カイバーマンのお仕事2

カイバーマンのお仕事2

2009年04月06日
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「ごめん、グラハム。僕はやっぱり彼女が好きだよ」

女性のせいで友情が壊れるとは、我ながら情けない。

平日だからか、軍用墓地に参拝客は私しかいなかった。
風は温かく、もう届かない空は、目にしみるほど青い。
今一度、何とかして飛べないものかと思うが、心は既に地の底に埋められているような錯覚に陥っている。
……否、錯覚だと思えるまでに5年もかかったのだ。
この身はまだ地上にある。
地上にあってただ、何処にも行けぬ己が素性を哀れんでいる。
「私も、腹を召すべきだったのだろうか……」


澄んだ声が、私は現実に引き戻した。

全く気配を感じさせず、私の後ろに立ったのは、眩いほどに美しい女性だった。
漆黒の髪を棚引かせ、瞳に覇気を輝かせ、白いドレスを身に纏い手には黄色い花の花束を重たげなほど抱えている。
私の目には、羽を隠した天使に映った。
もし片桐との喧嘩を引き摺っていなければ、迷わず跪いて愛を乞うていただろう。
一瞬不可視の槍に五体を串刺されたような気がしたが、私はなんとか言葉を搾り出した。
「フラッグファイターの関係者ですか?」
「面識はありません。でも、一度来てみたかったものですから……」
当然のように花束を手渡され、私は不躾な真似をしないよう気をつけてそれを受け取った。
「感謝します」
私の素性を知っているということだろうか、と思いながらも名乗る。

美しい人は少しだけ考えて、こう答えた。
「……エクシアとお呼びください」
それが本名であれ偽名であれ、まことに美しく彼女に似つかわしい名だったので、私は非常に満足した。





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最終更新日  2009年04月07日 18時53分46秒
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