<ニューヨークへの想い> ビリー・ジョエル、今やニューヨーク市民の愛唱歌のひとつになった「ニューヨークへの想い New York State Of Mind」の作者です。彼はまたウディ・アレンやポール・サイモンらと同じく典型的ユダヤ系ニューヨーカーでもあります。しかし、生まれも育ちもニューヨーク郊外の新興住宅地、ロング・アイランドだったということが、彼の音楽性に他のニューヨーカーとは異なる影響を与えました。 それは彼が個性のない生まれた街をきらい、ニューヨークの雑踏をより深く愛したからだけではなく、それ以上にニューヨークという巨大な街を一歩離れた外からの視点でとらえることにつながったからです。(当時最新型だった住宅地は、ロング・アイランドの自然をつぶし、区別のつかない同じ型の家を並べて作られ有名な街です。このことは、彼のアルバム「リバー・オブ・ドリームス」の中の曲「ノー・マンズ・ランド」にも書かれています) この「外からの観察者」という彼の視点は、デビュー当初の「路上の観察者」から、しだいに「アメリカ合衆国の観察者」(「ナイロン・カーテン」など)へとその視点を広げ、その後はもう一つの視点「心の観察者」(「リバー・オブ・ドリームス」など)という内なる視点へと変わってゆきました。 <ビリーの青春> ビリーが生まれたのは、1949年5月9日。ちょうど戦後のベビー・ブーマー世代にあたります。ヒトラーによって、危うく処刑されるところだったユダヤ系ドイツ人移民の父親のもと、ロング・アイランドで少年時代を過ごしましが、あまりに無個性な街とそこでの平穏無事な生活に嫌気がさしていた彼は、いつしか不良少年たちの仲間入りをし、ついには逮捕されるところまでいってしまいました。