが来ますに、おらは爺ちゃと婆ちゃのそばにいつまでもいたいから、
なんとか、おらどこばつかまえていてけろはや」
これを聞いた爺さも婆さも、たまげて、たまげて、は、ふたりして姫を抱いて泣いたとは。
「なや、爺な。なんぼしたて、おらえのめんこい子、天さなのやらんね。
迎えに来たって、なんぼしたて、やらんね」
婆さが泣き泣きさかぶと、爺さもしっかとかごや姫を抱き寄せた。
「ほだとも、ほだとも。なんとしてもやらんね。しっかとつかめているべ」
そうするうちにも十月十五日の夜になったと。
爺さと婆さが、かごや姫をギッチと抱いて守っておると、カアカアと丸い月が上り、
光りものがサーッと屋根さ飛んで来て、雲のような、かすみのような、絹羽二重のような衣のようなものを掛けた。
爺さも婆さも目がくらんで、ただただ姫をば抱き締めておったが、
ふッと風が抜けたと思ううちに姫の姿は消えてしもうた。
「あれ、あれ、かごや姫」
「おらえのかごや姫、やーい」
天に向かって爺さと婆さがさかぶと、雲さ乗って天に帰るかごや姫が見えたと。
はあ、爺さも婆さも泣いた、泣いた、ふたりして、かごや姫の名を呼ばっては泣くばかり。
そのうち、暮らしていかねばなんねし、爺さは泣く泣く山さ竹かりに行ったと。
するとまた、キンカラキンカラ光る竹あったもの、爺さがそれをかって家さもどり、
婆さとふたりで割ってみたれば、なんと、竹の中から尽きぬ宝もんがザコザコとこぼれてきたと。
米だの、にしきだの、金の銭に餅など、あとからあとから出てきて、
それでふたりは末長く、楽々と暮らしたんだと。
東北地方・昔話 再話/瀬川 拓男 発行/角川書店・昭和48年 初版
原文は縦書きです。このブログ用に多少、行変えなどをさせていただいております。
私たちが知っている 『かぐや姫』 の 元のお話なのでしょうか、
あらすじも 言葉の運びも シンプルでいいな~と思います。
これの元になったお話、さらに その元のお話など
さまざまに 語り継がれてきたのでしょうね。
【お話、お話】
『世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ』 を 語りで
【四季の花 便り】
『四季の花』 便り NO2 2011年夏号
このブログのカテゴリーの中から、【四季の花 便り】 を
変更して 【お話、お話】 として これから 少しずつ
載せていってみたいと思っておりま~す
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