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2019年05月15日

道家思想篇 38 老子 Laozi 序「全く老子である」「(パクりましたね土方歳三)」

テーマ：老荘思想(128)

カテゴリ：道家思想

Jongning,Laozi
Photo by Leo Sapoka

Youtube - The School of Life
EASTERN PHILOSOPHY - Lao Tzu

道家思想篇 38 老子 Laozi 序
当ブログにて目下、転載引用中の熊澤蕃山著 『集義和書』 の巻第十、
議論之三 163 には以下のような文がある。

　　「一　心友問〔とふ〕。むかし漢に黄老〔こうろう〕の道を好て清静の化行はれたりと。
　　しからば異端も亦〔また〕用〔もちふ〕るに益あるか。
　　　答云。陰陽を和調することは、実に倹節〔けんせつ〕にあり。
テレ約失フレ之者（約を以て之を失う者）すくなしと。
　　愚もまた黄老の学者なり。清静にして欲すくなからんことをねがふ。
　　本〔もと〕より栄利をしたはず。皆聖人の一端なり。
　　老子云〔いはく〕、学ベバレ道日ニ損す（道を学べば日〔ひび〕に損す）と。
　　道は天理なり。学は習〔ならい〕て明〔あきらか〕にするの義なり。
　　天理にしたがひて習〔ならい〕て人倫を明〔あきら〕かにする時は、人欲日々に損亡す。
　　よく道を学ぶ者は、大事化して小事となり、小事は無事となる。

　　損し尽〔つく〕すの至〔いたり〕は我心大虚と成〔なり〕て一物なし。
　　是非に思ふ事もなく、することもなし。
　　思ふことみな文理〔ぶんり〕なるを、思ふことなしといふ。
　　なす事みな礼儀なるを、することなしといふ。
　　ただ人欲いまだつきざるが故に、思ひは文理を失〔うしなひ〕て妄念となり、

　　　問。倹約の一事いかにしてか陰陽を調和するに至〔いたる〕べきや。
　　陰陽調和せば風雨も民の願〔ねがひ〕にしたがはんか。
　　　云。倹約の本〔もと〕は無欲なり。上〔かみ〕無欲なれば事すくなし。
　　無事をたのしむ者は財をたつとびず。財をたつとびざればあつむることなし。
　　財をのづから天下に散じて民もたからとせず。
　　たからとせざれば相争〔あひあらそふ〕ことなし。
　　井をほりて水のみ、田を耕して食す。五穀のみ年々に多く生じて水火のごとし。
　　人に不仁のあることなし。戸ざさざれども盗〔ぬすびと〕なし。
　　それ如レ此（此〔かく〕の如く）なる時は刑政用る所なし。
　　衣裳をたれて天下治〔おさま〕れり。これ礼楽の質也。
　　ここに初〔はじめ〕て学校の政、孝弟忠信の教〔おしへ〕をなすべし。
　　倹約の義至れり尽くせり。」

さて一方、アメリカの哲学者 R.W.エマソン Ralph Waldo Emerson は以下のように書いている。

　　「＿＿＿世の哲学者たちは、人間の偉大さは欲望を減ずることにあると説いた。
　　だが人間は、あばら家に住み、干し豌豆〔えんどう〕を食べて満足し得るであろうか。
　　人間は富者となるために生まれてきたのだ。
　　人間はあらゆるものに関係をもっている。
　　自分の欲望や好みに誘われて自然のあれかれを征服し、やがて自分の住む地球、
　　さらに多くの惑星を利用することのなかにおのれの幸福を見出そうとする。
　　富は、生活の糧や住む家ばかりでなく、
　　都市の自由、大地の自由、旅行、機械、科学が与える数々の利益、音楽、美術、
　　最上の友人とを獲得すべきを求める。
　　あらゆる能力を自分のために利用し得る人間こそ富者である。
　　大多数の人間　　遠い国々に住む人間や遠い昔の人間の労力から
　　利益をひきだす方法を心得ている人間こそ最大の富者である。＿＿＿」

　　　（エマソン選集『生活について』「富」P.84 ）

　　　＿＿ the philosophers have laid the greatness of man in making his wants few;
　　but will a man content himself with a hut and a handful of dried pease?
　　He is born to be rich. He is thoroughly related; and is tempted out by his appetites
　　and fancies to the conquest of this and that piece of nature, until he finds his
　　well-being in the use of his planet, and of more planets than his own.
　　Wealth requires, besides the crust of bread and the roof,--the freedom of the city,
　　the freedom of the earth, travelling, machinery, the benefits of science, music,
　　and fine arts, the best culture, and the best company. He is the rich man who can
　　avail himself of all men's faculties. He is the richest man who knows how to draw a
　　benefit from the labors of the greatest number of men, of men in distant countries,
　　and in past times. ＿＿

　　Ralph Waldo Emerson
　　“III. Wealth” in The Conduct of Life

上記の部分だけ読むと、エマソンは老子の道教〔おしえ〕を否定しているように受け取られる。
やはりユダヤ・キリスト文化圏と対峙するには東洋思想は弱すぎるのであろうか。
世界はマンモニスト（ mammonist、拝金主義者）の手に落ちたのであろうか？
否〔いな〕、エマソンの、後々に続く文章を読んでいくとそうではないことがわかるのであるが、
長くなってしまうので、また次回以降に引用していくことにしよう。

　　「善く行く者は轍迹〔てっせき〕なし
　　　真の善行は誰にも知られずなされるものである！」
　　「柳生さん！　どうして土方〔ひじかた〕さんの言葉を知ってるんですか？」
　　「誰ですかな　それは
　　　これは老子の道教〔おしえ〕　巧用第二十七である」
　　「そうなんですか　老子の教えなんですね　これ」
　　「全く老子である」
　　「（パクりましたね　土方歳三）」

より