ドナルド・トランプ米大統領は8月2日、「トゥルース・ソーシャル」への投稿で、イランに対する攻撃計画を中止したと発表した 。彼によるとホルムズ海峡の即時かつ完全な開放、そしてイランによる核の脅威の終結を含む合意に達し、アメリカは「第2次世界大戦以来類を見ないほどの軍事的脅威、強さ、そして力を備え、イラン・イスラム共和国に対して即座に行動を起こせる態勢を整えている」のだが、「イランやその他の中東諸国から攻撃を控えるようにと要請されたとしているので攻撃計画を中止したという。
CBSニュースは7月31日、つまり金曜日、アメリカとイスラエルがイランのエネルギーインフラを標的とした大規模な爆撃作戦を計画していると報じていた。そうした攻撃が実施された場合、ペルシャ湾岸諸国の石油施設や発電所に対する報復攻撃があるとことは間違いない。そして日曜日にトランプは攻撃の中止を発表した。
アメリカ軍がイランを攻撃した場合、自国の施設がIRGC(イラン革命防衛隊)から報復攻撃されることが避けられないサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子/首相から事態を沈静化させ、攻撃を見送るように求められたというのだが、イランはトランプの主張を否定している。
勝利を演出するために大口を叩いて小規模な攻撃を実施、さまざまな市場で相場が始まる直前に取りやめるという、いつものTACO(トランプはいつも尻込みする)だという人も少なくない。本当にアメリカ軍がイランに対して大規模な攻撃を実施した場合、アメリカやイスラエルだけでなく世界が大惨事になるからだ。
すでにアメリカが保有する戦略石油備蓄(SPR)を含む総貯蔵量は大きく落ち込み、底をつきそうな状況であり、攻撃用のミサイルやドローンが枯渇、また迎撃率が数パーセントにすぎないパトリオット・システムのミサイルも足りず、イランのミサイルは迎撃を受けていない。
しかも、 衛星測位システムをGPSから中国の北斗(BDS)へ切り替えてジャミング(妨害電波)やスプーフィング(なりすまし信号による欺瞞)の妨害を受けなくなり、イランのミサイルは迎撃されることなく正確に目標へ到達している 。すでに西アジアのアメリカ軍基地は壊滅的な損害を受け、イスラエルの重要施設も破壊されてしまった。
例えばカタールにあるアル・ウデイド空軍基地、クウェートのアル・サレム基地、アラブ首長国連邦のアル・ダフラ空軍基地、バーレーンのアメリカ軍第5艦隊基地、サウジアラビアのリヤドにあるプリンス・スルタン空軍基地、ヨルダンのムワファク・アル・サルティ空軍基地、クウェートにあるふたつの基地など。
イスラエルでは早い段階に テルアビブやハイファといった都市、情報機関モサドの司令部や軍情報部アマンの施設、イスラエルの核開発計画でも中心的な役割を果たしてきたワイツマン研究所も破壊され、ディモナにあるシモン・ペレス・ネゲブ原子力研究センター(ディモナ原子炉)周辺も攻撃された。
そしてペルシャ湾へ通じるホルムズ海峡はイランが管理、紅海への入り口であるバブ・エル・マンデブ海峡は世界、特に東アジア諸国の経済活動にとって深刻な事態だ。アンサール・アッラーのアブドゥル・マリク・アル・フーシはエスカレーションに対してはエスカレーションで応じると警告している。レバノンのヒズボラ、イラクのカタイブ・ヒズボラ、アサイブ・アル・アルハク、バドルといったシーア派の戦闘集団もアメリカやイスラエルがイランを攻撃しいた場合、参戦すると考えるべきだろう。
すでに数百名のアメリカ兵が戦死していると言われ、負傷した兵士を治療する拠点であるドイツのラントシュトゥール地域医療センターには150名以上の衛生兵が到着したと伝えられている。イランによるミサイル攻撃を生き延びた重傷のアメリカ兵の対応に追われ、人員不足が深刻化していたのだというが、地上作戦を実施した場合、アメリカ軍の犠牲者はこれまでの比ではないはずだ。
カスピ海を航行したイランの商船をウォロディミル・ゼレンスキーが率いるウクライナ軍は長距離ドローンで攻撃、イラン人船員ひとりを殺害しているが、そのウクライナではロシア軍が敵の防衛線を完全に突破したようだ。戦場にドローンが飛び交う現在、かつてのように戦車部隊が突進するというような作戦はとらず、ロシア軍は自軍の兵士だけでなく人質状態になっているウクライナの住民の犠牲者を少なくしようとしているが、確実に支配地域を拡大、最近ではNATO諸国の軍人や外交官の拠点に対する攻撃も激しくなってきた。戦術が変わった。
ウクライナ/NATO軍はロシア市民を殺傷し、ロシア社会に厭戦気分を広めようとしているが、逆効果になっている。イランと同じ現象だ。
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【 櫻井ジャーナル(note) 】