フランス、イギリス、ドイツがアメリカを中心として実行しているシリアでの軍事作戦に参加するようだが、これはシリア政府の承諾を受けたわけでも国連が認めたわけでもなく、単なる軍事侵略だ。その同盟の中核、 アメリカ軍がシリア政府軍のデイル・エズルにある野営地を攻撃、4名のシリア兵を殺害、16名以上を負傷
させたと伝えられている。
IS(ISIS、ISIL、ダーイッシュなどとも表記)を攻撃すると称しているが、アメリカ軍が率いる同盟軍はこれまで約1年半の間、ISの軍事施設、兵站ライン、盗掘石油の輸送などを放置、その一方でシリア国民の生活に結びつくインフラを破壊してきたと言われている。
アメリカ、フランス、イギリス、トルコ、イスラエル、サウジアラビア、カタールはリビアやシリアの体制を転覆させるために手を組み、地上軍としてアル・カイダ系の武装集団(アル・ヌスラ/AQI)やそこから派生したISを使ってきた。そうした武装勢力をロシア軍は9月末から本当に空爆し、壊滅的なダメージを与えている。
軍事司令部や兵器の貯蔵施設だけでなく、盗掘石油に関係した施設や燃料輸送車も破壊し、盗掘石油の密輸で潤ってきたビラル・エルドアン、つまりレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領の息子も窮地に陥った。トルコ軍が戦車部隊を侵攻させたイラク北部は盗掘石油の輸送ルートとも重なる。
イラク北部にはクルド系の人びとが一種の自治国を作り、ペシュメルガと呼ばれる武組織を保有している。今回、トルコ政府はペシュメルガを訓練するとしているが、この集団はイラク政府を揺さぶるため、イスラエルが支援してきたと言われている。ISが勢力を拡大していた頃、クルド系の武装集団は対立していたようだが、ISが崩壊しつつある現在、トルコ政府はクルドに乗り換えようとしているかもしれない。
クルド系の人びとはイラクだけでなくイランやシリアにも住んでいる。シリアの場合、本来の住民は17万人程度と少なかったのだが、1980年代のトルコにおける内戦で難民化したクルド系の人びとがシリアへ流入、その数は200万人と言われている。
シリアへの軍事侵略が激しくなると、バシャール・アル・アサド政権はクルド人にシリアの国籍を与えたようだが、PKKなど大半のクルド人はトルコで独立国を作ろうと考えている。それに対し、フランス、イギリス、イスラエルはシリアにクルド人の国を作ろうと目論んでいる。その地域はISが拠点にしてきた地域で、西側が「飛行禁止空域」を設定しようとした場所でもある。そこを空爆したロシアのSu-24爆撃機をトルコのF-16戦闘機が撃墜したわけだ。
【追加】
シリア政府軍を攻撃するように命令したのはイギリスのデイビッド・キャメロン首相だとする情報が流れている。
アメリカ国防総省はアメリカが主導する連合軍がシリア政府軍を攻撃したとする報道を否定、ロシア政府は攻撃を確認できないとしている。