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先週の木曜日深夜、母の見守り隊1号と2号が、東京で残業を終えて、私達の東海道五十三次の旅の間留守番をするため我が家に帰って来た。
「今度はどこまで行く予定?」と聞かれた。
「4日間ぶっ通しで歩いたことが無いからわから無いけれど、行かれたら大津まで。そうしたら、後は逢坂山を越えて山科を抜ければ終着の京都だよ。最後を残しておくから、最後は家族みんなでやろうよ」と言うと、次女は、
「出来るだけ歩いて来てよ。最後は少しだけ歩けばいいように。たくさん残さないように」と言う。
長女は「じゃあ、ホテルはウェスティン都ホテルがいいかな。私は三条大橋で、完歩おめでとうの横断幕持って待ってるよ」と言うじゃないか。
まあ勝手なことを言ってはいるが、協力してくれ、応援してくれるのはありがたい。
そして先週金曜日4時起きして家を出て、名古屋までの新幹線に乗った。
東海道五十三次最終章の一歩手前、4日間の旅への出発で有った。
まずは新幹線の中で戦いの前の腹ごしらえ。
新幹線は名古屋で降りた。近鉄特急で四日市まで行き、内部線に乗り換えて終点内部まで。そこが前回の旅の終点、今回の旅の始点。
内部から少し行くとすぐに旧街道は細くなり急な坂道になる。
杖衝坂
坂は登ってすぐ緩やかな下りになる。そんなにたいした坂ではないけれどこの坂、ずいぶんとオーバーな謂れがいっぱい伝えられている。日本武尊が剣を杖代わりにしたとか、急坂の為松尾芭蕉が落馬したとか。
そしてこの日一番最初の宿場の石薬師寺であるが、ちっとも着かない。おかしい。先人の地図ではすぐに国道1号線から旧道に分れるはずなのだが、いつまでたっても国道を歩いている。分かれ道も見つからなかった。
しかし、こういったことはすでに何回も経験しているので、犬の鼻じゃあないけれど嗅覚がものを言う、旅人の第六感が者を言う。
途中からながら国道を離れて旧道を見つけ出し、石薬師寺の宿場へ。
そして石薬師寺。
裏門から入って表門に抜ける。
この頃から天気予報通り、早くも雨が少し降り始めて来た。
石薬師寺の宿場を出るとそこは田んぼの真ん中。寂しいなあ。きっと昔と変わらないだろう風景。ここを夜通ることになったらこわいだろうなあ。
ボディーガード付きで良かったと、しみじみ思う。現代も山賊が出るんだねえ。
国道の下のトンネルを通過。時々こうやって現代に引き戻される。江戸時代から。新幹線の下をくぐったり、高速道路の橋げたの下を通ったり、国道で分断された旧道を信号を求めて大回りしたり。
しばらくは国道一号線を歩く。横を車がびゅうんびゅうん通っていく。雨も降っているけれど横を通るトラックの興す風で傘を支えるのがやっとだ。
うんざりした頃、国道から離れて、旧道に入るとそこはもう庄野の宿。長女が持って行けと言ってくれたマフィンを雨宿りしながらお寺の軒下を借りて食べた。
美味しかった、ありがとう。
ここは広重の浮世絵でかの有名な庄野。浮世絵もまた雨の中。
国道を走るトラックからの風と雨を避けるための姿勢はまったくこの中の絵の人物と同じ。違うのはデジカメのバッテリー切れを気にする現代人がいるだけ。
おかしいなフル充電して来たのに。
庄野宿はほかと同じで過去の世界に取り残された昔が残っている静かな宿場だった。宿場資料館に入り、保存されている大きな高札やら古いものを見せてもらう。古い建物はかび臭い。喉の弱い私は咳がひっきりなしに出るけれど、階段ダンスやそこにさりげなく活けられた椿や白梅が気になった。
雨は少しずつ強くなる。
旧街道を歩いていて困るのは、ほとんどレストランを見つけることが出来ないことだ。仕方が無いから、近くを平行しているであろう国道一号線が近づいた地点で、一度国道に出て、レストランやトイレのあるコンビニを探して、そしてまた旧道に戻るのである。
絶対に後戻りしない夫が一緒だから、その区間は少しだけ旧東海道はパスするのであった、 いつも。
亀山の宿に入った頃、雨は本降り。スラックスの足元が濡れて重くなって来た。トイレにも行きたい。そうこうしているうちに痛恨のミス。
地図を読み違えて、まったく違う方向に進んでしまったのだ。ショッピングモールがあるところで、ビデオやさんのトイレを借り、カメラのバッテリーを買った。地図を示してその辺のおばあさんに道を聞くが要領を得ない。若い人に改めて聞くと、「全然違いますよ」と言われた。20分のロスタイム。
役所のロビーを借りて夫に借りて来たゴルフ用の雨ズボンをスラックスの上から履く。夫も持って来たが痩せ我慢して履かない。ついでにレインコートをリュックに掛ける。夫はこれもやせ我慢して掛けない。これが後で運命の分かれ目になるのだった。
そしてさっき下ってしまった亀山城下町の丘をまた登る。まあ、いいさ、旧道にはトイレのある店もないし、カメラのバッテリーを売っている店も無いから。この迷い道、ラッキーだと思おう。