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「 マタニティーマークをつけてみたものの、気恥ずかしい 」というのが当初の実感。まだ妊娠三カ月でおなかはペタンコ、黙っていれば誰にも分からない。自ら「私は妊婦」とアピールをすることに抵抗があった。同じようにためらう妊婦は自分の周りにも少なくない。
だが自意識過剰とすぐに分かった。マークをつけていても周囲の反応が変わらなかったからだ。
三月、象徴的な出来事も起きた。つわりがピークのころ、取材帰りに東京メトロに乗り、少しでも座れたら...と空席を探した。若い女性が両脇に荷物を置いてゆったり座っている。その前に立ち「 荷物をどけてほしい 」と無言のリクエスト。女性の目線が私のマークにじっと留まるのが分かったが、その直後、女性は固く目を閉じた。
妊娠は病気ではない。「 妊婦だから常に座らせて 」と甘えるつもりはないが、具合の悪いときは長時間立っていると苦しくなる。安定期以降は不調のときだけマークをつけ、優先席に座ったときは、マークを目立たせて"事情説明"に使った。
結局おなかが目立ってくるまでの半年間で「効果があった」のは二回。スーツ姿の若い男性と若い女性がマークに気づいて座席を譲ってくれた。一方、マークに気づいたものの座ったままもじもじ困惑する男性もいた。残念ながら広く認知されているとは実感できなかった。マークの意味が分かっていても、対応に困る人もいるようだ。

マタニティーマークは一九九九年にフリーライターの村松純子さんが「BABY in ME」を考案して以来、民間団体や自治体が作成・普及を進め、国もこれらに追随する形で二〇〇六年に新たなマークを制定した。特に、外見では妊婦と判別しにくい上に、体調を崩しがちな妊娠初期に身に着けることで、配慮を得やすくするのが狙いだ。
厚生労働省の調査では〇七年度、妊婦にマークつきのグッズ(バッジやキーホルダーなど)を配布した自治体は五百九市町村(全国の28%)。母子手帳の交付時や両親学級などで配っており、〇六年度の百九十九市町村から二・五倍に増えている。
〇四年からマーク入りストラップを販売するNPO法人「チャイルド&ファミリー・フレンドリー・コンソーシアム」の岡本喜代子理事長は「妊婦やその周辺には存在が知られるようになった」としたうえで「社会全体が認知し、実際に配慮した行動をとってもらうのが今後の課題」と指摘する。同法人に寄せられる利用者の反響も「役に立った」より、「マークが知られていない」「効果がない」といった不満の内容の方が多いという。
どうすればマークがもっと機能するのか。国はポスターを通じた啓発を進めているが、岡本理事長は「長い目で見れば学校教育が有効」と話す。健康な妊婦でも、妊娠初期は吐き気などのつわりに苦しみ、安定期は電車などで長時間立っていると、下腹部が張って痛むこともある。そんな症状を知らない人も多い。村松さんも「妊婦の体調にどんな変化が起こるのかを知識として伝えることが大切」と訴える。
「 マークは気遣いを形にするきっかけ。マナーとして強要するのではなく、妊娠について知ることで対応方法は自然と考えられるようになる 」
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