森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2016.12.28
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カテゴリ: 神経症の成り立ち
森田先生に「幽霊の正体見たり枯れ尾花」という話がある。
月明かりの中、人目のない墓場のような所を一人で通りかかる。
「何か出てこないかな」とビクビクしながら歩いていると、ススキが風に揺られて音を出す。
「ワッー」と駆け出そうものならパニック状態になる。
枯れススキまでが幽霊に思えてしまう。
さらに急いで走りだすと、自分の足音さえも誰かが追いかけてくる足音に聞こえてしまう。
足がもつれて思わぬケガをすることもある。

私にもこれと同じような経験がある。
私は高校時代に片道13キロの道のりを自転車で通っていた。

その山道の頂上には地獄図のような絵がかかった神社があった。

昼間はどうと言うことはなかったが、秋から冬間にかけては早くから日が暮れて真っ暗になった。
その山道を一人で超えていくのはとても恐ろしいことだった。特に雨の日は嫌だった。
何か出てくるのではないかと思っている時に、風で木々がザワザワと音を立てると生きた心地はしなかった。

そこにさしかかると、山の頂上までは自転車を全速力で押して登っていく。
頂上に着くと今度は全速力で下る。
ところが恐怖に取りつかれているので、早く民家のあるところまで降りようとして必要以上にスピードを出す。
そのために時には石に乗り上げて、ひっくり返るということが何度かあった。
また尖った石に乗り上げてパンクをすることもあった。
山頂では幽霊のようなものが出てくるのではないか。
恐怖が恐怖を呼んでパニックに陥っていたのでやることなすことが裏目に出てしまうのだ。


恐怖から逃げようとする行動は、精神交互作用によって、恐怖自体がその何倍にも膨らんでしまうのである。
幽霊のようなものが出てくるのではないかと思うと注意がその一点に向けられる。
すると益々その感覚が強くなる。するとさらに注意がそこに集中される。
負のスパイラルの始まりである。

森田では恐怖から逃げるのではなく、あるがままに受け入れるようにと教わった。

せめてガタガタ道だから細心の注意払ってケガやパンクだけはしないようにしよう」
そうすれば恐ろしいことは恐ろしいのだが、そのままにしておけば、その大きさが増悪することはなかったのだ。
それなのに気を紛らわせる、急いでその場から逃げようとしたために、自分の思いとは反対の結果を呼びよせてしまっていたのである。
こうした態度が、容易に神経症として固着してしまう原因となることが分かってきた。
私はまさに全く違う対応をしていたのだと後で気がついた。





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Last updated  2016.12.28 06:54:46
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