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カテゴリ: 陽明学


しかるを、人知らざることあるは、何ぞや。

 云う。君子は富士山の如くならんとおもえるか、富士高しといえども平地にしかず。
万山を載せて重しとせず、河海をおさめてもらさず。
広厚の徳ありといえども、平地に何の見るべきことあらん。
世の中の少し学知有る者、大いに衆に異なるが如くなるは、
庭前〔にわさき〕築山〔つきやま〕の如し。
其のすこしきなることを知るべし。




 一 心友問う。人死して、其の神〔しん〕、天に帰〔き〕すといえり。
何の精神か一物と成りて天に帰すべき。
魂気〔こんき〕游散〔ゆうさん〕し魄体〔はくたい〕蝉蛻〔せんぜい〕のごとし。
空々〔くうくう〕寂々〔じゃくじゃく〕たり。
ただ此の空のみ本来の常体ならずや。

 云う。世人、形体の上より見〔けん〕を立つるが故に、生死を以て二つにす。
この故に、天に帰するの説あり。
吾〔われ〕本〔もと〕不来〔ふらい〕、天と吾と一つ也。
何の帰するということかあらむ。
吾〔わ〕が心の霊明、即ち天地の万物を造化する主宰也、
即ち鬼神の吉凶〔きっきょう〕災祥〔さいしょう〕をなす精霊〔せいれい〕也。
天地鬼神の精霊主宰なくば、吾が心の霊明もなからん。
吾が心の霊明なくば、天地鬼神の霊所〔れいしょ〕(※はたらき)もなからん。
今、死体の人は精霊游散す、死体の者の天地万物いづれの所にかあるや。
故に、君子大をかたれば天下よく載〔の〕することなく、
小をかたれば天下よく破ることなし。





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Last updated  2022年03月19日 06時49分57秒


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