乱読・積んどく・お買い得!?
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昨日から映画も公開された話題作を、 震災後、初めて読む一冊に選んだ。 帯には「心を震わせるラストまでページを捲る手が止まらない!」 角田光代が全力を注いだ、ノンストップ・サスペンス」という文字が踊る。 確かに、どんどん読んでしまった。 薫を誘拐するシーンから、康枝の家、中村とみ子の家を経て、 エンジェルホーム、そして小豆島での暮らしまで、 希和子がそれぞれの場所で出会った人たちは、誰も皆とても個性的。特にエンジェルホームの存在は、本作品の根幹となるもの。その閉じた空間・人間関係の中での生活を描くために、多くのページが割かれている。そして、それとは全く対照的な、自然に溢れ、温かい人々に囲まれた小豆島の暮らし。しかし、穏やかな日々が訪れるかと思われたところでお話しは急転、語り手の交代となる。結局、丈博の生み出した歪んだ男女関係が、全ての人たちを不幸にしてしまったに過ぎない。希和子も恵津子も、いずれもが被害者であり、加害者でもあるように思える。もちろん、希和子が誘拐という行為に及ばなければ、状況は随分変わっていたはず。が、恵津子の男関係が別の新たな問題を引き起こし、家族を混乱させたかも知れないが。そんな中、一番の被害者になってしまった薫、いや恵理菜は、かつてエンジェルホームで一緒に暮らしていた千草と再会し、さらには、思いがけない新しい生命を授かったことで、新たな一歩を踏み出すことになる。しかし、彼女の行く道も、希和子や恵津子同様、決して平坦なものにはならないはずだ。ところで、ラストシーンは「心を震わせる」ほど、私にとって、劇的でも、感動的でも、予想外なものでもなかった。どちらかというと、穏やかでとても静かな幕切れだった。帯のコピーに、少し期待し過ぎたかもしれない。
2011.04.30
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