いわゆるロシアゲートの第2幕目が始まった。CIA出身のウィリアム・バー司法長官が ロシアゲートの捜査が始まった経緯を捜査 するためにコネチカット州の連邦検事、ジョン・ドゥラムを任命したのだ。FBIゲートの捜査が始まったとも言える。
これまでドゥラムはFBI捜査官やボストン警察が犯罪組織を癒着している疑惑、CIAによる尋問テープの破壊行為などを調べたことで知られている。
ロバート・マラー特別検察官 のロシアゲートに関する捜査ではジュリアン・アッサンジのような重要人物から事情を聞くこともなく、ハッキングされたという民主党のサーバーも調べていない。結局、新しい証拠を見つけられなかった。疑惑に根拠があるかのような主張もしているが、事実の裏付けがない。つまり「お告げ」や「御筆先」の類いにすぎないのだ。
マラーが特別検察官に任命されたこと事実がロシアゲート事件がでっち上げであることを示しているという指摘があった。
アメリカの電子情報機関NSAの不正を内部告発したことでも知られているウィリアム・ビニーによると、ロシアゲートが事実なら、そのすべての通信をNSAは傍受、記録している。そのNSAから傍受記録を取り寄せるだけで決着が付いてしまい、特別検察官を任命する必要はないということだ。
ビニーは1970年から2001年にかけてNSAに所属、技術部門の幹部として通信傍受システムの開発を主導、NSA史上最高の数学者にひとりと言われている人物。退職後、NSAが使っている憲法に違反した監視プログラムを告発、2007年にはFBIから家宅捜索を受けているが、重要文書を持ち出さなかったので刑務所へは入れられなかったという。
ロシアゲートの核心部分は、 ウィキリークス が公表したヒラリー・クリントンやDNC(民主党全国委員会)の電子メール。いくつもの不正行為がそこには含まれていた。例えば、クリントンは3万2000件近い電子メールを消去、つまり証拠を消している。全てのメールはNSAが記録しているので容易に調べられるのだが、そうした捜査をFBIは行っていない。DNCのサーバーも調べていない。
ビニーを含む専門家たち はそうした電子メールがハッキングで盗まれたという主張を否定する。そうした専門家のひとりでロシアゲートを調査したIBMの元プログラム・マネージャー、スキップ・フォルデンも内部の人間が行ったとしている。転送速度など技術的な分析からインターネットを通じたハッキングではないというのだ。
ロシアゲートが作り話であることは特別検察官も理解していただろう。この疑惑を事実だとするためにはトランプの周辺にいる人物を別件で逮捕、司法取引でロシアゲートに関して偽証させるしかなかったと推測する人もいる。ところがその工作に失敗したようだ。
ロシアゲートの開幕を告げたのはアダム・シッフ下院議員。2017年3月に下院情報委員会で、前年の大統領選挙にロシアが介入したとする声明を出したのだ。何も証拠は示さなかったものの、その年の5月にマラーが特別検察官に任命されたのである。
シッフの主張は元MI6(イギリスの対外情報機関)オフィサーのクリストファー・スティールが作成した報告書だが、根拠薄弱だということはスティール自身も認めている。
スティールに調査を依頼したのはフュージョンなる会社、そのフュージョンを雇ったマーク・エリアス弁護士はヒラリー・クリントン陣営や民主党全国委員会の法律顧問を務めていた。
フュージョンを創設したひとりであるグレン・シンプソンによると、 同社は2016年秋にネリー・オーなる人物にドナルド・トランプの調査と分析を依頼している 。その夫であるブルース・オーは司法省の幹部で、このオーとシンプソンは2016年11月に会っていた。その直後にブルースは司法省のポストを失い、フュージョンはスティールに調査を依頼することになる。
ロシアゲートという作り話の中心にいるのは、2013年3月から17年1月までCIA長官を務めたジョン・ブレナンだと見られている。このブレナン、2010年8月から17年1月まで国家情報長官を務めたジェームズ・クラッパー、あるいはFBIの幹部たちが今後、捜査の対象になる。FBIにはバラク・オバマ政権のためにドナルド・トランプ陣営をスパイしていた疑惑も浮上している。
2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されてからアメリカ支配層の内部で主導権を握ったネオコンだが、ここにきて権力バランスに変化が生じている可能性もある。