森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2022.03.30
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森田療法家の岡本重慶氏のお話です。

高良興生院での話です。
ある時、不安神経症の入院患者が、(物干しにする)竹を買ってくるように依頼されました。彼は竹を買って帰院した時、「竹を買いに行ってきましたが、不安は起こりませんでした」と嬉しそうに報告したそうです。
これに対して治療者は叱りました。
「君が外出した目的は竹を買うことであって、いかに良い竹を安く買ってくるかが目的であったのに、不安が起こりませんでしたとは何事だ」と。
症状のことよりも、必要な役割や目的を果たすことが重要なのです。
(忘れられた森田療法 岡本重慶 創元社 210ページより要旨引用)

確かに森田療法では、症状を治そうとすることを目的とした行動を続けている限り、症状はなくならないし、むしろ悪化してくるといいます。
それは、不安に対して意識や注意を強力に引き付けていくからです。

行動が全く滞っている人はともかく、少しずつ行動力が回復した人は、物そのものになって取り組むことが肝心だというわけです。

森田理論で症状を克服するというのは、不安に対してのとらわれを、徐々に減少させて、頭の中をいっぱいに覆っていたその比率を下げていくということです。
100%が90%80%・・・というふうに下がってきた分だけ、症状が治ってきたというふうに考えているのです。
ですから神経質性格を持っている限り、不安にとらわれやすいという性格特徴は変わらないわけですから、0%ということは考えられません。
完治することはありえないのです。それは欲張りというものです。
比率が50%くらいになれば、完治と言ってもよいと思われます。
どこに出して恥ずかしくないほど治っているのです。
それくらいのところで、納得して欲しいのです。

岡本先生は、行動療法ではそのような受けとめ方はしないといわれています。
外出できなかった患者が、買い物をするという役割付きの外出を一応人並みに果たして、かつ不安もおこらなかったのなら、行動療法的には成果があったと評価するでしょう。
行動療法は、行動を通じてのみ心を把握できるという考え方に立脚しているのです。


その点では、行動療法と何ら変わらないように見えます。
では何が違うのかという疑問が湧いてきます。

認知行動療法では、暴露療法で不安を受けいれられる人間にしようとします。
つまり不安を10段階くらいの階層に分けて、付き添い者の援助を受けながら、1の段階から不安に慣れさせて自信を持たせるというやり方をとります。
自信をつけて、徐々に難度を上げて、最終的には不安を無くしていくというものです。これは確かに効果があります。


森田療法と違う点は、行動は明確に症状を意識しているということです。
行動は症状を克服するという目標に向かって設定されているということです。
これは、ハツカネズミが飽きることなく糸車を一晩中回し続けていることを連想させます。それでも一旦は症状から解放されるわけですからよしとされているのです。治療は成功裡に終わり、めでたしめでたしということになるわけです。
退院した後、自助組織に参加して、理論的に後付けすることはありません。

しかし考えてみてください。
神経質性格者はちょっとしたことで不安にとらわれやすいという性格特徴を持っています。一旦治っても、また別のことにとらわれて、新たな神経症で苦しむことにはなりませんか。
また、不安に振り回されて、一生涯生きづらを抱えて暮らさなければならないという悩みはどうするのですか。
それは、別の問題ですから、ご自分で考えて対処してくださいということなのですか。

森田では行動は、必要に応じて、必要な時に、必要なだけ行うというのがよいといわれています。日常生活に密着した行動こそが、症状を解放させるものであるし、そういう生き方を身につけた人がこれから先の人生に希望が持てるものであると言っているのです。
症状を治すために行う行動は、基本的には邪道であるとみなしています。
森田理論に取り組んでいる方は、そこのところを忘れないようにしていただきたいと思います。





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Last updated  2022.03.30 06:34:17
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