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シリーズ第4弾。 小説 野生時代2016年1月号~2月号に掲載された「羊の血統」と 小説 野生時代2015年12月号に掲載された「羊の謀反」、 そして、書下ろしの「黒羊の挽歌」を収録。 「羊の血統」は、勝村英男視点で描かれるお話。 名門・清祥女子学園の生徒がラブホで殺された事件と、 勝村が遭遇したベネチアンマスクの女。 その接点を探るべく、勝村はクラブに潜入する。「羊の謀反」は、ソフト開発会社のCEO・山野井視点で描かれるお話。彼が開発した株価変動予測システムは真っ赤な偽物。共同経営者の詐欺行為に加担することに耐えられなくなった山野井に勝村と山猫が手を差し伸べる。そして、「黒羊の挽歌」は、犬井視点のお話。全く関係のなかったはずの「羊の血統」と「羊の謀反」のお話が、ものの見事につながっていくのは、本当にお見事。山猫のアシストで、犬井がかつての相棒を追い詰める。 ***安定の面白さ。また、ドラマ化してもらいたいところだけれど、もう、前回と同じキャストは無理になっちゃいました。とても残念。
2017.01.29
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カスタマーレビューの評価は、ものすごく高いです。 スラスラ読み進めることが出来るし、 ボリュームもそんなにないので、あっという間に読了。 そして、「なるほど!」と思わせられるところもありました。 ただし、お話としては残念なところが多々見受けられます。 『もしドラ』や『夢をかなえるゾウ』は遥か彼方の存在ですし、 同じテイストの『仕事は楽しいかね?』ともかなり差があります。 面白いことは面白いのです……ベースはいいんだけどなぁ…… *** 多くの人を幸せにするには、まず自分を幸せにすること。 次に自分の身近な人たちや、自分の愛する人たちを幸せにすること。 そうやって広げていくもの。 そうでないといくら「もっと幸せを」と言っても、 それは虚しい空論であり、ウソだ。 ウソはいつか必ずばれる。 自分の幸せ、家族や従業員の幸せを犠牲にした経営は、 最終的に誰のことも幸せにできない。 わかるね? 経営は、人間を幸せにするためにある。主人公・池田に向けて書かれた、指南役の近藤からの文章。本著の中で、私が一番心に残った箇所です。
2017.01.25
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骨肉腫と診断された夫と、それを支える妻。 その闘病の日々を描いた作品…… と思っていたら、その背後には諸々の事情が。 夫婦について、家族について考えさせられる一冊。 主治医の態度や言葉にイラつき、疑心暗鬼になってしまったり、 怪しげな拝み屋さんに、夫と一緒に出かけてみたり、 夫の遺産相続の件で、夫の兄弟に振り回されたりする中、 どんどん切迫する家計に、妻の心労は重なっていき……思うようにいかない闘病生活に夫が抑うつ状態に陥ると、自制心を失い、子どもに八つ当たりしてしまう。まさに共倒れ……この状況で踏ん張れる人というのは、稀有な存在なのでしょうか。そして、手術が終わった場面で唐突に吐露される夫との結婚生活の実態。 クロとらは ふざけ好きで 子どものようで ちょっとでも否定されると 真っ暗になるのです おかしな… おとなげないところがいっぱいあって 自分しか眼中にない 家族も眼中にない そして少しでも苦情を言うと その瞬間 ブレーカーが落ちたように 耳に蓋をしてしまうのです なにこれ 育ちのせい? 幼児期からの自己防衛で? それとも…… 脳の機能に偏りのあるタイプ… 疲れて 噛み合わなくて… 心が通い合っている 気がしない 宇宙人か? リセットしたい どっか行ってくれないかな こいつ そんな結婚生活…どちらも辛いですね。闘病生活を乗り越えた二人、最後に「もう一度 運命の優しさを 信じ直そう」と記した妻ですが、今後、本当に大丈夫なのでしょうか?
2017.01.21
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大阪市営地下鉄御堂筋線と堺筋線の両方に動物園前駅があります。 「動物園前」という名称で分かるように、大阪市天王寺動物園の最寄駅であり、 通天閣が建ち、串カツ店等が立ち並ぶ「新世界」にも近いです。 動物園も新世界も、多くの人々が訪れる観光スポット。 これらの観光スポットは、駅の北側に位置しているため、 訪れる人たちは、駅の南側に足を踏み入れることはほとんどありません。 阪堺電気軌道阪堺線の今池停留場辺りまで南進すると、 本著の舞台である飛田新地までは、あと少しです。そこは、大正時代に築かれた、かつて日本最大級の遊廓だった場所。1958年の売春防止法施行以後は、料亭街『飛田料理組合』になりましたそこで、今どのようなことが実際に行われているかを記したのが本著。かつて、この地で料亭のオーナーをしていた杉坂さんが著者です。親方と客引きのおばちゃん、そして女の子たちの日常や、料亭開店までのプロセスや経営のノウハウ、女の子をどのようにスカウトするか、トラブル対応等もリアルに記述。写真や地図も、数は多くないですが掲載されています。普段目にすることのない、人間模様がそこにはありました。しかし、そこで繰り広げられるドラマは、特段、私たちの日常と大きな隔たりがあるとも思えませんでした。それでも、実際に現地に足を運ぶ機会は、なかなかないものです。
2017.01.21
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資本主義が経てきた歴史的プロセスを検証し、 その成長が止まる時期が目前に迫っているということを明らかにする。 利子率や利潤率、地理的・物的空間と電子・金融空間といった観点から、 資本主義の死の兆候が、次々に示されていきます。 述べられていることは、そう多くはありません。 同じことが、言葉や例を変えながら、何度も繰り返し説明されています。 もちろん、ある程度の経済や歴史の知識を持ち合わせている必要がありますが、 難しすぎて手も足も出ない、ということにはならない新書レベルの一冊です。 *** 16世紀以来、世界を規定してきた資本主義というシステムが ついに終焉に向かい、混沌をきわめていく「歴史の危機」。 世界経済だけでなく、国民国家をも解体させる大転換期に我々は立っている。 500年ぶりのこの大転換期に日本がなすべきことは? 異常な利子率の低下という「負の条件」をプラスに転換し、 新たなシステムを構築するための画期的な書!表紙裏には、上のように記されています。そして著者は、 こうした難しい転換期において 日本は新しいシステムを生み出すポテンシャルという点で、 世界のなかでもっとも優位な立場にあると私は考えています。(中略) その理由は、逆説的に聞こえるかもしれませんが、 先進国のなかで もっとも早く資本主義の限界に突き当たっているのが日本だからです。(p.105)このように述べたうえで、アベノミクスの積極財政政策は、過剰な資本ストックを一層過剰にするだけ、過去の成長イデオロギーにすがりついたままでは、日本の中間層はこぞって没落してしまうと指摘します。 では、成長を求めない脱近代システムをつくるためには どうすればいいのでしょうか? その明確な答えを私は持ちあわせていません。 というよりそれは一人でできるものではなく、 中世から近代への転換期に、ホッブス、デカルト、ニュートンらがいたように、 現代の知性を総動員する必要があると思います。 ただ、少なくとも新しい制度設計ができ上るまで、 私たちは「破滅」を回避しなければなりません。 そのためには、当面、資本主義の「強欲」と「過剰」に ブレーキをかけることに専念する必要があります。(p.132) これが結論です。つまり、「脱成長」「ゼロ成長」。中国バブル崩壊という最悪のシナリオを回避し、ソフト・ランディングの道を探ろうというのが、著者の主張です。
2017.01.21
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隠館厄介、登場。 『備忘録』、『遺言書』に続く3回目。 TVドラマでも登場しただけに、最も馴染み深いキャラ。 彼が登場すると、何だかお話が落ち着く感じ。 そして、もう一人既出のキャラらしき人物が。 今日子さんのボディーガード・守さん。 これって、『推薦文』の親切守? 今回は、名前だけの登場なので確定出来ません。 ***これまで、多くの冤罪事件に巻き込まれてきた厄介。そんな彼に、取材の申し入れが。相手はジャーナリストの囲井都市子。何と、今日子さんの講演会で見かけた女性だった。インタビュー後の食事の席で、彼女は、これまでに付き合った男性6名が、ことごとく破滅していったと語る。そして、災難続きの厄介に理解を求め、唐突に求婚。厄介は、都市子が付き合った6名の男性の破滅が、彼女のせいではないことを証明すべく、求婚されたことを伏せたまま、今日子さんに彼女の身辺調査を依頼。最速の探偵は、6時間で6人の男性と、厄介についてまで調べ上げてしまう。 だから、隠館さんとしては、 私に囲井都市子さんの身辺調査を依頼することで、 呪いなんてそもそもない、 つまり結婚しても 自らに被害が及ぶことはないのだということを確認すると同時に、 彼女にがっつり恩を売ることで、 一気に婚約を成立させようとするお考えなのですよね?(p.140)これまでで最高レベルの災難!厄介に対する、『今日の今日子さん』のイメージは最悪。そして、プロポーズを断った都市子からは、『納得させる形で断らないと、あなたを破滅させます』。そんな厄介の窮地を救ったのが守さん。彼の厄介に関する報告によって、『今日の今日子さん』が『明日の今日子さん』へとバトンタッチし、厄介への嫌悪感をリセットしてから、事件に立ち向かわせることに。 ***もちろん、『明日の今日子さん』は真実を解き明かします。今回は、ミステリーとしても良い出来だったと思いますし、何より、忘却探偵の「壁」を見事に打ち破ったのがスゴイです。守さんも、そのうち登場するのかな。
2017.01.21
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『親なら知っておきたい学歴の経済学』を読んで、 奨学金の返済が大変だということを知り、本著も読んでみました。 JASSO(日本学生支援機構)で、利息付の第2種の奨学金を、 月に12万円ずつ4年間フルに借りると、総額576万円にもなります。 上限利率3%で計算すると、20年間で返済する総額は775万円、 月々3万2292円を返済し続けることになるそうです。 借りることのできる額は、私の想像以上に多かったのですが、 返済額も、馬鹿には出来ないものでした。 奨学金貧困が続いている。 2010年から、3カ月の遅滞者の情報を信用情報機関に登録し、 いわゆるブラックリストに載せるようになった。 9カ月延滞すると裁判所に督促を申し立てる。 本格的に取り立てられるということだ。 そのうえ、9カ月滞納すると、一括返済を求められる。 しかも滞納すると元本に対して年間5%の利息がかかる。(中略) 本人が払えなければ、当たり前のことだが、保証人のところに請求がくる。 そもそも親にお金がないから奨学金を借りて進学したわけだから、 一括返還を請求されても払えない場合がほとんどだ。 本人が奨学金破産すれば、親や親族なども同じように 自己破産の連鎖につながる可能性がある。(p.84)そもそも、月に12万円も借りる必要があるのかということになりますが、首都圏の下宿生は、4年間で約405万円の仕送りをしてもらっています。これに私立文系なら、4年間で435万円の学費が必要です。親の負担額は、4年間で平均約840万円、年平均210万円となります。これが私立理工系なら、4年間でほぼ1000万円、年平均で約250万円、私立薬学部に6年間通うと、総額1800万円、年平均で300万円ほど、私立医学部に6年間通うと、総額3900万円、年平均で650万円ほど、国立大なら、4年間で平均約650万円、年平均で約160万円が必要です。親世代の平均年収から考えると、簡単に支出できる額ではありません。本人がアルバイトをするのはもちろん、奨学金も必要になってくるわけです。仕送りがゼロの下宿生については、奨学金で7万6260円、アルバイトで3万3300円を平均で得ているとのこと。幼稚園から高校までの15年間、全て公立だと約523万円、全て私立だと約1770万円が必要だといいます。幼から高まで公立、地元国立大に現役合格し自宅から通学で、総額850万円ほど。幼から高まで私立、首都圏私立医学部に現役合格で下宿だと、6000万円にも。 *** 「ほんの10年前までは、現役でMARCHに進学する生徒は、 皆から不思議がられていました。 浪人すれば早慶に行けるのに、なぜ?っていう感じですね。(中略) それが今は現役でMARCHに進学するのが 当たり前になってきたと感じています。」(p.34)東京の私立男子進学校の進路指導教諭の言葉。現役進学志向は、特に文系で強いとのこと。 「優秀な理系の生徒は、どうして東大にいくのかと言われてしまいます。 研究者になったり、大企業に入って研究で世界的な成果を上げるなんて、 ほんの一握りの人たちで、それなら国立大の医学部に進学して、 困っている人たちを助けるほうがよっぽどいいとの考えです。 保護者もそれを望みます。 文系の優秀な生徒にしても、目指しているのは市役所や県庁への就職で、 これが生徒にとってのエリートコースなんです。 国家公務員になりたい、 大企業の社長になりたいなどとは思っていません」(p.105)地方トップ高の進路指導教諭の言葉。この地方の地元進学志向により、首都圏の大学の地元占有率が上昇しています。2人に1人が大学に進学するようになる中、学費が高騰。そこに生じた「現役合格志向」と「地元進学志向」。さらに「公立高進学志向」も相まって、進学のムーブメントにも変化が。「行動遺伝学」の知見が広まると、さらに変化が起きるのかも。
2017.01.14
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「ほめて育てる」が、今の世の流れ。 本著は、それに逆らうかのような一冊(に見えるタイトル)。 なので、批判の的になることは、前もって織り込み済みか。 しかし、カスタマーレビューでの評価は上々のよう。 昨夜、ABCラジオの「堀江政生のほりナビ クロス」で、 関西大学人間健康学部の杉本厚夫教授が、 「褒めてしまうと、そこで満足してしまうので、褒めちゃだめ」 というようなお話をされていたので、「へぇ~」と思ってしまった。 *** マスメディアの姿勢にも問題ありと言わなければならない。 つい最近あった「事件」にこんなものがあった。 「高校生96人に都庁前で正座させる 校外学習に『遅刻』 35歳男性教諭処分へ 都教委」 (「産経ニュース」2015年7月11日)(中略) たとえ正座が体罰に当たるとしても、 この報道には抜け落ちている視点があるのが気になる。 それは、96人もの生徒が遅刻するというような異常な事態を なぜ誰も問題視しないのかということだ。 そもそもこの校外学習は、遅刻も含めて、 家庭や校内だけでは身につかない社会的行動を学ぶ機会であったはずだ。 この一件で、生徒たちが実際に学んだことは何だったろうか。 守るべき約束を守らなかった自分たちは親も含めて学校から「謝罪」され、 約束を守らないようではだめだと 規範意識を改めて叩き込もうとした先生は処分対象になる。 彼らの規範意識はどんどん薄れていくに違いない。 教師たちは今後どんな態度で生徒たちに接していけばよいのだろうか。 教育的視点の欠如した批判の目、報道のあり方は、 義務を果たさなくても権利は行使できると教えることにならないだろうか。 (p.96)先日、成人式の式辞の最中に、明石市長がざわついている会場に向け一喝した。この件について、神戸新聞は批判的に伝えていたが、その他の報道機関で、この件を扱ったところはほぼ見られなかった。これも、時代が少し動いたととらえてよいのだろうか。
2017.01.14
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2012年3月20日に第1刷発行。 DSM-5が世に出る前の一冊なので、 若干古さを感じさせられる部分が、所々に見られるものの、 記されている内容は、類書の中でも群を抜いていると思います。 こういった書物においては、どちらかというと、 研究者としての立場を前面に出しながら書かれているものが多いのですが、 本著は、精神科医が目の前の患者さんに接する視点・態度で書かれています。 吉田先生が、優れた臨床医であることが強く伝わってきます。 *** この人のキャパシティ(燃料タンク)には、 時速40キロか50キロで走行する分しか残っていなかったのでしょう。 それを、70キロ、80キロ、場合によっては100キロで運転しました。 そんなことをしたら、誰だって一生懸命ハンドルを握ります。 もう、真正面しか見えません。 いま、ガソリンがどれだけ残っているのか、 どこにパーキングエリアがあるのか、 気づくゆとりもありません。 そして、急に止まってしまったのです。 それが、うつ病になったということです。 ですから、うつ病を治療するにはちゃんと休ませて、 ガソリンを満タンにしなければなりません。(p.64)「うつ病の治療でいちばん大切なこと」では、人間を車に例え、スピードメーターとガソリンメーターの関係で、休養の大切さと働き方を、とてもうまく説明しています。きっと、診察室で何度となくこのようにお話されてきたのでしょう。 しっかりと休養を取ってガソリンを満タンにし、 仕事に復帰してからも制限速度を守って運転すれば、 従来型うつ病は必ず治ります。 ただし、その経過は一進一退です。 不安感や憂うつ感が軽快しても、 疲れやすさ、おっくう感、気力低下はある程度まで残ります。 一見、症状がなくなったあとでも、 落ち込みやすさはしばらく続くので、注意が必要です。 再発することも少なくありません。(p.74)非定型うつ病や引きこもりについての記述も、とても素晴らしいものです。メンタルヘルス・マネジメントに取り組む方も、ぜひ一読を!
2017.01.14
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副題は「この鴛鴦茶がおいしくなりますように」。 鴛鴦茶とは、今回のお話の中に登場するイーグルコーヒーで、 マスターの高野鷹が出してくれた、クリーミーな風味の奥に コーヒーと紅茶の二つの異なる渋みが感じられるというもの。 今回は、アオヤマが中学生の頃に心を寄せていた年上の女性・眞子が登場し、 アオヤマと美星の関係に、ちょっと揺らめきが…… 眞子は無類の『源氏物語』愛好家で、中でも宇治十帖に強い思い入れがあり、 それが、今回のお話の展開における肝となっています。前巻を読んだのは、1年半ほども前のことで、もう、このシリーズは中断されたのかなと思っていました。一冊ごとに、趣向を変え、工夫を凝らしていることが伝わってきますが、なかなか定まりきらないという感じがするのも確かです。
2017.01.14
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2013年6月出版の『40歳を過ぎたら、三日坊主でいい。』の新書版。 本著巻末「おわりに」によると、 内容については、時間経過に対応する程度の訂正を行っただけとのこと。 なので、ほぼほぼ同じ内容のものということでしょう。 「三日坊主でいい」から「定時に帰りなさい」へのタイトル変更は、 読者の購買意欲をより高めるべく、時勢に即しなされたものだと思います。 先日読んだ『残業ゼロがすべてを解決する』等々、 私もこの手の本は結構読んできましたが、最近ではトレンドになっていますからね。 *** 忘れるためには、何事も他人事としてとらえるという方法がある。(中略) そのような感じで、自分の体験も客観視すればいいのだ。(中略) 悶々と悩むのは、その問題に心がとらわれているからで、 問題との距離感が近すぎるのだ。 距離感が遠くなれば、悩み続ける時間も減る。 そうすると、自然と問題が解決する場合も多いのである。 哲学者でもないかぎり、悩み続ける意味はない。(p.80)本著で付箋を貼った唯一の箇所。「ホント、そうだよなぁ」と思うのですが、実際に行動に移すとなると、これが結構難しい……。本著全体が、こんな感じですかね。
2017.01.08
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正式なタイトルは『水鏡推理V ニュークリアフュージョン』。 前巻では、タイトルに掲げられた「アノマリー」という言葉の意味を 確認しないままに読書を始めてしまうという失敗を犯してしまったので、 今回は、読書前にちゃんと調べました。 「ニュークリアフュージョン」とは、 コトバンクで調べると『「核融合」に同じ』と出てきました。 「なるほど、核融合ね。」という感じで、ここで分かったつもりになってしまい、 読書を開始してしまったので、結果、前回と同じ失敗を繰り返すことに……。コトバンクで表示された『「核融合」に同じ』の「核融合」をクリックしさえすれば、ちゃんとこのお話の肝が説明されていたのです。そう、一つ目の意味は私がすっかりそれだと思い込んでしまった「原子核融合」。そして、もう一つの意味は「生物学で、受精の際に精子の核と卵子の核とが合体すること」。このように、今回のお話は「原子核融合」と「精子と卵子の合体」がテーマ。核融合発電の研究開発に絡む陰謀を、研究公正推進室に異動になった水鏡瑞希が、今回も見事に暴き出します。その際、自らも「不妊バクテリア」の脅威に晒されることに。 ***さて、このお話の中には、病院の精神科が舞台として登場します。先日読んだ『レベル7』にも精神科が舞台として登場したので、偶然ですが、こういうふうに続くこともあるんだなと思いました。ただし、今回は閉鎖病棟の隔離室の様子が描かれていました。『こころを病んで精神科病院に入院していました』では、院内の様子が結構詳しく描かれており、保護室についても触れられていました。隔離室(保護室)についてネットで調べてみるとこんな感じで紹介されており、このお話に登場した隔離室とは、イメージがかなり違いました。
2017.01.08
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序盤はブルーバックスを読んでいるような感じです。 結構、理系色が強くて専門的で、難しく感じます。 でも、読み進めていけば、行動遺伝学というものについて、 それなりに理解できるような気がします。 けれど、問題は第6章。 この部分については、かなり独創的です。 もし、小中高が現在の学年制から、著者が提唱する能力制に転換されたら、 学校は、学ぶ者にとってどういう場に変化するのでしょうか? *** 知能に及ぼす遺伝と環境の影響を、 児童期、青年期、成人期に分けてプロットしてみると、 図13のようなグラフになります。 グラフを見ると、年齢が上がるほど 遺伝の影響が大きくなっていくことがわかります。(中略) 人間は年齢とともに経験を積み重ねていくわけですから、 環境の影響が大きくなっていきそうなものですが、 実際は逆なのです。(p.116)行く道筋や速度は違えども、辿り着くところは、予定調和の然るべき場所ということでしょうか。 先生や教え方の影響が 子どもにまったくといっていいほど影響を与えていないというのは、 教師としてはかなりショッキングなデータだと思います。 これらの結果は、すでに先生たちがそれぞれにそれなりの教育を 子どもたちに与えてくれているからだと思います。(p.127)著者によると、環境の影響で一番大きいのは「いま、ここで」であり、以前の環境の影響はほとんど残らないのだそうです。なので、誰がどこでどんなふうに教えても大差ない。お受験なんて、全く意味のない無駄な努力と出費ということになるのでしょう。 つまり、学力の70~90%は、 子ども自身にはどうしようもないところで決定されてしまっているのです。 にもかかわらず、学校は子ども自身に向かって 「頑張りなさい」というメッセージを発信し、 個人の力で何とかして学力を上げることが強いられているのです。 これは、科学的に見て、極めて不条理な状況といえるのではないでしょうか?(p.145)不条理と分かっていても、人は立場でものを言わねばなりません。小中高の先生と、大学の先生では立場が違います。大学の学者先生だから、活字でこういうことを述べても大叩きされませんが、もし、小中高の先生が同じことをすれば、全国ネットのニュースに即登場です。 一卵双生児でもちがう大学へいくきょうだいがいます。 中にはレベルの違う大学に行くことになってしまったケースもあります。 一卵性双生児は遺伝要因も共有環境も同一ですから、 その二人の差は、いわば同一人物が環境の違いだけで どのくらい異なる結果をもたらすのかという、 絶対にすることのできない統制実験が、自然に成り立っているのです。 それによると差がありませんでした。 もちろん通常は偏差値の高い大学の卒業生のほうが生涯賃金は高くなります。 しかし偏差値の高い大学と低い大学に別れ別れに通うことになった 一卵性双生児で比較すると、その間に差はなかった。(中略) 収入の差は、通った大学のレベルによるのではなく、 もともとの能力によるものなのです。(p.157)これが本著の結論。遺伝子の力は揺るぎないものなのです。
2017.01.07
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岩崎弥太郎と弟の弥之助、 そして、弥太郎の嫡男・久弥と、弥之助の嫡男・小弥太。 幕末から明治、大正、昭和という激動の時代を、 三菱の看板を背負い、生きた4人の男たちを描いた一冊。 と言いながら、その紙幅の半分は弥太郎の記述に費やされており、 残されたうちの半分で弥之助を、 もう半分で、久弥と小弥太を描いている。 タイトル通り、弥太郎メインの一冊である。 ***「第1章 竜馬を支えた商売の天才、岩崎弥太郎」では、土佐の地下浪人の家柄に生まれた弥太郎が、長崎の土佐商会主任となって、そこで坂本龍馬に出会い、明治になって、大阪で三菱商会を立ち上げるまでが描かれる。「第2章 弥太郎の野望-政府との果てなき闘い」では、三菱商会が、政府の支援を受けた日本国郵便蒸気船会社と競い、台湾出兵を機に躍進、外国汽船会社を駆逐するも、政府援助の共同運輸会社と激闘の最中、弥太郎が没するまでが描かれる。「第3章 温厚沈着な経営者、岩崎弥之助」では、副社長として兄・弥太郎を補佐し、三菱を日本一の海運会社にした弥之助が、社長になって8カ月で共同運輸との合併を決意、海運業から撤退するが、陸の三菱社を創業して多角的経営を展開、三菱合資会社を設立するまでが描かれる。「第4章 久弥と小弥太の拡大経営」では、29歳の若さで社長となった久弥が、金融、商事貿易、製紙、農牧事業に注力し、38歳で社長となった小弥太が、コンツェルン形態を整え、三菱財閥と称されるようになった様が描かれる。 ***もちろん、紙幅を割いた分だけ、弥太郎についての記述が最も読みごたえがあり、その気性の激しさや、それ故の波乱万丈の人生が伝わってくる。『龍馬伝』での、香川照之さんの演技が目に浮かんでくる。が、私が最も興味を持ったのは、弥之助である。それは、現在の三菱の土台を作ったのは、間違いなく弥之助であり、その多角的経営の成功なしには、現在を語ることは出来ないからだ。さらに、社長を退いた後の様々な活動にも、興味津々。そして、それをうまく引き継ぎ、さらに発展させた久弥も興味深い。若くして社長の座に就き、余力を残しながらバトンタッチを果たしただけでなく、余生は、自らの興味ある分野に力を注いだ生き方には、誰もが羨望の眼差しを向けることだろう。
2017.01.07
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著者は株式会社武蔵野の社長・小山さん。 小山さんは、バブル絶頂期の1989年に社長に就任されましたが、 当時の社員は中卒が2名で、残りも限りなく中卒に近い高卒ばかり。 幹部は16人中5人が元暴走族で、小山さん自身が社内一の武闘派だったそうです。 株式会社武蔵野のホームページを見ると、 1964年にダスキンムサシノとして活動を開始し、 現在では、ITソリューション事業や経営サポート事業、 シニアライフコンサルティング事業も手掛ける、従業員360名の会社でした。 *** 「今までは、一度会社に出勤してから現場に行かせていました。 仕事が終われば、どんなに現場が遠くても会社に戻り、タイムカードを押させていた。 でも、キングオブタイムの導入によって直行直帰が管理でき、 社員のムダな行動がなくなり、時間効率が向上しています。 また、このシステムは場所を表示できるので、虚偽報告が減ります。 社員にとっても、帰る時間が早くなるので評判はいいですね。」(p.72)これは、株式会社ホームライフの手崎社長の言葉。文中の「キングオブタイム」は、クラウド型の勤怠管理システムで、東京ガスグループや日比谷花壇でも導入されている優れもの。技術の進歩に驚かされます。 会社に変化を起こすには、今までの考え方や常識を捨てて、 非常識を積み上げていくことです。(中略) 「他業界の常識や、他業界でうまくいっていることを、 自分の業界で最初に実行すること」です。(中略) 同業種の場合、どうしても既成の枠組みから抜け出すことができない。 だとすれば、「他の業界」の成功事例を取り入れるのが正解です。(p.79)この部分には、大いに頷かされました。社外にも様々な人脈を築いておくことの重要性が、凝縮された一文だと思いました。 「大切なのは、働いた時間ではなくて、仕事の中身です。 当社に、育児のため、時短勤務をしている男性社員がいます。 この社員は6時間しか勤務していません。 営業職の中で最も勤務時間が少ないのですが、 時短で働いているにもかかわらず、成績はナンバーワンです。 この男性社員は、個人の対目標達成率で年間7回のトップ賞を獲りました」(p.85)これは、株式会社あきば商会の遠藤社長の言葉。遠藤社長は、残業時間を減らす取り組みの中で、労働時間の長さと実績(売上)が比例しないことを実感したといいます。小山さんが本著で述べようとしているところに、グッと迫る部分です。 同じ仕事をして、定時に帰る人と残業をする人がいるなら、 定時に帰る人のほうが能力は高い。 それなのに、能力のない人は残業代をもらうため、 「能力の高い人」よりも「能力の低い人」のほうが可処分所得は高くなります。 「ちんたら仕事をする社員のほうが、できる社員よりも年収が高い」という、 いびつな状態がまかり通ると、 がんばって時間内に仕事を終わらせる人がやる気を失います。(p.95)そこで、小山さんは残業時間と評価を連動させて、残業が少ない社員には賞与を多く、残業が多い社員については賞与を少なくする仕組みをつくりました。最終的に、残業をせず帰った人が年収が多くなるように変更したのです。すると、「たくさん賞与がほしい」という不純な動機から、社員たちが残業を減らす工夫をはじめ、業務改善が進んだそうです。この部分を読んで、「自分の会社ではちょっと……」と躊躇している間は、いつまでたっても、旧態依然とした現状を変えていくことは出来ないのでしょう。 「30時間以上残業する社員に共通しているのは、 『マイペース』であることと、 『自分で仕事をつくってしまう』ことです。(p.225)これは、ヤマダユニア株式会社の山田社長の言葉。求められていること以上のことをすることは、本来褒められて然るべきことのはず。ただ、往々にして、やらなくてもいいことまでやろうとしていることが多いのも事実。その仕事の必要性を、適切に判断できるかどうかがポイントなのです。本著は、中野さんが社長を務める会社だけでなく、他社の実践例が数多く取り上げられており、とても参考になりました。「勤務管理」というと、ついつい内向きの発想に終始していまいがちですが、こうやって外に目を向けることが、いかに大切かということに気付かされました。
2017.01.07
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