NATO諸国はロシアを攻撃できる長距離精密兵器を供給、その兵器を扱える専門家を派遣、攻撃に必要な偵察衛星の情報を提供、ターゲットを選定、そのターゲットに関する情報も提供すると宣言している。つまり、NATOはロシアを攻撃すると言っているのだ。これを「宣戦布告」と表現する人もいる。それに対し、ロシア政府は攻撃されれば反撃すると宣言した。
ジョー・バイデンは大統領に就任して間もない段階で「ルビコン」をわたり、回帰不能点を超えた。2021年3月16日にABCニュースに出演、アンカーを務めるジョージ・ステファノプロスからウラジミル・「プーチンは人殺しだと思うか?」と問われ、「その通り」と答えているが、それだけでなく、ロシアに対する軍事的な圧力を強めている。すでに兵器だけでなく戦闘員をウクライナへ送り込んでいることは公然の秘密であり、ロシア領への攻撃も事実上、NATOが行なっているのだ。それでもロシア側が厳しい対応をしなかったことから、NATOは図に乗ったと言えるだろう。
アメリカの好戦派は1992年2月、 国防総省のDPG(国防計画指針)草案という形で世界制覇計画を作成した。当時の 大統領はジョージ・H・W・ブッシュ、国防長官はディック・チェイニー、国防次官はポール・ウォルフォウィッツ。そのウォルフォウィッツが中心になって作成されたことからウォルフォウィッツ・ドクトリンとも呼ばれている。
そのドクトリンの柱は「新たなライバルの出現を許さない」ということであり、ドイツと日本をアメリカの戦争マシーンに組み込むともされている。日本が1995年にアメリカの戦争マシーンに組み込まれたことは本ブログで繰り返し書いてきた。そこから現在までは一本道だ。
ジョー・バイデン政権はすでにルビコンをわたり、EU諸国の大半はバイデン政権にしたがっている。後戻りはできないのだが、前へ進めば核戦争に近づく。もし核戦争を望まないなら、ロシア政府はアメリカ政府に「ルビコン」を渡らせてはならなかったのだ。
バイデン政権がルビコンを渡ったのは、ロシアと戦っても楽勝できると信じていたからだろう。例えば、外交問題評議会(CFR)の定期刊行物 「フォーリン・アフェアーズ」の2006年3/4月号に掲載された論考 には、アメリカが近いうちにロシアと中国の長距離核兵器を先制第1撃で破壊する能力を持てると書かれている。アメリカの支配層にはそう信じている勢力が存在しているわけだ。
アメリカが軍事力を行使してもロシアは動かないともネオコンは信じていた。1991年1月の湾岸戦争でアメリカ主導軍がイラクへ軍事侵攻してもソ連は動かなかったことから、ロシアも動かないと思い込んだのだという。
その年の5月に国防総省を訪れたウェズリー・クラーク元欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)最高司令官はウォルフォウィッツからシリア、イラン、イラクを5年から10年で殲滅すると聞かされたという。その後、2001年9月11日から10日ほど後に統合参謀本部で攻撃予定国のリストが存在していたとも語っている。そのリストにはイラク、シリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、そしてイランが載っていた。( 3月 、 10月 )
ソ連が消滅、唯一の超大国になったアメリカは誰にも気兼ねすることなく行動できるという思い込みからウォルフォウィッツ・ドクトリン、そしてこうした計画は生まれた。ところが21世紀に入る頃にロシアは復活しはじめ、すでに生産力も戦力もロシアはアメリカを上回っているのだが、そうした現実を西側の支配層は受け入れられない。彼らは「神風」を信じているのだろう。