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chiko619 @ Re:新参者(09/22) 「新参者」読みました。 東野圭吾さんは、…
kimiki0593 @ 相互リンク 初めまして、人気サイトランキングです。 …
Twist @ こんにちは! 遅ればせながらあけましておめでとうござ…
Twist @ こんにちは! 遅ればせながらあけましておめでとうござ…
Twist @ はじめまして^^ 先ほどこのロングインタビューを読み終え…
2026.01.04
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『藤娘』の舞台への男の乱入事件 から6年後のお話
 喜久雄の様子がおかしいことに、周囲の人々が気付き始め、
 さらに、その行動にも明らかな変化が見られるように。
 しかし、それでも喜久雄は舞台に上がり続けるのです。

   ***

『女殺油地獄』で借金に追いつめられた与兵衛を伊藤京之介が、
惨殺される油屋の女房を喜久雄が演じる国立劇場の舞台。

どうやら喜久雄は、実際よりも豊穣な世界を見ているようです。

3年ほど前から舞台以外の芸能活動を一切受けなくなったことで、
その存在が却って神格化される状況になっていた喜久雄。
京之介からの、先代の追善公演で『藤娘』を踊って欲しいという頼みは引き受けましたが、
たまには飲みに出て来いと言うの誘いの言葉には、

  「ここ最近ずっと、なんかこう探してるものが見つからねえっつうか、
   無理に他のことしてても、それが気になって仕方がねえっていうか」

  「そう、景色。……そりゃあ、きれいな景色でさ。この世のものとは思えねえんだ。
   あれを舞台でやりてえなって。あんなかで踊れたら、俺はもう役者やめたっていいなって」

一昨年、文化功労者の栄誉を授かった喜久雄に「人間国宝」の審議が始まろうとしていました。
しかし、その出自や若い頃の素行もあって、それは険しい道のり。

幕が下りるや、すぐさま病院に駆けつけた喜久雄に対し綾乃は、

  「嫌や! 来んといて! これ以上、近寄らんといて!
   なんで? なあ、なんでなん?なんで私らばっかり酷い目に遭わなならへんの?
   なんでお父ちゃんばっかりエエ目みんの? 
   お父ちゃんがエエ目みるたんびに、私ら不幸になるやんか!

   私らから喜重を取らんといて! なあ、もうええやんか……」

振り返ると、『太陽のカラヴァッジョ』の撮影後に京都の市駒を頼った頃、
小学2年の綾乃と一緒に、銭湯帰りに稲荷神社に寄った時のことが頭に浮かびます。

  「お父ちゃん、神様にぎょうさんお願いごとするんやなあ」

  「お父ちゃん、今、神様と話してたんとちゃうねん。悪魔と取引してたんや」

  「『歌舞伎を上手うならして下さい』て頼んだわ。
   『日本一の歌舞伎役者にして下さい』て。
   『その代わり、他のもんはなんもいりませんから』て」

その瞬間、綾乃の目からすっと色が抜けたのでした。

病院でのこの苦い出来事を詫びる綾乃からの手紙が、喜久雄のもとへ届いたのは、
その年の秋、京之介一門の追善公演が幕を開けた頃。
喜重の熱傷の経過も良く、追善公演で6年ぶりに喜久雄が踊った『藤娘』は神々しく、
「完璧を超えた完璧な芸」と言われる程のものでした。

一方、一豊はモデルの美緒と結婚するも、謹慎明け後も丹波屋を継ぐに相応しい役は回ってこず、
大女将・幸子は半月ほど前に足首を捻挫して入院。
世田谷の屋敷をどうしても守りたい春江は、自宅を担保にしてまで金策に走るのでした。

『祇園祭礼信仰記』の雪姫を演じる喜久雄は、初日前夜に住宅街の雪道を一人で歩き続け、
周囲を見渡して「きれいや……」と呟き、その腕を空に伸ばします。
そして初日、『爪先鼠』のところで雪姫の動きが一瞬止まったことに胸騒ぎを覚えた竹野は、
幕が下りた途端に喜久雄の楽屋へと向かい、「大丈夫かい?」と声を掛けます。
さらに一豊に、「……いつから、ああなんだ?」と尋ねると、

  「6年前、舞台に客が上がってきた……、あのあとからです」

  「……戻ってこなくていいんです。
   今の小父さんは、ずっと歌舞伎の舞台に立ってるんです。
   桜や雪の舞う美しい世界にずっといるんです。
   それは小父さんの望んでいたことなんです。
   だから小父さんは……、今、幸せなんです」

   ***

映画では、詳細が描かれることがなかった箇所なので、文章が随分長くなってしまいました。
この時点で、喜久雄が現実とは異なる世界の中を生きていたことが伺われます。
また、俊介の意志を継いで丹波屋を守ろうとする春江の覚悟には胸を打たれます。
そして、綾乃の手紙にも救われる思いでしたが、京之介が見た次の光景は辛いものでした。

  廊下に立っておりました彰子と蝶吉の体がすっと離れます。
  二人のあいだに男と女の匂いが立ったのを見逃すはずがございません。





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Last updated  2026.01.04 17:30:42 コメントを書く
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