本ブログでは繰り返し書いてきたが、アメリカの支配力は弱まっている。軍事同盟を強化するため2017年11月にオーストラリア、インド、アメリカ、日本で組織されるクワドの復活を協議したのもテコ入れのつもりだろう。アメリカ太平洋軍は2018年5月にインド太平洋軍へ名称を変更している。太平洋の拠点は日本、インド洋の拠点はインド、ふたつをつなぐ役割をインドネシアが担うとされた。
2020年6月にはNATO(北大西洋条約機構)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長はオーストラリア、ニュージーランド、韓国、日本をメンバーにするプロジェクト「NATO2030」を開始すると宣言、21年9月にアメリカ、イギリス、オーストラリアのアングロ・サクソン3カ国は太平洋で軍事同盟AUKUSを築く。JAPHUS(日本、フィリピン、アメリカ)なる軍事同盟も編成した。こうした動きに対し、ニコライ・パトロシェフは2021年9月、AUKUSは中国やロシアを仮想敵とする「アジアのNATO」だと指摘している。その当時、パトロシェフはロシア国家安全保障会議の議長を務めていた。
NATOは集団防衛機構だとされているが、その事務総長だったヘイスティング・ライオネル・イスメイはNATO創設の目的はソ連をヨーロッパから締め出し、アメリカを引き入れ、ドイツを押さえつけることのあるとしている。このイスメイはウィンストン・チャーチルの側近だ。
NATOは1949年に創設されたが、その母体になったのは48年に作られたACUE(ヨーロッパ連合に関するアメリカ委員会)。この組織はアメリカやイギリスがヨーロッパを支配する目的で設立され、イギリスのチャーチルやアメリカのアレン・ダレスたちが参加していた。ちなみにビルダーバーグ・グループはその下部機関のひとつ。
NATO加盟国には破壊活動を目的とする秘密部隊が存在していることもわかっている。その中でも特に有名な部隊がイタリアのグラディオ。1960年代から80年頃までクーデター計画や極左グループを装った爆破事件を繰り返していた。
フランスのOASもそうした秘密部隊ネットワークにつながる組織で、メンバーの一部が1962年にシャルル・ド・ゴール大統領の暗殺を試みている。
その背景を知っていたド・ゴールは1966年にフランス軍をNATOの軍事機構から離脱させ、SHAPE(欧州連合軍最高司令部)をパリから追い出している。ジョン・F・ケネディ米大統領が暗殺されたのは1963年のことだが、ド・ゴールはケネディ暗殺と自分の暗殺未遂の背景は同じだと考えていたと言われている。
東アジアにNATO的な軍事同盟を築く目的は中国やロシアとの戦争を想定しているだけでなく、その地域全域の支配体制を強化することにあるはずだ。つまり東/東南アジアの植民地化である。ロシアに敗北した西ヨーロッパ諸国は東/東南アジアに注目しているのか、あるいは世界大戦を始めて戦況を一変させようとしているのかもしれない。