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『京都下鴨 神様のいそうろう』の第2巻。 副題は「猫神様とアマテラスの宝玉」。 今回から大学部1回生の中野明日香が登場し「理龍推し」を萌子と競います。 その明日香がマルカリで買った翡翠の勾玉を、うさぎが持って行ってしまい…… ***「序章」では、学徳学園大学部1回生で演劇部の中野明日香が、萌子に足で壁ドン。「奇跡の美少女」と呼ばれドラマ出演も決まっている彼女も、理龍様にご執心の様子。第1章「猫神様のお願い」では、『神様のいそうろう』の『お猫様』が理龍と萌子に頼み事。高名な神の眷属神による『玉』探しについては、理龍が「八咫烏」本部長代理の朔也に報告。そして、20年弱前にお祖母ちゃんを支えていた「ちとせ」については、萌子が探すことに。どうやら、それは『ミステリー研究会』に顔を出していた白王子・藤原千歳のことのよう。第2章「翡翠の涙」では、明日香が学徳新聞のインタビュー記事掲載を差し止めたため、絵磨と萌子が『美味しい和菓子屋』特集の取材に『さくら庵』嵐山店を訪ねることに。櫻井宗次朗・杏奈夫妻が『キモノフォレスト』で偶然出会った明日香も含め3人を歓迎。明日香は杏奈からの言葉に涙し、ドラマ出演や高校時代の失恋について語り始めるのだった。第3章「アマテラスの宝玉」では、うさぎたちとその頭が宝玉を探していた理由が明らかに。翡翠の勾玉に籠められた千歳の後悔と明日香の悔さが、千歳の祈祷によって天に届いてしまい、ツクヨミも深い後悔を覚えるようになっていたが、アマテラスがツクヨミに寛容の姿勢を示し、千歳も幼馴染への恋に終止符を打ったことで、勾玉は浄化され明日香のもとへと戻る。「エピローグ」では、明日香がかつて好意を寄せていたクズ先輩からの誘いを瞬殺。そして理龍の『大切な女の子』とは、零人と小春の娘・2歳の茉莉、即ち自身の妹のことだった。 ***お話の流れからすると、このシリーズも今後しばらく続いていきそうですね。高校生だけでなく、メインメンバーに大学生も加わったことで、お話に広がりが出て来そう。理龍と零人、小春、茉莉に関する不明部分も、今後明らかになっていくことでしょう。まずは、次巻が楽しみです。さて、千歳と千歳が想いを寄せていた幼馴染・一ノ瀬寿々、そして寿々と結婚する親友・葉山透、さらに海藤剛士を加えた4人が、OGMとして活動するお話は、『わが家は祇園の拝み屋さんEX 愛しき回顧録』に掲載されていますのでご一読を。
2026.01.30
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本作は『わが家は祇園の拝み屋さんEX 愛しき回顧録』から時を経てのお話。 主人公は学徳学園1年生、安倍清明の流れを汲む家系で『視える人』の春宮萌子。 現在は、父方の従姉で動物病院を開いている賀茂由里子の家で世話になっている。 由里子の夫は動物看護士・賀茂和人で、清明の師匠・賀茂忠行の流れを汲む家系。 萌子が神と崇め、日々推しているのが幼馴染で学徳学園大学部3回生・賀茂理龍。 理龍の父は、和人の弟で「八咫烏」関西本部長、学徳学園大学部教授の賀茂零人、 母は学徳学園フリースクール教員の小春。 即ち、萌子は、理龍の父(零人)の兄(和人)の嫁(由里子)の父の弟の子。萌子の同級生で新聞部の三善絵磨は、父が「八咫烏」本部長代理の三善朔也、母が愛衣。赤城智也は、大阪で朔也にスカウトされた陰陽師組織「八咫烏」の若き審神者。***「序章」は、8年前母親に連れられた小学2年の萌子と、迎えに来た理龍との出会いの描写。第1章「白鼠と記憶と秘密入りの桜餅」では、二匹のモルモットがお客様として萌子の許へ。二匹は、現世の生き物にひと時、神が入っている『神様のいそうろう』。萌子の許に初めて『神様のいそうろう』がやって来たのは、中学生になったばかりの頃で、母と参った八坂神社に、転生前に現世の見学に来た大国主命の神使が、白鼠に入って現れた。一方、理龍は「八咫烏」本部に呼ばれ、本部長代理の朔也から次の3つのことを頼まれる。それは、都七福神の神様が姿を消したことへの対応、零人の所に迷い込んできた『神様のいそうろう』の文鳥を京の山のお社へ連れていくこと、嵐山の老舗料理旅館「松の屋」の娘で、今年の斎王代に選ばれた松原咲良の相談に乗ること。第2章「文鳥と斎王代のやきもち」では、理龍、萌子、絵磨が、赤城、咲良、2匹のモルモットのマスコット、文鳥と一緒に鞍馬山・貴船神社へ三社詣りに。結社で理龍が祝詞を唱えると、文鳥がサクヤヒメに姿を変え、姉のイワナガヒメに寄り添う。そして萌子の言葉に、咲良は悪口に惑わされず立派に斎王代を務めあげる覚悟を決める。第3章「七つの光と金平糖」では、理龍と赤城が都七福神詣りをして神不在を確認、結界を張る。そして理龍は、2匹のモルモットに入っているのがイザナギとイザナミだと気付き、白山神社で、萌子と共に真言を唱え七福神を呼ぶと、モルモットはただのモルモットに戻る。そして帰り道、これまでの色んな想いを吐き出すように、理龍の胸で萌子は声を上げて泣いた。「エピローグ」では、葵祭『路頭の儀』で十二単を纏う咲良の堂々とした姿を見せる。そして上賀茂の賀茂邸で、理龍が赤城の質問に、自分は魂の欠片ではなくそのまま転生した存在、萌子の方が魂の一部が人に転生する『神の分け御霊』だと答える。 ***萌子の父親が交通事故で亡くなった後、娘と母親との間に生じた関係は、『わが家は祇園の拝み屋さん』の小春と両親との関係を思い出させます。小春が吉乃に救われたように、萌子は由里子に救われました。そして理龍、やっぱりあの龍神の子・若宮かな?
2026.01.25
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NHKのドラマを見て、これは原作を読まねばと早速購入。 ドラマの第1話は、本書「カレンダーボーイ」をベースにしたお話でした。 作者は、新聞社勤務で社会部時代に検察庁など司法を担当し、 『転がる検事に苔むさず』で第3回警察小説大賞を受賞、 作家デビューした直島翔さんです。 ***「カレンダーボーイ」安堂清春(35)は、任官7年目の裁判官。1年前、東京地裁勤務時に特例判事補に任命され、その後Y地裁に赴任して半年になる。10歳の時、発達障害の専門医・山路薫子と出会い、ASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠陥多動症)と診断された。安堂は、詐欺未遂罪と傷害罪で起訴された被告人・江沢卓郎(22)の単独審理を担当。江沢は故意に路上に飛び出し、腕の一部をタクシーのドアミラーに当て交通事故を装おうとした。さらに、客としてタクシーに乗り合わせたY副市長・茂原孝次郎が車を降りてくると、殴りかかって転倒させ、左手首を骨折する重傷を負わせたうえで、頭や額への殴打をくり返した。江沢は初公判の罪状認否から弁護人と衝突、安堂は国選弁護人を裁判官の職権で解任する。後任の小野崎乃亜は、予想された裁判官忌避はせず、証拠認否で9割の証書に対し「同意しない」を連発。起訴事実は全てにおいて曖昧で、自白は警察官及び検察官の偏見に基づき誘導されたと述べる。 そして、次回法廷で検察側の証言者として出廷したタクシー運転手・藤山澄久に対し、小野崎が次々に言葉を投げかけると、藤山は耐えきれずに口を開く。藤山と郁美は高校の同級生で、ガソリンスタンドでバイトする卓郎に客の秘密を洩らしていた。それは、病院の医者を乗せた運転中の次のような会話だった。 「きのうの急患、手術すれば助かったのにな」 「脳外科医を呼び出そうとしたら、事務の誰かが止めたんですって」 「なぜだ?ゴルフぐらい抜けられるだろう」 「いや、もう麻酔医からして昼から酒くらっていたので、無理ですね」 「大勢を休ませたからあんなことになったんですよ」 藤山は、医師の会話を聞いた数日後、亡くなったのが郁美だったと知り、今回の事件の数日前に、また日曜日にゴルフをやると卓郎に教えたのだった。そして、目撃者の一人だった学習塾経営者は、啓明会病院の理事で茂原後援会の副会長。病院の出入り業者をゴルフ大会を名目に呼び集め、後援会活動をしていたのだった。「恋ってどんなものかしら」夫の高校数学教師・宗繁之の頭を、妻の高校音楽教師・宗春美がメトロノームで強打し殺害。橙園学院校長・佐高京介は、二人の教え子で30代前半。同校の顧問弁護士・小野崎乃亜は、裁判所の待合所で鼻歌を歌う春美の供述に疑問を抱き、春美がコルサコフ症候群で、室内にあった物を悉く利用して作り話をしたのだと気付く。小野崎は「心神耗弱」を主張、執行猶予の付いた判決を求めた結果、懲役5年の実刑判決。父親の真似ならできる考えた春美は、刑務所の中で思う「真実を知っているのは私だけだ」。「擬装」闇バイトの広域強盗と思われる事件がY市で発生、82歳の高齢資産家女性が6千万円を奪われる。 県警は強奪した金の運び役・18歳の定時制高校3年生井戸川友典と佐野義弘を逮捕。 安堂は二人に勾留質問、黒とグレーのヘルメットの二人からそれぞれ金を受け取っていたと判明。判事補・落合は、安堂が作った調書を見て、実行犯二人が一緒にいる場面がないことに気付く。ITエンジニアの娘・朋世(28)を亡くした羽鳥賢一は、法テラスで小野崎に相談していた。睡眠剤をいつもの倍量飲んだための事故死ということだったが、羽鳥は他殺を疑い、臙脂色のノートパソコンが1台なくなっていることを気にしていた。小野崎は安堂と共に、朋世の家の様子を調べる。後日、安堂に丸いものと角々したもの、洗面器と椅子の像が現れ、文具に重なり合う。小野崎と共に朋世の家へ、小野崎が脱衣所で椅子と洗面器を重ねその上に立ち換気口を手で探る、するとそこにタブレットが、羽鳥は娘がここに隠すときにバランスを崩して転倒したと気付く。 そして、タブレットには、防災コンサルタント・籾山新司の姿を撮影した動画が2つあった。一つは講習会の様子、もう一つは女性のあとをつける籾山を撮影したもの。SNSを使った指示役、強奪の実行役、金の回収役の一人三役。それは、全国で発生した一連の強盗事件そっくりに見せかけるためだった。撮影に気付かれたと思った朋世は、タブレットを換気口に隠し、その際転倒したのだった。「解説『不思議な裁判官』岩波明」発達障害研究の第一人者・岩波明さんによる安堂と発達障害、作品に対する解説。サヴァン症候群に言及すると共に、『アストリッドとラファエル』『名探偵モンク』『シャーロック(BBC制作)』『こちらあみ子』等の作品も紹介しています。 *** 判事補・落合は原作では男性ですが、ドラマでは女性になっていますね。また、「恋ってどんなものかしら」と「擬装」は、ドラマの2話・3話と所々同じエピソードもありましたが、お話としては全くの別物でした。それにしても、「恋ってどんなものかしら」は怖かった!!そして、「擬装」はタイトルが絶妙!!もちろん、ドラマの2話と3話も、とても良かったです(続きの4話が楽しみ!)。ひょっとして『テミスの不確かな法廷 再審の証人』のお話なんでしょうか?安堂の「小野崎さん。私の話を聞いてもらえませんか」、そして、小野崎の「安堂さん、好きな人がいますか」。これも、ドラマではなかった展開。これから、どうなるんでしょうか?このお話を読んでいると、あちこちで『自閉症の僕が跳びはねる理由2』に記されていたことを思い出します。
2026.01.24
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下巻の方は、上巻に比べると映画では描かれていないエピソードも多く。 「そういうことか」と気付かされたり、「ここは、別物ですね」と納得したり。 それでも、映画は原作の世界観を損なわず、上手くまとめ上げていたと感心。 そして、原作は各登場人物を深く丁寧に描きあげ、本当に素晴らしい作品でした。 こちらも、書いたものをひとまとめにしておきます。 ***第十一章 悪の華第十二章 反魂香第十三章 Sagi Musume第十四章 泡の湯第十五章 韃靼の夢第十六章 巨星堕つ第十七章 五代目花井白虎第十八章 孤城落日第十九章 錦鯉第二十章 国宝 ***「国宝 上 青春篇」はこちらです。
2026.01.19
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毎日新聞に連載された「京都 ものがたりの道」(2014年4月~2016年3月)に、 新たな原稿を加えて編集、刊行された一冊(2016年10月)に、 さらに加筆・補整を行った新装版です。 著者は女性皇族の一人で、京都産業大学日本文化研究所特別教授の彬子女王。 *** そんな京都の通りを行き先も決めずに散歩するのが大好きだ。 通り一本違うだけで雰囲気ががらりと変わるし、それぞれの通りに独特な個性がある。 どの通りを歩いても必ず史跡に行きあたるのも楽しい。 小さな石碑であっても、見た瞬間に 「あ、あの織田信長もこの道を歩いたのかもしれない……」などと、 一気にときを飛び越えられる感覚は、京都ならではのものだろう。 そしてその道に、京都の人たちの日常がある。 悠久の歴史の流れの中で、 その軌跡の一部になって自然と生きているところがなんだかいいな、といつも思う。 (p.16)この一冊がどのようなものかを、全て言い表したような素晴らしい文章。幼少の頃から京都大好きな私も、記されている一つ一つのことに激しく同意・共感。哲学の道、六角堂、神泉苑、神護寺、八坂神社、鴨川の飛び石、二条城、六波羅蜜寺、晴明神社、京都国立博物館、錦市場等々、実際に訪れたことがある場所は、その時のことを思い出しながら、そして、まだ訪れたことのない場所は写真やイラストでイメージしながら読み進めていきました。それにしても、彬子女王、かなりの健脚。 平坦な道であれば、2時間でも3時間でも平気で歩く。 電車一駅、二駅歩くのは日常茶飯事。 学生のころは、ときおり赤坂の宮廷から目白の大学まで歩いたりして、 よく側衛さんを泣かせていた。(p.24)しかし、さすがに「愛宕山の千日詣り」では、 でも、この4キロの登山道、やはり運動不足の身体にはかなりきつい。 途中で足が攣ったときはどうなることかと思ったし、 参道の脇に適宜掲げられている立札を見て、 まだ三分の一も来ていないと気付いたときは、ちょっと心が折れかけた。(p.125)それでも、山頂に着いて火伏札を手にされ、山を上ってくる人たちに「おのぼりやす」と声をかけられたのですから、流石です。
2026.01.18
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昨年末、映画『国宝』を観て、 やはり原作も読んでおかねばと、早速手にした本書。 映画の各シーンを思い返しながら読み進め、章ごとに記事を書いていきました。 バラバラの記事では読み返すのも大変なので、一つにまとめておきます。 ***第一章 料亭花丸の場 第二章 喜久雄の錆刀 第三章 大阪初段 第四章 大阪二段目第五章 スタア誕生第六章 曽根崎の森の道行第七章 出世魚 第八章 風狂無頼第九章 伽羅枕 第十章 怪猫 ***「国宝 下 花道篇」はこちらです。
2026.01.17
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副題は「最高級邸宅街にはどんな人が住んでいるか」。 著者は愛知県生まれのフリーライター兼カメラマン・加藤慶さん。 「東の田園調布、西の芦屋・六麓荘」と称される高級邸宅街について、 十数年に渡り大阪市内に住みながら、定期的に取材を重ねて出来上がった一冊。 ***「第1章 最高級邸宅街『六麓荘』の内実」では、日本のビバリーヒルズと呼ばれる六麓荘の開発史や「豪邸条例」について紹介し、そこにはどのような豪邸が建ち、どのような暮らしが営まれているのかを現地取材を通じて関係者から集めた言葉から明らかにしていく。「第2章 どうすれば芦屋に家が建つのか」では、そのバックボーンとなっている「阪神間モダニズム」や市内ヒエラルキー、さらには、芦屋のハワイと称される芦屋マリーナについて紹介する。クルーザーや芦屋ベイコート倶楽部、ゲーテッドタウン等、驚かされる内容ばかり。「第3章 芦屋市民の生活と意見」では、芦屋に住む人々の生活の様子について「イエナリエ」やテニス人口の多さを紹介。また、子供の教育にも触れ、灘の「鶴」と甲陽学院の「鹿」について述べると、なぜ乗降客数が3割強も多いJR住吉駅ではなくJR芦屋駅に新快速が停まるのかにも言及。「第4章 未来の芦屋はどんな姿?」では、六麓荘の物件も30年サイクルで売却がなされ、現在では中国人が増加しており、さらに、南芦屋浜の人工島にある涼風町にも中国人が押し寄せている現状を紹介。一方、市の人口は減少、高齢化も進んでおり、芦屋ブランドを守る施策が期待されている。 ***街の文化、習慣、風習を維持していくことの難しさを強く感じました。そこに住む人も入れ替わり、共有する価値観も変わっていく。街が高齢化し、活気が失われ、衰退していく地域も今後は出て来ることでしょう。芦屋はどんな人が住み、どんな暮らしが営まれる街になっていくのでしょうか。
2026.01.17
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今巻では、ルフィがロキと交わした約束が明らかに。 そして、エルバフの「セイウチの学校」で学ぶ子供たちの様子や 「フクロウの図書館」と「神典(ハーレイ)」についても紹介されます。 さらに、新たなる敵もその姿を現します。 ***名君・ハラルド王は「戦いより他国との交易を」と唱え、新たな国づくりを進めていたが、夢半ばで実の息子・ロキに殺されてしまい、王位は空席のまま14年が経過していた。アウルスト城には、その時のハロルド王とロキの激しい戦いの跡が残っており、その際、ロキを止めようとして頭を剣で刺されたものの生き延びたのが、やまひげのヤルル。 そして、ハラルド王のもう一人の息子がハイルディンで、ロキの腹違いの兄。世界中の全巨人族を統一し、その王となることを目指している。サウロは再会を果たしたロビンを「フクロウの図書館」に案内。そこには22年前オハラが守った文献の全てが持ち込まれていた。「神典」ハーレイには、太陽の神ニカについて、この世界が大きく形を変える時に現れる存在、世界が壊れぬ様現れた英雄か、全てを壊した破壊者か……と記されていた。 その頃、ベガパンクはエッグヘッドから運び出した複製人間の取り出しに、 フランキーは宝樹アダムの探索に取り掛かり、エルバフの弱点が火事と雷だと知る。一方、ルフィはシャンクスの現在の居場所を教えてもらおうと、冥界で拘束されているロキを解放すべく、ゾロ、ナミ、ロードらと鍵を探す。そして、その鍵を守るリプリーの夫でコロンの父・ヤーさんと出会うが、その正体は、レイリーと並び海賊王の左腕と呼ばれたスコッパー・ギャバン。そのことを知らないルフィが、ヤーさんとの戦闘を始めるといきなり危機一髪の状況に。それをゾロに救われると白い姿に変身、二人で立ち向かうと、ヤーさんはあっさり降参する。その頃、冥界では、神の騎士団・軍子宮(矢印人間)と、団長シャムロック聖(五老星ガーリング聖の息子で、シャンクスは生き別れた双子の弟)が、 大昔新世界を制圧したエルバフの戦士たちを世界政府の指揮下に置こうと、ロキに「神の騎士団」入隊を迫っていたが、緊急発進でその場を立ち去る。そして、ルフィが冥界に現れると、ロキの片足だけを海楼石につけたままで錠を解く。すると、ロキが大きなトンカチ(鉄雷)で落雷を起こし、島の南に火の手が上がる。ルフィの一撃により、命を振り絞って戦っていたロキは倒れるが、ロードから経緯を聞いたハイルディンが、その場に駆けつけるとロキはこう言った。 まさかお前まで おれが本当に殺意をもって 親父を殺したなんて… 思ってねェよなその頃、陽界では、子供たちが「怖い」と頭に思い描いた獣たちが現れ大混乱。子供たちは皆眠ってしまい、そのうち9人が村の海雲に向けて歩き始める。それは、神の騎士団の軍子宮、ソマーズ聖、キリンガム聖の仕業だった。そして、子供たちを何とか止めようと巨兵海賊団とヤーさんが駆け付ける。 ***何と言っても最大の驚きは、シャンクスの正体。「そうですか……」という感じ。そして気になるのは、ロキがハイルディンに言った言葉。真実なのか、それとも口から出まかせなのか……
2026.01.17
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ナディールの政敵・ザインが莫大な資金を稼ぐため、 飛州に麻薬・贅瑠(ぜいる)をばらまいている実態を明らかに。 贅瑠の製造方法や流通経路を把握し、物証を抑えようと、 雛女たちが花街の妓楼に潜入します。 瘡毒患者をここ数年一人も出していない高級妓楼・天香閣では、 楼主・ザインの寵愛を受ける最上級妓女の天花・琴瑶が、 異様なまでの権力を与えられ、酒蔵や香堂、浴室、宴会場の管理まで託されていました。 しかし、彼女自身が贅瑠に蝕まれていたのです。 ***妓女総出で楼主をもてなす覇香宴に向け、番頭・忠元は素人娘をせっせと集めていた。下働きとして楼内に潜入した玲琳は、次々に訪れる困難を潜り抜けると、琴瑶にも気に入られて、麻薬の保管場所や関係者の特定のため、宿泊棟の酒蔵や厨房等を探り回る。一方、中級妓女として侵入した清佳と慧月は、天花の取り巻きが集う本棟妓女部屋の西側に贅瑠の匂いがあると気付く。しかし、支度部屋で上級妓女2人との間に揉めごとを起こしてしまい、そこに現れた琴瑶が、清佳の髪を切り落してしまう。そして、清佳と慧月を妓楼から叩き出すよう、用心棒に指示すると、上級妓女2人には、浴室で心身を癒すよう言葉を掛けたのだった。清佳と慧月は厨房裏の蔵に押し込まれる前に、贅瑠の中毒患者を目の当たりし、上級妓女2人も贅瑠中毒だったと気付く。琴瑶の態度に傷付いた清佳に、慧月は、玲琳と琴瑶が天花の部屋で話す様子を炎術を使って聞かせる。そのことで、清佳は琴瑶のこれまでの様々な経緯や本心を知るが、結局、玲琳は琴瑶に部屋を追い出され、用心棒に蔵へと押し込まれてしまう。合流した3人の雛女たちが、炎術を用いて現状報告をすると、それを聞いた景彰と辰宇、ナディールも、楼客に化けて潜入することに。その頃、ザインが突然訪問してきたことで、番頭・忠元は覇香宴を1日前倒しして開催。ザインの前で舞った琴瑶は、引き続き天花の座に任じられ、妓女たちの様々な待遇を決める権限も与えられた。しかし、そこへ用心棒たちに促された清佳が現れると、ナディールと景彰のサポートで、ザインの前で剣舞を披露させてもらえることに。一方、玲琳は辰宇と共に浴室へ向かうと、蒸し風呂の窓を破壊、贅瑠の原料である黒ずんだ茸を発見する。そして、そこにいた上級妓女らから、どのようにして贅瑠を作っているかを聞き出し、さらに、贅瑠が瘡毒の症状を抑えること、それが抜けると症状はぶり返すことも知る。そのことから、琴瑶が相手によって言動を180度変えていた理由に思い至ったのだった。剣舞を終えた清佳は、ザインに自分を天花として認め、琴瑶を追放するよう要求する。ザインはそれを了承すると、清佳に贅瑠を飲ませるよう、こっそり忠元に指示。そして忠元が胸元から贅瑠の入った小瓶を取り出すやいなや、ナディールが麻薬売買の廉で拘束すると高らかに宣言、景彰と二人でザインと忠元を取り押さえたのだった。そこへ現れた玲琳が、これまでに知り得た事実を皆に知らせ、琴瑶の情状酌量を求める。しかし、ザインが仕込んだ火薬を爆破させ、妓楼ごと焼き払っての証拠隠滅、逃亡を図る。慧月は駆け付けた尭明が放つ雷で、逃げるザインが乗る船を見つけ出し、燃え盛る炎をそこへ向けて転移させたのだった。騒動の中、清佳の腕の中で息を引きとった琴瑶は、港近くの望楼が立つ小高い丘に埋葬された。そこに眠る琴瑶を前に、十人近くの元妓女たちが集まり跪き頭を下げる様を清佳は見つめる。そして、ナディールと2人で言葉を交わしあうのだった。一方、慧月は玲琳に「もし、入れ替わっている限り健康でいられるとしたら、どうする?」。きっぱりと断る玲琳に、慧月は胸の内で「逆らってみせる、正しさにも、宿命にも」。今回の件への雛女たちの関与は、尭明により抹消された。 ***今巻のお話はとてもスリリングな展開の連続で、これまでの巻の中でも最上級に楽しめました。突っ走る雛女たちと、その後姿を見つめつつ的確にサポートする男性陣もグッド・ジョブ!!そえぞれのキャラクターの想いが、しっかりと伝わって来るお話でした。あとがきでは「玲琳の体調と入れ替わり問題」について言及すると共に、終幕に向けてのアウトラインが明確に示されました。読み手としては、真相は知りたいものの、完結してしまうことへの寂しさの方が大きい……前巻に続いて、アニメ化についても触れられており、こちらの方は4月が楽しみですね。
2026.01.16
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前巻で第五幕「道術我慢の鎮魂祭」が決着し、 今巻は第六幕「絢爛豪華!金領」編の開幕。 金領の港町・飛州に西の隣国・シェルバ王国第1王子・ナディールが来航し、 来賓を王都に向かう詠国の馬車に載せ替える「帆車交の儀」が始まります。 ***今回「帆車交の儀」を担当するのは、金領の雛女・清佳に加え黄玲琳、朱慧月の3人。来賓を出迎え美食でもてなし、「充楽」の言葉を引き出さなくてはならない。それを金家内の勢力争いから妨害してくるのが、知事として飛州を管理する金成和。金家領主である清佳の祖父が傍流の側室に産ませた子で、更迭された金淑妃の実弟でもある。侍従ハサンは「質素なもてなしにがっかりした」と大げさな言い回しで王子の言葉を伝える。来訪4日目、なおも飛州に留まる王子をもてなすため古酒を探していた清佳が、金成和により蔵に閉じ込められてしまう。が、その前に別の目的で蔵に侵入していた玲琳と慧月に遭遇すると、慧月の術で蔵から脱出、変装して市へと向かうのだった。そこで慧月が西国商人とトラブルを起こしてしまうが、玲琳は大金を用いて木の実・乾物・茶の売店の全ての商品を購入、商人や伝聞士まで雇い入れる。そして、金成和を蔵の粉塵爆発で謹慎処分とした後、ナディール王子を招いて催された宴には、シェルバ王国の形を模し、12の州に該当する部位にそれぞれの特産品を練り込んだ焼糕を用意。その特産品を買い求めた詠国内で商売する西国の商人たちと伝聞士40人を呼び入れたうえで、清佳は次のように述べる。 「自国の民の苦労と想いが結実した菓子でございます。どうぞ、お召し上がりを」すべての州の部位を食べきったナディールは「充楽である」と述べ、帆車交の儀は終了。後宮の一隅にある射場に集っていた尭明、辰宇、景彰は、炎の向こうからの報告で動き始める。そして、町の茶楼で儀完遂の祝杯を上げる清佳、玲琳、慧月、冬雪、莉莉。清佳は、大通りをねり歩く芸妓たちの先頭に立つ人物に目を見張る。それは、2年程前から連絡が取れなくなった舞の姉弟子・琴瑶で、外に飛び出し追いかける。それを玲琳と冬雪も追うが花街の門で見失い、そこでハサンに出会うと、慧月と莉莉も現れる。慧月は莉莉と茶楼に2人残された時、そこに異国の男が現れて、西国名物の宝酒を莉莉に勧めると、代わりに自分が飲み干してしまう。チュウゲンと呼ばれた男が、主であろうザインという男と共にそこを立ち去った後、慧月は視界が揺れ、全身が震え、腕は痙攣、耳鳴りがするも奇妙な浮遊感と恍惚感に襲われて、チュウゲンが「宝酒が気に入ったら来い」と言っていた天香閣という妓楼を目指していた。ハサンはその酒は贅瑠というシェルバ産の麻薬だと説明すると、解毒のための水を求めて、その場を一旦立ち去る。一方、毒を吐き出し、離脱症状に苦しみ暴れる慧月は気を暴走させ、自身を抱きしめてくれていた玲琳と体が入れ替わってしまう。解毒のための水を持ってきたハサンは必死に介抱し、玲琳を屋敷まで担いで運んだのだった。慧月は、冬雪から玲琳が鎮魂祭後に倒れ、己の死期が近いと覚悟していたと聞かされるが、玲琳の体に収まっても身体の不調を特に感じない。一方、慧月の体に収まった玲琳は毒に苦しみ続けるが、水を飲ませて対症療法を粛々と行い、麻薬が抜けるのを待つしかなかった。ハサンは、玲琳が恐怖や痛みに耐えきれず命を落とすのを防ぐため、希釈前の贅瑠を1滴飲ませるよう冬雪や慧月に勧めるが、2回目の贅瑠を飲んでしまうと、今後一生贅瑠を飲み続けねばならないと知った慧月は断る。ハサンは、清佳にも熱さまし効果がある果汁と偽って贅瑠を渡そうとするが、見破られてしまう。どうすべきか思い悩んだ慧月は、炎術を使って景彰に相談すると、「信じてくれ、玲琳の強さを。君と妹の間にある絆を」「僕もすぐ駆けつけるよ」の言葉が。そして、慧月に手を握られ、声を掛けられ続けた玲琳は、明け方に強まる離脱症状による苦痛を耐えぬき、生還すると次のように語る。 「わたくし、最後の瞬間まで、慧月様の友人として駆け抜ける準備はできているのです。 ですから、慧月様。どうか最後まで ……お付き合い、いただけませんか?」そこへ景彰と辰宇、さらに清佳とハサンが現れると、景彰と玲琳が、侍従だと思われていた人物こそが王子だったと、入れ替わりを明らかにする。潤沢な財力で12州の半分をまとめ上げ、宰相でありながら次期の王座を狙う政敵・ザインが、州の太守たちを懐柔するための莫大な資金を稼ぐため、飛州に麻薬をばらまいているらしく、その実態を探るため、ナディールは飛州滞在を引き延ばしていたのだった。そして、ナディールがその証拠集めへの協力を要請すると、雛女らは、贅瑠の製造方法や流通経路を把握し、物証を抑えるべく花街の妓楼に潜入することに。 ***あとがきには、アニメ化決定について記されています。「こちらも、いよいよか」という感じですが、『薬屋のひとりごと』同様、世間でこれ程までに知られていない頃から愛読していたお話が、こうして多くの人に知られる作品になっていく様をリアルタイムで見られるのは、感慨深いです。
2026.01.12
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副題は「不登校の正体」 著者は、児童相談所や小中学校でスクールカウンセラーとして勤務後、 静岡英和学院大学人間社会学部専任講師となった桑島隆二さん。 心理学博士で、臨床心理士、公認心理師でもある方です。 本著に記された内容の概略は、次のようなものです。 ***文科省による調査結果では、不登校原因は「無気力・不安」が過半数を占める。母親や担任から不登校になるまでの状況をどれだけ細かく聞いても、不登校につながるような「トラブルに近い決定的な何か」 は見当たらないことがとても多い 。不登校35万人のうち半数以上の原因がわからないので、その子どもたちに対して、どのような対策を講じれば良いか誰もわかっていない状況 。昨今の不登校対応方法は、無理をさせない・優しく接する・丁寧に気持ちを聞いてあげるというものが主流。この対応方法が正解であれば不登校数は減少、または横ばいになってもいいはず。ところが現実は、子どもの絶対数が減少しているにも関わらず不登校数は増え続けており、不登校率はこの十年でひたすら上昇を続けている。 ***幼さとは自分の実力を客観的に把握していないことに起因する。そして、この幼さを作ったのは子ども自身ではなく、いつまでも客観的な評価を見せないようにしてきた大人。しかし、何でもできて特別であると思っていた自分が、ある日突然、実は何にもできない普通以下の人であると気付く日が訪れる。特別な存在だった自分が、これまで他の子に向けていた見下し、さげすむ気持ち。それがそのまま、今度は自分に跳ね返って来るに違いない。このとき能力の低い子ほど、距離が近い同じクラス内の子と自分を急に比較して気付くので、教室に入れなくなってしまう。もし、遠いどこかの誰かと自分を比較して自分の能力の低さに気付いたのであれば、教室にいる子から自分の能力の低さを 突き付けられたわけではないので、教室には何の問題もなく入ることができるのだが。 ***不登校の子どもが何も話してくれないのは、子どもが意識レベルで期待する答えが返ってこないため、会話をする必要性を感じないから。不登校のきっかけがあまりに些細すぎて、大人に話しても理解してもらえないことをわかっているから。話してくれない子どもが悪いのではなく、察することができない大人に問題があると考えなければ、不登校の問題はいつまでたっても前に進まない。 ***自己肯定感に必要なものは、自分ではなく他人からの評価。不登校の子どもたちは自己肯定感が低いから、自己肯定感を高めてあげようということは、その子が元気になれるような「他者からの評価」を上からではなく横の関係から与えて褒めなければならない、ということ。何の努力もしないけど特別な自分でいられるというのは、大人からみれば無理難題なのだが、実は子どもにしてみれば無理難題ではない。なぜなら今までずっと、何の努力もしていないけどすごいね、と褒められながら接してこられたから。人は誰でも、生まれながらにして能力に大きな差がある。ところが今の小中学校は、できるだけそのような差を見せないように配慮してきた。わずかな心の負担も見逃さずに取り除くべき、という考えから徹底的に配慮を行き渡らせた結果、子どもが小さく体験する葛藤や挫折の機会を奪ってしまったのだ。その結果、そのような差があることを知らされないまま成長し、あるとき突然、人には差があることに自分で気付いてしまった。 ***では、どうすれば……具体的には、各クラスの学力に偏りがないようにクラス編成された小学校二年生から、通知表で相対評価と絶対評価の両方を記載する。こうすることで、幼い時から他人との比較されることに慣れるので、特別感を抱くことが少なくなる。特別感を抱かなくなれば、ありのままの自分はこういうものなんだと普通に受け入れて、普通の子どもとして育っていく。 ***学校に行くと自分の特別感を傷付けるようなものが視界に入ってしまうため、自分の意志とは関係なく、気持ちと身体が自動的に反応し不安を感じてしまう。最初にやるべきことは、原因不明の身体・精神反応で不安→学校に行かないことで安心というループを発生しないようにすること。学校を視界に入れないようにした次にやるべきことは、学校に行けない苦しさと何か特別な理由があるかもしれない という子どもの思いを、わかってあげるということ。わかってあげるとは、子どもが抱える大変さと特別感を、『他の言葉で言い換えて説明し、共感をしてあげること』。子どもは、学校に行かないことで親や先生の期待に応えられずがっかりされているということを十分にわかっている。それでも学校に行かないのは、精神的に見捨てられてるつらさを遥かに上回るものが、学校にはあるということ。幼児的万能感や特別感の傷つきは、それほど深い。ということは、子どもに「失うのは嫌だ」と思わせるほどの信頼関係を築くことが、目指すべき関係性ということ。スペクトラムをきちんと理解していれば、画一的な対応マニュアルによるのではなく、一人一人個別に支援計画を立案しなければならないことがわかるはず。また、個別支援も毎日同じでなく、その日の気分や体調に合わせて変化させる必要がある。また 支援前に計画していたことが、支援の途中で適宜変化していくことはよくあることであり、そうあるべき。 ***ざっと、こんな感じですが、どれもこれも、実際に目の前の不登校生と向き合った経験からの言葉だと実感させられます。今のご時世では、なかなか口にすることがはばかられるようなことも書かれていますが、指摘されていることについては、私も納得できるところが多々ありました。
2026.01.11
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副題は「すべての食事会を成功に導く最強の実務メソッド」。 著者は、本著が初の著書となるyuuu(ユウ)さん。 京都大学大学院卒業後、新卒で大手広告代理店に入社し、 広告代理店の中でも、テレビ局との会食の多さ、上下関係の厳しさから、 体育会系の極致と恐れられるテレビメディア部に配属された方。 そこで、すべての仕事が壊滅的にできない社員だった著者が、ある事件を起こします。 常に睡眠不足で疲弊していた私は、うっかりある重要な社内ファイルを削除してしまい、 復元不可能にしてしまったのだ。 そしてついたあだ名は「博報堂の回し者」。 仕事で価値を生み出すどころか、競合代理店の差し金かと揶揄されるようになった(p.48)そして、そんなポンコツ社員だった著者に対し、上司が投げかけた言葉が、 「今、お前は担当先から信頼を失いつつある」 「今のお前は目の前の仕事を頑張るだけじゃだめだ」 「担当者を会食に誘って、建て直せ」それでも、すぐには上手くいくはずもなく、上司からさらに丁寧なアドバイスを受けた著者は、より真剣に会食と向き合います。そして、その核心である「想像力と確固たる意志」を掴むと、その道のエキスパートに。本著は、そんな著者が、その手法を詳細かつ具体的に書き記した一冊です。 *** 会食中に避けるべき話題は次のものだ。 ■政治・宗教・プロ野球(同じ球団のファンであることを事前につかんでいる場合を除く) ■悪口全般(自社・自社の競合企業を含む) ■意思決定を必要とするビジネスの話 ■目的達成のための陳情・要望・ヒアリング(p.231)「第7章 会食中のコミュニケーション」で述べられたものですが、心当たりがある方も多いのでは?一つ目と二つ目は、会食中はもちろんですが、社内での普段の会話でも話題になりがち。というか、それに関する話ばかりをされる方もいたりして、その返答に困ることも。そんな時の対応について、本著では次のタイトルを掲げ、丁寧に説明してくれています。 ■政治・宗教・プロ野球は「相手の出方をうかがう」 ■悪口は「同意せずに」「黙ってやり過ごす」このように、本著に書かれている事柄は、会食だけに留まらず、様々なビジネスシーンで生かすことが出来るヒントで溢れています。
2026.01.09
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さて、第20章は、長く続いた物語を締めくくる最後のお話 周囲に様子がおかしいと気付かれながらも、舞台に上がり続ける喜久雄。 その『阿古屋』の舞台を見守ろうと、様々な人々が歌舞伎座に集います。 おっと、その前に、ある人物が喜久雄に向けて重大な告白を…… ***一豊の妻・美緒が妊娠。俊介の墓に初孫懐妊報告に出向いた春江は、そこで出会った竹野にこう言います。 「竹野さん、何を今さらやわ。この世界に何年おんの? うちはな、もう体の芯から役者の女房やわ。 旦那が高熱やろうと、両足失おうと、……たとえ、気ぃふれたとしても、 その背中、泣きながらでも押して舞台に立たせます。 ひどい話や。ひどい女房や。 せやけど、それでも役者には舞台で拍手浴びてほしいねん」30年近く前に逮捕されて以来連絡のなかった辻村が、長患いをしていた容態がいよいよ悪くなって、喜久雄に会いたいと漏らします。そして、病室で二人きりになった時、辻村が涙を流し、喜久雄の手を握りながら一世一代の告白。 「……喜久雄、おまえの親父ば殺したとは、この俺たい。 俺は、おまえの親父の首に噛みついた」しかし、喜久雄の目に映るのは、料亭「花丸」で『積恋雪関扉』を踊り終えた後、風呂場で笑いかけてくる徳次の顔。そして、ドドドドと大太鼓を打ち鳴らすような宮地組討ち入りの足音、雪の降りしきる中庭、雪を赤く染めて倒れた若衆、ドロドロドロとさらに鳴り響く大太鼓、大襖を頭上に抱え上げた父・権五郎の諸肌脱いだその胸から噴き出した血潮。そして、辻村にこう言います。 「小父さん、もうよかよ。親父ば殺したんは、この俺かもしれん」 「長いこと、俺は小父さんの世話になってきたんやね。……ほんまにありがとう」その後、一豊には 「そら、きれいやったで。一豊も見たら腰抜かすやろな。 ……俺な、あそこに立ちたいねん。あんな舞台で踊りたいねん」『阿古屋』の支度をする楽屋で二人きりになった時、喜久雄は彰子にこう言います。 「なあ、役者をやめられる役者なんているのかねえ」 「いや、その逆だな。やめたくねえんだ。 でもよ、それでもいつかは幕が下ろされるだろ。 それが怖くて怖くて仕方がねえんだよ」 「いつまでも舞台に立っていてえんだよ。 幕を下ろさないでほしいんだ」弁天の邸宅を訪ねた春江は、若手が体を張って笑いを取る弁天の冠番組に、自分を出演させて欲しいと頼み込みます。そして歌舞伎座、『阿古屋』の開幕を待つロビー。ご婦人方が、春江のテレビ出演について、本人の傍でこれ見よがしに語り始めます。一方、綾乃は、徳次から本日分のチケットがバイク便で届き、歌舞伎座にやってきました。また、喜久雄の人間国宝決定の知らせを持って竹野も駆けつけます。さらに、電子商取引で国内業界3位の白河集団公司社長に昇りつめ、20年ぶりに帰国した徳次も、車で向かっています。舞台で舞う喜久雄の姿に涙し、俊介に思いを馳せる春江。そして綾乃は、舞台に立つ阿古屋が、舞台に立つ花井半二郎が、舞台に立つ父が、ほかの誰にも見えていないものを見て、そこに立っていることを肌で感じます。すると、喜久雄は幕が引かれようとしたその瞬間、舞台中央で右足をすっと前に出して周囲を見回し、「きれいやなあ……」。そして舞台を降りると、客席、ロビーを通り抜けて歌舞伎座の外へ。渋滞した車列の間を縫って進み、スクランブル交差点によろめきながら飛び出すと、歩道から悲鳴が上がり、無数のクラクションが鳴り響く中、ヘッドライトに阿古屋の顔を白く浮かび上がらせた喜久雄が、「はい」と小さく頷いて、出の合図をしたのでした。 ***「長いこと、俺は小父さんの世話になってきたんやね。……ほんまにありがとう」喜久雄の言葉は、本当に意味深長。そして、春江の「それでも役者には舞台で拍手浴びてほしいねん」。これが、芸を究めようとする役者、そして、それを支えようとする者の性なのでしょうか。
2026.01.08
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さて、第19章は『藤娘』の舞台への男の乱入事件から6年後のお話 喜久雄の様子がおかしいことに、周囲の人々が気付き始め、 さらに、その行動にも明らかな変化が見られるように。 しかし、それでも喜久雄は舞台に上がり続けるのです。 ***『女殺油地獄』で借金に追いつめられた与兵衛を伊藤京之介が、惨殺される油屋の女房を喜久雄が演じる国立劇場の舞台。京之介は自分が見ている光景と喜久雄が見ている光景とがまるで違うと気付きます。どうやら喜久雄は、実際よりも豊穣な世界を見ているようです。3年ほど前から舞台以外の芸能活動を一切受けなくなったことで、その存在が却って神格化される状況になっていた喜久雄。京之介からの、先代の追善公演で『藤娘』を踊って欲しいという頼みは引き受けましたが、たまには飲みに出て来いと言うの誘いの言葉には、 「ここ最近ずっと、なんかこう探してるものが見つからねえっつうか、 無理に他のことしてても、それが気になって仕方がねえっていうか」 「そう、景色。……そりゃあ、きれいな景色でさ。この世のものとは思えねえんだ。 あれを舞台でやりてえなって。あんなかで踊れたら、俺はもう役者やめたっていいなって」一昨年、文化功労者の栄誉を授かった喜久雄に「人間国宝」の審議が始まろうとしていました。しかし、その出自や若い頃の素行もあって、それは険しい道のり。そして、『女殺油地獄』最終幕開始前、綾乃の自宅が火事で喜重が火傷を負ったとの知らせが。幕が下りるや、すぐさま病院に駆けつけた喜久雄に対し綾乃は、 「嫌や! 来んといて! これ以上、近寄らんといて! なんで? なあ、なんでなん?なんで私らばっかり酷い目に遭わなならへんの? なんでお父ちゃんばっかりエエ目みんの? お父ちゃんがエエ目みるたんびに、私ら不幸になるやんか! もう嫌や! もうこれ以上は嫌や! なあ、お父ちゃん、お願いや。 私らから喜重を取らんといて! なあ、もうええやんか……」振り返ると、『太陽のカラヴァッジョ』の撮影後に京都の市駒を頼った頃、小学2年の綾乃と一緒に、銭湯帰りに稲荷神社に寄った時のことが頭に浮かびます。 「お父ちゃん、神様にぎょうさんお願いごとするんやなあ」 「お父ちゃん、今、神様と話してたんとちゃうねん。悪魔と取引してたんや」 「『歌舞伎を上手うならして下さい』て頼んだわ。 『日本一の歌舞伎役者にして下さい』て。 『その代わり、他のもんはなんもいりませんから』て」その瞬間、綾乃の目からすっと色が抜けたのでした。病院でのこの苦い出来事を詫びる綾乃からの手紙が、喜久雄のもとへ届いたのは、その年の秋、京之介一門の追善公演が幕を開けた頃。喜重の熱傷の経過も良く、追善公演で6年ぶりに喜久雄が踊った『藤娘』は神々しく、「完璧を超えた完璧な芸」と言われる程のものでした。一方、一豊はモデルの美緒と結婚するも、謹慎明け後も丹波屋を継ぐに相応しい役は回ってこず、大女将・幸子は半月ほど前に足首を捻挫して入院。世田谷の屋敷をどうしても守りたい春江は、自宅を担保にしてまで金策に走るのでした。『祇園祭礼信仰記』の雪姫を演じる喜久雄は、初日前夜に住宅街の雪道を一人で歩き続け、周囲を見渡して「きれいや……」と呟き、その腕を空に伸ばします。そして初日、『爪先鼠』のところで雪姫の動きが一瞬止まったことに胸騒ぎを覚えた竹野は、幕が下りた途端に喜久雄の楽屋へと向かい、「大丈夫かい?」と声を掛けます。さらに一豊に、「……いつから、ああなんだ?」と尋ねると、 「6年前、舞台に客が上がってきた……、あのあとからです」 「……戻ってこなくていいんです。 今の小父さんは、ずっと歌舞伎の舞台に立ってるんです。 桜や雪の舞う美しい世界にずっといるんです。 それは小父さんの望んでいたことなんです。 だから小父さんは……、今、幸せなんです」 ***映画では、詳細が描かれることがなかった箇所なので、文章が随分長くなってしまいました。この時点で、喜久雄が現実とは異なる世界の中を生きていたことが伺われます。また、俊介の意志を継いで丹波屋を守ろうとする春江の覚悟には胸を打たれます。そして、綾乃の手紙にも救われる思いでしたが、京之介が見た次の光景は辛いものでした。 廊下に立っておりました彰子と蝶吉の体がすっと離れます。 二人のあいだに男と女の匂いが立ったのを見逃すはずがございません。
2026.01.04
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さて、第18章は、前章から6年の年月を経てのお話。 俊介の息子・一豊も、いよいよこれから上り調子かと思われていたところに、 またしても大きなアクシデントが…… 本当に起伏の激しい展開です。 ***俊介の七回忌を迎える年、若い役者の登竜門・新春花形歌舞伎の昼の部『三人吉三巴白浪』で、和尚吉三を務めるのは花井半弥を継いだ一豊、そして、お嬢吉三を演じるのは三國屋武之助となった武士でした。この年は、四代目花井白虎の三十三回忌でもあるため、喜久雄の提案で、二人の追悼公演『白虎祭』の興行を打つことに。世田谷の実家に戻って来た幸子にも助けられ、春江は丹波屋の女将として走り回っております。ある夜、一豊が車で人身事故を起こし、轢き逃げ容疑で取り調べを受けることに。そんな中、喜久雄は竹野と共に、終始被害者の学生を気遣っての記者会見を終えた後、一豊を無期限の謹慎とし、舞台復帰は被害者の同意を第1条件にすることを決断します。そして、強い追及を受ける度に、深々と頭を下げて謝罪を繰り返したのでした。その後も被害者に見舞いを重ね、相手方の言い値で見舞金を贈ったこともあって、裁判では被害者本人が過失を認め、一豊は有罪ではあるものの執行猶予がついたのでした。頭にあるのは次の芝居のことばかりで、当代女形として頂点に立ち、周囲から孤立してしまった喜久雄。その姿は、坪内逍遥作の『沓手鳥孤城落月』で演じる淀の方が、秀吉亡き後、秀頼を守るため孤立していった姿と重ねられることに。綾乃を訪ねた彰子は、夜中台所に立っていた夫の後ろ姿がとても遠く、野原に一人ぽつんと立っているようだったと話します。しかし、舞台そのものは「三代目半二郎が歌舞伎を超えた」と大好評で、来日したフランス大統領が絶賛するほどでした。お笑い界のトップに立った弁天が春江を訪ね、自分の悩みを話します。その頃、車好きの喜久雄は、彰子の反対を押し切って購入した9台目の相棒・アストンマーティンのエンジン音を響かせておりました。どんな舞台に出ても、喜久雄の存在感だけが突出してしまうため、『藤娘』のような一人きりで踊る演目が割り当てられるようになってしまいます。その『藤娘』を喜久雄が演じている舞台に、突然男が上がりこんできて、黒衣や大道具スタッフに引き摺り出されるという事件が起こったのです。 ***芸道に真正面から真摯に取り組み続けた結果、突出した存在にまでなった喜久雄。しかし、そのことが原因で周囲から浮いてしまい、孤立することに。そんな喜久雄を周囲は心配はするものの、見守ることしか出来ません。その後起こった事件を含め、このあたりの経緯が、映画でどのように描かれていたのか、私は、記憶が定かでありません。原作を読み進めるにつれ、その世界がどんどん頭の中に広がっていく一方、映画の世界は逆に薄まったり、違うものに置き換えられたりしてしまっているようです。
2026.01.03
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さて、第17章のお話は、タイトルからも分かるように俊介を軸に展開します。 右足だけでなく左足までも切断することになった俊介ですが、 喜久雄の言葉に促され、再び舞台で演じようと奮起します。 しかし、その結末は…… ***切断手術は成功したものの、糖尿病を示す数値が思わしくない俊介。『隅田川』で班女の前をやる時、舟人で出てくれないかと喜久雄に頼むと、『助六由縁江戸桜』の楽屋で、「やるよ、喜んでやるよ」との返事をもらいます。一方、舞台裏に引ける揚巻に肩を貸す男衆を代理で務めていた九代目三國屋権十郎の息子に、「武士、おまえ、女形やれ」と提言する喜久雄。そして、大相撲優勝決定戦をテレビ観戦し、大雷が勝利して優勝を決めると大喜びで万歳三唱。さらに、綾乃から頼まれて、喜重の七五三に付き添い神社に参拝、横綱らと一緒に境内で記念撮影をしていると、多くの参拝客らに囲まれます。その帰りのタクシーでは、綾乃から俊介に無理しすぎないよう言うよう頼まれたり、ホテルのラウンジでは、市駒と互いの体調について語り合ったりしたのでした。そして、俊介の『隅田川』での復帰に向けてテストが行われることになり、俊介と喜久雄は、歌舞伎座の舞台を借りて稽古を始めます。一方、体調が悪化する俊介を気丈に支え続ける春江を彰子が老舗菓子屋の喫茶席で一緒にコーヒーを飲みながら労うのでした。これまでにない新解釈の『隅田川』には、初日から絶賛の拍手が送られます。そして、楽まであと3日を残すのみとなった時、俊介が突如花道の途中で踊りだし、そこで座り込んでしまってからも踊り続け、さらに喜久雄が待つ舞台の方へと、両腕を使って這い始めたのでした。千穐楽の翌朝、貧血による意識障害で救急搬送された俊介は、療養中に日本芸術院賞の受賞が決定します。 お祝いに駆けつける車の中、幸子は喜久雄に一豊の今後を託すと共に、自らは春江に迷惑をかけまいと、逗子の老人ホームに入居することに。そして、『京鹿子娘道成寺』の花道の鳥屋で待つ喜久雄に、緊急入院していた俊介が亡くなったとの知らせが届いたのです。 ***春江、幸子、市駒、綾乃、彰子たちが良好な関係のもとで、俊介を支えようとする姿に胸打たれた第17章でした。映画では、あまり描かれることがなかった女性たちですが、原作では、しっかりとその存在感を示し、お話に深みを与えてくれています。そして、最後の最後まで芸に噛り付き、演じ続けた俊介。まさに圧巻の舞台を務め終えました。
2026.01.02
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『婦人公論』2019年9月24日号~2021年7月13日号に 「見上げれば三日月」のタイトルで連載されたエッセイのうち 41編を選んでまとめた『ないものねだるな』(2022年2月刊行)を 文庫化に際し改題した一冊。 著者は、エッセイスト、作家の阿川佐和子さん。 *** まさに、世界を震撼させた新型コロナ時代の到来をつゆとも知らぬ頃に始まって、 その後じわじわと、かつて経験したことのない種類の恐怖と焦燥と発見の日々を 綴ってきたといえる。(p.242)これは、阿川さんによる「あとがき」の一文ですが、まさに、本書に掲載されているエッセイは、あの新型コロナ狂騒曲の開演前から序曲を経て大混迷を極めた時期に書かれたもの。それにしては、阿川さん結構冷静で落ち着いたペン運びのように思います。 齢を重ねると、身体のあちらこちらが詰まり始める。 血管が詰まり、骨と骨の間が詰まり、そのせいで背丈が詰まり、 お腹には脂肪がたっぷり詰まって永久脂肪と化す。 そのくせ大事なことは体内に詰まってくれず、どんどん流れ出ていく。 いや、もしかして脳みそが詰まるから、新しい記憶が涙のごとく外に溢れ出てしまうのか。 まず、人の名前がどんどんばんばん出ていく。 もともと覚えがいいほうではないが、とみに記憶力が落ちている。(p.66)これぞ、老人初心者のあるあるですねぇ。人の名前も、出てくるときには無意識のうちにスッと出て来るのに、一度引っかかってしまうと……もうダメなのです……まさに、「詰まってしまった」という言葉がピッタリ。実家の片付けのエピソードも、ホントあるある。何も見ずに、思い切って全部処分した方が精神衛生上は良いのかもしれません。
2026.01.02
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さて、第16章のタイトルの「巨星」とは、六代目小野川万菊のこと。 実は万菊、思いもよらぬ状況に陥っていたのです。 そんな万菊が、世間が抱く印象とは全く異なる最期を迎えることになりますが、 そこには、美の追求を迫られ続けた者の苦しみが滲み出ています。 ***俊介の襲名披露公演後、長期療養を経た小野川万菊が、自宅マンションでゴミに囲まれ暮らしているのが見つかります。その後出奔すると、ドヤ街の安宿で過ごし、同宿者には次のように話していました。 「ここにゃ美しいものが一つもないだろ。 妙に落ち着くんだよ。なんだか、ほっとすんのよ。 もういいんだよって、確かに、やっと言ってもらえたみたいでさ」そんな万菊は、93歳で大往生を遂げたのです。 「ちょっと会うてほしい人おんねん」綾乃からの電話で、喜久雄が日本橋のすき焼き屋に行くと、そこにいたのは大関・大雷。喜久雄が荒木らに御馳走する席に綾乃を連れて行った際、そこにいた兄弟子の一人が大雷で、以後、二人の交際が始まって、綾乃のお腹には既に子供が。綾乃は、私を三代目花井半二郎の娘としてお嫁に行かせて欲しいと喜久雄に頼みます。喜久雄がそのことを帰宅して伝えると、彰子から「おじいちゃんだ」という言葉と共に、父親として立派に送り出すようにと背中を押されたのでした。喜久雄の『阿古屋』の舞台は、初日から連続の大入り、一方、俊介は、時代劇連続テレビドラマ『女蜘』の続編も決まって大忙し。しかし、熊本文化ホールでの歌舞伎『女蜘』公演中に、足を縺れさせて花道から客席に転落、救急車で病院に運ばれると、 「重篤な状態です。すでに右足先が壊死してます」膝下からの切断を余儀なくされた俊介は、春江からの電話で病院に来た喜久雄に、必ず舞台に復帰すると宣言すると共に、一豊を預かってくれるよう頼むのでした。綾乃と大雷の結婚披露宴が盛大に行われると、義足を付けた俊介も参加。数か月後には綾乃が元気な女の子を産み、その日に大雷の横綱昇進も決まります。喜久雄が病院に駆けつけると、市駒の抱いていた孫娘を引き取った大雷が喜久雄に渡し、孫娘の名は喜重だと、綾乃が教えてくれました。『与話情浮名横櫛』のお富で、1年ぶりに舞台復帰した俊介でしたが、左足も壊死していると判明、右足だけでなく左足までも切断することに。春江からの電話で駆け付けた喜久雄に、つい先程まで暴れていた俊介が諦めの言葉を吐きます。そんな俊介に、喜久雄は次のようにだけ伝えたのでした。 「俊ぼん、旦那さんはな、最後の最後まで舞台に立ってたよ」 ***この章でも、喜久雄と綾乃、彰子との良好な関係は続いており、微笑ましいばかり。娘の結婚、初孫誕生、義理の息子の横綱昇進と、おめでたいことが続きます。そして、俊介の方も、舞台にテレビにと大活躍で、とてもイイ感じ……と思っていたら、またしてもジェットコースターは急降下……この後の展開は、映画を観て分かっているだけに、辛いの一言。「芸に生きる」ことについて考えさせられる第16章でした。
2026.01.01
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