森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2023.06.15
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五木寛之氏に無力(むりき)という本があります。

厳しい現実を知って無力感に陥るのではなく、つらいことであれ、曖昧なことであれ、はっきりとそれを受け止める。
曖昧なら、曖昧だということを受け止める。
一人一人が、そうして無力(むりき)の第一歩をふみだすことです。
(無力 五木寛之 新潮社 75ページ)

無力に対して自力、他力という言葉もあります。
自力というのは、困難な出来事に対して、自分の力で勇敢に立ち向かっていく態度のことです。
尊いことですが、現実的ではない場合が多々あります。
たとえば政治が悪いと言っても、自分一人で変革できるわけではありません。


他力というのは、自分一人の力ではどうすることもできないものを、あるがままに受け入れていくという態度のことです。
自分一人では対応不可能なので、神様のご加護を期待して祈ることになります。
この態度は依存的、厭世的、回避的、消極的な生き方に陥ることもあります。

五木寛之氏は、「自他一如」の考え方、生き方を提唱されています。
自力と他力の狭間にいるという考え方です。
その状態を無力(むりき)と言われています。
これは円ではなく楕円を思い浮かべると分かりやすいです。
楕円は円が2つ重なったようなもので、中心点が一つではなく二つになります。
その中心点を行ったり来たりしている状態を想定されているのです。

白でもなければ黒でもない。
極端にどちらかに振り切れるのではなく、グレーの部分を認めるという考え方です。
すっきりと割り切れないかもしれませんが、曖昧さを受け入れるということです。
不安や問題点を抱えたまま、とにかく生き続けることが肝心です。


自力であれ他力であれ、そのあいだを揺れ動く状態を否定的にとらえるのではなく、人間はその二つのあいだを絶えず揺れ動いていくものであると理解する。
肩の力を抜いて、不安定な自分のふらつきを肯定するのです。
それが無力(むりき)という考え方の根本です。

この考え方は森田理論の両面観という考え方に近いと思います。
時に葛藤や苦悩を抱えて揺れ動きながら、それでも何とか生活を維持していく。

そんな状態で60年以上生き延びた人は、たとえ後悔することばかりだとしても、バーンアウトしなかったという点では、人生の成功者とみなしてもよいのではないでしょうか。
葛藤や苦悩は時が経つにつれて夢幻のように過ぎ去っていくのですから。


信楽焼





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Last updated  2023.06.15 06:36:10
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森田生涯 @ Re[3]:強情と盲従の弊害について(02/27) ststさんへ 今の生活は日中のほとんどが…
stst@ Re[2]:強情と盲従の弊害について(02/27) 森田生涯様、返信アドバイスをしていただ…
森田生涯 @ Re[1]:強情と盲従の弊害について(02/27) ststさんへ コメントありがとうございま…
stst@ Re:強情と盲従の弊害について(02/27) 森田生涯様、こんばんは。 過去に何度かコ…
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