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テーマ: 臨戦刀術(92)
カテゴリ: 臨戦刀術


 もし「臨戦刀術」という言葉が許されるなら、
それは、敵とわたり合う事の諸規範を修める前に、
まず刀を、己が軍刀を、己が身に叶え、
己が身に鳴らしたものでなくてはならぬ。
 刀の組成を知らず、機能を知らず、佩〔お〕び方を知らず、
柄の持ち方、抜き方、切りつけ方、血の拭い方、
鞘に納め方等々を知らず、
さらに刀と己れと相忘れるほどに身に具足する事なくして、
刀を以てする剣道はあり得ない。
 面小手胴の防具に身を固め、竹刀を執って打ち合う剣道は、
実戦への道程であり一部分であり得ても、全部ではない。
 それは基礎修錬ではあるかも知れぬ。
だが基礎修錬に熟達しただけの腕前で、
直ちに刀を執って戦い得ると盲信してはいけない。
 もし、竹刀剣術だけの腕の者が真剣を執るのと、
竹刀の経験はなくても、
真剣の取り扱いに徹底した抜刀熟練者が真剣を執るのと、
いずれに実戦的効果があるかといえば、私は躊躇なく後者だといい切る。
 私は、私の先著『戦ふ日本刀』の中で、
敵に追いすがって、四十七人を見事に斬った應召〔おうしょう〕の一少尉は、
中学校で剣道を少々やっただけの腕であるが、
ながい戦場生活中、部下に中山博道先生門下の居合の達者がいて、
その指導を受けながら、実地に物切りの功を積み、
ついに、いかなる場合にも敵とわたり合い斬撃し得るという確信を得た、
という実話を書いた。
 また、武術の経験の浅いある曹長が、
幾戦場の白兵戦の経験から、自ら編み出した真剣勝負の形式が、
期せずして居合術の真諦〔しんたい〕と一致していた事から教えられ、
ある戦で刀を抜くいとまがなく、刀柄ごと敵の後ろからぶつかり、
敵のひるむところを抜き打ちに胴斬りした話。
 刀に慣れる事が白兵刀術の秘奥だという事に気がついて、
暇さえあれば陣中に居合を練った石丸少佐の話。
 さては、剣道自慢の某曹長が、部下の捉えた敵兵を斬って仕損じた話。
等々を筆にし、刀人一如、
刀と己れとを相忘れるほどに自己の佩刀に熟達すれば、
それに伴って、無意識の意識が働く事、即ち夢想剣というものは、
「刀も武術の内」即ち「刀人一如」の境地からのみ到り得る
神通の世界の技〔わざ〕だということを説いた。







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Last updated  2014年02月26日 01時52分12秒


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