確かに余命6か月ですなどと宣告されると、その気持ちも分からないではない。
これは第3者がとやかく言うことではないかもしれない。
でも森田理論に照らし合わせてみると、どうしても引っかかるところがある。
この問題は森田先生の見解を聞いてみたいと思う。その手がかりは残されている。
森田先生は何度も死と隣り合わせの大病を経験されていた。
森田先生は、亡くなる前に主治医に向かって、たとえダメであっても、できる限りの手を尽くしてくれと言われていた。簡単に見放すことはしないでくれと言われていた。
最後にこと切れるまでは、何度でも生き返って神経症の治療や研究を続けたいと願っておられた。
喘息で息をするのが苦しいから一思いに死んでしまいたいなどということは、考えもしないことだった。
この点、現在のがん治療について、「日本のガン治療の名医100人」に選ばれている倉敷のすばるクリニックの伊丹仁朗医師の話を伺った。
今のがん治療は、ほとんどのがん拠点病院では、手術、抗がん剤、放射線の治療である。
それ以外に30種類も治療法があるが、まったく無視されている。
問題は、3つの治療法でだけで治らずに悪化した場合どうするのか。
ほぼホスピスに行って安らかな死を迎えてくださいということになるそうだ。
そんなことで患者が納得できるでしょうか。
患者が別の治療法を試みてくださいなどと要求しても無視される。
生の欲望はきっぱりと否定されるのだ。
患者の立場に立って至れり尽くせりの治療は望むべくもないといわれる。
伊丹医師はがん患者の組合、生きがい療法ユニオンを作って頑張っておられる。
伊丹先生は難病治療の権威であると同時に、森田療法の専門医であることを付け加えておきたい。
さて、森田先生は正岡子規の話をよく出される。
正岡子規は結核と脊椎カリエスで7年間は寝たきりであった。
最後は寝返りもできなくなった。そこでひもを体に巻いて、柱に通したひもを引っ張って体の向きを変えるというありさまだった。それでも俳句を作り続けて、創作活動を中止することはなかったという。
理論物理学者のホーキング博士は、脳だけが機能しているだけで、体の自由は全く効かない。
車椅子で講演される。口もきけない。顔も動かすことができない。
それでも世界の宇宙科学をけん引しておられる。
運命を切り開くとはこのような人のことをいうのだろう。
森田的生き方の具現者であると思う。
森田先生は、「死の権利」の合法化については、きっと反対されるだろう。
我々人間は、どんな身体的困難な状況に陥っても、残された機能を活用して、死ぬ真際まで生の欲望を発揮して、運命を切り開いていくという宿命を負った存在である。
簡単にあきらめてはならない。命のある限り、生き尽くさなければならない。
つまりこの問題は、「あなたはどう人生に立ち向かうのですか」という生き方を問われているのである。
皆さんはどうお考えでしょうか。
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