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カテゴリ: 陽明学


心を存すればおのづから静かなり。自然に未発の中〔ちゅう〕立つがごとし、いかむ。

 云う。静によりて静を求むるは、気の静也。
今の人、気を定め得て存心〔そんしん〕とおもえるは、未発の中にあらず。
古人、静を主とするの功夫〔くふう〕は、
平生、義にうつり理〔り〕にしたがって私なきを無欲とす。
無欲なれば心自然に静にして未発の中〔ちゅう〕存す。
此の未発の中は、動静を以て損益なし。
静を好むは動をいとう(厭う)心あり。理にしたがうこと専〔もっぱ〕らならず。
物にさへ(遮え)らるるは真の静にあらず。
程子〔ていし〕定性〔テイセイ〕を言う、定〔テイ〕は心の本体也。
動静は遇〔あ〕うところの時也。
王(陽明)子云わく、精神・道徳・言動、大方〔おおかた〕収斂〔シュウレン〕を主とす。
発散は是〔こ〕の已〔や〕むを得ざる也。天地万物みな然り。
此の説主静の功〔こう〕に益あり。
人〔ひと〕常に已むを得ずして応ずるときはあやまちすくなし。
心無欲にして無事を行う也。



 *『伝習録』中「答陸原静書(陸原静〔りくげんせい〕に答うる書)」
   來書云、周子曰、主静、程子曰、動亦定、静亦定。
   先生曰、定者心本體、是静静也、決非不覩不聞、無思無為之謂。
   必常知常存常主於理之謂也。
   夫常知常存常主於理、明是動也。已発也。
   何以謂之静。何以謂之本體。豈是静定也。
   又有以貫乎心之動静者耶。

  來書〔らいしょ〕に云う、周子曰く、静〔せい〕を主とす、と。
  程子曰く、動〔どう〕にも亦〔また〕定まり、
  静〔せい〕にも亦〔また〕定まる、と。
  先生曰く、定〔てい〕は心の本體〔ほんたい〕なり、と。
  是〔こ〕の静定〔せいてい〕や、決して覩〔み〕ず聞かず、
  思うこと無く為すこと無きの謂〔いい〕に非ず。
  必ず理〔り〕を常知〔じょうち〕し常存〔じょうそん〕し
  常主〔じょうしゅ〕するの謂〔いい〕ならん。
  夫〔そ〕れ理〔り〕を常知し常存し常主するは、
  明かに是〔こ〕れ動〔どう〕也。已発〔いはつ〕也。
  何を以て之を静と謂うや。何を以て之を本體と謂うや。
  豈〔あに〕是〔こ〕の静定〔せいてい〕や。
  又〔また〕以て心の動静を貫く者〔もの〕有りや。

  (参考・近藤泰信 著『新釈漢文大系 13 伝習録』p. 295 明治書院)





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Last updated  2022年03月19日 07時22分24秒


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