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美術記者の都久井は、西洋美術の権威、遠屋が鑑定したにもかかわらず贋作の疑いがあることに興味を持ち、調べ始めます。
誰が贋作を描いたのか?真作と同じ紙の入手先は?ほかにも贋作が存在するのでは?

松本清張の、美術作品をめぐるミステリーです。意外な展開を持つ素晴らしいミステリーというだけでなく、権威主義の画壇という背景もきっちり書かれた社会の在り方を問う作品でもあります。
遠屋は、放漫な画家にも、追随するだけの画壇にも皮肉な結末を用意していました。
画壇に限らず、至る所で派閥、権威主義は存在します。
大家と言われる人に連なり諂う人々がいて、大勢から外れると徹底して活動が阻害されることは、芸術以外の分野でも耳にします。
過去のことでもありません。
美術に関する知識の深さも、作品の内容をより厚くしています。現代の推理小説では太刀打ちできない厚みを感じます。
清張はノンフィクションや作家の評伝も手がけています。いずれも綿密な取材・研究に裏付けられた作品です。
ファン・ダイクはアンソニー・ヴァン・ダイク。バロック期のフランドル出身の画家で、師はルーベンス。イングランドで厚遇を受け大きな成功を収めました。
大量の肖像画の注文を持ち込まれたため、工房を設けて一部は弟子が分担して描いたようです。(このやり方はヴァン・ダイクだけではありませんでした)贋作も多く現れましたが、真作には勢いが及ばず、淘汰されてきました。
参照元:松本清張『美の虚像』初出:S57年『憎悪の依頼』新潮文庫
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