森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2017.03.02
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一緒に暮らしている義理のお母さんの介護を一手に引き受けている専業主婦の人がいました。
夫は仕事で毎日帰りが遅いし、子供たちは受験や就職活動で忙しい。
夫の妹も自分の家庭のことで手一杯の様子で、たまに顔を見せるだけという状態です。
この女性は誰に頼るわけにもいかず、 「私がやらずに誰がやる」と前向きな気持ちで、献身的に頑張って家事や介護をこなしていました。

ところがある日、たまたま遊びに来ていた夫の妹に、義理のお母さんがこんな愚痴をこぼしているの聞いてしまいました。
「よくやってくれるんだけどね。やっぱり実の娘じゃないから、世話の仕方に優しさがないんだよね」
この一言で、女性の心の糸がプツンと切れました。急転直下、何もかも虚しくなってしまったのです。
「いったい私は何のために頑張ってきたのだろう。誰にも感謝されないなら、いっそ全部止めてしまおうか」と投げやりになりました。しかし、やめてしまうわけにはいかないのです。
自分がお世話しなければ義理の母は1人でトイレに行くこともできません。


でもこの専業主婦の方は怒りはおさまらないようです。
その怒りを発散して、もう義理の母の介護をしないという風に決めてしまえば、いったんは楽になります。ところが、それでは家庭の中がめちゃくちゃになります。

森田理論では、こうしたケースの場合、どのような行動をとったらいいのでしょうか。
森田先生は腹が立っても軽率にその怒りを相手にぶつけてはいけないと言われています。
その後の人間関係が修復できないほど壊れてしまうからです。
ただし、 2、3日経ってまだその人にその腹立ちは収まらないような場合は、もっともな理由がある、とも言われています。まず衝動的にならないで時間をおいてみる。
次に、その理由をきちんと文章などにまとめて整理して、冷静になって正々堂々と自分の意見を相手にぶつけてもよいと言われています。この場合はそういう事例にあたると思われます。

ではそれを誰にぶつけていくのか。
トイレに1人で行けないような義理の母に八つ当たりしても火に油を注ぐようなことになるでしょう。
その気持ちを吐き出す相手を間違えてはいけません。
その相手は夫や夫の妹、自分の母親、ヘルパーさんなどではないでしょうか。

家事をこなしながら、その上での義理の母の介護です。それも休みなしです。
無理をして、介護を行っている可能性があります。
それでは継続的に行き届いた介護が難しくなります。手抜きになっていることも考えられます。

介護の内容を細かく書き出して、家族や夫の妹、時々来られるヘルパーさんなどと相談して、自分の負担を少し少なくするように考えられてみてはいかがでしょうか。そのために役割分担の提案をするのです。
自分の子供にも手伝ってもらうことがあれば依頼する。夫には帰宅時間を早めて協力依頼する。

夫の妹が近くに住んでおられるのであれば、 1週間に何回かは実家に来て手伝ってもらう。
ヘルパーさんに依頼する事項について再検討してみる。

それらがうまく噛みあえば自分の介護の負担がかなり減るものと思われます。そうすれば、義理の母との接触時間が少なくなり、少々のイヤミを言われても流せるようになるのではないでしょうか。

森田理論では不安や恐怖、不快感などは、それを取り除いたりしようとすると、それらに振り回されて、ますます苦しくなるといいます。どうしようもない不安などはまさしくその通りです。
そうした不安はそっとしておいて、生の欲望の発揮の方へ視線を向けるようにします。
ところが、ここで言うところの不快感については、そのまま受け入れて、我慢したり耐えていては、事態は悪化するばかりです。この不快感は取り除くために積極的に動いた方がよいのです。
つまり、今後の介護のあり方について周囲の人と相談しながら、より良い方向性をみんなで考えていくことが必要です。
そうすれば、自分の負担が減り、 義理のお母さんも今よりは喜んでくれるような介護に変わっていく可能性があります。
自分一人で抱えて、キャパオーバーの働きは肉体的にも精神的にもいずれ行き詰まります。

森田理論で言う不安や恐怖への対応は2つの面があると思います。
まず取り越し苦労には時間制限をして取り合わないほうがよいものがあります。
もう一面は、不安や恐怖に学んで積極的に解決策を求めて手を出していくもの。
予め不安が予想されるものに対して、早めに対策を立てて、将来困ったことがならないようにしておく。
例えば自分が不慮の事故で働けなくなったときのことを考えて、生命保険に加入しておく。
あるいは自動車保険に入っておく。近い将来に起こると予想される地震に備えて耐震化を進めておく。
これらの不安は放置しておくと大きな問題となって、自分たちの身の上に降りかかってくることがあります。変えられるものは積極的に手を出していく。変えられないものは自然に服従して受け入れていく。
そしてこの2つを区別する知恵を持つ。
そうすることでその後の展開が全く違ってくるのではないでしょうか。





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Last updated  2017.03.02 06:30:04
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