森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2018.03.07
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大原健士郎先生は神経症とうつ病の人の違いについて次のように説明されている。

・診察の場面では、一般に神経症の人は自分の悩みや症状を話し出すと1時間でも2時間でも話し続ける。
うつ病の人は青白い顔をして、質問に対しても、小声でぼそぼそと答える。
神経症の人はエネルギーはたっぷりやるが、うつ病の人はエネルギーを消耗をし尽くしたような感じである。

・神経症の人は元気が良いので、北海道や四国などといった遠方からでも浜松医科大学病院を訪れる。
うつ病の人は消耗しきっているので、静岡あたりから訪れるのが限度である。

・神経症の不眠は、その多くは入眠困難で、実際にはよく寝ている。
夜眠れないからといって、昼寝をしたり、夕食を済ませるとすぐに寝床にもぐり込んだりする人がいる。
うつ病になると、不眠は必発症状といってよいくらいよく見られる。

神経症で、不眠の人は大騒ぎをして周囲の人を起こしにかかるが、うつ病で不眠になった人は周囲の人に迷惑がかからないようにそっと寝床から抜け出して、夜が明けるまで書斎で時を過ごしたりする。

・神経症は訴えは多いが、病像はそれほど深刻ではなく、しばしば自殺を口にしても、実行に移す事は少ない。
神経症の人は、死にたいなどと、本心から思っている人は極めて稀で、長生きしたくてジタバタしているのである。
これに対してうつ病では、大騒ぎをしないで自殺に直行していく傾向がある。

・神経症の人で食欲不振を訴えることがあるが、訴えほど体重の減少は認められない。
よく注意して観察していると、食欲がないからといって、間食したりしていることが多い。
うつ病の人は、食欲が著しく減退し、それとともに体重は1ヶ月で10キロも20キロも減少することがある。

・うつ病の人は1日のうちに、気分はガラガラと変化する。これを気分の日内変動という。
また、うつ病の人は自由浮動性の不安と言って、特別な理由もないのに急に不安感に襲われることもある。この状態は突然出現し、すぐに消えるが、 1日のうちにしばしば出現することがある。
神経症の人はそのようなことはない。その代わりに、いつもカラッと晴れあがった気分にならず、常にうす雲が張っている感じである。

・うつ病はしばしば再発を繰り返すことが多い。神経症はダラダラと長い経過をとる。


妄想では、関係被害妄想、心気妄想、貧困妄想、罪責妄想などが見られる。
神経症では妄想を示す事はない。

・うつ病は悪くなると、思考も行動もテンポが鈍くなり、ちょっと見ると痴呆のような状態になることがある。症状はさらに悪くなると、昏迷状態といって、ただ横になっているだけの状態になることがある。
神経症ではこのような状態になることはない。

・うつ病には抗うつ剤が効果的である。神経症には抗うつ剤は無効である。


・神経症もうつ病も、性格はもともと真面目人間であることが多い。そのため、学校の成績も会社での勤務ぶりもよくて、病気にさえならなければ指導者的な立場になれる人が多い。
ところが神経症は概して自己中心的で、自分本位である。
それに比べるとうつ病は、概して自分を犠牲にしても他人に尽くすといった他人本位の性格が目立つ。
そのため、周囲の人たちからは敬愛されている。
同じ立場の神経症の人とうつ病の人が争いを起こすと、どちらかと言うと自己主張が強く、意地の悪い神経症は勝つことが多い。うつ病は自己主張せず、相手に譲る気持ちが強いのである。

・素人目にみると、神経症もうつ病も同じように憂鬱そうに見えるが、客観的な尺度として心理テストを施行してみると、うつ病では情緒不安定が明らかに見られる。
これに対して、神経症は訴えは多いが、抑うつも、気分易変も大したことがない場合が多い。
うつ病の初期には、神経症と区別がつかない場合が少なからずある。その場合には、治療者はうつ病を想定しながら経過を見ていくのが普通である。そのほうが失敗が少ないからである。
(不安と憂うつの精神病理  大原健士郎 講談社 35頁から40頁より引用)





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Last updated  2018.03.07 06:30:07
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