《櫻井ジャーナル》

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2015.01.03
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 自分が新たな支配者になるため、外国の巨大勢力と手を組もうとする人は少なくない。属国化した国のエリートは総じてそうした類いの人びとだ。逆に、世界を制覇しようと目論んでいる勢力はそうした人を探し、カネの力で抱き込み、コントロールするために脅迫することもあるようだ。勿論、アメリカの属国である日本を支配している人びとにも当てはまる。

 アメリカの工作を振り返ってみると、例えば、ソ連圏を揺さぶる重要国と見られていたポーランドに反体制労組「連帯」を作り、イタリアのアンブロシアーノ銀行から不正融資という形で資金を提供、金融スキャンダルとして発覚する。その時の焦げ付き額は約12億ドルだった。

 この背後にはバチカン銀行、そしてCIAが存在した。供給されたのは資金だけでなく、ファクシミリ、印刷機械、送信機、電話、短波ラジオ、ビデオ・カメラ、コピー機、テレックス、コンピュータ、ワープロなどが数トン、ポーランドへアメリカ側から密輸されたという。(Carl Bernstein, "The Holy Alliance", TIME, February 24 1992)

 この秘密工作でポーランド生まれの教皇ヨハネ・パウロ2世が重要な役割を果たしているが、パウロ6世とCIA(戦前はOSS)との関係も重要。バチカンにはアメリカの情報機関が人脈を張り巡らせているのだ。連帯への不正融資に連座したバチカン銀行の頭取はパウロ6世の側近だった。

 ロナルド・レーガン政権でも旧ソ連圏に対する工作は続けられ、その中心にいたのはCIA長官だったウィリアム・ケーシー、リチャード・アレン国家安全保障問題担当大統領補佐官(1981年から82年)、ウィリアム・クラーク国家安全保障問題担当大統領補佐官(1982年から83年)、アレキサンダー・ヘイグ国務長官(1981年から82年)、バーノン・ウォルターズ元CIA副長官、ウィリアム・ウィルソン駐バチカン米国大使など。この人びとはカトリック教徒で、クラークの場合、妻がチェコスロバキア出身だということも無視できない。この時代、アメリカは「プロジェクト・デモクラシー」というプロジェクトを開始、「民主化」という名目で服わぬ体制の転覆、属国化、世界制覇を目指そうとしたのだ。

 ポーランド、ユーゴスラビア、そしてウクライナというようにアメリカは体制転覆工作を続けてきたが、そうした工作で中心的な役割を果たしたズビグネフ・ブレジンスキーはポーランド出身、ブレジンスキーの弟子でユーゴスラビアへの先制攻撃を主張していたマデリーン・オルブライトはチェコスロバキア出身。

 ロシアは1991年のクーデターで西側の傀儡だったボリス・エリツィンが実権を握り、国民の資産を西側資本と結びついた一部の人びとが略奪、「オリガルヒ」と呼ばれる富豪を生み出した。そのひとりがチェチェン・マフィアを背景にして成り上がったボリス・ベレゾフスキー。その後、イギリスへ亡命してプラトン・エレーニンを名乗った。

 西側では英雄視されているミハイル・ホドルコフスキーは巨大石油企業のユーコスを支配していたが、ソ連時代にはコムソモール(全ソ連邦レーニン共産主義青年同盟)の指導者で、KGBともつながっていた人物。その人脈を使い、ロシアの若い女性を西側の金持ちに売り飛ばし、その稼業で築いた西側富裕層とのコネクションは今でも生きていると言われている。こうした稼業のほか、ソ連が消滅してからメナテプ銀行を設立するが、この銀行の腐敗ぶりは有名。ユーコスはこの銀行を使って買収した。

 21世紀になるとウラジミル・プーチンがエリツィンを排除、オリガルヒを屈服させてロシアを独立国家として復活させる。自身の権力を過信したホドルコフスキーは逮捕されるが、ブレゾフスキーは亡命した。彼の場合はイギリスだったが、イスラエルへ逃れたオリガルヒも少なくない。



 アメリカはロシアでも「カラー革命」を目論んでいる。プーチン体制の打倒だ。2012年1月に大使としてモスクワへ赴任した マイケル・マクフォールが所属していたことのあるNDI(国家民主国際問題研究所)はNEDから資金を提供され、活動している団体 。このNEDはCIAが工作資金を供給するときのパイプ役で、NDIもCIA系の管理下にある組織だ。

 マクフォールがモスクワ入りした3日後、 ロシアの反プーチン/親アメリカ派のリーダーがアメリカ大使館を訪れている 。そうした人びとが所属しているのはNEDから資金を得ている「戦略31」、NEDやフォード財団、ジョージ・ソロス系のオープン・ソサエティ、そしてCIAと関係の深いUSAIDから資金を得ている「モスクワ・ヘルシンキ・グループ」、NEDから資金を得ている「GOLOS」。

 最近、次のような話が流れていた。

 「反政府活動家ナバルニー(リーダー格)の裁判があり、市民がクレムリン広場などで抗議集会、大量の人員が逮捕されたニュースが欧米を駆け巡っているが日本での報道はほとんどない。ナバルニーのツイッター(露語)は現在フォロアーが87万人。ロシアはプーチンの強権政治はあるが、市民抗議活動根付く」

 「ロシア:10日午後下院選不正糾弾デモ3万人(この範囲に収める合意)予定。9日NYT「主導者はナバルニー。ツイッターのフォロー13万5千名、ブログ6万名。現在当局に15日間の拘束中、デモに不参加。激しい体制腐敗を追及。彼主導で露で異例のデモ。元自由主義政党ヤブロコに属すも離脱」。」

 この中にも書いてあるように、西側のメディアはナバルニーについて、「体制腐敗を追及」していると宣伝しているのだが、アメリカのジョン・マケイン上院議員と個人的に親しいという側面もある。そのマケインを含むアメリカ支配層の腐敗についてどう考えているのか知りたいのだが、そうした情報は入ってこない。

 マケインと言えばネオコンの好戦派。2013年5月にシリアへ密入国してIS(イスラム国。ISIS、ISIL、IEILとも表記)を率いるアブ・バクル・アル・バグダディやFSAの幹部の幹部と会談、ウクライナではネオ・ナチやオリガルヒを柱とするクーデター派を支援、こうした勢力への軍事支援を訴えている人物だ。

 ナバルニーはそうした人物と親しいアメリカの傀儡だということをロシア人は知り始めている。マクフォールがモスクワ駐在の大使になった時点で、こうした構造を多くのロシア人は認識、西側メディアの宣伝とは違って反プーチンの抗議活動は盛り上がらなかった。

 価値基準は人によって違うのだろうが、このナバルニーを民主化運動の旗手、体制腐敗に立ち向かう闘志だと考える人はよほどのロシア嫌いなのか、アメリカを絶対的に崇拝しているのか、どちらかだろう。どのような経緯があるにしろ、こうした感情に流されずに情報を分析、判断できなければプロフェッショナルとは言えない。





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最終更新日  2015.01.04 05:15:34


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