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イランの映画、シンプルアクシデントを観ました。カンヌ国際映画祭の最高賞であるパルムドールを受賞した作品です。かつて、不当な理由で投獄されたワヒドは、そのときにであった残忍な看守と、ある事故をきっかけに思いがけない形で出会います。しかし、当時は目隠しされていたために姿を見たことはなく、手がかりはその看守が義足だったことでした。ほんとうにその看守だったのか、物語はその謎をめぐって動き始めます。分野でいえばミステリーなのでしょうが、そのバックグラウンドは「憎しみ」と「赦し」という深いテーマがあります。それは人と人との関係だけでなく、国と国との関係にもあてはまるでしょう。イランは現在、アメリカとイスラエルの侵攻によって戦場となっています。イスラエルによるガザ侵攻、ロシアとウクライナの戦争ほかにも多くの地域で紛争が起きています。憎しみの連鎖はいつになれば止まるのでしょうか。そして、自身が当事者になったときに、その憎しみを止められるのでしょうか。映画の問いかけているテーマは重いです。なお、イランは今回の戦争以前に政治的に国民への弾圧が強い状態が続いていて、国民からの反発で政府が弱体化していたことも今回、攻め込まれた要因の一つとなっています。表現の自由に厳しい環境で、この作品を作ったこと自体がすごいです。
2026.05.18
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GWに入ったしサービスデイだったので、しばらくぶりに映画を観ました。「プラダを着た悪魔2」、ファッション雑誌の鬼編集長ミランダ(メリルストリープ)と、ファッションにほとんど気を遣わなかった新入りアンディ(アン・ハサウェイ)との緊張感ただよう掛け合いで大ヒットした映画の続編です。前作はなんと20年前なのですね。時代はすっかり変わりましたが、ミランダは相変わらずかっこいいです。アンディも20年のキャリアを積んで、洗練された女性になっています。内容にふれるとネタバレになるので控えますが、「かっこいい映画」という印象でした。私もふだんは適当な服を着ていますが、こうして映画の登場人物たちがそれぞれ洗練されたファッションをしているとちょっと反省します。仕事でも私生活でも、自身の気持ちや会う相手への気配りとか、ファッションはとても大切な意味を持っているのですね。私は、ミランダの片腕としてサポートするナイジェルがちょうど同じくらいの年代なのですが、さすがにファッション雑誌の要職についているので洗練されています。彼はあまり派手な姿はしないので、地味な私でも、ちょっと真似できそうです(ブランド品は無理だけど)。きっと女性たちはミランダやアンディなど、それぞれのファッションの隅々までもっと深く楽しめるのでしょう。もちろんファッションだけでなく、生き方のかっこよさも素敵な映画でした。
2026.05.02
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京都市南丹市での小学生殺害事件は、とても痛ましい結果となってしまいました。亡くなった子の感じた恐怖を思うと、ほんとうに辛くなります。なぜ殺されなければならなかったのか、事件を防ぐ手立てはなかったのか、それぞれきちんと検証されることを願います。一方で、この事件は発生当初から現在拘留されている義理の父親が、容疑者としてネットでも騒がれていました。本人は遺体遺棄や殺害を認める自供をしているようですが、現在も容疑者の段階なので本件についてはこれ以上掘り下げないこととします。一方、今回の件で思い出されるのが、2019年に山梨県のキャンプ場で行方不明となり、亡くなった小倉美咲さんの事件のことです。行方不明になったわが子のことを思ってさまざまな活動をしていた母親のとも子さんに対して、ネットで犯人扱いするような激しい中傷があったのです。この記事に、そのときに特にひどい中傷をしていた男性に対して訴訟を行い、男性の死亡後もその遺族に対して継続していることが報じられていました。もちろん中傷されていたような事実はありませんでした。当時を思い出すと、ニュースのコメント欄には、その男性以外にも多くの中傷が書かれていました。人は、理解できないことや謎に対して、わかりやすい説明を求めがちです。すると、誰かが流したデマに共感して、つい乗ってしまうのでしょう。一方で、被害者にとっては、苦しみをさらに深めることにつながります。ネットに流れているのが正しい情報かどうかを常にチェックしながら、それをリツイートしたり、「いいね」をするときにはさらに冷静に慎重にしなければなりません。
2026.04.19
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写真(禁転載です)は昨年(2025年)秋に上野動物園を訪れたときに撮影したもの。返還は決まっていたものの、まだこのころは空いていました。パンダのすごい世界という映画を観てきました。パンダと言えば今年(2026年)1月に上野動物園にいた2頭が中国に返還されたのを最後に日本からいなくなりました。もともと返還する条件であったこと、ワシントン条約の規制上、貸与(主に繁殖目的のブリーディングローン)しか認められないことをふまえると中国にすれば当然と主張するでしょう。しかし、日本以外の各国についても同様で、一部の国を除くと新たに貸与するなどの配慮もしていないようです。中国にとってパンダは長らく外交上の重要なカードでした。専門家の話をまとめたjiji.comの記事に詳しく記載があります。では、中国は現在、どのような思惑でパンダをとらえているのでしょうか。ここからは推測になりますが、自国にとって外交も含めた政策上、まずます重要なカードとなっていると強く認識しているのではないでしょうか。一つは、香港、台湾との関係です。つまりこれらも含めて「一つの中国」と強く主張しているので、「他の国にいないパンダがいる=それは中国である」という根拠になるわけです。もう一つの要素は中国でも他国でも技術が進み、人工繁殖の成功率が上がっていることです。野生復帰も進みつつあり、レッドリストでも絶滅危惧のランクは下がりました。このまま各国で繁殖が進むと、パンダが珍しくない存在になり、外交カードとしての価値が下がってしまうのです。確証があるわけではないですが、これらをふまえると日本で再びパンダの見られる日は遠い気がします。【以下、ネタバレに近いコメントがあります】さて、映画の中身ですが、四川省の飼育施設、野生復帰施設でのパンダの様子を飼育員とのふれあいとともにまとめたものです。純粋にパンダ好きの方にはたまらない映像が満載でした。私もパンダは好きですし興味深い行動も多くありましたが、どうしても上記の思惑がすけてみえます。おそらく現在、各国から中国にパンダを返還させる背景を宣伝する目的、つまりプロパガンダを意識した映画でしょう。素直に楽しみたい方に申し訳ないコメントなので、【ネタバレ】としました。
2026.04.10
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日頃、20代の若者たちとよく接しているので、その影響で最近のアニメを観るようになりました。自身をふりかえると一番よくアニメを観ていたのは小学校から大学時代だと思いますが、それ以来のマイブームです。その間で大きく変わったのは技術の向上と物語の複雑さでしょう。技術は言うまでもなく、ほとんど手作業で原画を作っていた時代から作画には大きな進歩がありました。そして映像が我々の目の前に現れるプロセスがそれぞれ発達しているので、精細さも動きのなめらかさも違います。残念ながら私の能力は衰退しているのでそれらを存分に味わえていないのですが、とくに映画館で観るととても細かいところまで配慮されているのに気づきます。もうひとつの物語の複雑さは一長一短ですね。かつてのように善と悪というとても単純な構造から、キャラクターそれぞれが多様な個性をもち、そして関係性も複雑です。呪術廻戦では、虎杖悠仁と乙骨優太という2人それぞれが主役となる物語がバックボーンですが、彼らをとりまく人々や呪霊が実に多様な個性で、生と死との境界も曖昧だし、使う能力もさまざまです。渋谷事変という大きな物語の転換点があるのですが、その先、死滅回游編はさらに混沌としています。残念ながら、私は死滅回游の途中でルールもわけがわからなくなり、脱落しつつあります。若者たちはどの程度理解してみているのか、今度聴いてみたいと思います。一方、最近気に入っているのは「葬送のフリーレン」です。エルフという長寿命の人種に生まれたフリーレンという魔法使いが魔物退治をしながら長い旅をする物語です。冒頭から面白いのは、この話が過去に魔物のトップである魔王を討伐した事実からスタートしていることです。物語が終わってしまうゴールのはずですが、旅は続いてゆきます。数百歳という年齢のフリーレンが過去の討伐時代を思い出しながら、100歳くらいが限界の人間と関わってゆくという設定が実に巧みです。これら2作品だけでなく、多くの日本のアニメ作品が世界的に評価されています。日本語でそれを楽しめる恵まれた環境をもっと楽しみたいと思います。
2026.04.03
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楽しみにしていたWBCの中継がNetflixの独占となってしまい、渋々ふたたび契約しました。しかしながら、日本は予選突破したところで敗退してしまいました。Netflixの契約は1か月で切るにしても、もったいないので良さそうな作品を吟味しました。そういえば韓国のシリーズもので話題になった「イカゲーム」があったと思い、観始めました。【以下、ネタバレあります】ギャンブルや横領や事業失敗などで金銭的に身動きの取れなくなった参加者たちが謎の島に集められ、命がけのゲームに参加することになります。参加者が死んでゆくたびに賞金額はどんどんあがってゆきますが、ゲームはますます悲惨なものに…。ゲームの素材は韓国民にとって子供のころにしたなじみ深いもののようです。中には「だるまさんが転んだ」やコマ回しのように日本と共通のものもありました。しかし、まったく微笑ましいものではなく、とにかく殺伐としたストーリーです。これが世界的な人気となって、しかも私もそれを喜んで視聴しているということは、私たち自身の残酷さを見つめなおしているということなのですね。契約期間はあと1週間くらい残っているので、最後はもう少し楽しいコンテンツを探したいと思います。
2026.03.28
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【※一部ネタバレがありますのでご注意ください】意図したわけではないのですが、家族をテーマにした2本の映画を観ました。まずレンタルファミリーは、来日したものの役者としての仕事がうまくいかずにいたアメリカ人俳優が、ひょんなことから実際の生活している家族の役割を演じるようになる話です。「レンタルファミリー」という会社では、客からの求めに応じて夫役、妻役、不倫相手役などさまざまな役割を演じるスタッフを派遣します。派遣された先では依頼者の思うようにならないことも多くあり…。主人公フィリップを演じたブレンダン・フレイザーはオスカーを受賞している俳優で、本作でも味わい深い演技が心に残りました。子役のゴーマンシャノン眞陽も良かったです。<以下、ネタバレあります>フィリップは、娘の名門中学受験を控えているシングルマザーから依頼を受け、女の子ミアの父親役をすることになります。母親は、面接でシングルだと不利になると考えたためです。ミアには父親の記憶がないため、フィリップは実際に父親のフリをして面接までミアに頻繁に会うようになりました。始めは警戒していたミアは、徐々に実の父親として絆を深めてゆきます。映画では、このミアの物語以外にもいくつかのレンタルファミリーの話があり、特に柄本明が演じる老いた有名俳優との関係はもう一つの大きなテーマでした。しかし、私にはミアとフィリップとの関係のほうがずっと胸に響きました。テレビドラマのように長期的なスパンならまた違ったかもしれませんが、2時間程度の映画では描き方が駆け足になってしまうのです。ちょっと残念でした。もう一つの家族の映画はセンチメンタルバリューです。カンヌ映画祭のグランプリを受賞しています。作りこまれた脚本で、本編ストーリーと、それぞれの演じる作品との移り変わりが巧みでした。また、それぞれの俳優が細かい感情の機微をとても繊細に表現していて、引き込まれました。しかし、私自身がこの作品の主人公と似た境遇をもっており、どうしても当事者目線で父親を観てしまいます。映画で展開されるストーリーと自身の感情との微妙なズレが最後まで離れず、この映画の魅力を十分には味わえませんでした。しかし、それは個人的な問題に起因するので、ほとんどの方にとってはカンヌグランプリにふさわしい素晴らしい作品であると思います。<以下、ネタバレあります>ノルウェーの首都オスロで俳優として活躍するノーラと妹アグネスの2人は、幼いころに両親が離婚し父親と離れて暮らしていました。アグネスは夫と子がいて幸せな家庭を築いたものの、ノーラは孤独を感じながら生きてきました。そんな折、長らく音信普通だった父親と再会するようになります。この父親は映画監督として成功していて、仕事に生きがいを感じている人物です。新しい作品でノーラを主演とさせようとしますが、ノーラには母と自分たち姉妹を捨てたことへのわだかまりがあり、父との感情が衝突してゆきます。
2026.03.08
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以前からイスラエルがパレスチナで続けてきた虐殺に怒りを覚えていました。アメリカもトランプが大統領に復帰してからというもの、大学の自治に不当に介入し、無情な移民政策を行い、ベネズエラ大統領を拉致し、グリーンランドを強引に奪おうとし、地球温暖化対策は無視し、各国は関税で強引に脅し…とほんとうに悲惨な状況をつくってきました。そして、今回のイラン侵攻です。トランプ大統領はイランをテロ国家と呼んでいますが、むしろ今はアメリカとイスラエルのほうがテロ国家です。ベネズエラにしてもイランにしても、それぞれ政治的に国民を弾圧していた面はありました。しかし、今回はいずれも強引な理屈で他国に介入してしまったのです。これでは他の国、たとえば中国やロシア、北朝鮮が同じことをしても文句がいえません。アメリカには、軍事力を行使しなくても、他国と連携した外交努力を続けて事態を改善する道がありました。さらに今の日本政府の方針は、ただただアメリカの後ろに隠れてうろたえているだけです。イラン側だけに自制を求めるのではなく、アメリカ・イスラエルに対しても外交的努力での解決を進言することくらいはしてほしいものです。3/31追記:トランプもネタニヤフもそれぞれほんとうに困ったリーダーたちです。高市総理によるトランプ大統領との首脳会談は成功だったと多くのメディアが流していますが、ほんとうにそうでしょうか。むしろ毅然とした態度でアメリカを突き放したヨーロッパやカナダの首脳たちのスタンスが正しかったと私は思います。ネタニヤフはアメリカのコントロールも効かないほどイランの体制転換に執着しています。この戦争の長期化は避けられないでしょう。まずはトランプができるだけ早くアメリカの大統領の座を去ることが正常化への第一歩だと思います。
2026.03.06
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河瀨直美は日本を代表する映画監督で、カンヌ映画祭では、新人作家のときに「萌の朱雀」でカメラドール賞、その後「殯の森」でグランプリを受賞しています。本作は、小児医療センターで働く主人公コリーのまわりで進む出来事から「生きる」ことと「時間」の意味を問う内容になっています。主役がフランス人であるのは、日本人の多くが共有する生命観を際立たせるためでしょう。心臓移植をめぐっては、とくに生命に対するセンシティブな問題が常に存在しています。また、コリーは屋久島で1人のカメラマン男性と知り合いました。男性との生活からも、「生と時間」の意味が描かれてゆきます。さらに屋久島の厳しさと優しさを秘めた自然の風景からも、時とともに激しく移り変わる生のダイナミクスが強く感じられます。これらが複層的にからみあい、圧倒されました。本作は、河瀨直美の傑作のひとつになったと思います。<<以下ネタバレがあります!>>主役のフランス人女性コリーは、日本に魅了されて神戸の小児医療センターで働きながら臓器移植の普及に取り組んでいます。日本で臓器移植があまり進展していないことを問題と考え、病院内での研修を進めていますが、同僚たちの反応は芳しくありません。提供者が現れないまま死を迎えてしまう子供たち、長期にわたって待機を強いられる子と家族…そんなとき、ある男の子にドナーが現れ、心臓移植が行われることになりました。ドナー家族の葛藤と同時に、秒単位で運ばれてゆく心臓、それを待つレシピエントと医療スタッフ、命をめぐる感情と時間との矛盾が渦巻きます。屋久島で出会ったカメラマン男性との恋は、コリーにとってもう一つの「命と時間」の物語です。この男性は根無し草で自由気ままに生きていて、常に時間に追われているコリーとは対照的な存在です。やがて、2人の間には亀裂が生まれ、男性はふらりと姿を消してしまいます。彼は身内からも距離を置いていたため、行方はつかめませんでした。男性にふたたび巡り合いたいと願うコリーにとって、「死」が訪れてしまったわけです。「生きる」こととはどういうことなのか、日々の生活で常に追われている「時間」とは何なのか、その2つのテーマを深く考えさせられる作品でした。
2026.02.17
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話題になっていた映画「落下の王国」を観てきました。2006年の作品が4Kデジタルリマスター版として上映され、徐々に口コミで広まってあちこちで上映されるようになったのだそうです。世界遺産13か所を含む各地の風景を取り入れた「映像美」というのが売りでした。amazonプライムとか、オンライン配信なども見当たらなかったので上映しているうちに…と観に行ったのです。しかし、睡眠不足のまま行ったところ、前半でかなりウトウトしてしまいました。そんな中途半端な状態だったのですが、映像美が素晴らしいだけでなく、ストーリーもとても良かったです。5歳の女の子(カティンカ・アンタルー)が主人公なのですが、この子の表情やしぐさが豊かでかわいらしく、物語に引き込まれます。そうなるとウトウトした前半がもったいなく、もう1度観たい…けど、これからも配信があるかわからない…というわけで、もう1回劇場に足を運びました。今度はちゃんと起きて観てみたところ、やはり前半はとても重要でしたし、ところどころで見逃してはならない仕掛けもありました。ネタバレを避けるためにあまり詳しく書きませんが、ダーウィンとウォーレスが登場したのには笑いました。ウォーレスはダーウィンと同時代に独自に進化論にたどりついていた人物です。純粋なウォーレスが進化論のことでダーウィンに手紙を書き、焦ったダーウィンが慌てて進化論を発表した経緯があります。そのことを知っていて観ると面白いです。また、カティンカ・アンタルーはこの作品のあとは映画に出演していないのですが、イギリスの大学で演劇を学んでいるのだそうです。また演じたい気もあるそうなので、いつか映画に登場する姿を再び観られたいいですね。(追記)口コミで低評価をしている方のコメントに、ロイによって展開される物語が「チープ」というのがありました。「そりゃそうだ…。」監督が聴いたら爆笑するのではないでしょうか。
2026.02.11
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リチャード・ドーキンスの「遺伝子は不滅である」を読みました。昨年秋から読み始めていましたが、仕事が多忙で読み終えるのに時間がかかってしまいました。ドーキンスはイギリスの著名な進化生物学者です。ドーキンスは私が高校時代に「生物=生存機械論(のちに「利己的な遺伝子」と改題」という本で有名になりました。当時、京大の日高敏隆もわかりやすい解説書を出していて、それらが私の進路に大きな影響を与えました。そんなわけで、こちらもそれなりの知識を持って再びドーキンスの著書と出会えたことは感慨深いです。解説にも触れられていますが、ドーキンスは生物に詳しくない一般読者を想定してわかりやすい用語を使います。読み物としては良いのですが、厳密に内容を理解しようとするとそれを専門用語に置き換える必要があり、少し苦労しました。しかし、本書全体を通じるテーマは明確であり、著者の生物観に、これまでの遺伝学的知見を随所に取り入れた興味深い内容になっています。本書の内容を下記の4点と注にまとめてみました。個別にはもっと多くの面白い事例や議論がありましたが、要点はこんな感じです。1)動物の遺伝子には、自然選択(=自然淘汰)などによって変化し、祖先から後世に伝えられてきた情報が上書きされながら残されてきた(※注1)。2)動物は進化プロセスを経て完全に近づいてゆき、その変化は外観だけでなく内部にまで浸透している(※注2)3)遺伝子は能動的原因であり、生物体を”利用”している。物理的なDNA自体は一時的な存在かもしれないが、その配列に記された情報は潜在的に永遠である(※注3)。4)遺伝子の位置づけは時間的・空間的に広がりを持つ(※注4)注1:DNAの塩基配列にはタンパク質をコードしていないイントロンという部分が大量に存在しています。かつてはゴミ箱と言われていたそれらのDNA配列にも重要な部分があると見直されてきていますが、機能しなくなった(意味を失った)過去の配列もやはり多く残されていると思われます。逆に現在機能している遺伝子は、塩基配列を上書きして情報をアップデートしているようなイメージになるということですね。注2:ドーキンスはダーウィニスト(ダーウィン主義者)なので、適応の影響を強く意識しています。一方で木村資生の提唱した中立進化説からは、有利でも有害でもない中立的な遺伝子が偶然の作用で変化するプロセスも大きく作用したことが示唆されています。適応以外の影響もきちんと配慮する必要があるでしょう。注3:本書の中心的な部分で、ドーキンスの長年の信念といってもよいでしょう。批判的な見解「遺伝子は(個体の生存などに)用いられるものであり、能動的な原因ではない」に対し、たいへん強い反論を述べています。私は、この論争は「能動的」という言葉の使い方の違いに起因するものと感じました。たとえばAさんが足を伸ばそうとするとき、筋肉とか血液とかそれぞれのタンパク質をコードする遺伝子はAさんに利用されたことになります。一方で、淘汰されてきた遺伝子によってAさんの筋肉を伸ばす行動が規定されるという意味では、遺伝子が能動的という言い方もできます。つまり、この論争を続けても不毛と思います。注4:このような書き方をしていませんが、意味はそういうことです。たとえば、保護色はその個体がいた環境により、体色に関する遺伝子が自然選択の作用を受けてきた歴史を反映しています。また、個体が過去の記憶をもつことによって何かを避けたり、好んだりすることも遺伝子に反映されます。このような遺伝子のもつ空間的・時間的延長についての視点は面白いですね。上記注3にもあるとおり、ドーキンスの主張が誤っているということではないですが、ダーウィニストの立場が強く反映されすぎているように思います。腸内細菌に代表されるマイクロバイオームの役割とか、核ゲノムの遺伝情報そのものだけでなくDNAに施された修飾(エピジェネティクス)とか、非コードRNAなど多様なシステムがわかってきました。本書でもそれらについても触れているものの、遺伝や進化の概念をもう少し柔軟にとらえる必要があると感じました。
2026.02.08
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高市総理大臣が「自分の人気のあるうちに…」と通常国会の冒頭から解散してしまい、真冬に突然の選挙ととんでもない状況になっています。そして、立憲と公民もいきなり新党を作りましたが、イメージもネーミングもパッとしません。日本人はとてもイメージに流されやすい国民なので、残念ながら先行きは暗いですが、とにかく選挙には行きたいと思います。経済学者の中原圭介氏が、経済対策の面から今の日本のおかれている状況をわかりやすい記事で紹介されていました。アベノミクスによる大規模金融緩和によって、目先の株価上昇と裏腹に、多くの国民の実質賃金や日本の一人当たりGDPは大幅に落ち込んでしまったのです。2000年に世界2位だった一人当たりGDPのランキングは、円安の影響もありますがいまや40位です。消費税減税をすればさらに財政状況が悪化するかもしれません。投票では選挙後まで見据えて各政党の公約を比較し、判断したいとおもいます。2/8追記:まだ開票スタート直後ですが、すでに結果が見えてきています。やはり自民党圧勝で単独過半数の勢い、中道は大幅減です。これでまた日本の状況は一層悪くなります。「責任ある積極財政」…ということは、これまでは「無責任な積極財政」だったということです。それは上記のとおり正しく、安倍政権に代表される無責任な金融緩和政策によって、結果的に日本経済は株価が上がっているのに庶民の生活はひどく厳しくなってしまいました。このあとの「責任ある積極財政」でどう責任をとるのか?アベノミクスと同じことを繰り返すだけだと思います。さらに、「国論を二分する政策を実行する」といいながら、選挙前には具体的に何をするのか明かしませんでした。端的に言えば右傾化でしょう。こうして戦争をする土壌が出来上がってゆきます。ほんとうに危うい状況です。
2026.01.31
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世界的に株価の上昇基調が続いています。昨年、一度暴落がありましたが、それが過去の記憶のように上昇してきました。私は昨年の暴落後に、少しだけ株を買い積立投信をしていましたが、昨日の時点で長期投資銘柄を少しだけ残して株は売り、積み立て投信はこれまでの積み立て分を売りました。マイナス分を除いてもこの1年でノートパソコンが1台買える程度のプラスになったので、とりあえず満足です。売った理由は、近いうちに大幅な下落があるのではないかと感じてきたためです。現在がバブルかどうかはわかりませんが、リスクが上がっているのは間違いなく、いったん利確しておくのは悪くない選択と思いました。あとになって「あのとき売らなければ」と思うことも多々ありますが、大損しなければよいのです。大儲けしなくても、また次のよいタイミングを待って買うという繰り返しで少しずつプラスを積み重ねてゆきます。今年の残りの戦略は、そのうち大幅調整のタイミングがあるはずなので、下げすぎと思えば株を買い、それ以外はドルコスト法で当面は積立投信をコツコツしてゆこうと思います。次回の調整が起きたとしても、それが一時的なものなのか、リーマンショックの時のようにそのままずるずると何年か下がったままなのか、現在の日経平均やNYダウが高値圏にあるので見極めが難しいと思われます。
2026.01.15
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あけましておめでとうございます。昨年は個人的にはとても多忙でしたが充実していました。そして、大晦日には紅白歌合戦を楽しみました。Youtubeやネット配信の映画など、いろいろとコンテンツの増えた現在ですが、やはりこの番組と「ゆく年くる年」をみないと1年が終わった気がしません。神7メンバーのほとんどが入ったAKBメドレー、ダンダダンやチェンソーマンの映像も流れた革命道中やIRIS OUTなど素晴らしい音楽を楽しめました。しかし、今回の紅白は曲の間のつなぎがうまく行っていませんでした。秒単位で進行する番組編成の制限と司会4名のつなぎとが噛み合っていなかったためでしょう。内村光良や大泉洋、橋本環奈といったこの何年かのメンバーは、進行がとてもうまかったのを実感します。しかし、私は今回の進行を批判するよりも、それがどうしたらうまくできるかに関心があります。人前で話をしたり、会話をしたりするときに、うまくいかないことが多いからです。大泉洋が司会をしている動画(過去の紅白動画は観られませんでしたので、映画祭の司会とか)や、千原ジュニア、カズレーザーなどがトーク・会話について語っている動画を観てみました。大泉洋はしゃべりの量が多い印象でしたが、その一方で相手の話のツボをうまく取り入れて話をしていますね。話すだけでなく、よく話を聴いているのだとおもいます。千原ジュニアは「相手の頭の中に自分と同じ映像が浮かぶように話す」ことが重要だと話していました。これはM1グランプリの決勝で審査員をしていたナイツの塙も同じことを言っていました。もちろん、素人がそんな話し方をすぐできるようになるわけではないでしょうが、相手の立場でそれを考えて話をすることは大事かもしれません。カズレーザーは、「哲学や政治とか難しい話をしてくる相手と会話が続かない」という悩みの相談に、「それは相手に会話力がない」ときっぱり言っていました。つまり、会話はキャッチボールなので、相手が捕れないボールを投げてくる側に問題があるということです。そのような相手と話をするなら、「取りやすいボールを投げてもらう」つまり「わかりやすい言葉で話をしてもらう」ようお願いするくらいしかできないのでしょう。そんなわけで、新年は「わかりやすい話し方を心がけて、トーク力を磨く」ということを抱負にしたいと思います。
2026.01.01
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国立科学博物館で開催している「大絶滅展」を観てきました。生命が誕生してから現在までに起きた5回の大量絶滅「ビッグ5」を中心に、生物たちの変遷をたどる内容です。平日の昼間だし、恐竜展というわけでもないので空いているかと思いましたが、それなりに入っていました。上野のパンダで4時間待ち、13時受付終了というニュースがありましたが、その影響でしょうか!?さて、展示はビッグ5にあわせてそれぞれの時代ごとに絶滅前後を化石やレプリカで紹介しています。区画がきっちりと分かれていてわかりやすいのと、順路の配置もよく、スムーズに観覧できました。入口にあった地球のプロジェクションマッピングはとても美しく、大陸の移動をみるには最高のコンテンツでした。前半の展示は当然ながら無脊椎が中心なのでややマニアックでしたが、多様な三葉虫やアンモナイトの姿、アノマロカリスやエーギロカシスといった大型生物などそれなりに見どころがありました。後半は恐竜類に加えて単弓類のディメトロドン、ステラーカイギュウの骨格など、貴重な標本を堪能できました。
2025.12.16
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この数か月で日本の政治情勢は大きな変化を迎えました。私は残念ながら悪い方向に進んだと感じています。その大きな要因は高市内閣の誕生です。1年前には自民党議員が行っていた裏金問題が大きな話題となり、それが国民の怒りにつながって自民党の弱体化が進みました。旧安倍派などの議員が政治資金パーティを開き、政治資金収支報告書に記載しない還付金をキックバックしていたのです。その分の税金も納めていません。高市内閣になり、裏金に関与していた議員が次々と要職についてしまいました。政治とカネの問題を国民は忘れてしまったのでしょうか。防衛面でも大変危険な考え方をもっており、非核三原則の見直しを行おうとしています。「核を持たず、作らず、持ち込ませず」が三原則です。おそらくこの3つ目の「持ち込ませず」が核抑止力にマイナスと考えているのでしょう。被爆国として核廃絶をめざすことは想定していないようです。労働環境改善への取り組みもひどいです。労働時間の規制緩和を進めようとしているのです。「労働時間規制によって残業できずに副業を余儀なくされて苦しい思いをしている人がいる」と、無茶な例を出しながら規制緩和をめざしているのです。答弁では過労死を避けることが前提であると言い張っていますが、時間外労働やサービス残業が増えるに決まっています。労働者側の視点に立っていないのです。まだまだこの政権のヤバさがたくさんありますが、もっと恐ろしいのは国民の支持率が予想外に高いことです。参政党の躍進でも感じましたが、この国は政治に閉塞感を持っている人が多いようです。何となく高市内閣がこの状況を刷新してくれるのではないかと思っているのでしょう。残念ながら、このままでは国民はまた騙されるだけです。(11月23日追記)その後、台湾有事をめぐる高市首相の国会答弁をめぐり、中国との関係は非常に悪くなりました。今回の発言をめぐる中国の反応は明らかに過剰ですが、不用意な発言でそれを引き出してしまった責任は重いです。さらに本日はG20サミットに向かうというのにXで「外交交渉でマウント取れる服、無理をしてでも買わなくてはいかんかもなぁ(原文どおり)」というとんでもない投稿をしました。他国の首脳がどう感じるかを考えて投稿したのでしょうか。「外交」で重要なことは相手との信頼関係を築くことであり、それが難しい相手との場合は徹底して慎重にのぞむことです。一国の首相としての責任も重さもない投稿は間違いなく国益を損ねます。(2026年1月13日追記)さらに、年明けになって国会冒頭での解散意向が伝えられました。自身の高支持率を背景に、このまま自民党中心の安定した政権をつくりたいのでしょう。政治改革も統一教会との関係も結局いい加減にしてしまい、コメの値段も物価もあがったまま。円安傾向は続きます。財政出動をすれば短期的にはよいですが、それは目先だけでこの国の凋落傾向は続いていってしまいます。多少の救いは、目先に流されやすいヤフコメ欄の意見の大勢が、自民党政治に対する不信を維持していること。高市首相は、「台湾有事があれば参戦する」とまで言っているのです。特に若い世代の人は、選択を間違うと将来戦争に巻き込まれることまで念頭において投票に行きましょう。
2025.11.14
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自民党総裁選の結果、決選投票により高市氏が選出されました。まだ首相指名選挙はこれからなので、確定というわけではないですが、これまでの流れだとそのまま高市氏が首相になる可能性が高いでしょう。まず総裁選の前に、参院選での大敗を受けて自民党は解党的出直しということを掲げていました。もちろん今回の総裁選はその試金石だったはずです。しかしふたをあけてみれば、やはりというべきか今までの旧態然とした力の論理が渦巻いた選挙でした。各候補者の陣営は党員や議員票を得ようと、ルール違反をしたり、反発をまねきそうな政策を隠したり、直面している多くの課題や今後の日本の在り方を真剣に議論していたとはいいがたかったです。候補者の背後には、麻生・岸田・菅といった首相経験者がうごめき、さらに重鎮たちもきな臭い動きをしていました。さらに投票にあたっては、露骨に麻生氏が派閥の票動かし、高市氏への流れを作ったのです。この流れの一体どこが「解党的出直し」なのでしょうか。派閥の論理そのものです。正直なところ、5人の候補のだれも首相にふさわしいとはいいがたい選挙と感じていました。さらに安倍元首相の政策を継承するかのような高市氏が総裁になったことで、ますます将来が危うくなりました。安倍氏が大盤振る舞いした経済政策は、見せかけの好景気をつくりましたが、結局格差が広がった上に、円安を誘導してしまい実質賃金の低下を招いています。国の借金は増えましたので、その支払いはこれから何十年と続くことになっています。つまり大宴会をした後始末をするために、その借金を国民が払い続けるのです。もう一つ付け加えれば、福島第一原発事故の莫大な事故処理費用の一部も電気代に上乗せされて私たち国民が払い続けています(※注)。高市氏の総裁就任により、裏金議員たちはめでたく復活できるようです。こんな滅茶苦茶な政治がこれからも続くと思うと本当に頭が痛いです。(注)ちなみに東京電力社員の平均年収は860万円で、取締役や執行役員の報酬は2500万を超えています。電気料金の値上げに苦しんでいる国民はもっと怒ったほうがよいです。
2025.10.05
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スティーブ・ブルサッテ著の哺乳類の興隆史を読み終わりました。最近、恐竜に関するテレビ番組や展示会をよく見かけますが、哺乳類の歴史に着目したものはとても少ないように思います。たとえば人類の歴史とか、魚が陸にあがったときとか、断片的なものはありますが、本書は哺乳類がいかに誕生し、どのような変遷を経て現在に至ったのかを体系的にまとめています。書籍では哺乳類前史(エルサ パンチローリ著)というものがありますが、プルサッテのほうがより幅広い情報をもとに書かれている印象です。哺乳類の歴史をさかのぼってゆくと、爬虫類や鳥類につながる系統との分岐にはじまります。約3億年前のことで、頭蓋の特徴で名づけられている2つの系統(単弓類⇒哺乳類の祖先系統、双弓類⇒爬虫類と鳥類の祖先系統)に分かれたのです。初期の単弓類、たとえばディメトロドンは、今の哺乳類とはかけはなれた姿をしています。その後、恐竜が繁栄していた時代に、哺乳類の祖先も多様化しており、さまざまなグループが誕生したり絶滅したりしていました。大きな恐竜の陰で小さな哺乳類がチョロチョロしているイメージでしたが、その考えは本書で改められました。現生ではカモノハシやハリモグラの仲間(単孔類)、カンガルーやコアラの仲間(有袋類)と、それ以外の仲間(有胎盤類)とが残っています。しかし、ドコドン類や多臼歯類といった絶滅グループにもユニークな特徴があり、今その生きている姿を見られないのが残念です。恐竜の大量絶滅につながった約6600万年前の隕石衝突後、哺乳類は大型化と多様化の大きな変化をとげます。地上性の巨大なナマケモノや、ダーウィンがビーグル号探検時に発見していた南米の多様な有蹄類など、これらも現生哺乳類がさまざまな可能性のごく一部であったことを示しています。数万年前の氷河期にみられた巨大動物群、そして人類の多様化と移動と哺乳類の歴史は現在につながってゆきます。本書のもう一つの魅力は、それぞれの章の冒頭で化石などを発見するに至ったプロセスが描かれていることです。発見の核となった科学者や、現地でそのサポートをした人物にまつわるエピソードなど、小説を読むような面白さもありました。ただし、哺乳類の進化の歴史を概観しようとすると、逆にそれらのエピソードでたびたび話が途切れるので読みにくいと感じる方もいるかもしれません。なお、終章は「未来の哺乳類」と題して、とくに私たちがほかの哺乳類とどうかかわってゆくのかを問いかけています。すでにこの500年間で80種の哺乳類が絶滅しており、その原因はほとんどが人間によるそうです。哺乳類の長い歴史の一コマに過ぎないと達観するのか、哺乳類の壮大な歴史を経て進化してきた英知の代表として絶滅を減らすために奮闘するか、私たちは重大な岐路にいるといえるでしょう。
2025.09.27
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昨日に引き続き、レイトショーを観てきました。今回は「リンダリンダリンダ」で、2005年に公開された作品が4Kとなったものです。女子高生バンドによる粗削りなブルーハーツの曲、日本語もたどたどしいペ・ドゥナのボーカル、ほとんど高校生役しか出てこない若々しい視点…といろいろ印象に残った作品でした。個人的には、高校文化祭の華やかな一方で、全体的にけだるい時間の流れる雰囲気がよく表現されていると思いました。最初の公開のときに観て好きになった作品でしたが、それほど人気があるとは思っていませんでした。しかし、こうして再度上映されることからけっこうファンが多いのでしょうね。さて、20年ぶりに観て感じたのは、やはり高校時代に仲間たちと過ごすことの大切さと、若いということの貴重さでしょうか。そして、ブルーハーツがまさに青春とオーバーラップする世代としては、歌を聴くだけで元気をもらえます。「国宝」とか「遠い山なみの光」のような芸術的に洗練された作品とはまた違った良さのある映画です。いい時間を過ごせました。
2025.09.07
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【以下ネタバレが少しあります】カズオイシグロ原作の映画「遠い山なみの光」を公開初日に観ました。事前にネット検索していて、うっかりネタバレをふんでしまいかけました。ネタバレを絶対に避けるべき内容です。この欄でも注意深く書きますが、それでもネタバレしそうなので、楽しみにしている方はここでやめましょう。評価欄では賛否がわかれているようですが、私は今年話題の「国宝」よりもこの作品のほうが傑作だと思いました。俳優では、主演の広瀬すず、助演の二階堂ふみ、子役の鈴木碧桜が良かったです。二階堂ふみは以前から実力派という感じでしたが、広瀬すずは数年前に比べて格段にうまくなった気がします。さらに三浦友和とか柴田理恵といったベテランが要所を締めていて作品の完成度を高めています。吉田羊も重要な役柄ですが、英語の発音がもう一つでした。さて、本作の評価を二分している理由として、ストーリーのわかりにくさが挙げられると思います。長崎の原爆が大きなバックグラウンドになっていますが、その後の複数の時代をまたいで物語が進行し、さらに登場人物の記憶が揺れ動いているため、内容が混沌としているのです。TVドラマでは定番になっている「回収」も中途半端にしかしてくれません。モヤモヤ感をもった観客が批判的なコメントを寄せているのでしょう。私はむしろ、混沌としていることで、映画が終わったときにズシンと来る重みと深い悲しみを感じました。それぞれの時代の雰囲気を醸し出す色合いとファッション、物語の流れを静かに支える音楽、万人受けしない作品と思いますが、映画表現の深さと広さを堪能しました。
2025.09.07
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ここ数日、死について考えることが多かったです。まず11日に東京都写真美術館の被爆80年企画展ヒロシマ1945を観ました。高精細映像とかVRが当たり前になっている現在ですが、モノクロ写真を通じてその場で写真を撮った方の気持ちや、被爆された方々の苦しみが伝わってきました。しかし、私の受けた感情はほんのささいな動揺でしかありません。家に帰れば普通に食事をとり、インターネット動画を観て笑うことができます。80年前の出来事は、そのときに10歳ならもう90歳ということで、もう当事者から伝えてもらう時間は限られています。もっともっと、当事者から話を聴いて、私たちは直接に体験の重さを感じる必要があると思いました。続いて昨日は知床半島の羅臼岳でヒグマの人身事故が起きました。2名の登山者パーティのうち遅れて歩いていた1人が襲われ、もう1人が助けられないまま引きずられて行ってしまったという悲惨な内容でした。その後遺体で発見された被害者の状況から、捕食目的であったと思われます。パーティがどれだけのクマ対策をしていたかはわかりませんが、少なくとも捕食目的であった場合は通常の声出しなどでは対処できなかった可能性が高いです。そう考えると、誰が襲われても不思議ではない状況だったわけで、とても他人事に思えません。何か、クマの行動が変わるきっかけがあったのか、とても気になっています。今日は終戦記念日で、NHKスペシャル「新・ドキュメント太平洋戦争 1945 終戦」を観ました。普通に暮らしていた人々がつづった日記から、それぞれの生活の中で終戦間際に起きていたことや感情の変化を描いた内容です。終戦を歴史的な出来事としてみるよりも、むしろなすすべもなく近親者や住居を失っていった当事者の感覚が伝わってきました。権力が民衆をあざむき、民衆に無理な要求をする姿を私たちはしっかりと記憶しておく必要があるでしょう。
2025.08.15
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ei最近観に行った映画の感想です。いずれもエンターテインメントをあまり意識していない作品ですが、東京ではそういう映画も比較的簡単に観られるのがいいですね。それぞれの映画について【以下ネタバレあり】と書いたところからはネタバレが含まれます。1.私たちが光と想うすべてインド映画ではじめてカンヌ国際映画祭のグランプリを受賞した作品です。新宿のシネマカリテで観ました。インドで働く対照的な2人の女性の生き方を描きます。映画ファンサイトのコメント欄を見ていると、賞賛と否定と大きく評価を2分しているようです。否定される方は、本作の単調な物語の進み方を好まれていないように思います。それは映画に何を求めるかの違いによるので、否定される気持ちもよくわかります。映画にドラマティックな展開を求める方にはオススメできない作品ですね。都会の喧騒感・自然豊かな地方での静かに流れる時間といった風景とそれぞれの女性に秘められた強さが印象的でした。⇒【以下ネタバレあり】2人の女性プラバとアヌは、ルームシェアしながら、どちらも大都会ムンバイで仕事をしています。プラバは真面目な女性で、親が決めた相手と結婚したものの、夫はドイツに転勤したまま1年も連絡が途絶えています。アヌはイスラム教徒の恋人がいます。ヒンドゥー教の家族からは間違いなく大反対されるので、知らせずに日々を楽しんで生きていました。そんなとき、もう一人の女性、プラバ の同僚であるパルヴァティが自宅の強制立ち退きに遭い、田舎の村に引っ越すことになります。プラバとアヌがそれを手伝って訪れた自然豊かな村で、ちょっとした騒動が起こります。記憶を失った男性が海岸に流れ着いたのです。アヌの恋人は彼女を追いかけて村にやってきてしまいました。それぞれの女性の人生が変わってゆく時、光が差しこんできます。それぞれの女性の性格やおかれたシチュエーションは違いますが、インドの歴史や慣習といった不自由な部分、3人がそれを超えてゆく姿を描き出したことがこの映画の魅力でしょう。2.アイムスティルヒアフランス・ブラジルの共同制作による映画です。1970年代、軍事独裁政権が支配していたブラジルが舞台で、実話をもとにしています。アカデミー国際長編映画賞をとっています。ブラジルの元国会議員ルーベンス・パイヴァと妻エウニセは、5人の子どもたちとリオで平和に暮らしていました。しかし、ある日その日常を変える事件が起きます…実際に現場にいるかのような映像には緊張感があふれています。政治に翻弄されながらも強く生きる姿に感動しました。⇒【以下ネタバレあり】当時の軍事政権は反対勢力を監視・抑圧しており、それに関わっていたルーベンスを突然拘束します。さらに、エウニセや娘までも拘束されてしまいます。ルーベンスよりも、エウニセの視点に立った映像で、「状況がわからない」恐怖がより一層強調されます。とくに拘束する側が権力者だった場合には、ほんとうに頼りにできるのは身の回りでつながっている人たちだけなのですね。しかし、現代の日本でもまったくないことではありません。警察や検察がもたらした冤罪事件もたびたび起きていますし、安倍政権時代には自身に都合の悪い人々を拘留することも行われました。市民は政治情勢に常に気を付けている必要があります。
2025.08.11
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1年前に書いていた記事が下書きに入ったままになっていました。アップロードしておきます。ーー図書館で生成AIの勉強をしました。しかし残念ながら若かったころよりも吸収力はすっかり低下しました。つまり、せっかく勉強してもすぐに抜けていってしまうのです。あとでちょっと思い出せるようにブログに書いておきます。「生成AI時代を勝ち抜く事業・組織のつくり方」梶谷健人(2024),日経BP,304pp.どのように生成AIをビジネスに活用するかを解説している本です。具体的にどのように活用しているのかを知りたくて読んでみました。自分なりにまとめてみます。1.生成AIの基本・生成AIのユニコーン企業(評価額10億ドル以上)は20社以上で、OpenAIがトップである。・マルチモーダルAI(テキストや画像など複数のメディアフォーマット入力に対応)、画像生成AI(テキストや画像などのインプットを通じて最終的にが画像を生成する)、コード生成AI(プログラムコードを生成したり支援したりする)などが主流。そのほかにビデオ生成AIや3Dモデル/シーン生成AIもある。・クリエイティビティは人間の専売特許ではなくなった。また、AIは競争相手ではなくパートナーと考えるべきである。2.事業にどう活用してゆくか⇒5つのステップで活用。いきなり生成AIに頼り始めるのではなく、ちゃんと意義や意味を明確にするのが大事ということだそうです。(第1ステップ)最初の仮説を立てる。(顧客、課題、その解決法を考える)(第2ステップ)優先的に検証すべき前提を洗い出す…課題のうち、何から取り組むべきなのかを明らかにする(第3ステップ)検証方法と判断基準を決定する。(第4ステップ)オフィスの外に出て検証する。(第5ステップ)学びを生かしてアイディアをアップデートする。⇒これらを通じて顧客が本当に困っている課題をどう解決するのかを考える。生成AIならではの価値が活かされる方法を考える。3.生成AIの価値とは?・筆者は7つの価値を掲げていますが、私がとくに共感するのは、「コンテンツの創造コストを下げること」と「コンテンツのマルチモーダル化」を進められるということです。・具体的にいくつかのソフトウェア(オンラインツールも含めて)が紹介されていました。"Jasper" AIライティングツールで、ブログ記事やマーケティングコピーをつくる"Picsart" 特定の商品画像のバリエーションを作成"tavas" 1つの動画を撮るだけで相手ごとにパーソナライズされた動画を作成可能"Adept" セールスフォースや複雑なサイトの操作をユーザーに代わって行う"Inworld" コンテンツのインタラクティブ化や半自動化の領域で急成長している"Glean" 社内のナレッジ情報を対話型のインターフェイスで効率的に検索できる"Tome" テキストを入力するだけで文字や生成された画像が挿入されたプレゼンスライドをつくってくれる"tldraw" ラフに図を作成したり、手書きのイラストを張るだけで実際に動くモックアップ(アプリのサンプルのようなもの)とコードをつくる”Wix" パーツのドラッグ&ドロップだえでWebサイトをつくりだすなどです。本書は、生成AIの活用について理念や枠組みを示した上で、このような具体的なツールを示しながら実践についても紹介しており、とても勉強になりました。
2025.08.10
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先月、図書館で何気なく手にとった本がありました。「世界の土偶を読む(竹倉史人)」です。著者はプロフィールに「人類学者。独立研究者として大学講師の他、講演や執筆活動などを行う。」とあり、考古学の専門家というわけではないようです。内容は、土偶にみられる人物像が極度にデフォルメされている理由として、人々が食物としてきた種子の発芽課程や実の形状をかたどっていることを主張されています。たしかに土偶の中には不自然に脚部が大きかったり、女性の胸などが強調されているものがみられます。読み始めてまず、発想はとても面白いと思いました。しかし、自然科学に長年取り組んできた習性から、それぞれの説の論拠を確かめようとするとちょっとこじつけている部分が目立つのに気づきました。つまり、アイディアにあわせて論拠となる文献や事例を集めているということです。別の専門書と比較しながら検討しようと、ふたたび図書館を訪れたところ、今度は「土偶を読むを読む(望月昭秀ほか)」を見つけました。執筆陣は考古学の専門家です。こちらを読み始めて、本書が竹倉の著書をきわめて批判的にとらえていることがわかりました。文章のあちこちから「怒り」がにじみ出ていて、そのパワーに圧倒されました。主な批判理由は、竹倉が自身の説に合うように恣意的な資料を使って説明し、また実際の土偶も表面的にしか見ていないということでした。土偶には欠けている部分があったり、多数を比較すると形状も多様だったりするのに、それらをほとんど検討していないとしています。この点については私が最初に感じた違和感を裏付けるもので、共感します。科学的な姿勢という点では慎重な検討が必要でしょう。一方で、竹倉の説が一般書を通じて大きな反響をよんだことに、かなりアグレッシブな反応をされているという印象をもちました。土偶の形状の多様性と、実際の栗やクルミの形状とを比較しながら反論を展開していますが、そのプロセスで随所に感情的な記述が目立ちます。専門家の立場としては、もっと冷静に批判するほうが説得力をもつと思いました。また、「考古学は閉鎖的でない」という記述がありましたが、私自身の経験から閉鎖性を感じます。本来は市町村の教育委員会が保管しているべき資料を一部の「専門家」が長期的に占有しており、その人の許可が出ない限り他の研究者が利用できないという例があります。本人が亡くなって、膨大な資料が返却されたのを聞いたことがあります。専門家といわれる方の論文にも恣意的な解釈が時々みられますが、それでは竹倉の説と明確な違いがないのではないでしょうか、状況は少しずつ改善してきているようですが、自然科学に比べるとまだ改善の余地がありそうです。
2025.08.07
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最近、全国各地のクマ問題がまた連日報道されるようになってきています。とくに北海道福島町で新聞を配達していた男性が襲われて亡くなった事故はショッキングでした。心よりご冥福をお祈りいたします。その後、襲ったクマが4年前にも人身事故を起こしていたこと、オスで218kgだったことなどが報道されました。報道だけで状況がわからない部分も多いですが、いくつか気になった点があります。まず、前回4年前の事故の状況です。当時の記事が入手できませんが、農作業に出かけた高齢女性が、突然襲われたらしいです。それだけでは偶然遭遇したように感じますが、さらにNHKによると「草がかけられていた」ことなどから(当初からそうだったかは不明にせよ)捕食を目的としていたことがうかがえます。その後今回の事件までの足取りは不明ですが、少なくとも捕殺されていなかったということは、かなり慎重な個体であることがうかがえます。比較的人前に出にくい個体がなぜ今回、出てきてふたたび人を襲ったのでしょうか。今回も男性がやぶにひきずりこまれていたそうですが、これは捕食のときに見られる行動です。報道ではおそらく詳細に示しにくかったのかもしれませんが、腹部中心に噛み跡があったようで、これも捕食目的を裏付けています。人を捕食した経験をもつ個体は、繰り返す危険がたいへん高いため、駆除が必要です。今回の捕殺に苦情も多数あったようですが、奥地放獣などはリスク管理上、受け付けられない意見でしょう。一方で、一連の出没に至った経緯はもう少し掘り下げる必要がありそうです。周辺でのごみや食物の状況などです。捕殺個体かは不明ですが、今回の事故現場周辺で物置のごみがクマに荒らされたとの報道もありました。ごみはクマをひきつけます。もちろんふだん生活していれば生ごみも出るのですが、なるべく戸外にある時間を減らすことやクマ対策型のごみ箱に順次変えてゆくなどが望ましいでしょう。クマ出没が頻発している地域では、道や国も積極的に補助を行ってほしいと思います。また、今回も「冷静でない」報道がしばしばみられました。すべてのクマ出没をひとくくりにしてしまい、ただ危険だけをあおる内容です。課題を整理すれば、「クマの個体数や分布が拡がっているらしいこと」、「クマにとって魅力的な場所が集落付近に多いこと」、「地域の人口や財源が減少して、クマ類への対策がとりにくいこと」「専門的な知識や技術をもった人材が十分配置されていないこと」などです。それらの課題解決を少しでもすすめるためにも「報道側」がもっと冷静な視点で問題にアプローチしてもらいたいと思います。
2025.07.21
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【映画紹介に出てくる程度のネタバレありです】かなり直球の青春映画です。ひねくれた50代には少しストレートすぎたかもしれませんが、ときどきはこういうさわやかな映画もいいですね。主演の桜田ひよりは、NHKラジオの英語講座「ボキャブライダー」でさまざまなキャラクターを演じていて、楽しみながらずっと聴いていました。今回、はじめて映画を観られてよかったです。物語は、星が好きな中高生たちが、それぞれの夢をもちながら望遠鏡に天体を導入するスピードを競うイベントを企画して交流をはかろうとするもの。しかし新型コロナのパンデミックが起こり…。ほんの少し前のことですが、もう遠い時代のように思えます。一昨年には私も感染しましたし、今ではごく普通の存在になってきました。たしかに初期段階は戦々恐々としましたね。とにかく感染しないように最大限の注意を払って、手洗い・マスク・消毒と神経をとがらせていました。そしてパンデミックによって互いの交流が途絶え、まさにあちらこちらでディスタンスが生まれてしまった時代でした。映画で当時の感覚を懐かしく思い出しました。ところで私もかつて天文少年だったので、出てくる天体や望遠鏡の話はかなり気になりました。はくちょう座の二重星アルビレオは色の組み合わせがほんとうに美しいです。土星や木星は天文少年だった当時に望遠鏡ではじめてみたとき、空中にボンヤリと浮き上がった姿にほんとうに感動しました。一方でM57(こと座の環状星雲)は…映画に出てくるレベルの望遠鏡を都会で使っても絶対に観られません。難しい天体ほど得点が高いので、導入コンテストに出てくる対象としてはちょっと不公平と思いました。いずれにしても、かつては私も映画と同じように手動導入をしていましたが、いったん自動導入望遠鏡の便利さを体験してしまうととても戻れません。今は空の明るいところに住んでいるので天体から離れていますが、いつかまた自動導入望遠鏡をかかえて満天の星空の見える場所に行き、スターウォッチングを楽しみたいです。
2025.07.18
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濱口竜介監督の映画「偶然と想像」を観てきました。ベルリン映画祭で銀熊賞をとった作品です。主なサービスで配信がなく、少し前の映画なので上映されることも少なくなっていたのですが、渋谷での上映があってみる事ができました。【この映画を楽しむにはネタバレ厳禁ですが、以下はネタバレを含みます!】この映画は3つの作品のオムニバスになっていて、それぞれの作品につながりはありません。ただし、全体としてタイトルの「偶然と想像」ということがテーマになっています。つまり、どの作品にも「偶然」があり、観客は「想像」を楽しみながら観られるということです。しかし、脚本がたくみで、ほとんどの観客にとって「想像」したことは裏切られるはずです。私もそうでした。1作品目「魔法」:古川琴音がキーとなる役柄を演じています。冒頭のタクシー内での会話から観客はそれぞれの物語を頭に浮かべながら想像をしてゆきます。本作品に共通していますが、観客の想像にゆだねる部分が大きいので、製作費がとても少なかったはず。アイディア次第で映画は安く作れるのですね!2作品目「扉は開けたままで」:少し浮世離れした大学教授と、学生たちとの間に起こる騒動。教授室の扉はふだん開けられていますが(ハラスメントの防止目的でしょう)、そんな境界は現代社会ではほとんど意味がないようです。3作品目「もう一度」:強力なウィルスによってインターネット通信が2019年以来途絶され、郵便・電信に限られたという架空の設定で物語が展開してゆきます。そんな中、かつての同級生(同性のパートナーだった)に会おうとする主人公の女性。仙台駅で偶然出会ったのは…。インターネットの発達によって私たちの世界は、望むと望まないに関わらず常につながりあっています。一方で、つながっている割には希薄な関係も多く、SNSではなんとなく「いいねボタン」を押していることもあります。想像の世界から生まれる「希薄でない関係」がこのラスト作品のテーマでしょうか。あまりオムニバスは好きではないのですが、この3作品はどれも優れていて、とても楽しい時間を過ごせました。俳優も失礼ながらあまり知られていない方が多いですが、それがむしろこの作品の想像を高めるのに役立っています。
2025.07.04
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ペルー最高峰に登山された日本人女性2人のパーティが遭難し、国際山岳医だった方が低体温症で亡くなりました。標高6600mを超える世界ですので、いつ死が訪れても不思議のない場所なのでしょう。報道によると登山経験も豊富だったらしく、準備も十分にされていたそうです。詳しいことはわかりませんが何らかのアクシデントなどがあったのかもしれません。まだ小さいお子さんがいらっしゃったそうで、もちろん残されたお子さんや家族にとっては本当に悲しいことだったと思います。ご冥福をお祈りします。想像はしていましたが、ニュースに対するコメント欄を観ていると、小さい子がいたのになぜそんなに危険な山へ行ったのかと非難する意見がみられました。私は、それは軽々に言えることではないと思います。おそらく出産とこれまでの育児期間は山岳から離れざるをえなかったのではないでしょうか。ご本人にとっては、山岳医という仕事にきっと誇りもあったことでしょうし、その仕事を続ける上では、どうしても危険をおかして登山もトレーニングもしなければならなかったのかもしれません。もちろん純粋に山が好きだったということもあるでしょう。いずれにしても、そこにどのような判断があったのかがわからない以上、外野があれこれ非難する性質のものではないと思います。かつてはイラク支援のボランティア活動をしていた日本人3名が武装勢力に拘束され、大バッシングが起きました。シリアで取材していたジャーナリスト拉致事件でも同様です。非難すべき相手は拘束したり拉致したりする勢力であるはずなのに、なぜかこの国では被害に遭われた方を非難してしまう傾向があるようです。国際支援によって戦争の犠牲になっている子供たちを助けようとするとか、紛争地帯から事実を報道するとか、命がけで取り組んできた生き方を尊重できる社会になってほしいですね。
2025.06.29
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プロ野球は交流戦が終わり、ふたたびリーグ戦に入りました。交流戦の優勝はソフトバンクでしたが、2位となった日ハムの戦い方は野球の楽しさをあらためて感じさせる内容でした。もともと私は日ハムファンで、新庄が現役時代の日本一になったときは、札幌ファクトリーでのパブリックビューイングで稲葉ジャンプをしたり、知らないまわりの人たちとハイタッチをしたりしました。そのときも新庄が周りの選手たちを鼓舞し、驚くような細工を入れながらプレーをしていました。今はNPBである程度活躍した選手はメジャーを目指すことが多いことや、チームの財政事情で海外からビッグな助っ人とか優秀選手を集まれられるチームばかりが上位になることなどで、魅力が下がっていました。今もその傾向はありますが、あまりお金のない日ハムで、新庄監督が主導して若手をじっくり育てたり、戦術をみがいたりして作り上げてきたチームは驚きをみせてくれます。ダブルスチールとかディレースチール、充実した完投型の先発陣、スタメンの一斉チェンジ、それらがもたらす緊張感は、他チームにも波及します。気を抜けない戦術のぶつかりあい、それこそが野球の楽しさです。そしてサヨナラ負けや1-0で負けたときでも、ホームランを打った選手や完封した投手に対して、相手チームであっても称賛する姿勢が素晴らしいです。とにかく金にまかせて相手チームから優秀選手を引き抜いたり、サイン盗みを企てたりしていたら、結局プロ野球をつまらなくしてしまいます。もちろん後半戦にかけて日ハムの日本一を期待していますが、それとともにワクワクするような面白い野球を観たいと思っています。
2025.06.26
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【ネタバレあります】李相日監督の映画を2本観たあとに、現在公開中の「国宝」を観てきました。吉沢亮と横浜流星のダブル主演といってよいでしょう。歌舞伎役者の父をもつ俊介(横浜流星)と、極道の家に生まれながら、ひょんなことから俊介の父を師匠として歌舞伎役者をめざすことになった喜久雄(吉沢亮)の友情と確執を軸に物語は進んでゆきます。まず、2人が代役をたてずに歌舞伎を演じたことに驚きます。映画を観たあとに、5代目板東玉三郎(人間国宝)の歌舞伎映像をみると、やはり本物との違いは歴然としています。しかし、彼らの努力もまた本物で、映像美とあわせて実に美しい姿でした。それぞれ才能をもちながら、運命や自身の迷いに揺れ動く喜久雄と俊介の関係は、3時間という上映時間の長さを忘れさせる魅力がありました。ただし、喜久雄をめぐる女性たちとの関係はもっと丁寧に描いてほしかったと思います。もちろん喜久雄にとって、女性たちとの関係にあまり思い入れがなかったことを示しているのはわかります。しかし、女性たちの人生が喜久雄によって翻弄される様子がほとんど伝わらないので、喜久雄の歌舞伎にかける情熱もまた少し軽く見えてしまうのです。一方でそこを深堀りすると、今度は歌舞伎を中心としたこの映画の主題がぼやける面もあります。両者の兼ね合いが難しいところですね。でも、全体を通じていい作品であったのは間違いないです。アカデミー賞を何部門かで取りそうな作品でした(私だったら、まず撮影賞をあげたいですね。フレームワークとか、歌舞伎の舞台の生き生きとした姿を巧みにとらえていました)。なお、事前に2本作品を観ていたことで、何かこの作品のとらえ方が変わったかと考えると‥‥あまり変わりませんでした。ただし、本作品も含めて共通しているのは、「出自」にかなり重きを置いているところですね。ご自身の経歴も関わっているのでしょうか。
2025.06.17
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李相日(リ・サンイル)監督の最新作「国宝」を劇場に観に行こうと思っていたのですが、過去の作品を先に観ることにしました。「悪人」と「怒り」です。悪人のほうは、2010年の作品で、確かに一度観た記憶がありましたが、今回改めて観たところ要所をすっかり忘れていることがわかりました。【以下、それぞれ盛大にネタバレがあります】「悪人」は、出会い系で知り合った女性、佳乃(満島ひかり)に裏切られたことをきっかけに、殺害してしまった若い男「祐一(妻夫木聡)」をめぐる話です。祐一は、やはり出会い系で知り合った年上の女性、光代(深津絵里)とも直接会うのですが、それは殺人を犯したあとのことでした。祐一はもちろん人を殺害した悪人ではありますが、それ以外にもたくさんの悪人が出てきます。佳乃を人里から離れた路上に放り出した男、祐一を身勝手な理由で捨てた母、祐一を育ててくれた祖母をだます悪徳商法の連中、容赦なく取材合戦をするマスコミ・・・・。祐一が「悪人」として裁かれる一方で、殺人を生み出しているほかの「悪人」たちは裁かれず、また別の「悪人」を作り出している、というのがテーマでしょうか。また、祐一と祖母や光代との関係、佳乃の父と母のように、人と人とのつながりが悪人になるのを止められる可能性も示しています。残念ながら、祖母は祐一が人を殺すのを止められなかったのですが、この世の中から悪を減らしてゆくには、人と人とのつながりを強くすることなのですね。主演の2人もよかったですが、佳乃を演じた満島ひかりとその父役の柄本明、祖母役の樹木希林と味のある役者さんが揃っていて、映画の深みを増していました。「怒り」は、日中の住宅で起きた夫婦殺害事件をめぐる話です。現場に血で書かれた「怒」の文字そのままですが、「怒り」がテーマです。米兵による性的暴行事件、知的障がい者や性的マイノリティへの偏見、そして「怪しそう」という世間からの偏見とといった不条理が「怒り」へとつながります。悪人が描いていたテーマにも通じる部分ですね。怒りをはらんでしまう世の中の構造は、犯罪を生みやすいのでしょう。しかし、脚本と映像表現の巧みさから、観客もまた偏見に揺られながら殺人犯を探してゆきます。ラストまでほとんど救いの感じられない本作ですが、殺人犯ではなかったことで偏見から解き放たれた恋愛がわずかな光ですね。キャストはみな好演・でしたが、とくに宮崎あおい、松山ケンイチ、広瀬すずは良かったですね。
2025.06.14
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横浜市の化学機械メーカー「大川原化工機」の社長ら3人は、2016~2018年に製品の噴霧乾燥機を不正輸出したとして逮捕、拘留されました。噴霧乾燥機は、液体を細かい霧状にして乾燥し、フリーズドライなどをつくる機械です。軍事転用可能な一定の機械は経産省の許可が必要であり、その許可を得ずに輸出したというのが罪状でした。しかし、当該機器が軍事転用可能な機械に該当しないことは、経産省も把握していたのですが、公安部は事実を歪曲するような無理な捜査プロセスを経ながら関係者の逮捕をしたのです。検察官も事実をきちんと検証することもなく、起訴にふみきりました。拘留中に1人は体調を崩し亡くなりました。その後、本件が違法でないことが検察にもわかったためか、途中で起訴は取り消され、11カ月拘留されていた2人は保釈されました。警視庁公安部と検察の捜査の違法性を認めて賠償を命じた民事裁判は2審まで進み、いずれも賠償が認められています。一方で、強引な捜査をした公安や検察の刑事責任については、不起訴扱いになっています。プロセスを知れば知るほど、権力の暴走の恐ろしさを実感します。中小企業でふつうに製品をつくっていただけなのに、あらぬ罪を押し付けられて1年近くも拘留されてしまうのです。捜査当局は、噴霧乾燥機の性能を軍事転用可能と証明しようと、本来の用途をはるかに超える温度まで上げさせて実験までしたそうです。もちろんそれでも証明はされませんでした。本事件についての詳細は、日本弁護士連合会のウェブサイトが詳しいです。また、先月末に報道された民事訴訟2審については、毎日新聞のサイトなどで記事になっています。
2025.06.08
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森友学園の小学校用地購入にあたり、大阪府の国有地が異常な低価格になった件について、進展がありました。財務省とのやり取りに安倍元首相の妻、昭恵夫人が関わっていた疑惑が国会で持ち上がった際、安倍元首相は「私や妻が関わっていたら総理大臣も議員も辞める」と言い切りました。実際には関わっていたのですが、財務省は組織ぐるみで公文書を改ざんするという恐るべき手段を取りました。そのプロセスで、近畿財務局の実直な職員だった赤木俊夫さんは、公文書を改ざんさせられたことをきっかけにうつ病を発症し、自殺に追い込まれました。赤木さんは改ざん経緯の記録を文書に残して、それが検察にもわたっていたのですが、あろうことか検察もこれを不起訴処分にしてしまいました。亡くなった赤木さんの妻、赤木雅子さんらの情報公開請求により、先月文書の開示が行われましたが、今度はあちこちに欠落部分があることが判明します。政治家の関与が示される部分だけ欠落していたのです。安倍政権下で、財務省はもちろん検察もマスコミの多くが何らかのパワーを受けたり、勝手に忖度したり、こうして事実を闇にしてきたのでしょう。もちろん今の自民党がこの問題にまっとうに向き合うわけがありません。しかし、NHKが先日、ニュースやクローズアップ現代でこの問題を批判的に扱っていたのを見て、驚きました。かつては完全に政権寄りだった読売新聞も今回はこの問題をときどき扱っています。まずは、この深い闇がつくられてきた経緯を、報道機関がもっと追求してほしいと思います。一生懸命に仕事をしようとしていた赤木さんが、なぜ命を失わなければならなかったのでしょうか。心からご冥福をお祈りするとともに、事実がきちんと明らかになることを願います。
2025.05.10
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宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」が地上波で初放送となったので観ました。上映していたころから難解という話が聴こえていたのですが、実際にたいへん難解でした。というよりもそれを意図してつくられているのでしょう。解釈はそれぞれの観客に任されていて、タイトル通りに考えればとくに若い人たちに向けたメッセージがこめられているのではないでしょうか。私なりの解釈をしてみました。はっきりしたネタもよくわからない映画なのですが、一応ネタバレありです。大きなテーマは「生と死」です。主人公、真人のいる時代が戦時中であることからも、生と死が常に隣りあわせであることが強く意識されます。物語で、真人の母は火災で亡くなります。一方、父の再婚相手の夏子は亡くなった母の妹で、子を身ごもっています。母と夏子、生まれてくる子との関係が真人のまわりで直接的に現れる死と生の世界でしょう。仏教思想では輪廻の世界です。いっぽうで、アオサギやインコ、ペリカンなど鳥たちがこの映画で重要な役割を果たしています。鳥たちはもうひとつの生と死を象徴する存在だと感じました。つまり、生態系の中にみられる死と生ではないでしょうか。生態系の中では個体レベルでの生や死は表面的な事柄で、エネルギーの循環としては続いていきます。その循環は生命だけでなく、無機的な環境も関わります。映画の中では石が無機的環境を象徴していると思いました。細かい役柄との関係は謎に満ちていますが、映画全体としては、これら生と死の2つの意味合いが混沌としている世界を描いていると理解しました。そしてタイトルの「君たちはどう生きるか」です。純粋でけがれのない世界をつくるという理想(13個の石)、さまざまな悪や汚れのある今の世界、真人たちは後者に戻ってゆきました。私たちはそんな世界の中で、生きてゆかなければなりません。しかし悪や汚れの中にも救いがあります。アオサギです。裏切り者の筆頭格だった彼が、最後に真人の友になりました。「信頼できる友をつくり、力をあわせて生きている喜びが感じられる世界へ」私は映画のメッセージをそう受け止めました。インコは外来種として各地に広がっています。外来種との関係は難しく、すべてを元通りにするのは現実的ではありません。アライグマにしても、被害を抑えつつ、つきあってゆかなければならない存在なのでしょう。ところで、ちょうど映画を観た日の朝に、水田近くを歩いていたら1羽のアオサギが飛び立ってゆきました。襲われなくてよかったです!
2025.05.03
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科学博物館で開催されている特別展「古代DNA―日本人のきた道ー」を観てきました。タイトルから生物学的な展示と思っていましたが、考えて見るとDNA関連の展示物だけで特別展のスペースを埋めるのは難しいことです。実際には考古学が中心というイメージの展示でした。それはそれでよいのですが、展示のタイトルはちょっと紛らわしいですね。特別展の内容を正しく表すとすると、「膨大な出土遺物と古代DNAが明かす日本人のきた道」(タイトルとしては冗長でよくないですが)という感じです。さて、そのうえで展示を見てみると、日本人が歩んできた道を体系的に学び、感じられる内容でした。日本列島は北から南まで細長いので地域差も大きいですが、それもうまくまとめられていました。個人的には北海道の有珠モシリ遺跡から出土したクマの骨製品(写真上)がよかったです。ただし展示はレプリカで本物は伊達市の博物館にあるようですね。2000年前(北海道では続縄文時代)の遺物だそうですが、ヒグマの姿がとても精巧に彫られていて驚きました。下の写真は岩手県から出土した縄文時代(2400年前)の動物意匠です(やはりレプリカで、本物は国立歴史民俗博物館所蔵)。「クマ形土製品」とタイトルがあり、その理由として腹側に月の輪があるから…と説明がありました。月の輪といっても線が首を広く囲うように刻まれており、顔や耳の形からも私はクマでなく、イノシシではないかと感じています。豚の飼育は弥生時代以降と考えられていますが、もしかすると飼育されていた豚なのかもしれませんね。展示は6月15日までです。さて、先日投稿したトランプ関税は、その後90日間停止という話が出てきました。報道によるとトランプ大統領が債券市場の金利上昇を懸念したようです。やはり手のひら返しをしてきました。本音は中国とも早く矛を収めたいはずです。大統領発言や中国との応酬が出てくるたびに世界的に株価が大きく変動しました。急落したときにいくつかの銘柄を買いましたが、リスクの大きい相場状況が続いています。トランプ大統領の思惑を超えて実体経済に不可逆的な影響が出てくるかもしれません。長期的に成長の期待できる銘柄以外は早めに手放すのがよさそうですね。大儲けはできないかもしれませんがボチボチの投資を続けます。
2025.04.12
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先週末はトランプ大統領の関税方針で世界的に市場が大荒れの展開となり、本日週明けの東京市場も大幅続落しました。中国やカナダは報復関税の方針を示していますし、アメリカの製造業も多くの部品類を海外から調達しているはずなので、アメリカ自体の経済にとっても中長期的には悪影響を及ぼすとしか思えません。トランプ大統領のすごいところは、こういうとんでもない発言をしておいて、平然と手のひら返しをするところです(支持しているわけではないです)。つまり、米国経済にとって関税政策がマイナスになりそうだと判断したら、さっさと政策を修正してくることでしょう。このような状況で、久しぶりにしばらく離れていた投資について考えてみました。まずトランプ大統領が今発言しているとおり、一切の妥協をせずに関税政策を貫く場合です。中国とアメリカと世界1,2位の経済大国ですので、2国だけでも関税の応酬を繰り返していたら世界経済が後退(リセッション)に陥ることは間違いないでしょう。もちろん2国だけでなく今回はさらに多くの国々も巻き込まれています。もともと市場がバブル基調だったので、バブル崩壊という状況に追い込まれて失業者が増えさらに市場も悪化…という悪循環が生じます。 もう一つの可能性は、トランプが世界経済全体の悪化はアメリカにも自身の支持率にもマイナスと考えて、上述したとおり発言や政策を修正してくる場合です。それが起こるとしても、いつなのかは現時点ではわかりません。また、そこで経済が再び上向くのかもわかりません。スパイラルのように暴落したまま上がらない事態も十分起きます。 そのようなわけで、このタイミングでの投資はリスクを伴います。しかしながら個人的には今日の東京市場暴落をみて2銘柄を買いました。条件として、次を考慮しました。(1)この5年くらいのスパンでみて底値近い=さらに下げる余地は少ない(2)PBRが1.0より大幅に高くない=買われすぎていない(3)ここ数年の業績が悪くないこととアメリカへの輸出依存が高くない(4)この時代に必要性が増している=セキュリティと半導体関連。このように書いていますが、自信をもって投資判断をしたわけではありません。これらは株価が急落しすぎと判断したためです。リーマンショックのときには、どこまでも株価が下がって元に戻るような上昇は起きませんでした。それは5年程度で底値というレベルではなかったためです。今週の様子をみてさらに下落が続いてゆくようなら、損切りをして再びしばらく投資から離れたいと思います。逆に短期的に上昇した場合も油断ができません。実体経済への影響が出ると中長期的にマイナスに転じてゆくためです。世界のニュースを日々確認しながら、臨機応変で対応したいと思います。
2025.04.07
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侍タイムスリッパーをAmazonプライムで観ました。劇場で上映されているときから知ってはいたのですが、題名が安易なイメージで敬遠していました。ミーハーですが、アカデミーで最優秀作品賞をとったことを知り、観てみたいと思ったのです。果たして、これがほんとうに面白い作品でした。もちろんタイムスリップをすることや、その後の展開の細かいところは現実にありえない部分も多々あります。しかし、脚本が面白いので、そういう細かいことを忘れてのめりこみました。このブログでRRRの紹介をしたときに、豪華絢爛なエンターテインメント作品はあまり好んでいないと書きました。本作品は自主製作の明らかに低予算(2,600万円だそうです)の作品ですが、エンターテインメントも素晴らしいし、その背景にある「映画づくりへの思い」も伝わってきます。主役の山口馬木也とその敵役、冨家ノリマサ、ヒロイン的立場の沙倉ゆうの、それぞれいい味を出していました。エンドクレジットを見ていると安田淳一監督の名前が撮影にも編集にも登場してきます。あるネット記事によると製作費を払ったあとの監督の預金残高は6000円くらい。それが、今は興行収入10億に達しているそうです。監督もまた「侍」だったのですね!
2025.04.06
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図書館で何気なく借りた「デザインの知恵」(須永剛司)を読みました。多摩美術大学に情報デザイン学科を立ち上げた方で、現在は公立はこだて未来大学の特任教授をされているようです。「いいデザイン」というと、たとえばフェラーリのかっこいい車とか、おしゃれな洋服とかが頭に浮かびます。しかし、情報デザインはそれらとは違います。本書の冒頭に「情報デザイン」の説明があるのですが、正直なところ、この部分がわかりにくかったです。私なりに理解した範囲でまとめてみました。まず、情報デザインは須永の言うところの「言葉の道具」と密接に結びついている概念です。道具というと、鉛筆とかノコギリのようなものが浮かびますが、「言葉の道具」はそれらと違い情報のやり取りのために用いられるSNSやカーナビのようなものをさします。鉛筆やノコギリのような道具は、使い手が文字を書くとか、木を切るといったことに使われます。デザインによってそれらの機能が生み出されているのですが、道具を使う人にとっても変化しうると須永は説明しています。鉛筆でいえば、線や文字を淡々と書くこともあれば、スケッチで影をつけるためにサーッと斜めにすべらせたり、ドットをたくさん打ったり、といろいろな使い方があるということでしょうか。そうすると、作り手の想定しているデザインに対して、使い手にとってのデザインのあり方は異なっているということになります。情報デザインについても、須永はデザインの作り手と使う側との関係を強調しています。カーナビであれば、目的地をどのように入力して、その後の案内によってどう誘導されてゆくのか、情報の受け手との関係がデザインの基盤になるのはよくわかります。スマホが多くの機能をもつようになり日々の暮らしで情報を求めるようになりました。そんな現代ではたしかに情報デザインが非常に重要になっていますね。 本書の後半では実例を挙げて、情報デザインをつくりあげるプロセスや、発展性について説明しています。「一つの答えではなく多様性を求める」、「まずは実際に試してみて、その関わりの中で洗練させてゆく」というアプローチが、デザインの分野では基本となるようです。現在の自然科学ではこれとは正反対のアプローチをすることが普通です。まず、各研究者は「正しい答え」に到達しようとするでしょう。たとえば「ある薬が効くか効かないか」を研究している科学者が、「実験をして効いたり効かなかったり、いろいろな結果になったけれど、この多様性が素晴らしい」と学会で発表したら袋叩きにあいますね。また、自然科学では、実際に試してみる前に論理的に道筋を絞って実験計画を練ってゆくプロセスも重視されます。なるべく無駄な費用や労力をかけたくないためです。情報デザインを洗練させるアプローチでは、あるゴールにたどりついても別のゴールがないかと次々と考え始めるのだそうです。そのプロセスの中でよいものを探してゆくのですね。また、まずは作品を作ってみて、それが良いかどうかを試行したり、その体験からよりよい別の作品に改良したりするということです。もちろん自然科学にすべてあてはめることが良いわけではないですが、短時間で結果を出すように効率を強く求められる今の日本の研究環境だと、新しいアイディアは生まれにくいと思いました。本書に近い考え方の本として、少し前に読んだ太刀川英輔の「進化思考」も面白かったです。建築などを手掛けるデザイナーなのですが、生物の進化と同じプロセスを利用してより多様な考えを生み出すことを提案しているのです。生物の中には、機能的に洗練された仕組みがたくさんある一方で、一体どうしてこんな形になったのか謎に満ちた種も多くいます。しかし、そういう多様性が面白さや美しさ、気づかなった機能につながってゆくのでしょう。堅くなった頭をやわらかくしてアイディアを発想してゆきたいですね。
2025.03.30
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土曜日ですが、とても寒い一日でした。こんな日は、逆に町に出る人が少ないのではないかと思い、午後からふらっと恵比寿の東京都写真美術館で開催されているロバート・キャパの写真展を観に行ってきました。「戦争」がテーマです。第一次大戦、スペイン内戦、日中戦争、第二次大戦、イスラエルの建国、ベトナム戦争・・・とキャパがそれぞれの現場で危険にさらされながら撮影した写真の数々が展示されています。中には、戦争というテーマを見なければ、まったく戦争の影を感じさせない写真もあります。しかし、そのすぐ隣りにはおびえた目をした子供たちの姿や、捕虜となった兵士たちの姿など、まさに戦争の現場を感じさせる写真もあります。戦争の中でも日常の生活を送ろうとしているのか、戦争自体が日常の風景になっているためなのか、いずれにしてもテレビニュースから流れてくる映像を見るよりも、むしろ戦争の現場にいる感覚を持ちました。5月11日まで。今日は空いていましたが、事前にインターネットでチケットを買っておくのがよいようです。なお、新宿や池袋にも寄りましたが、すごい人出でした。天気は悪いですが春休みの週末なので、皆さん町に出るのですね!
2025.03.29
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上野の西洋美術館で開催されている「西洋絵画、どこから見るか?」を観てきました。ルネサンスから印象派まで・・とサブタイトルがついているので、広く浅く、あまり絵画のことを知らない層向けの展覧会かと思っていました。詳しい人にとっては実際に、そうなのかもしれませんが、私にとっては十分に解説が難しかったですね。サンディエゴ美術館と国立美術館のコレクションにより、それぞれの時代背景や人物、風景の描き方の変化をみてゆくという内容でした。宗教画でも、人物を強くデフォルメしていたり、強い明暗でドラマチックにしていたり、とてもやわらかいイメージにしたり…といろいろなバリエーションがあるのですね。とても作者や絵の名前と組み合わせては覚えきれませんが、そんなふうに「さまざまな絵」というのを楽しみました。平日とはいえ、春休みかつ桜の開花で上野公園は混雑していました。しかし、特別展はそれほど混雑もなく、ゆっくり観られました。出品点数がとても多い気がします。それほどゆっくり観たわけではないのにたっぷり2時間半はかかりました。
2025.03.26
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<<完全にネタばれを含みます>>アカデミー賞を取ったANORAを観てきました。ストリッパーの女性が、大金持ちの御曹司と恋に落ちるストーリーですが、そのままうまくいくはずもなく、波乱が待っています。ロマンスあり、コメディあり、アクションありと、とても楽しめました。主役のマイキー・マディソン、激しい浮き沈みのある性格を表情豊かに演じていました。素晴らしいです。しかし、いくつかのサイトで観客の評価はかなり分かれていました。「主人公にまったく共感できない…」という意見があります。そうかもしれません。とくに男の目線で描いている感は否定できないですね。それでも私がこの映画を評価するのは、人間の汚さとか、ずるさ、どうにもできない貧富の差とかを出しつつ、救いがラストシーンにあることです。ニューシネマパラダイスが好きなのですが、その最後の感覚に近かったですね。ANORAが最後に惹かれた相手がロシア人だったことも、私にとって納得できたところでした。今ほど関係が悪くなる前、ロシア人たちと一緒に寝泊まりして仕事をしたり、飲んだりしたことがあります。彼らは日本でのイメージほど悪い人たちでもありませんでした(もちろん悪い人もいるでしょうけど)。ふだんは無骨で寡黙なのに、お酒が入ると陽気になったり、さりげない優しさを見せたりするのです。また昼に仕事をすると、とんでもない馬力を見せたり、整備士でもないのに車が壊れたら自分で部品を交換して直したり…。そんな私のロシア人男性イメージに、映画に出てきた彼がぴったりはまっていたのでした。なお、R18指定で性的なシーンが多く出てきます。気まずくなる関係の人と一緒に行くのは避けた方が無難でしょう。
2025.03.15
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以前に袴田巌さんの冤罪について書きましたが、ふたたび冤罪のニュースがありました。福井県で1986年に起きた女子中学生の殺害事件です。顔を中心に何十回も刺されていたという凄惨な事件でした。半年後に容疑者として逮捕されたのは近くに住んでいた前川彰司さんです。しかし、実際には中学生と面識もなくまったく無実だったのですが、収監されていた暴力団関係者が自身の罪を軽くするために誘導されて嘘の証言をしたことが逮捕の原因でした。あとは他にも証言を誘導された人がいたこと、現場で発見されたという毛髪数本(これも本当に出てきたものか怪しいです)の鑑定結果で、有罪となり7年間服役しました。自白せずに一貫して無罪を主張してきましたが、長らく再審も認められませんでした。しかし、裁判官の中にきちんとした方がいたのでしょう。検察に証拠の開示を迫って確認したところ、証言の中に明らかに事実とは異なる内容があることがわかりました(証言者が事件当日に放映されていたというテレビ番組が事件の1週間後のことだった)。検察がこれまで隠していたのはその自白が証拠として誤っているのを知っていたためです。メンツを守るためなら冤罪で人生が壊される人がいてもかまわないのでしょうか。別の冤罪の記事もありました。1974年に兵庫県西宮市の知的障がい児施設「甲山学園」で園児2人が亡くなった事件について現代ビジネスの記事です。立て続けに園児2人が行方不明となり、浄化槽から死体で発見されました。警察は容疑者として保育士の女性を逮捕しました。遺体の発見時に動揺をみせたというだけで逮捕され、その後は自白の強要と捜査官の誘導などでストーリーをつくってしまったのです。実際には、浄化槽のふたをあけて入れるようになっていたため、園児たちが時々中に入って遊んでいて起きた事故だったようです。莫大なエネルギーをかけた再審を経て無罪が確定したのが1999年、この間に保育士のアリバイを証言した園長らも偽証罪で逮捕されるなど、いったん作ってしまった事件のつじつまをあわせるためには権力はほんとうに恐ろしいことをしてきます。警察もそうですが、さらに検察や裁判所が過ちを犯すとそれを正すのは容易ではありません。少し明るい兆しは、ネットの普及でこういう冤罪事件のことが国民に知られやすくなったことでしょう。そのためにも、報道関係者が勇気をもって真実を伝えることに期待します。
2025.03.07
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映画館が家から近いということはいいですね。夜11時までのナイトショーでも気軽に観に行けます。そんなわけで、最近観た2本の映画の感想です。(ネタバレありです)「TATAMI」★★(5段階)イランの女子柔道選手が国際試合にのぞもうとしているにもかかわらず、イスラエルとの対戦を避けてほしい国の思惑に翻弄される物語です。実話をベースにしたのだそうで、モノクロのカメラワークや試合のシーンは迫力がありました。しかし、映画の視点が反イラン一辺倒と偏っていて、淡々とストーリーが進んでしまい何も引っかかるものがありません。イラン政府にとってこの選手の出場を避けたい理由が見えてこないのです。選手を指導する女性監督や選手家族がキーになりますが、その背景も心情に迫る演出も少なく、伝わってきません。残念ながらイマイチでした。「愛を耕す人」★★★★こちらも実話がもとになったストーリーです。18世紀のデンマークを舞台に、不毛なヒースの地を開拓しようとする初老の男が主人公。自身の利権を守りたい地主やその地主から逃げ出した小作人夫婦、地域に暮らしていたタタール人の少女など、開拓を進めるうちにいろいろな人々との関わりが起きてゆきます。悪役も含めて、それぞれの役者が実にいい演技をしています。そのおかげで心のふれあいやぶつかり合いが生き生きと感じられました。いい作品でした。
2025.03.06
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Amazonプライムで地獄の黙示録(ファイナルカット)を観ました。(40年以上前の作品なので問題ないかもしれませんがネタバレを含んでいます)小学校時代に大ヒットした映画で、兄が観たがったため叔父夫婦に連れられて私も一緒に劇場で観ました。調べてみると、そのとき劇場で上演されていたのは30分ほど短いバージョンのようです。それでも2時間以上はありました。3年生か4年生だったと思いますのでほとんど理解できませんでした。おそらく叔父も見かねたのでしょう。途中でいったん外に出て喫茶店で何かを食べさせてもらったのを憶えています。そんなわけで戦闘シーンと最後にウィラードがカーツ大佐と話す気味の悪いイメージだけしか頭に残っていませんでした。ファイナルカットは劇場公開版より30分くらい長いバージョンで、フランシス・コッポラ監督がもっともよい仕上がりと考えているバージョンだそうです。さて、理解できる年齢になって観た印象は…。カーツ大佐と出会うまでに描かれていたシーンから、ベトナム戦争の不毛さやウィラードが狂気に進んでゆくプロセスはよく理解できました。しかし、最後のカーツ大佐と交わされる会話はとても難しかったです。立花隆の解読「地獄の黙示録」とコッポラの妻、エレノア・コッポラによる地獄の黙示録撮影全記録を図書館で借りて読んで、少しわかってきました。コッポラ自身が悩みに悩んでいろいろなシーンをとりため、それを組み合わせて作っていたのです。一貫したわかりやすい流れでつくられたものでない上に、それぞれのシーンの背景にもいろいろな思想やアメリカ人にとっての伝統的な知識などが必要な内容もあるので、とくに日本人には理解しにくいものなのでしょう。ただ、最初から最後までの全体を通じてみると、映画としてはやはり面白いと思いました(単純な感想!)。
2025.03.06
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松村北斗、松たか子の共演した映画「ファーストキス」を観てきました。15年前の夫にタイムスリップして会う物語です。ネタバレを避けるため、内容はあまり書きませんが、松たか子は実年齢より15年も若い自身を演じています。それなのに、違和感がほとんどないというのは驚きです。年齢不詳ですね。しかし、調べてみたらロンバケやラブジェネのころは、さらにさかのぼって約30年前でした!こちらがタイムスリップしそうです。松村北斗は「夜明けのすべて」で初めて知りました。松たか子に比べるとやはり若さを感じてしまいますが、この映画でもよい演技をしていました。しかし、たぶん真面目な性格なのか、癖が少なく役に対して素直すぎる気がします。もっといろんな役をやって、個性というか、演技の幅が拡がればいいですね。
2025.02.27
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(ちょっとネタバレがあります)国立科学博物館で貝類展をやっていたので観てきました。特別展ではなく、常設展の近くのスペースでときどきやっている企画展の一つです。のんびり観られると思ったら大間違いで、入場者数をコントロールしながら開催していました。休日だったとはいえ、予想外の混雑に驚きました。貝が好きな人が多いのでしょうか。いろいろな貝が展示されているのですが、入口からダイオウイカの模型で圧倒されました。いわゆる貝殻が明らかな貝類ではなく、軟体動物というくくりで考えた展示だったのですね。既成概念を入口で壊す斬新な方法で面白かったです。食べ物だけでなく、生活道具や装飾品やお金としても使われ、古くから人々との関係はとても深いことを学びました。特別展にしてもよいようなもりだくさんの内容でした。
2025.02.23
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映画「リアルペイン」を観てきました。ジェシーアイゼンバーグ監督の作品を初めて見ましたが、エンドクレジットで主演にもなっていたのでびっくり。映画通ではないので知りませんでしたが、もともと俳優として注目されていたところ、3年前から映画監督もするようになったのだそうです。映画はユダヤ系アメリカ人のいとこどうしが、かつてホロコーストを体験した祖母の遺言にしたがって、ポーランドの収容所跡までのツアーに参加するお話です。ジェシーアイゼンバーグの演じる神経質で慎重派、妻も子供もいるデヴィットに対して、いとこのベンジー(キーラン・カルキン)は破天荒で場を読まずに本音を表に出すタイプ。2人の心にある痛み(ペイン)と、祖母らユダヤ人がホロコーストで受けたペインとが並行して描かれてゆきます。映画を観ながら、ずっとガザ地区の事を考えていました。ホロコーストの痛みを知っているはずのユダヤの人々は、ガザ地区の惨状をどのようにとらえているのでしょうか。しかしながら、一方的にイスラエル側を非難するだけではパレスチナ問題の先行きは見えてきません。背景は実に複雑ですが、今受けている現地の人々の痛みを感じようとする努力は必要でしょう。そういえば今月初めにもう1本映画を観ていたのを思い出しました。メキシコ映画の「型破りな教室」です。アメリカ国境近くの犯罪率も高い地域にある小学校で、赴任してきた先生が斬新な授業で子供たちの力を引き出してゆくお話です。実話に基づいているのだそうで、驚きました。ネタバレになるので、詳しくは書きませんが、教育の奥深さを感じます。かつて、小学生たちに自然のことを教える機会が何度かありましたが、彼らの吸収力というか感受性はすごいですね。面白いと思えば目をキラキラさせ、逆につまらないと感じれば、隠さずにその通りの反応をしてくれます(!)。実に厳しい相手でしたが、とても勉強になりました。先生役のエウヘニオ・デルベスは、「コーダあいのうた」で音楽教師役もやっていたそうです。上映中はまったく気づきませんでした。
2025.02.11
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NHKスペシャルでゲーム×人類のPartⅡを観ました。冒頭から全盲のファイティングゲームプレイヤーが登場して度肝を抜かれました。音声だけで攻撃をしたり防御したりを瞬時にできるのです。視覚より聴覚のほうが人間の反応速度は速いのだとか。オンラインゲームの世界では、体に障がいをもっていても、画面上ではわかりません。そうすると、「障がい」という言葉自体がなんだか混沌としてきますね。また、ネットゲームで知り合って、一度もあったことがないまま交際をはじめたカップルも紹介されました。私のようなアナログ世代の常識では不安を覚えるのですが、リアルな世界ではむしろ、人種とか容姿だとか、いろいろなフィルターで相手と接しているともいえます。マインクラフトの世界にできた無検閲図書館も驚きでした。情報発信が制限されている国々のジャーナリストが、さまざまな発信をその空間でしているのです。もちろん各国からのアクセスは制限されているかもしれませんが、本国を離れて発信するなどしているようです。国の枠組みもまたゆらいでいるといえます。一方で、オンラインを通じて犯罪に巻き込まれるケースも紹介されていました。ボーダーがなくなるということは、犯罪者にとってもたいへん好ましい環境ということでしょう。オンライン上で国際的な詐欺や窃盗が生じたとき、だれがそれを取り締まり、その犯罪をどこの国の法律で裁くのかも難しそうです。ポジティブな面、ネガティブな面を考えさせられる素晴らしい番組でした。うっかりPartⅠの放映に気づかずにNHKプラスの配信期間も終了していました。ぜひ再放送をお願いしたいです。
2025.02.02
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西洋美術館で開催されているモネ展に行ってきました。終了日が近いため、平日の昼というのにすごい行列です。チケットを購入済みでしたが、1時間待ちでようやく入れました。印象派の代表的な画家であることと、睡蓮の絵が多いという程度の知識しかなかったのですが、展覧会で少し学ぶことができました。学んだことの一つは、モネが一貫して自然の中にみられる光や影、天候などさまざまな変化をとらえようとしていたことです。自身で庭をつくり、その池に入れた睡蓮や日本風の橋の絵を何枚も描いています。私は大自然に親しんできたので、そんな半自然のような風景を描くことにどんな意味があるのかと感じていました。しかし、モネの描こうとしていた自然はもっと広い概念なのでしょう。池にうかぶ睡蓮をモチーフとするだけで、一日の中でも、季節によっても周りの草花や雲などとの関係によってもさまざまな変化があります。そうして変化することこそが自然というものの本質で、それを何枚もの絵画として表現しようとしていたのです。モネは妻や子を失う経験を経て精神的にダメージを受けた上に、晩年には白内障を患って色をきちんと感じられなくなります。自身の記憶にある色を絵にぶつけているかのような激しい作品も多くありました。苦悩とエネルギー、最後まで表現者としての人生を送ったモネの情熱が伝わってきました。
2025.01.30
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少し仕事に余裕が出てきたので、Amazonプライムで映画ドライブマイカーを観ました。数年前の作品で、カンヌ映画祭やオスカーなどでも賞をとった作品ですが、脚本や監督への評価が高かったのがよく理解できました。口コミを読むと、「何が良いのかわからない」というコメントもありました。実は、それも理解ができます。この作品は、辛い境遇にあったこととか、死と接したこととか、男女関係の機微の経験とか、を前提としているためです。たとえば若い世代で、比較的幸せに暮らしてきた人にとって、本作のストーリーが響かないかもしれません。もちろん、それは決して悪いことではなく、素晴らしい人生をそのまま送り続ければよいのだと思います。主人公である家福(かふく)は舞台演出家で、劇中劇が映画全体を通じて進行しつつ、映画のストーリーも展開してゆきます。劇のつくりが特殊でそれぞれが異なる言語を話す俳優たちが一つの作品を演じるのです。中国語でAさんがセリフを言ったら、日本語でBさんが返す、つぎに英語…のように観客は混沌としてきます。さらに韓国手話も入り…と、本作品のテーマの一つが表面的な言葉でないコミュニケーションというところにあるのを象徴しています。それは家福や運転手をすることになったみさきのエピソードにもつながります。それらが並行して絡み合ってゆく話の巧みさは秀逸でした。みさき役の三浦透子は、演技力もあるのでしょうが、それよりも持っているオーラというか独特の雰囲気がいいですね。歌手として先に知っていましたが、新たな魅力を感じました。なお、私は原作となった村上春樹の小説を読んでいませんが、映画はかなり原作と異なっているようです。
2025.01.18
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