イスラエル軍は9月30日、南レバノンへ地上部隊を侵攻させたとする声明を発表したが、レバノン領内にはヒズボラの 強力な防衛線が築かれていて、イスラエル軍を待ち構えていた。死傷者をレバノンからイスラエルへ運ぶヘリコプターの光景が撮影されている。イスラエルにとって予想外の展開になっているのかもしれない。
地上軍を侵攻させる前、 9月27日から イスラエル 軍は南レバノンにバンカー・バスター爆弾(地中貫通爆弾)約85発を投下して破壊、それによってヒズボラは壊滅的なダメージを受けたと判断したのかもしれないが、その判断は間違っていたようだ。
ヒズボラはイエメンのアンサール・アッラー(フーシ派)やイラクやシリアの反シオニスト勢力と同じように、イスラエル軍によるガザでの住民虐殺を止めるためにイスラエルを攻撃している。
ガザで殺された住民は4万5000人を超えたと言われているが、瓦礫の下に埋まっている遺体は相当数に及ぶと見られている。 ランセット誌が今年7月に掲載した論文は「間接的な死者は直接的な死者の3倍から15倍に及ぶ」と指摘 、当時報告されていた「死者37,396人に直接的な死者1人につき間接的な死者4人という控えめな推定を当てはめると、ガザにおける戦闘による死者は最大18万6000人、あるいはそれ以上」とした。しかもガザやレバノンでの惨状はテレグラムやXなどで世界に発信され、イスラエルや欧米に対する怒りが広がっている。
ジョン・ケリー元国務長官は先月、WEF(世界経済フォーラム)のパネルで、アメリカ憲法の修正第1条、つまり信教、言論、出版の自由を定めた条項が「偽情報」の拡散を政府が阻止するのを妨げる「大きな障害」だと主張 した。1970年代の後半から情報操作や言論統制が強化されてきたが、それでも「民主主義」は装っていた。ここにきてそうした装いを脱ぎ捨てたようだ。実際、政府の政策にとって都合の悪い事実を伝えるジャーナリストに対する弾圧が強化されている。
ソ連最後の大統領、ミハイル・ゴルバチョフは ニコライ・ブハーリンを研究、 西側の体制を民主主義だと錯覚していた。その錯覚がソ連を消滅させることになったのだが、ソ連が解体された後もロシアの少なからぬインテリは欧米に幻想を抱いていたようだ。資本主義になればインテリは富豪になれると思っていたのかもしれない。似たようなことは中国やイランでも起こっている。
南レバノンに対するイスラエル軍のバンカー・バスター爆弾による攻撃でサイード・ナスララをはじめとするヒズボラの幹部が殺された。7月31日にテヘランでハマス幹部イスマイル・ハニエが暗殺されたケースでも言えるが、イスラエルに機密情報が流れている。欧米やイスラエルに接近し、ビジネスにつなげたいと考えている要人がイランにもいるはずで、そこから情報が漏れているかもしれない。
ハニエが暗殺された後、イランは報復すると宣言していたが、なかなか動かなかった。イランのマスード・ペゼシュキアン大統領によると、イスラエルを攻撃しなければイランに対する実質的な制裁の解除と、ハマスの条件に沿ったガザでの停戦保証を欧米の当局者は提案したのだという。この話を信じたとするならば、ペゼシュキアンやその取り巻きはゴルバチョフと同じように西側幻想に浸かっていたことになる。
ナスララ暗殺の後、10月1日にイラン政府は180機以上の 弾道ミサイルを発射した。 F-35戦闘機を配備するネバティム基地、ハッサン・ナスララをはじめとするヒズボラの指導者を殺害したネツァリム基地、弾道ミサイルのあるテル・ノフ基地、モサドの本部などがターゲットだ。
イスラエルはアイアン・ドーム」で防御に成功したと宣伝しているが、インターネットで伝えられている映像(例えば ココ )を見ると、イランが主張するように大半はイスラエルの防空システムを突破している。
ロシアにしろ、中国にしろ、イランにしろ、そうした幻想から抜け出す必要がある。抜け出せればアメリカを中心とする体制は崩壊する。抜け出さなければ、ロシア、中国、イランなどには破滅が待つ。
彼は「アマレク人があなたたちにしたことを思い出しなさい」(申命記25章17節から19節)という部分を引用、「アマレク人」を家畜と一緒に殺した後、「イスラエルの民」は「天の下からアマレクの記憶を消し去る」ことを神に命じられたという。
また、サムエル記上15章3節には、「アマレクを討ち、アマレクに属するものは一切滅ぼし尽くせ。男も女も、子供も乳飲み子も牛も羊も、らくだもろばも打ち殺せ。容赦してはならない。」と書かれている。
パレスチナ人を皆殺しにするだけでなく、彼らが生活していた歴史を消し去るということだろう。その宣告通りのことをイスラエルは行っている。彼らにとって「アマレク人」はパレスチナ人だけを指しているわけではない。
**********************************************
【 Sakurai’s Substack 】