森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2023.03.20
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水谷啓二先生のお話です。

森田先生の入院療法を受けておられたころのことです。
起床を許されてから、作業の時のほかは、毎日日記をつけていたこと、それから朝起きた時と夜寝る前に、 5分間くらいずつ古事記を音読する習わしになっていた ことを、今でも記憶しております。
「意味はわからなくなくても、ただ棒読みするだけでよい」とのことでありましたが、それならば論語とか、お経とか、聖書とかいうものを読ませないで、古事記を読まされるのか、ということが私にとっては一つの疑問でありました。
意味が分からないまま、仕方なく古事記を音読しておりました。

その後だいぶ年月が経ってから、私には古事記を読まされたわけが、ふと分かってきました。どうわかったかといいますと、古事記にいうところの神々とは、いわゆる多神論的な神々ということではなく、純なる人間、かねて先生のいわれる「真人間」のことである、と全身心をもって納得できたのであります。

先生は、その晩年の著書である「神経質療法への道」第一巻のはじめに、次のように書いておられます。
「神経質が、自ら劣等感に駆られ、あるいは種々の強迫観念に苦しんで、我と我が身をかこつのは、単に劣等感のために自暴自棄となるのではない。この一生をただで終わりたくない・偉くなりたい・真人間になりたいとの憧れに対する・やるせない苦悩であるのである」

(生活の発見誌 1970年(昭和45年)5月号 7ページ)

ここで「真人間」「純なる心」ということばが出てきました。
自分の気持や感情に素直に生きるということだと思います。
自分の置かれた境遇、運命、事実、現状をあるがままに受け入れる。
観念で素直や気持ちや感情を押さえつけてはいけないということです。
観念優先ではなく、あくまでも事実優先の立場で生きていくということです。
そして自分の持っている能力を活かして生の欲望に邁進していく。

森田先生は、ある地方で開かれた座談会で、「先生は神を信じられますか?」と質問されたのに対し、 「古事記の神を信じます」 と答えられたことがある。
古事記の神というのは、むかしそういう神がいたかどうかという・歴史的事実を問題にしているのではないのであって 、古事記の神々に現れているところの、生き生きとした人間性を神とするならば、「それを信じる」ということなのである。

たとえば、古事記によると、スサノオノミコトは、その母イザナミが亡くなられたとき、その泣く様は「青山を枯山なす泣き枯し、河海は悉く泣き乾しき」とある。

(生活の発見誌 1968年(昭和43年)12月号 98ページ)

森田先生も一人息子の正一郎君が亡くなって出棺というとき、非情に悲しまれ、はらわたを断つように慟哭されました。
これは古事記のスサノオノミコトのすさまじい感情表出とよく似ています。
森田先生は古事記のなかに「純な心」を見通されていたのだと思われます。

さらに古事記を読んでいると、天孫降臨によってスサノオノミコトが出雲の地に舞い降りたところから始まっている。

そして原住民を奴隷として奉仕させるという悲惨な歴史の繰り返しです。

古事記を見ると、日本の為政者は、私利私欲を追求するために日本国を作ったわけではないのです。国民を幸せにすることを第一に考えていたのです。
さまざまな天災や紛争に翻弄されながらも、すべての人が平和で豊かに楽しく暮らしていける国を作ろうとしていたわけです。

それは国民の象徴と言われる天皇の和歌に表われています。
仁徳天皇
高き屋に 登りて見れば 煙立つ 民のかまどは にぎわいにけり

明治天皇
罪あらば 吾をとがめよ 天つ神 民はあが身の 生みし子なれば

日本では大震災が起きた時、社会の秩序を乱す行為や略奪行為は基本的には見られません。それは日本人のDNAのなかに、諸外国とは違う別の遺伝子が入っているからだと思います。
森田先生は、古事記のなかに本来の人間の進むべき道を洞察されていたのだと思われます。これについては、明日の投稿とします。





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Last updated  2023.03.20 06:41:27
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