全110件 (110件中 1-50件目)
エスクアロ5とい団体のピアソラ集。ピアソラの名曲「鮫」をグループ名にした団体。ミュンヘン在住のクラシック出身者たちで結成されたグループで、このアルバムは2枚目だそうだ。タンゴというとサウンド的には貧しいという印象しかないが、この団体は名手揃いで、その豊麗なサウンドを聴いていると、ピアソラの曲が2倍にも3倍にもよく聞こえる。まあ、もともとの曲の良さが表現しきれていなかったというべきか。昔ピアソラ・ブームでクレーメルをはじめとしてクラシックの演奏家もこぞってピアソラを演奏した時代があった。そのころの演奏でも、このエスクアロ5のような豊かなサウンドを聞かせてくれる団体はなかった。編成はギター、ピアノ、ヴァイオリン、アコーディオン、コントラバスという五重奏団。著名な方ばかりだそうだが、筆者が知っているミュージシャンはいない。ただ音楽の質が非常に高く、彼らが只者ではないことは理解できる。ピアソラの音楽がこれほど豊麗なサウンドで響いたことは、あまりないのではないだろうか。クラシックのミュージシャンとは思えない、かなり濃厚な表現で、説得力が半端でない。ただ、表現意欲が強すぎるのか、一本調子気味で、続けて聞くと食傷気味になることも確か。プログラムは、ピアソラの有名な曲を集めたもの。「タンゴの歴史」は原曲がフルートかヴァイオリンとギターなのだが、五重奏団の演奏で、アコーディオンが主役。筆者としてはヴァイオリンとギターでの演奏にしてほしかった。ヴァイオリンとベースはちょろっとしか出てこない。ピアノは多分お休み。アコーディオンの意欲的な演奏と原曲ではサポートに回っているギターも、負けじとぐいぐい迫ってくる。最初の「ボルデッロ、1900」から速いテンポでぐいぐいと迫ってくる。第2曲「カフェ、1930」も濃厚な表現で、ギターもかなり前に出てくる。メロディー・フェイクなのだろうか、原曲と少し異なるフレーズが聞こえるが、しっくりこない。第3曲「ナイトクラブ、1960」も勢いはそのまま。この組曲では後半の2曲が少し影が薄いのだが、今回の演奏では前半の2曲に劣らず充実した音楽として楽しめる。特にラストの「現代のコンサート」は従来の演奏にはない激しい表現で聴き手はたじたじとなるしかない。「フラカナーパ」は聞いたことのない曲。全員が一丸となって火の玉のように燃える。アサド兄弟のために書かれた2台のギターのための「タンゴ組曲」は、ギターとピアノのためのアレンジ。ギターもさることながらピアノが雄弁で、この組曲のスケールが二倍にも三倍にも大きくなったような感じがする。ギターがピアノに負けていないところが立派。第3曲Allegroのスピードに乗った激しい演奏は凄まじい。「バンドネオン、ギターとベース」は「モダン・タンゴの20年」(1964)に収録されていた曲。このアルバム、昔は何回か聴いていたが、すっかり記憶から遠ざかっていた。明るく柔和な表情がいい。大曲「アディオス・ノニーノ」はスケールの大きな演奏だが、イントロのピアノのカデンツァからしてやりすぎ。ネットリとして強靭なヴァイオリン・ソロも悪くないが、表現過多。激しい演奏が多く、「孤独」のような静かな曲でも結構暴れまくっていて、心が休まる暇がないのが欠点と言えるかもしれない。最後の「コントラバッシモ」のコントラバスの3分ほどの長いカデンツァも、表現意欲は買うが、やりすぎとしか思えない。録音は凄まじくいい。ピアソラの録音では断トツだろう。とうことで、全く知らない団体だったのだが、豊かなサウンドと素晴らしいアンサンブルで、ピアソラの世界が一挙に広がったといっても大げさではない。ピアソラ・フリークの方には是非お聴きいただきたいが、続けて聞くのは大変なので、気が向いたときに少しづつ聴くのが飽きない秘訣あろう。Escualo5:Piazzolla-Escualos(BIS BIS2605)24bit 96kHz FlacPiazzólla: 1.No. 3, Primavera ~PorteñaCuatro Estaciones Porteñas2.Soledad3.Tango Suite(arr.Débora Halász )6.Bandoneón, Guitarra y Bajo7.Adiós Nonino8.Fracanapa9.Histoire du Tango13.ContrabajissimoEscualo5Iason Keramidis(vn)Alexander Kuralionok(accordion) Franz Halász(g)Débora Halász(p)Philipp Stubenrauch(b)Recorded 25th—28th February 2021 at the Albert-Lempp-Saal, Gemeindezentrum der evangelischen Kreuzkirchengemeinde München-Schwabing, Germany
2024年02月06日
コメント(0)
この前「ゴジラ-1.0/C」を観てきた。映像はモノクロにしたことによりゴジラの凄味や、戦後の荒れ果てた街の様子などが、かえってリアルに感じられた。ただ、デジタル処理の分解能が足りないのか、細部がつぶれがちなところがあるのが惜しかった。1回目は伊福部の音楽にばっかり気をとられていたのだが、今回観たときに、佐藤直紀の音楽がいいことに気が付いた。通常の歌は一切なく、殆ど弦主体の音楽だが、スケールが大きく、荒涼とした風景が見えるようで、映像によく合っていた。帰宅してからspotifyでサウンド・トラックを聴いていたのだが、音が貧弱なので、ロスレスをいつものpresto musicからダウンロードした。例によって24bit192Hzへアップ・コンバートしての試聴。キッチンで珈琲の焙煎をしながらワイヤレス・スピーカーで流していた時もその迫力に度肝を抜かれたが、コンポで聴くと迫力は何倍にも増している。最初の「Fear」からスケールが巨大で、実に恐ろしい音楽が展開される。殆ど弦の曲が多いのだが、高音を多用していて、それが澄み切った空気を感じさせる。モノクロを観ていた時に気が付いたが、音楽の厳しさと清澄さが、映像の説得力を倍加させている。金管の咆哮や低音がゴジラの邪悪さをこれでもかと感じさせ、実に恐ろしい。一番気にいったのは「pain」。タイトル通り聴き手に痛みを感じさせるような虚無的な音楽で、弦の不協和音が不気味だ。次の「Resolutio」も大迫力で、音楽としては最も説得力がある。弦が高音で同じモチーフを執拗に繰り返す、ミニマル・ミュージックのような音楽。中間部に入ると管のコラール風な旋律が出て壮大な展開をする。トランペットのあたりを切り裂くようなハイトーンのモチーフが鮮烈。打楽器の一撃と共に出る合唱が、これまた大迫力。6曲目の「eregy」も弦の高音が痛切に響く。女声のアカペラと混成合唱が入る「Pray」も、後半の慰めに満ちた弦楽と共に、心にグサッと突き刺さる。多分、伊福部の音楽は組曲という形で3つに分かれて収録されている。伊福部の音楽は音が古臭いが、昔のアレンジそのままなのだろうか。その意図を知りたいところだ。普通の歌などはなく、殆ど効果音に終始しているので、映画を観てから聞くのがいいと思う。分離が甘いが、迫力だけはオーディオ・マニアを満足させるようなクオリティだと思う。特に「Fear」などで出てくる重低音は、オーディオ装置で聴かなければ、味わえないだろう。Godzilla Minus One (Original Motion Picture Soundtrack) (Milan G010005157608Q)16bit 44.1kHz Flac佐藤直紀:1.Fear2.Portent3.Confusion4.Godzilla Suite I5.Divine6.Elegy7.Mission8.Hope9.Honor10.Pride11.Pain12.Resolution13.Godzilla Suite II14.Unscathe15.Last16.Pray17.Godzilla Suite Ⅲ
2024年01月31日
コメント(0)
サウンド・オブ・ミュージック60周年記念リリースだそうだ。CDのデラックス版は46曲入り。通常のCDは16曲入り。ダウンロードも通常盤は16曲なのに、presto musicやprostudio mastersではデラックス版は何と84曲も入っている。qobuzではデラックス版はなく通常版のみだが27曲入りだ。craft recordingでは84曲にドルビーアトモスの16曲がついている。40曲が未発表でオルターネイトテイクも11曲というのも恐れ入る。その中にはギターが結構目立つアレンジがあり、マリアの楽器であるギターを意識していると思ったのは筆者の印象。また、「独りぼっちの羊飼い」を使った「The Laendler (Quintet) 」などもある。この曲はレントラー舞曲の形式を活かした小規模なアンサンブルで、ウィーンの雰囲気を満喫できる。61曲目以降は歌のないインスト曲。それぞれの作品は2分に満たないが、巧みにまとめられ、映画が終わった後も余韻に浸ることができるようだ。ただしこれらはあまり録音がよくない。聞いたことのない曲とリプライズや続編みたいな曲もあり、映画の雰囲気が伝わってくる度合いはまるで違う。とくに「私の好きなもの」に続いてパート2が演奏されているのが嬉しかった。(track12)おそらく音楽の部分は全て出したのではないかと思われる。それらは殆どが短いトラックなのだが、それらを含めて映画のサウンド・トラックとしては完璧だろう。主役のジュリー・アンドリュース(1935-)のイギリス訛りの歌は昔から記憶に残っていたが、改めて聞いても素晴らしかった。マージェリー・マッケイ(1925-)の「すべての山に登れ」の堂々たる歌唱も素晴らしい。この映画は子供が主役だが、彼らの合唱や教会の場面など合唱が活躍する場面が多く、なかなか楽しい。セリフも適度に入っていて、映画を思い起こさせる。ロバート・ワイズ(1914-2005)監督と作曲家のリチャード・ロジャーズ(1902-1979)、それに長女リーズル役のシャーミアン・カー(1942-)のインタビューも含まれていて、まさに盛り沢山。カーはいくつかのナンバーでソロも歌っている。舞台となったザルツブルクに因んだ「Sarzburg Montage」という「私の好きなもの」をアレンジした楽しいインスト・ナンバー他インストナンバーが多数あり楽しい聴き物だ。筆者は公開時、学校の行事で観に行っており、この音楽を聴いていると映画の場面が思い出される。オーケストラは流石に古めかしい音だが、ノスタルジー満点。トランペットの細かいビブラートなど、さすがに古いと感じられる。録音は音が前に出てくるようなリマスターだが、ノイズはかなり抑えられている。混濁が激しく、高音が雑味のある音なのが惜しい。いかにもスタジオでの録音という感じなのだが、「Morning Hymn and Alleluia」など合唱曲はクラシック風の結構いい音で録れているので、ロケーションが異なるのかもしれない。年代から考えると古臭いサウンドだが、大部分の曲の残響が少ないことが影響しているのかもしれない。トータル3時間半余りで、映画の世界が十分に堪能出来て、とても満足した。The Sound Of Music(Craft Recordings CR03383)24bit 96kHz Flacrecorded 1964
2023年12月03日
コメント(0)
バーブラ・ストライサンドのコロンビアレコード在籍60周年を記念したコンピレーションを聞く。いつものPresto MusicやProstudio mastersではまだ取り扱っておらず、他は高いのでペンディングしていたところ、国内が2600円ほどの割とリーズナブルな価格だったのでOTOTOYから購入した。昨年リリースした「ライヴ・アット・ザ・ボン・ソワール」も同じ値段だった。ディストリビューターによると、これまでのコンピレーション・アルバムでは収録されたことのない曲を集めたとのこと。曲は『バーブラ自身によって、彼女の感情をメロディや歌詞といかに融合させてきたかを示す好例として選ばれている』とのこと。筆者は遅れてきたファンなので、古い録音はあまり知らないし、興味深く聴くことが出来た。あるサイトでは収録アルバムと年代まで書いてあったので、今回の曲名にもそれを拝借した。それによると、The Barbra Streisand Album(1963)からWalls(2018)までの曲が並んでいる。「Walls」がいまのところ最新録音のようだ。また、唯一「Al Stillman:I Believe (Single Version) 」だけが未発表録音だ。音はそれほどいいわけではないが、古い録音もそれなりの音で聞ける。通して聴くと、ゆっくりした曲が多く、単調なきらいがないでもない。彼女の声の変化が分かるのも年代順に曲が並んでいるからだ。60年も歌っていると、若い時と現在とではその変化が大きいのが普通だが、彼女は声が少し太く艶も多少失われているが、それほど大きな変化は感じられない。使い減りしにくい声なのか、普段のトレーニングのたまものだろう。また、年を取るとフォームが崩れるのが普通だろうが、彼女にはその崩れが少ないのも聴き手にとっては好ましい。選ばれた曲は古い曲が多く、とりわけリチャード・ロジャーズの曲が多いのに気づく。オーケストラがバックにつくことが多く、ゴージャスなつくりになっている。概ね粘らない過度な表現を避けており、個人的には好ましい。少し異なるアプローチが見られるのが、「いそしぎ」で、そのコケティッシュで軽快なタッチが特徴的だ。「Who Can I Turn To」のみアンソニー・ニューリー(1931-1999)とのデュエットだが、ニューリーのしわがれ声が違和感を覚えた。聴いたことのない曲もあるが、その中ではローラ・ニーロ(1947 - 1997)の「I Never Meant To Hurt You」が原曲を少しジャジーにした仕上がりで、曲の良さが感じられる。最後の「EverGreen」のみ今年リミックスされもので、ボーナストラック的な扱いだが、ファンには嬉しい贈り物だろう。筆者もこのナンバーは好きな歌なので、潤いのあるいい音で聴けて嬉しかった。出来れば他の曲もリミックスで出してほしかった。また、彼女の録音はあまりハイレゾ化されていないので、この機会にハイレゾ化を進めてほしい。Brbra Streisand:EVERGREENS : Celebrating Six Decades on Columbia Records(Legacy Recordings)24bit 44.1kHz Flac1.Richard Rodgers and Lorenz Hart:I'll Tell The Man In The Street (The Barbra Streisand Album – 1963)2.Richard Rodgers:Bewitched (Bothered and Bewildered) (The Third Album – 1964)3.Jule Styne and Bob Merrill:Absent Minded Me (People – 1964)4.Johnny Mandel:The Shadow Of Your Smile(My Name Is Barbra, Two… - 1965)5.Richard Rodgers:Where Or When(Color Me Barbra - 1966)6.Eddy Marnay, Barbara Streisand:Ma Premiere Chanson(Je m'appelle Barbra – 1966)7.Joni Mitchell:I Don't Know Where I Stand (Stoney End - 1971)8.Laura Nyro:I Never Meant To Hurt You (Barbra Joan Streisand – 1971)9.Alan Bergman and Marilyn Bergman:Letters That Cross In The Mail (Lazy Afternoon - 1975)10.Carl Sigman:Answer Me(Superman – 1977)11.Charles Strouse;Martin Charnin:Tomorrow (Songbird – 1978)12.Jerome Kern:Can't Help Lovin' That Man (The Broadway Album - 1986)13.Marilyn Bergman;Alan Bergman;Barbra Streisand.:Two People (Till I Loved You – 1988)14.Richard Rodgers:Some Enchanted Evening (Back To Broadway - 1993)Ervin Drake;Irvin Abraham;Jack Mendelsohn;Al Stillman:I Believe (Single Version) (Previously unreleased)15.George Harrison:Isn't It A Pity? (A Love Like Ours - 1999)16.Henry Mancini:Moon River(The Movie Album - 2003)17.Artie Butler:Here's to Life (Orchestra Version)(Love Is The Answer - 2009)18.Michel Legrand:The Windmills Of Your Mind (What Matters Most: Barbra Streisand 19.Sings the Lyrics of Alan and Marilyn Bergman - 2011)20.Leslie Bricusse:Who Can I Turn To (When Nobody Needs Me)(When Nobody Needs Me) with Anthony Newley (Encore: Movie Partners Sing Broadway – 2016)21.Desmond Child:Lady Liberty (Walls – 2018)22.Barbra Streisand:Evergreen (Love Theme from "A Star Is Born") (2023 Mix)Barbra Streisand(vo)
2023年11月10日
コメント(0)
先日に続きジョン・ウイルソンの新譜を取り上げる。リリースされたばかりの新譜で、何とミュージカル「オクラホマ!」初演から80周年を記念したリリースだそうだ。eclassicalの半額セールが9/17迄だったので、ギリギリでセールに間に合ってラッキーだった。このミュージカルはロジャース&ハマースタインの名作として知られる作品だが、今回は「Complete Original Score」と賑々しくも名打たれている。presto musicの紹介記事ではジョン・ウィルソンが、この時代のオリジナルのミュージカルのスコアを研究し、この「Oklahoma!」のカットのないオリジナル・スコアを現代の観客に紹介する必要性を感じたことから始まったようだ。オリジナルスコアはロバート・ラッセル・ベネット編曲による29人編成のオーケストラ。楽器編成は1943年の初演時と同じで、ファースト・バイオリンが6、セカンドが4、ヴィオラ、チェロ、コントラバスが各2。木管楽器は、オーボエ、コール・アングレ、オーボエ・ダモーレ、そしてバリトン・オーボエが使われている。ドラムとギターは1940年代の楽器を使うという凝りよう。ウイルソンは2017年のプロムスでミュージカルの上演に近い形で演奏している。これを見ると、このミュージカルの完全版の素晴らしさがよく分かる。「People Will Say We're in Love」「Many a New Day」「 Out of My Dreams」などの有名曲が満載で、耳で聴いているだけでも楽しい。ロバート・ラッセル・ベネットが編曲したミュージカルはオーケストラのメドレーになっている曲が多く、筆者もカンゼルの演奏などで耳に親しく、このアルバムもすんなりと耳に入ってくる。このアルバムはコンプリートと称するだけあって、今までの録音では聞けなかった場面転換の音楽やバレエ・シークエンスなども含まれているのが嬉しい。2つの場面転換の音楽はメロディを単純に繰り返しているだけなのだが、これがムーディーで実にいい。約13分のバレエ・シークエンスは、ヒロインの農家の娘ローリーがカウボーイのカーリーとの結婚を夢見るが、その夢がローリーの農場の労働者ジャッドによるカーリーの殺害を想像する悪夢に変わるというストーリー。ドラマチックな展開で聞き応え充分だ。オリジナル・スコアに基ずく演奏なので、サウンドはシンプルで古のアメリカの農村の雰囲気が濃厚。ビブラート過多のトランペットなど、いかにもノスタルジーを感じさせるサウンド。気になったのは、少しレガートが多めなことくらいか。ウイルソンは、歌を通じて演技できる声をキャストしたと語っているが、主役の二人をはじめとしてどの役も生き生きとして素晴らしかった。第2幕「The Farmer and Cowman」で使われるバンジョーがなかなか気が利いている。ロバート・ラッセル・ベネットはオクラホマ以外の「ショー・ボード」「南太平洋」「王様と私」「マイ・フェア・レディ」「サウンド・オブ・ミュージック」の編曲も行なっているので、ウイルソンにはこの路線をシリーズ化してほしい。因みに「回転木馬」のスコアは既に完成している模様で、期待はいやがうえにも高まりそうだ。ジョン・ウィルソン ロジャーズ&ハマースタイン:ミュージカル≪オクラホマ!≫(Chandos CHSA 5322)24bit 96kHz FlacCurly:Nathaniel HackmannLaurey:Sierra BoggessJud Fry :Rodney Earl ClarkeWill Parker:Jamie ParkerAdo Annie:Louise DearmanAunt Eller:Sandra MarvinAli Hakim:Nadim NaamanAndrew Carnes :RobertsIke Skidmore:Juan JacksonJoe:Will RichardsonGertie Cummings:Sejal KeshwalaKate:Emma KingstonEllen:Kelly MathiesonVirginia:Rebekah LowingsVivian:Charlotte KennedySylvie:Ceili O’ConnorFred:Danny WhiteheadCord Elam:Michael ColbourneFarmer:Freddie King‘Oklahoma!’ EnsembleSinfonia of LondonJohn WilsonRecording venue Susie Sainsbury Theatre, Royal Academy of Music, London; 18 – 22 July 2022
2023年09月18日
コメント(0)
連日の猛者にもかかわらず野菜の定植や手入れ、物置の整理、はたまた高校野球観戦となかなかブログを書けないでいる。なので、今回も先日とおなじく、とるに足らない話でお茶を濁してしまうが、ご容赦を。余談はさておき、今回の話題は、レコード・コレクターズの9月号の特集「バカラックの名曲を聴く」について。普段は本屋に行っても、お目当ての本を買うためだけで、ぶらぶら見ることも久しくなくなってしまった。「Jazz Japan」の発刊が止まっているので、他に何かないかと眺めていたところ、この特集のタイトルが目に留まった。パラパラめくったら面白そうだったので早速購入。定価が税込みで930円だったのも嬉しい。バカラックは今年の2月に94歳で亡くなっていた、というのもこの特集で初めて知った。筆者とバート・バカラックとの出会いは、高校生の時に流行っていたカーペンターズの「遥かなる影」。カレンのヴォーカルが美しく、流麗なメロディーと共に大好きになったものだ。その後バカラックに注目をして聴くことはなく、偶々耳にしたヒット曲がバカラックの作曲だったということが多い。筆者の場合はジャズメンが演奏していることから彼の作曲であることを知ることも多かった。この特集では本誌の執筆者の方々によるリストを元に編集部で調整して126曲をセレクトしたとのこと。筆者の知らない曲も多数あるが、この特集を観ながらspotifyでその演奏を聴いている。また、遅ればせながらplaylistを作った方がいいことに気が付き、今後playlistを作りながら聞いていきたい。この特集では、曲がヒットするまでの経過などが詳しく書かれてあり、さながら名曲誕生秘話みたいなもので、とても興味深い。例えば、前述のカーペンターズの「遥かなる影」は初出が俳優のリチャード・チェンバレンが歌ったシングル(1963)で、その後、3組のミュージシャンを経てリチャード・カーペンターに回ってきたという経過をたどっている。ヒットするには、いろいろな条件が重ならないと駄目なことは、この名曲も例外ではなかったことがよく分かる。残念なのは曲名のインデックスが付いていないこと。お目当ての曲を探すのにえらい苦労する。そのほか、萩原健太氏の「バート・バカラック・ストーリ」や高橋健太郎氏による「見つめなおされた言葉とメロディーの関係」も未読だが面白そうだ。ということで、バカラックの魅力が伝わってくる中身の充実した特集だと思う。この一冊と今後作成されるだろう?Play Listで当分楽しめそうだ。
2023年08月22日
コメント(0)
福田進一(1957-)によるピアソラ集を聴く。最高384kHzのFlacやDSD11.2MHzまでラインナップされているが、今回は予算の関係で192kHzのFlacを購入。福田進一は過去にピアソラ曲集を録音している。(DENON)ただし、これは既発のアルバムからピアソラの曲をピックアップしたもので、殆どがピアソラのアルバムは初だろう。プログラムはピアソラの曲とジョアン・パウ・プジョルの組曲「あるタンゴ弾きのエレジー」で構成されている。プジョルはピアソラの弟子でアルゼンチンのギタリスト。この組曲はピアソラの死を悼んで書かれたという。このアルバムでは、管理人が聞いたことのない曲が含まれていて、興味深く拝聴した。その中では、軽い小品だが、絶妙なルバートが印象的な「南へ帰ろう」やピアソラによる唯一のギター独奏作品「5つの小品」 (1980)からの浪漫の香りが濃厚な第2曲「ロマンティコ」、ピアソラの他の曲に似たフレーズが出てくる第5曲「伊達男」などがなかなか良かった。ピアソラの死を悼んだ「あるタンゴ弾きのエレジー」はピアソラの死を知った作曲者の困惑や悲しみに、聴き手も身につまされるようだ。第3曲ではピアソラのフレーズを借用して、プジョルの師でもあったピアソラの業績を偲んでいるかのようだ。2本のギターのための「タンゴ組曲」からの2曲では、鈴木大介が編曲とギターで参加している。第2曲「Andante」の静けさと、しっとりした情感に惹きつけられる。定番の曲の中では、魂を揺さぶられるような、プジョル編曲の「アディオス・ノニーノ」の演奏が大変優れていた。静かに沈潜していくような「オブリビオン」もビクトル・ビジャダンゴスの編曲が優れている。旋律の途中に入る下降音にはゾックっとする。録音は『マイスター・ミュージックの超高感度マイクロフォンを使用したワンポイント収録』と謳っているように、かなりの自信作なのだろう。ロケーションが不明だが残響が多めで、音の輪郭がはっきりせず、ギターの音が安っぽく聞こえる。かなりオンマイクで、奏者の息遣いまで聞こえるリアルな録音。それにもかかわらず、演奏ノイズは殆ど聞こえないのは、福田の演奏技術の高さを示しているのだろう。ということで、演奏自体は大変すばらしいものだが、録音がさらに良ければと思う、今日この頃だ。福田進一:ピアソラ・トリビュート(マイスター・ミュージック M-4507)24bit 192kHz Flac1.Astor Piazzolla(arr. M. D. PUJOL):南へ帰ろう2.Astor Piazzolla(arr. M. D. PUJOL):アディオス・ノニーノ3.Astor Piazzolla:セーヌ川4.Astor Piazzolla:5つの小品9.Astor Piazzolla:天使の死「天使の組曲」より10.Maximo Diego Pujol:あるタンゴ弾きのエレジー13.Astor Piazzolla:ロコへのバラード14.Astor Piazzolla:「タンゴ組曲」よりII.Andante15.Astor Piazzolla:「タンゴ組曲」よりIII.Allegro 16.Astor Piazzolla(arr. Victor Villadangos):オブリビオン(忘却)17.Astor Piazzolla(arr. Daisuke SUZUKI):リベルタンゴ福田進一(g)鈴木大介(g track 14,15)
2022年07月29日
コメント(0)
ピアソラ没後30年記念だろうか、アメリカン・クラーヴェの3部作がボックス化。ついでにかどうかわからないが、ハイレゾも同時にリリースされた。管理人にとっては思いがけないリリースで、嬉しかった。現時点で最安値のprostudiomastersから税込みでca$32.28、日本円で3300円ほどで入手。全て2009年のリマスターなのが、ちょっと不満だが、ぜいたくは言えない。以前SACDでリリース(2010)されたときは、管理人は全く知らなくて、あとで知ってがっかりしたことを覚えている。今回の音源も、この時のマスターを使っているのだろう。斉藤光正氏の「アストル・ピアソラ闘うタンゴ」によると、この三部作は、レコーディングの時間、録音設備、そして最大の障害であるプロデューサーの意向を考える必要がないなど、ピアソラにとって初めて納得のいく環境だったようだ。ただ、コントラバスの音が、ピアソラのミキシングした音と違うという不満をピアニストのシーグレルに漏らしていたそうだ。今回は24bit88.2kHzで、まあ満足できる仕様だ。この3部作、CDを192kHZにアップコンバートしたファイルがNASに入っていたので、比べてみた。ハイレゾのほうがサウンドに艶があり、抜けもいいが、CDは幾分ざらつき気味だが、それほど悪くない。SN比も悪くない。3部作の中では「The Raph Dancer and cyclical night」が最も音がいい。音が太くて、音圧も高いので、3部作の中では完成度は他のアルバム人比べるとやや劣るのに、受ける印象が強いという結果になってしまう。次に音がいいのは「La Camorra」。「The Raph Dancer and cyclical night」に比べると音の張り出しが弱く、中音域が不足気味。ダークなサウンドで比較的地味だが、それがこのアルバムに相応しい。「タンゴ・ゼロ・アワー」では最後の2曲のテープヒスが目立ち、どうしたかと思ってしまう。コンディションが悪かったのだろうか。ただ、「Tanguedia III」冒頭の様々な声を重ねたサウンド・エフェクトは、ハイレゾならではの生々しさで興奮する。惜しむらくは、ブックレットが付いていないことだが、この価格なら仕方がない。ということで、しばらくは音の良くなった3部作を楽しみたい。Piazzolla:The American Clavé Recordings(Nonesuch)24bit 88.2kHz Flac1.Tango: Zero Hour(1986)8.La Camorra(1988)15.The Rough Dancer and the Cyclical Night (Tango Apasionado)(1987)Astor Piazzolla(bandneon,composer)Pablo Zinger(p)Fernando Suarez Paz(vn)Hector Console(b)Andy Gonzalez(b track15-20)Horacio Malvicino(e-g)Rodolfo Alchourron(e-g track15-20)Paquito D'Rivera(cl,sax track15-20)
2022年05月08日
コメント(0)
このところ変態ソフトの音源に興味があり、レビューでもいくつか取り上げた。そのつながりで、芸能山城組の「輪廻交響楽」のハイレゾを購入しようと思ったが、国内の音源はバカ高いし、海外ではリリースされていないので、仕方なく現在も入手できるCDを購入した。単に音がいいという次元を超えた、高度な技術を使った広大なサウンド空間が魅力的だ。また、山城祥二の作品が実に素晴らしい。ブックレットには音楽評論家中村とうよう(1932 - 2011)氏の解説と、作曲者の山城氏から中村氏への書簡の抜粋が作品解説として収録されていて、これが曲を理解するうえで、大変参考になる。中村氏が、芸能山城組のデビュー作「恐山/銅之剣舞」から5作目の「芸能山城組ライブ」までをプロデュースされたことは知らなかった。芸能山城組のユニークな取り組みを世の中に広く知らしめることが必要と感じた氏が、ビクターに売り込んだことから、彼らの活動が注目され始めたという。こういう音楽は優れた目利きと、実際に行動に移す人間がいないと世の中に知られることはなく、このことだけでも中村氏の業績は計り知れない。また、山城氏の中村氏宛の書簡が曲について大変詳細に書かれている。本来企業秘密?である音の作り方まで明かされていて、大変に参考になる。ただ、こういう音作りを引き継いでいる音楽家はいるのだろうか。この交響楽は生まれ、育ち、新しい生命を生み、やがて死を迎え、土にかえり、生まれ変わるという生と死のサイクルをテーマとしている。第1楽章「翠生」が最も聴きごたえがある。「プロローグ」でのトーンクラスタの合唱は8つのパートに分かれていて、ピッチを保ったまま2分以上声を出し続けなければならない。山城氏はこれを実現するために、次のような方法で実現した。①シンセで近似したサウンドをサウンドを作り、②そこにテンポを示すクリックのイズをかぶせた。③その音を合唱団の1/3程人間がイヤホンでモニターしながら声を出し、④残りの2/3がそれを聞きながら声を出すという方法をとったそうだ。ここでは巨大な太鼓を思わせるサウンドが聞こえる。これは、一人で持つことの出来る日本の平太鼓をチベット密教方式のばちでたたき、エフェクトを加えたものであるという説明には驚く。第1節「翠生のテーマ」でのアフリカのピグミー族のやり方を参考にした、ユーモアのあるサウンドもユニークだ。一事が万事この調子で、山城氏の確たるイメージを実現するための適切な楽器選定や、演奏方法の工夫、サウンドの加工方法等すべてが的確な方法で実現されたのだろう。音もさることながら、氏の底なしの探求心に驚くばかりだ。第2楽章は声明や仏教の打楽器、ガムランの楽器を使ったもの。第3楽章は幻想と瞑想のガムランと呼ばれるスマルプグリガン・タイプの楽器で妖艶なサウンドを作り出している。沖縄音階に近いバリとジャワのペロッグ音階(5音音階)を使った、ビブラートのない真っすぐな女性ヴォーカルがよく合っている。第4楽章「転生」は最も長く13分半ほど。生態系の脈動を表すために、バリ島ジュムラナ地方に伝わる打楽器アンサンブルの一種「ジェゴグ」が使われている。ジェゴグはバリ島に自生している竹をチューニングしたもの。音はド・ミ・ソ・ラの4つだけなのだが、ジェゴグが一斉に音を出すと、意表を突く重低音と暖かい包容力のある響きが出現する。第4節「田園歌」のエンディングの生態系のカタストロフィーを象徴するシンセによる爆裂音(9'30")は凄まじい。続く「エピローグ」で感動的なエンディングを迎える。このCDを聞いたら、現地に行って、このCDの素材になった音楽を生で聞きたくなった。こんなことを思ったのは初めてだ。芸能山城組:輪廻交響楽 Ecophony Rinne(JVC VICL 23091)山城祥二(作詞・作曲):輪廻交響楽1.第1章 翠生2.第2章 散華3.第3章 瞑憩4.第4章 転生芸能山城組録音1986年ビクター青山スタジオ
2022年02月27日
コメント(0)
またまた「オーディオ超絶音源探検隊 バックロードホーン・スピーカーを相棒」からの音源を取り上げる。今回はイギリスのアニメーション「サンダーバード」(1965-1966)のオリジナルスコアを再現した日本人演奏家による録音。コンサートは2015年に行われ、それを聞いた日本コロンビアから録音のオファーを受けたそうだ。日本コロンビア側からはプロオケでの録音をオーダーされたが、広上はコンサートと同じオーケストラでの録音を希望したそうだ。ディストリビューターによると、東京ガーデンオーケストラは『桐朋学園大学ほか首都圏の音楽大学の学生を中心に構成された演奏集団。クラシック音楽をより多くの人に聴いてもらうため、耳だけでなく視覚的にも楽しめるコンサート作りを目指して結成。市民オーケストラでありながらも、優秀な人材が揃い、ドライでシャープな弦や重厚に響き渡る金管など、元気で若々しい迫力のある演奏が魅力。』とのこと。東京ガーデンオーケストラはアマおけながら管などなかなか聴かせる。欲を言えば弦がもう少し出て来てほしかった。それでもフルオケなので、スタジオ・ミュージシャンを起用するよりは、本格的なサウンドが楽しめることからメリットは大きい。アニメの音楽なので、テーマはキャッチーなことは確かだが、それほど大した音楽は付けられていないと思っていたが、いい意味で裏切られた。一部テーマを変形した安直な作りのトラックもあるが、映画音楽の劇伴として、かなり本格的ないい曲が並んでいる。中には古臭いなと思う曲もあるが、50年以上たっているとは思えない躍動感があり聞いているとうきうきしてくる。中では、「トレーシー・ラウンジ・ピアノ」や「イージー・リスニング・ラジオ・ミュージック」がムーディーな音楽で聴かせる。また、死の谷の組曲の「絶望的な挑戦」の悲劇的なメロディーが心に迫ってくる。テレビの番組の音楽なので、短いのはしょうがないだろう。「死の谷」組曲は10分くらいだが、最もまとまっていた。アルバムの曲を20分くらいの組曲として編曲してくれる作曲家はいないもんだろうか。参考までにサントラ版を聞いてみた。さすがに音は貧しいが、緊迫感や劇的な盛り上がりが、今回の演奏とはだいぶ違う。今回の録音は洗練度においては本家にはかなわない。注目の録音はテュッティで少し混濁気味なところがあり、やや期待外れだった。ところで来年早々日本語劇場版『サンダーバード55/GOGO』が1月7日から劇場公開および1月8日よりデジタル配信される。今どきならCGで簡単に作れてしまうが当時と同じスーパーマリオネーションでの特撮なのがいい。是非映画館に観に行きたい。公式サイトサンダーバード音楽集 ~オリジナルスコアによる(日本コロムビア COCQ-85289)24bit 192kHz Flac1.オープニング・テーマ2.SOS原子旅客機・組曲 フッドとファイアーフラッシュ号 ファイアーフラッシュ号着陸 ペネロープ号の追跡 トレーシー・ラウンジ・ピアノ6.サンダーバード・マーチ7.ロケット太陽号の危機8.火星ロケット輸送車9.ニューヨークの恐怖・組曲 独占スクープ失敗 エンパイア・ステート・ビルの移動 ネッドの救出12.サンダーバード6号13.トレーシー島14.ゼロX号のテーマ15.スポーク・シティ・ジャズ16.ジェット“モグラ号”の活躍・組曲 サイドワインダーの命運 危険な穴 救助!19.イージーリスニング・ラジオ・ミュージック20.死の谷・組曲 東南アジア道路でのドラマ 絶望的な挑戦 救助に向かうサンダーバード23.エンディング・テーマ24.日本版「サンダーバード」主題歌広上淳一東京ガーデン・オーケストラIL DEVOメンバー(track24)TOKYO-FM少年合唱団(track24)録音:2015年12月28日 杉並公会堂
2021年12月25日
コメント(0)
映画「AKIRA」の音楽は音がいいということは昔から知っていたが、積極的に聴こうとまでは思っていなかった。このところ、音の良いといわれる音源に関心が向いているので、ハイレゾをチェックしたらビクターから「Symphonic Suite AKIRA 2016 ハイパーハイレゾエディション」なるものが出ていることを知った。国内盤なのでそれなりに値段が張り、しばらくお預け状態になっていた。ふとしたことからpresto musicをチェックしたら、192kHz/24bitの音源がリリースされていることを発見。これが上記の ハイパーハイレゾエディションと同じものかどうかは分からないが、 ハイパーハイレゾエディションが2016年のリリースで、presto musicのリリースが2017年なので間違いないだろうということで、ダウンロードしてしまった。芸能山城組は邦楽やアジアなどの音楽が主なので、この音源に興味をもつのはオーディオファンが大半で、音楽に興味をもっているのはごく少数の人たちだろう。音楽的に優れているかは多様な見方があるだろうが、管理人は芸能山城組の音楽は昔から好きなので、最高傑作とはいかないが、なかなか楽しめた。冒頭の「Kaneda」の雷の音からして度肝を抜かされる。気に入ったのは最後の「Requiem」広大な音場に圧倒される。祭りの回想部分で集団でお経を唱えるところも迫力十分。後半の合唱の「ねむれ アキラ ねむれ」の件はなかなか感動的だ。エコーのきいた太鼓も凄味がある。歌詞「唱名」はかなりリアルな音場でずんずんと迫ってくる。「変容」も「唱名」に似た合唱の曲だが、エレクトロニカが加わり、野蛮な雰囲気になっている。「回想」は能楽にスパイスとしてガムラン音楽が入っている感じ。眼前で能を観ているようなリアルさが感じられる。所々に入るシンセの衝撃的な一撃もたいそう効果的だ。曲だけ聞いていると何のことかわからなくなるので、映像を見てどの場面で使われているかを把握することが、正しい理解の仕方だろう。録音はノイズ感の全くない素晴らしいものだが、管理人の環境では真の実力が十分に再現しきれていないところが悔しい。この音を聞いたら、音響設備の整った大きな映画館で観たくなること請け合いだ。ところで、残念なことに、このタイトルはpresto musicのリストから消えてしまっている。幸いなことにQuboz usでもカタログに含まれている。管理人の購入価格より高いが、国内価格よりも¥1500程安い。AKIRA(Original Soud Track Album)(Milan)24bit192kHz Flac1.金田 Kaneda2.クラウンとの闘い Battle Against Clown3.ネオ東京上空の風 Winds Over The Neo-Tokyo4.鉄雄 Tetsuo5.ぬいぐるみのポリフォニー Dolls' Polyphony6.唱名 Shohmyoh7.変容 Mutation8.ケイと金田の脱出 Exodus From The Underground Fortress9.回想 Illusion10.未来 RequiemGeinoh YamashirogumiShoji Yamashiro
2021年11月28日
コメント(0)
この前本屋で「オーディオ超絶音源探検隊 バックロードホーン・スピーカーを相棒」というムックを偶然見つけパラパラと立ち読みした。著者は炭山アキラ氏と高崎素行で、お二方は、オーディオ評論家の故長岡鉄男氏のアシスタントと編集担当で、深くかかわりあいのある方々。このムックは音楽の友社から発行されている「stereo」誌で50回以上の掲載回数を誇る人気連載「この音を聴け! 今月の変態ソフト選手権!」を50回分まとめたものだ。この連載の試聴で使用されるスピーカーはバックロードホーンで、あくまでもバックロードホーンで再生したときに高音質で凄い音であることが基準。管理人は長岡氏の愛読者で、氏の推薦したアルバムの記事をよく読んでいたものだ。「オーディオ超絶音源探検隊」は氏の考え方を継ぐものであり、なんというか懐かしい感じがした。推薦ディスクもクラシックそれも現代音楽中心で、ポピュラーは殆どなかった。吹奏楽も数点あり、ユーフォニアムを吹く炭山氏の個人的趣味が反映されている。その中で鬼太鼓座の「富岳百景」がハイレゾで出ていることを知り、即買いしてしまった。この音源は数社から出されているが、e-onkyoでは何故か他社より千円も安い。このアルバムは1997年に日本ビクター創立70周年記念として制作されたもので、『マスター音源は1インチ・2チャンネルアナログテープとハーフインチ・アナログテープ音源からのハイレゾ化。スタジオ録音により究極の繊細感ある鬼太鼓座サウンドを目指す事とアナログ録音に拘り、アナログならではの音の魅力を追及する、という大きな二つの録音テーマを設けた』とのこと。とにかくS/Nがめっぽうよい。一番驚いたのは当時日本最大である直径2.25m、重さ3トンの大太鼓「大和」が炸裂するときの凄まじい音。管理人の装置でもそのすごさが十分に体験できた。笛や太鼓の生々しさも半端でない。「三国」や「阿吽三味線」は実演では聞けない三味線の迫力を感じることが出来る。「花や今宵の」での語りやいろいろな曲で聴かれる掛け声も眼前で演奏しているようにリアルだ。日本の伝統芸能音楽が中心だが、その中では石井真木の「モノクローム2」が一番聞きごたえがあった。音には度肝を抜かれたのは当然のことだが、久しぶりに彼らの音楽の素晴らしさを堪能した。ところで、件の「オーディオ超絶音源探検隊」の中に、小澤征爾とツトム・ヤマシタが共演した石井眞木:遭遇2番/武満徹:カシオペアが取り上げられていたので、そのうち聞いてみたい。鬼太鼓座:富岳百景(VICTOR STUDIO HD-Sound)24bit 192kHz Flac1.鬼太鼓囃子2.弓ヶ浜3.富嶽百景4.花や今宵の5.三国6.鼕々/Toto~坎としてそれ鼓を撃つ~7.阿吽三味線8.明暗9.MONOCHROME Ⅱ鬼太鼓座Recoded at VICTOR STUDIO,Minobu Genral Arst Hall
2021年11月07日
コメント(0)
ベッカ・スティーブンスの新譜が出ていることを知った。近作がジャズからだいぶ離れてしまったので、それ以降積極的にチェックすることもなかった。新作は原点回帰に近い作品で、Spotifyで聞いて気に入ったので、qobuzからダウンロードした。残念ながらハイレゾはない。今回のアルバムは、ニューヨーク在住の中近東のミュージシャンとの共演。2019年の「GroundUp Music Fes」出演時に観たNew York Gypsy All Starsの演奏に大きな衝撃を受け、その後マイケル・リーグのプロデュースの元でアルバム制作をスタートさせたとのこと。ザ・シークレット・トリオは、アルメニア人のアラ・ディンクジアン(ウード)、New York Gypsy All Starsのリーダーでマケドニア人のイスマイル・ルマノフスキ(クラリネット)、そして同グループメンバーのトルコ人タマル・ピナルバシ(カーヌーン)というメンバー。中近東の鄙びた音楽とスティーブンスの透明のヴォーカルの相性が良く、中近東の涼しげな風が吹いているような雰囲気が感じられる。wikiによると、」ウードはプレクトラム(バチ)を用いるリュート属に分類される撥弦楽器で、リュートや琵琶と近縁だそうだ。カーヌーンもアラブ古典音楽で使われる楽器で、台形の箱に多数の弦が張り巡らされていて、それを日本の琴の様につまびいて演奏するとのこと。音量が小さいということだが、はっきり聞こえるのは録音のいいところ。この二つの弦楽器のサウンドがいい感じでブレンドされて、気持ちがいい。もう一つの楽器も民族楽器だと思ったら、なんとクラリネットだった。昔のチンドン屋のジンタ調のクラリネットを、もう少し下品にしたと言ったら言い過ぎだろうか。ただ、「Eleven Roses」などに聞かれるクラリネットとは思えないバスクラ+尺八みたいなエコーのかかった野太いサウンドはなかなか味がある。なので、トリオだけでも結構楽しめる。ここにプロデュースも担当しているマイケル・リーグ のムーグ・ベースやギターが加わりサウンドに厚みが加わっている。所々で加わるムーグ・ベースのサウンドも、広がりを感じさせ、効果的だ。ベッカ・スティーヴンスの澄み切って、甘さを湛えた歌声は曲にマッチしていて、気持ちがいい。バック・コーラスが加わったナンバーは、ひと際感銘深い。「The Eye」の後半など鳥肌ものだ。ということで、以前のサウンドが戻ってきて、とても満足した。今までの方向を否定するものではないが、このコラボを継続してほしい。Becca Stevens & The Secret Trio:The EyeSecret Trio:For AlexiBecca Stevens & The Secret Trio(Groundup Music)16bit 44.1kHz Flac1.Nahapet Kuchak / Becca Stevens, Michael League:Flow In My Tears2.Nahapet Kuchak / Becca Stevens, Michael League:Bring It Back3.Becca Stevens, Michael League:We Were Wrong4.Paul Curreri:California5.Ismail Lumanovski:Eleven Roses6.Tamer Pina Pinarbasi, Becca Stevens, Michael League:Lucian7.Becca Stevens, Rainer Maria Rilke:Pathways8.Becca Stevens, Michael League:Maria9.Ara Dinkjian:Lullaby For The Sun ()10.Nikola Madzirov / Becca Stevens, Michael League:The Eye ()11.Jane Tyson Clement / Becca Stevens:For You The Night Is Still()ベッカ・スティーヴンス (ヴォーカル、ウクレレ、チャランゴ、アコースティック・ギター)ザ・シークレット・トリオ The Secret Trio :アラ・ディンクジアン (ウード) タマル・ピナルバシ (カーヌーン)イスマイル・ルマノフスキ (クラリネット)マイケル・リーグ (ムーグ・ベース、バック・ヴォーカル、アコースティック・ギター)ネイサン・シュラム (バック・ヴォーカル)
2021年10月26日
コメント(0)
コール・ポーターのミュージカル「キス・ミー・ケイト」を聴く。管理人はもともとミュージカルは好きで、映画になったミュージカルのサウンド・トラックなどを聴いていた。少し古くなったが1990年代にリリースされたノンサッチのガーシュインのシリーズなど愛聴していたものだ。最近ブロードウェイのミュージカルのアルバムがハイレゾで出ているのを知り、その中からコール・ポーターの「Kiss Me Kate!」をダウンロードした。ミュージカルでは、歌のうまさもさることながら声のキャラが立っていると目立つものだ。今回、ロイスレーン/ビアンカ役のステファニー・スタイルという歌手の子供っぽい声が気に入って、買ってしまったのだ。彼女はミュージカル初出演で、これでブレイクしたようだ。歌がうまく、コケティッシュな魅力にあふれている。このミュージカルはシェイクスピアの「じゃじゃ馬ならし」の裏側で起こった、離婚後の男女関係を描いた物語とのこと。筋は分からないが耳で聴いているだけで楽しくなる音楽だ。このオペラで有名な曲は「So In Love」くらいなものだと思うが、他のナンバーも生き生きとしていて、とても楽しめた。主役のリリーはケリー・オハラで渡辺謙と「王様と私」(2015)で共演していたようだ。歌がとてもうまく、声量もあり、気持ちのいい歌を聞かせてくれる。男性歌手も粒ぞろいで、ウィル・チェイスの老練な歌唱やジェームズ・T・レーンの若々しい歌、「Brush Up Your Shakespeare」でのジョン・パンコウのユーモアたっぷりの歌などが楽しめる。録音はまあまあだが、高音域が少しきついサウンドだ。ステージが見えるような演奏で、久しぶりにミュージカル音楽の楽しさを満喫した。管理人はミュージカルを生で見たことがないので、一度は生で観たいと俄然思い始めた。Kiss Me Kate perform "Too Darn Hot" at the 2019 Tonys"Always True to You in My Fashion" from Kiss Me, Kate, performed by Stephanie StylesCole Porter:Kiss Me Kate!(2019 broadway company)(Roundabout Theatre)24bit 96kHz FlacACT1:1. Another Op'nin', Another Show - By The Kiss Me Kate 2019 Broadway Company2. Why Can't You Behave - By Stephanie Styles, Corbin Bleu3. Wunderbar - By Will Chase, Kelli O'Hara4. So in Love - By Kelli O'Hara5. We Open in Venice - By Kelli O'Hara, Will Chase, Corbin Bleu, Stephanie Styles6. Tom, Dick, or Harry - By Stephanie Styles, Corbin Bleu, Will Burton, Rick Faugno7. I've Come to Wive It Wealthily in Padua - By Will Chase, The Kiss Me Kate 2019 Broadway Male Ensemble8. I Hate Men - By Kelli O'Hara9. Were Thine That Special Face - By Will Chase10. Kiss Me, Kate (Act 1 Finale) - By Will Chase, Kelli O'Hara, The Kiss Me Kate 2019 Broadway CompanyACT2:11. Too Darn Hot - By James T. Lane, Corbin Bleu, Adrienne Walker, The Kiss Me Kate 2019 Broadway Ensemble12. Where Is the Life That Late I Led - By Will Chase13. Always True to You in My Fashion - By Stephanie Styles14. Bianca - By Corbin Bleu, The Kiss Me Kate 2019 Broadway Ensemble15. So in Love (Reprise) - By Will Chase16. Brush Up Your Shakespeare - By John Pankow, Lance Coadie Williams17. I Am Ashamed That People Are So Simple - By Kelli O'Hara18. Kiss Me, Kate (Reprise) [Act II Finale] - By Will Chase, Kelli O'Hara, The Kiss Me Kate 2019 Broadway Company The Kiss Me Kate 2019 Broadway Company
2021年10月17日
コメント(0)
YouTubeのカナダ人ニュースの書き込みで、「お祭り蔓坊」という歌を知った。演奏しているのはHEAVENESE(ヘブニーズ)という日本のポップスグループ。10人以上のグループで、サックス、尺八、琴なども入っている。基本日本風だが、エスニック風なテイストを感じさせる。ヒップホップも取り入れていて、なかなか面白いグループ。いかがわしさと危険な香りがぷんぷんと匂ってくるようだ。このグループはYouTubeのチャンネルを持っていて、動画の中で、この歌を歌っていた(51:46)リーダーのmarreはカトリックの牧師もやっていて、カトリックのチャンネルを通じて独自の情報を発信している。内外の時事情報を扱っていて、海外の情報が翻訳付きで提供されているのが有難い。このチャンネルは更新は週一だが、コントがある時もあり、BGMは自前だ。年寄りなら皆んな知っている日テレでやっていた、「ゲバゲバ90分」という番組の雰囲気に似ている。このチャンネルでは、替え歌が週替わりで歌われているようで、この「お祭り蔓坊」もその一つ。美空ひばりの「お祭りマンボ」の替え歌で、タイトルの「蔓防」とは蔓延防止のこと。「ワクチンワクチン」の掛け声で始まる歌詞は風刺が効いていて、抱腹絶倒の大傑作。おまけにバンドの前で数人の法被姿の踊り手がいて、神輿を担いでいる。その神輿にはなんと尾身さんやDr.ファウチの顔が貼ってあるという凝ったもの。マスクのメッシュが荒いのも、風刺が効いている。バックの画像も風刺が効いている。kumikoのこぶしを効かせたヴォーカルが大変うまく、音楽としても楽しめる。なお、過激な内容で、いつBANされるかも分からないので、お早めにご覧ください。また、この歌だけを取り出した動画もあるので、歌だけを観たいかたは下記URLをご覧ください。なお、bandcampにはアルバムが3枚紹介されていて、このグループは音楽的には際物でないことがわかる。社会全体の締め付けが強まる中で、こういう過激な内容の歌を観ることが出来る日本は、まだ捨てたものではないと感じる今日この頃。お祭り蔓防
2021年09月05日
コメント(0)
qobuzをチェックしていたらバーブラ・ストライザンドの新譜が出ていることを知った。ジャケットがイラストでタイトルにも「2」が付いている。なんとなく過去の録音のコンピレーションかと思ったが調べてみたら、新録音ではないものの、全曲未発表だった。例によってApple Musicで軽くチェックしていい感じだったので、購入を検討した。qobuz usaでは$17.49で税がかかるので$18はくだらない。収録時間が33分余りなので、いかにもコスパが悪い。なので、他社のリリースを待っていたら、いいタイミングでHDtracksが新譜の2割引きをしていた。$16.79だったので、速攻でダウンロード。残念ながらブックレットは付いていないので、詳しいデータが分からなかった。ところが早くもawikiにデータがアップされている。それによると録音は1960年代から2010年代まで満遍なく選ばれている。さすがに古いと感じられる録音もあるが、概ね悪くない。未発表であることが不思議なくらい、素晴らしい歌唱もある。ルグランの二つのナンバー、特に「Once You've Been In Love」は全盛期のスケールの大きい、輝かしい声の伸びが楽しめるアルバム随一の聞き物。傑作アルバム「Stoney End」のために録音された「Sweet Forgiveness」の素晴らしい歌唱にも魅了される。ウィリー・ネルソンとの「I'd Want It To Be You」などデュエットも何曲か収録されている。セサミストリートのカエルのカーミットとのデュエット「Rainbow Connection」は、ほのぼのとした味があり、アルバムの中では特異な存在。バリー・ギブとの「If Only You Were Mine」はポップで軽くおしゃれなナンバー。二枚組CDに収録されているボーナストラック「When the Lovin' Goes Out of the Lovin」は残念ながら配信には収録されていない。Barbra Streisand:Release Me 2(Columbia /legacy 19439863402)24bit96kHz Flac1. Burt Bacharach, Hal David:Be Aware(1971) intended for the 1971 TV special Singer Presents Burt Bacharach2. Carole King:You Light Up My Life(1974) intended for ButterFly3. Steve Dorff, Bobby Tomberlin, Jay Landers:I'd Want It To Be You(2014) with Willie Nelson) (intended for Partners)4. Walter Afanasieff, John Bettis:Sweet Forgiveness(1994) (intended for Stoney End, 1971)5. Randy Newman:Living Without You(1971)intended for Stoney End, 19716. Michel Legrand, Alan Bergman, Marilyn Bergman:One Day (A Prayer)(1968)recorded in 1968, broadcast for the 1990 Earth Day Special7. Paul Williams, K. Ascher:Rainbow Connection(1979)with Kermit the Frog, performed by Jim Henson intended for Wet8. Harold Arlen, E. Y. "Yip" Harburg:Right As The Rain(1962) from the musical Bloomer Girl9. Ashley Gibb, Stephen Gibb:If Only You Were Mine(2005)with Barry Gibb intended for Guilty Pleasures10. Michel Legrand, Alan Bergman, Marilyn Bergman:Once You've Been In Love (1973)Barbra Streisand(vo)
2021年08月13日
コメント(0)
パンチ・ブラザースのリーダーであるクリス・シールのソロアルバム「Laysongs」を聴く。2017年の「Thanks for Listening 」以来4年ぶりの新作。bandcampでは$9だったが、ハイレゾかどうか不明のため、prostudiomasterからC$10.16日本円で960円程でハイレゾを購入。例によってマンドリンとヴォーカルの組み合わせ。超絶技巧が楽しめる。何時になく激しい曲が多い。このアルバムを作るに至った経緯はノンサッチのウエッブ・サイトに詳しく載っている。それによると、『キリスト教の家庭で育ったシールは、ノンサッチの名誉会長ロバート・フルビッツ(1949-)との楽屋での会話で、神をテーマにしたレコードを出すべきだと言われたそうだ。その後、ロックダウンのため、シールがホストを務めていた公共ラジオ番組「Live from Here」が終了し、ようやくこのアイデアに取り組んだ』とのこと。プログラムの中心は「ナルニア国物語」の原作者C.S.ルイスの『スクリュータイプ・レターズ』(キリスト教の謝罪小説?)にインスパイアされた3曲からなる「Salt (in the Wounds) of the Earth」冒頭の「ハ、ハ、ハ」から始まる社会性を帯びたメッセージが伝わってくる。コロナ禍の社会での、キリストと自分の気持ちとの葛藤が感じられる。ソーシャル・ディスタンスなどの言葉も出てくる。切迫した気分とやりきれなさも感じられる、聴き終わると心が動揺してしまう。3曲のなかでは、のんびりとした雰囲気のパート2が比較的聞きやすい。期待のバルトークはあっけなく終わってしまった。演奏そのものはいいのだが、楽器の制約からどうしてもスケールが小さくなってしまう。また「Salt (in the Wounds) of the Earth」のインパクトが強く、どうしてもバルトークがのんきに聞こえてしまうのもある。「Dionysus」は英語だとバッカス(酒の神)のこと。ディオニュソスにふさわしい陽気なメロディーだが、歌詞はスピリチュアルなもので、管理人は理解できない。レナード・コーエンの詩をバフィー・サント・マリーがアレンジした「God Is Alive, Magic Is Afoot」も神についての歌。これも歌詩が難解。ヘイゼル・ディケンズの「Won't You Come and Sing for Me」は死を前にした人間が昔一緒に歌った賛美歌を歌ってほしいという内容の歌。youtubeを観ると典型的なブルーグラスのナンバー。本来悲しみを隠して、明るくふるまっているような曲に思えるが、ここではテンポを落として、じっくりと歌っていて、明るさはない。しみじみとした余韻が残る。録音はニューヨークの古い教会を改造したFuture Past Studiosというところ。youtubeを観ると、そんなに立派なところではなく、雑然としている。天井が高いのが教会らしいとは言え、残響があまりないのは周りの囲いのせいだろうか。なお、全曲の歌詞はこちらで確認できる。ということで、問題作には違いないし、歌詞が分からなくても、ただならぬ雰囲気であることは分かる。ただ、歌詞を知ってもキリスト教を信仰しない日本人には、理解するのにハードルが高い。youtubeChris Thile:Laysongs(Nonesuch 075597916188)24bit 96kHz Flac1.Chris Thile:Laysong2.Chris Thile:Ecclesiastes3.Buffy Sainte-Marie & Leonard Cohen:God Is Alive Magic Is Afoot4.Chris Thile:Salt (in the Wounds) of the Earth, Pt. 15.Chris Thile:Salt (in the Wounds) of the Earth, Pt. 26.Chris Thile:Salt (in the Wounds) of the Earth, Pt. 3 7.Béla Bartók:Sonata for Solo Violin, Sz. 117: IV. Presto 8.Chris Thile:Dionysus9.Hazel Dickens:Won't You Come and Sing for MeChris Thiele(Mandolin, Vo)Recorded at Future Past Studios、NY
2021年06月17日
コメント(0)
「スカートをはいたジョアン・ジルベルト」と言われる世界的なボサ・ギタリスト/シンガーであるホーザ・パッソス(1952-)の新譜を聴く。彼女の録音は以前少し聴いて、それっきりになっていたがbandcampからのお知らせでリリースがあることを知った。今回のライブは2001年夏のヨーロッパツアーの一環としてデンマークのジャズハウスで行われたもの。残念ながらこの店は閉店したようだ。同時期に2001年の8月末から9月初めにかけて録音した「Me And My Heart」がある。当時彼女はデンマークでは無名の存在だったそうだが、この録音からも分かるように、聴衆を熱狂の渦に巻き込んだ、脂の乘ったプレイを展開している。bandcampの資料によると、当夜は2セット行われたとある。今回の録音は40分に満たないので、どちらかのセットまたは編集したものと思われる。曲目が異なるのであれば、残りの録音も是非聞きたいところだ。全9曲で、ブラジルの歌手ドリヴァル・カイミ(1918-2004)の作品が4曲、Fernando de Oliveiraと彼女の共作が2曲、そのほかブラジルの歌手ジャヴァンとジョビンが1曲ずつという構成。タイトルチューンの「dunas」はカバーされているようでyoutubeにも何個かアップされている。ジョビン以外は知らない曲だったが、ブラジル音楽の楽しさを満喫できた。最後の「Juras」では全員が一丸となった感動的なエンディングを迎える。パッソスはヴォーカルはもちろんのこと、ギターのプレイが超強力。リズムを刻んでいるだけなのだが、存在感が半端ない。バックのピアノ・トリオもかなり強力で、シンセや時折ブラジルの民族楽器らしいサウンドが聞こえて、華やいだ雰囲気満点だ。ライブとはいえ中音域の張り出した録音で、これが普通の録音であれば、勢いが感じられなかったかもしれない。Rosa Passos: Dunas - Live In Copenhaguen(Storyville Records)16bit 44.1kHz Flac1.Djavan:Cigano2.Dorival Caymmi:Marina3.Dorival Caymmi:Rosa Morena4.Dorival Caymmi:Sábado Em Copacabana5.Dorival Caymmi:O Que É Que A Baiana Tem ?6.Fernando de Oliveira,Rosa Passos:Chuva De Verão7.Antonio Carlos Jobim:Águas De Março8.Fernando de Oliveira,Rosa Passos:Dunas9.Fernando de Oliveira,Rosa Passos:JurasRosa Passos(vo,g)Fabio Torres(p)Paulu Paulelli(b)Celso de Almeida(ds)Recorded live on July 7th, 2001 in Copenhaguen jazzhouse.
2021年06月04日
コメント(0)
今年はタンゴの革命児アストラ・ピアソラ(1921 - 1992)の生誕100年にあたる。それを記念して新譜が出てきそうだが、取りあえずアルファ・レーベルから彼の作品を中心としたアルバムがリリースされた。「ピアソラ・リフレクションズ」というタイトル。アルファに関しては最も安いhighresaudioから$12.4手数料をいれて1300円半ばの価格で入手。クセーニャ・シドロワ(Ksenija Sidorova)というアコーディオ奏者を中心としたアルバムで、配信先行でCDは今月末リリース予定。アコーディオンというのが引っかかったが、違和感はなし。アコーディオンのクセーニャ・シドロワ(1988-)はラトビア出身で世界中で活躍しているようだ。2017年にはパーヴォ・ヤルヴィ指揮のN響と共演している。ジャケ写からもわかるように、若き日のアンネ=ゾフィー・ムターに似た美人だ。アコーディオンはバンドネオンに比べて機動性に劣ると思われるが、そのハンデは全く感じらない程歯切れがいい。音楽が活力にとみ、静かな作品でも叙情豊かな演奏を聞かせてくれる。クラウディオ・コンスタンティーニの編曲が素晴らしく、今までリリースされているクラシック演奏家のピアソラのアルバムの中では最も優れたものの一つだと思う。選曲も普通のピアソラ名曲集みたいなものではなく、あまりポピュラーでない曲や他の作曲家の作品もピアソラとの親和性が高く、よく考えられた選曲だ。フランク・アンジェリスのピアソラの主題による幻想曲「チキリン・デ・バチン(バチンの少年)」はピアソラのテーマを使っているとはいえ、清冽で心に染みわたる曲だった。テンポが速くなってからの、熱い情熱を感じられる部分も感動的だ。小編成の弦とアコーディオンの組み合わせは「タンゴ・センセーション」で聴かれるように、大変相性がいい。ロッフィとアフノフのオリジナルは、この組み合わせのサウンドが味わえる。両作品とも、なかなか聴かせる。ピエトロ・ロッフィの「ノクターン 私たちがまだ過ごしていない時間の子守唄のように」はロマンチックなアコーディオンの旋律に弦が絡みつく。セルゲイ・アフノフの「ヨシフ・ブロツキーの1つの詩への2つの鍵」が聞かせる。「月」ではひんやりとした肌触り。「川」は動的な楽想で、激しいパッションの高まりが表されている。協奏曲はあまり出来がよくない作品だが、バックのオケがNDRエルプフィルハーモニー管という一流どころなので、立派に聞こえる。この曲のアルバムはそれほど数は多くないが、オケがあまりうまくない演奏ばかりで、オケがソロの足を引っ張っていることが多かった。今回の録音でこの作品の真価?が発揮されているのは誠に喜ばしい。アコーディオン単独の曲は、アルビノーニとロシアのアコーディオン奏者でもあるセルゲイ・ヴォイテンコ(1973-)の2曲。ヴォイテンコの「リヴェレーション」は美しく胸に迫る曲だ。Wikiを見るとプーチンと一緒に写っている写真もある。表彰か何かの時のスナップだろうか。お馴染みの「リベルタンゴ」はアコーディオンの無伴奏ソロで始まる。リズミカルでおしゃれな編曲なので、自然に体が動いてくる。また、ソロ・ヴァイオリンにアレクサンダー・シトコヴェツキーが起用されるなど、キャストも抜かりがない。シトコヴェツキーのヴァイオリンはクラシックの演奏家にしてはかなり表情が濃厚だが、クラシックとして節度を保った、いい演奏だった。ということで、従来のピアソラ集とは一味も二味も違った画期的な演奏で、ピアソラ・ファンには是非お聴きいただきたい。リヴェレーション悪魔のロマンスクセーニャ・シドロワ:ピアソラ・リフレクションズ(ALPHA)24bit 96kHz Flacアストル・ピアソラ(1921-1992)/クラウディオ・コンスタンティーニ編曲:1. さよなら、パリ2.セルゲイ・ヴォイテンコ(1973-):リヴェレーション3. ピアソラ:カフェ 1930 (『タンゴの歴史』より)4. ピエトロ・ロッフィ(1992-):ノクターン 私たちがまだ過ごしていない時間の子守唄のように5-7. ピアソラ:バンドネオン協奏曲「アコンカグア」 バンドネオン(アコーディオンで演奏)、弦楽と打楽器のための8. ピアソラ:孤独(組曲『リュミエール』より)9. ピアソラ:私はマリア(『ブエノスアイレスのマリア』より)10. フランク・アンジェリス(1962-):ピアソラの主題による幻想曲「チキリン・デ・バチン(バチンの少年)」11. ピアソラ:悪魔のロマンス12. ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685-1750):アダージョ (チェンバロ協奏曲 ニ短調 BWV 974 マルチェロのオーボエ協奏曲による より)13.セルゲイ・アフノフ(1967-): ヨシフ・ブロツキーの1つの詩への2つの鍵 月 川15. ピアソラ/ジョン・レネハン編曲:リベルタンゴクセーニャ・シドロワ(アコーディオン)アレクサンダー・シトコヴェツキー(vn track3,8,9,11)クラウディオ・コンスタンティーニ(p track 1,8,9,11)ロベルト・コッホ(b track 1,3,4,11)レーントコ・ディルクス(g track 3-11)ゴルトムント弦楽四重奏団(track 4,11,13,14)BBCウェールズ・ナショナル管弦楽団(track 15)クラーク・ランデル(cond track 15)NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団(track 5-7)トーマス・ヘンゲルブロック(cond track 5-7)【録音】2020年9-10月 シュロス・エルマウ、ドイツ(track 1-4,8-14)2018年6月 エルプフィルハーモニー、ハンブルク(track5-7)2012年9月24日 BBCホディノット・ホール、カーディフ(track 15)
2021年02月21日
コメント(0)
アレクサンドル・デスプラという作曲家の映画音楽集。てっきりパユが主役のコンセプト・アルバムと思い込んでいたので、少しがっかりした。この作曲家の名前は知らなかったがいろいろな映画音楽を作曲している多作家だ。wikiによると70以上の映画やテレビの音楽を作曲している。アカデミー賞を受賞した、シェイプ・オブ・ウォーターとグランド・ブダペスト・ホテル』組曲も含まれている。管理人はよほど印象に残らないと、映画の作曲家が誰であるかは全く関心がない。特に気に入った時にサウンド・トラックを聴くくらいだ。デスプラの手掛けた映画音楽の中には管理人が観た映画もいくつか含まれている。抒情的な作風が持ち味だろうが、中には、アニメの「犬ヶ島 (Isle of Dogs)」(2018)みたいな、少しキモイ音楽も作っている。このアルバムはパユがフィーチャーされている映画音楽特集みたいなイメージで聴いていたが、シンフォニックな編曲を、大編成のオケで聞かせるという本格的なものであることに気が付いた。同傾向のアルバムにはムーティや最近出たシャイーなどのニーノ・ロータ集、Naxosの映画音楽のシリーズが思い浮かぶ。全体にしっとりしていて、聴後感は悪くないが、すべてが微温的でやや物足りない。デスプラの音楽はフランス人らしい洒落っ気はあるが、暗く鬱陶しいところもあり、それが好みの分かれるところ。気にいったのは協奏交響曲「ペレアスとメリザンド」協奏交響曲という名前が付いているが、フルートとオーケストラのための交響曲という位置づけなのだろう。メーテルランクの有名な戯曲に基づく音楽で、フランス人作曲家らしい優美な繊細さが感じられる。3楽章はなかなかスペクタクルで面白い。「シェイプ・オブ・ウォーター」は映画音楽から3曲をピックアップした組曲。構成はサウンド・トラックとほぼ同じで、フルートはオブリガートとも呼べないほど地味なもの。音楽自体は、さすがにサウンド・トラックよりはスケールと奥行きが深い。「ラスト、コーション」は愁いを帯びたフルートの旋律が美しい。「真珠の耳飾りの少女」も美しいが暗い。タイトル・チューンの「Airlines」は独奏フルートのための4分ほどの作品。特殊奏法を含む純然たる器楽曲。和風のテイストを感じさせる静かな音楽。アルバムの中では異色の存在だ。耳触りがよく、現代作品としては聴きやすい部類に入るだろう。今後、フルーティストのレパートリーとして、広まっていくかもしれない。「誕生」は後半のワルツの部分の、ヴァイオリンの華やかで、艶のあるサウンドが美しい。最期の「グランド・ブダペスト・ホテル」はウイットに富んだ音楽だったという印象があったが、意外につまらなかった。念のためサウンド・トラックを聞いたら、サウンド・トラックはチンバロンをフィーチャーして、楽しい音楽が続いている。コダーイのハリーヤーノシュのテイストに近い。今回の演奏は、サウンド・トラックのちんまりとした箱庭的な面白さが感じられない。ちょっときれいにしすぎ?と言ったら怒られるだろうか。録音は観客のノイズや拍手、ホールのノイズなどもすべてカットされていて、ライブとは思えない。ブックレットにはデスプラとパユの長いインタビューが載っていて、大変興味深い。Alexandre Desplat:Airlines(Erato 9029530687)24bit 96kHz Flacアレクサンドル・デスプラ:1.シェイプ・オブ・ウォーター(パリ組曲)†4.協奏交響曲『ペレアスとメリザンド』*7.ラスト、コーション†8. 真珠の耳飾りの少女†9.誕生*10.エアラインズ(独奏フルートのための)*11.『グランド・ブダペスト・ホテル』組曲†* World-premiere recording† World-premiere recording of version for flute and orchestraエマニュエル・パユ(al)ミレアム・ラファルグ(acordion track 1-3)フロレンティーノ・カルボ(mandrin track11)フランス国立管弦楽団アレクサンドル・デスプラ(指揮、編曲)Recorded: 3–6.XII.2018 & 6.XII.2018 (LIVE), Auditorium, Radio France, Paris
2020年09月03日
コメント(0)
spotifyに1曲だけリリースされていたのを聴いてよかったデセイのアルバムがリリースされた。spotifyでチェック後、HDtracksから20%オフで購入。フランスの生んだ偉大な歌手で作詞作曲も手掛けたクロード・ヌガロ(1929-2004)を特集したアルバム。デセイは最近このようなポピュラー寄りの作品をリリースすることが目立っている。「冬の旅」で味噌をつけてしまったわけではないだろうが、今回のアルバムは、個人的には、とても好ましい転向?ぶりだ。完全にポピュラー歌手の歌い方で、ポピュラー畑でも十分に活躍できることが伺える。ビブラートはあまりかけないし、感情の表出度合いはポピュラーのそれ、になっている。彼女の特徴であるディクションの美しさも十分に表れている。ヌガロはジャズに傾倒していたので、ジャズっぽい曲やブルーベックの「トルコ風ブルーロンド」なども入っている。「トルコ風ブルーロンド」に歌詞をつけて「勝手にしやがれ」と改題されている。デセイは速いテンポに、よくついていっている。残念なのはヌガロ版では大きく息継ぎをする部分が何箇所かあり、原曲を知るものとしては違和感が残った。ヌガロの歌う勝手にしやがれトゥーツ・シールマンスの「tendre」は聞いたことがなかったが、悲しみを帯びて心温まる曲だ。彼の曲はこじんまりとしているが、佳曲が多い。ルグランの「Le Sinema」も前半部分が美しい。ジャズ風な曲では、ルグランの「Tiens-toi bien à mon Coeur」の疾走感がたまらない。バックはピアノトリオが主体で、曲によってはホーンやストリングが加わっている。ベースのローラン・ヴェルネレイとドラムスのアンドレ・チェッカレリはヌガロのオリジナル・メンバーだそうだ。時折入るクロード・エジェアのミュート・トランペットがなかなか印象的だ。「Dansez sur moi(ガールトーク)」など立派なジャズボーカルになっている。当ブログはクラシックの歌い手が歌うポピュラー音楽については、否定的だ。理由は歌い手と曲の距離が離れていて、一体感が感じられないからだ。ところが、今回のアルバムは、特に「クラッシックの・・・」というような余計な修辞は必要ない。立派なポピュラー音楽として通用するし、出来がとてもいい。何といっても、フランスのエスプリが効いていて、すごくしゃれている。この味わいは、フランス人でなければ出ないだろう。出来れば、デセイを知らないポピュラー音楽愛好家に聞いてほしいくらいだ。イヴァン・カッサールによる編曲が抜群で、この編曲がなかったら、成功はなかっただろう。バラエティに富んだ編曲で、各々がツボに嵌っている。イヴァン・カッサールは長年クロード・ヌガロのステージとスタジオのコラボレーターで、彼ほどこの仕事に相応しい方もいないだろう。ということで、選曲、演奏とも抜群の出来で、デセイのポピュラー系のアルバムの最高傑作として、是非お聴きいただきたい。Nougaro : Sur L'ecran Noir De Mes Nuits Blanches(warner )24bit 44.1kHz Flac1. Claude Nougaro / Michel Legrand:Le Cinéma2. Claude Nougaro / Jacques datin:Chanson pour Marilyn3. bobby troup / Neal Hefti:Dansez sur moi4. Claude Nougaro / Michel Legrand:Tiens-toi bien à mon Coeur5. Claude Nougaro / Maurice Vander:Le coq et la pendule6. Claude Nougaro / Michel Legrand:Serge et Nathalie7. dave brubeck:à bout de souffle8. Claude Nougaro:La vie en noir9. Claude Nougaro / Hubert giraud):Regarde-moi10. Claude Nougaro:Déjeuner sur l’herbe11. Claude Nougaro:La pluie fait des claquettes 12. Claude Nougaro / toots thielemans:Tendre13. Claude Nougaro / Michel Legrand:Sa maison14. Claude Nougaro :ToulouseNatalie dessay(s)Yvan Cassar(p,arr.)Laurent Vernerey(b track14)、André Céccarelli (ds track 3,4)Pierre-François dufour(vc track 5, 6, 7, 9)Raphael Chassin(ds track 1, 2, 5, 7, 8, 9, 11, 12, 13)Nicolas Montazaud(pec. track 5,6,10,12)Claude Egea(tp track 1, 4, 11)Sylvain Gontard(tp,bugle track 2,3,8)Denis Leloup(tb track 1, 4, 11)Pierre Bertrand(sax,fl track 1, 4, 11)Stephane Guillaume(sax,cl track 1,4,11)Odile Abrell(harp track 1, 2, 3, 10, 12, 13)Odyssey Symphony Orchestra
2019年11月29日
コメント(0)
スティングのセルフ・カバーアルバムを聴く。HDracksのセールで購入。最近ハイレゾは海外サイトではセールの時買うことが殆ど。日本ではめったにセールをしないので、殆どは定価で買うしかないが仕方ない。まれに安くしているときもあるが、この前買ったミュンシュの幻想(ワーナー)は聴くに堪えない音で散々だった。今回のソースは、44.1/24bitで少し物足りないが、例によって96kHzにアップ・コンバートしてNASに入れた。スティング自身はこのアルバムを再創造(リワークアルバム)と呼んでいるようだ。管理人が昔いた業界では、リワークとは手直しみたいな意味で、あまりいい印象はない。この場合は勿論いい意味でのリワークだろう。スティングを知ったのはブランフォード・マルサリスつながりで、その前の曲はあまり知らない。今回も知っているのは数曲だけだったが、植木の手入れをしながら音楽を流していて、グッとくることが何回もあった。過去にスティングの曲だけをカバーしたアルバムが作られているほどなので、優れた作曲家なのだろう。スティングの音楽を聴くと、いつもアイルランドの厳しい気候を連想してしまう。スティングの音楽も表に出てくる厳しさと、うちに込められた熱い感情の発露が感動を呼ぶ。選び抜かれただけあり、どの曲もずっしりとした手応えをかんじる。昔からのファンなら、牙を抜かれた何とやらと思うかもしれないが、遅れてやってきた当ブログとしては、とても満足した。デラックス版はライブでの演奏が4曲追加されている。これは、以前映像で発売されていた「Live at the Olympia Paris」と同じソースだろう。追加トラックは個人的には、なくても影響はないと思う。録音はずっしりとした厚みのある低音と、渋いカラーにまとめられたサウンドで、最近のスティングの好みだろう。レコーディングのデータを探し回ったのだが、見つからず、カバーアートだけだろうと思いつつ、念のためブック・レットを確認した。期待を裏切って?ポピュラー系のアルバムでは珍しく、かなり充実していた。スティング自身による曲の解説と曲ごとのパーソネルがバックコーラス、ストリングスを含めて詳細に記されているのは有難い。パーソネルを見ると超豪華な布陣で、ジャズファンならご存知のブランフォード・マルサリスやケニー・カークランドといった昔のサイドメンの名前も見える。ただ、録音のロケーションはあるが肝心の日時がないのが何とも残念。カークランドについていえば、彼は1998年11月11日に亡くなっているので、彼の参加した「 IF YOU LOVE SOMEBODY SET THEM FREE」、「FRAGILE」、「ENGLISHMAN IN NEW YORK」の彼のパートは、それ以前の録音ということになる。ライブを除いてすべてアメリカの数か所で録音されている。最近の録音は同時録音ということは少なく、今回のように多数の有名ミュージシャンが参加している場合は、何回にもわたって録音されているだろうから、録音日時を書くのも難しいのかもしれない。そこのところを詳しく知りたいというのが、(データー?)マニアが望むところだろうが。。。Sting: My Songs (Deluxe Edition)(A&M/Interscope)24bit 44.1kHz Flac1 BRAND NEW DAY(1999)2 DESERT ROSE(1999)3 IF YOU LOVE SOMEBODY SET THEM FREE(1985)4 EVERY BREATH YOU TAKE(1982)5 DEMOLITION MAN(1980)6 CAN’T STAND LOSING YOU(1978)7 FIELDS OF GOLD(1992)8 SO LONELY(1975)9 SHAPE OF MY HEART(1992)10 MESSAGE IN A BOTTLE(1979)11 FRAGILE(1987)12 WALKING ON THE MOON(1979)13 ENGLISHMAN IN NEW YORK(1987)14 IF I EVER LOSE MY FAITH IN YOU(1992)15 ROXANNE (LIVE)16 SYNCHRONICITY II (LIVE)17 NEXT TO YOU (LIVE)18 SPIRITS IN THE MATERIAL WORLD (LIVE)19 FRAGILESting(vo,b,g)
2019年06月27日
コメント(0)
このところ、以前コンサートのレビューをしたバンドネオン奏者の三浦一馬(1990-)のCDを集中的に聞いている。といってもCDを買っているわけではなく、tsutayaのレンタル。やっと最新盤の「Libertango」を借りることが出来た。曲は以前のコンサートで演奏された演目がかなり入っている。コンサートではPAの不具合で、だいぶ不満の残る演奏になっていたが、CDはその不満が全くなく、彼らの演奏を満喫した。コンサートで問題になっていた、「五重奏のための協奏曲」も最後のギター・ソロが普通に聞こえていた。ただ、ピアソラのオリジナル(1970)の影響なのだろうが、ギター・ソロにエコーがかかっていたのはどうかと思う。理由は音の輪郭がぼやけるためだ。当ブログとしては、エコーはかけるべきではなかったと思う。ピアソラも他のレコーディングでは、エコーをかけていない。参考までに「五重奏のための協奏曲」が収録されている自作自演の「タンゴ・ゼロ・アワー」(AMERICAN CLAVE)を聴いてみた。レコード芸術の月評氏が作曲者自身の次に聴くべき演奏と評していたのを眉唾物と思っていたが、実際にそうだったのには驚いた。「五重奏のための協奏曲」の演奏時間はピアソラよりも三浦の演奏がちょうど1分長い。楽譜がきっちり書かれてあり、9分程度の曲でこの違いは大きい。ピアソラは軽快でメリハリがありスケールが大きい。それに比べると三浦は音楽が若干平板で硬さがある。カデンツァも物足りない。とはいえ、この若さでピアソラの演奏に肉薄した音楽を作る三浦一馬は大したものだ。音の良さを加味すれば、当盤が真っ先に挙げられても不思議ではない。サイドメンでは山田武彦のダイナミックなピアノが光っている。石田泰尚のヴァイオリンは生とあまり変わらず、個人的には骨太でもう少し熱のある演奏が聴きたかった。大坪純平のエレキ・ギターは控えめなところは生と同じだが、録音のほうが積極的なプレイに聞こえる。コンサートでは聞けなかった「92丁目通り」や「プレパンセ」も楽しめた。聞くたびにじわじわと良さが実感される、素晴らしい名盤。三浦一馬:Libertango(キング KICC-1471)Astor Piazzolla:1.92丁目通り2.プレパレンセ3.天使の死4.アレグロ・タンガービレ5.タンガータ6.キチョ7.アディオス・ノニーノ8.鮫9.五重奏のためのコンチェルト10.リベルタンゴ三浦一馬(Bn)石田泰尚(Vn)黒木岩寿/髙橋洋太(b)山田武彦(p)大坪純平(e.g)
2018年12月31日
コメント(0)
バーブラ・ストライサンド(1942-)の36枚目のスタジオでの新録音を聴く。76歳なので、声の衰えを心配していたが声の伸び声量とも申し分ないものだった。そういえば彼女の特徴であるちりめんビブラートはあまり目立たなかったが何故だろうか。ディストリュビューターによると「2005年以来となるオリジナル楽曲中心のアルバムで、彼女の作品としては初めて社会的テーマをコンセプトとしている。彼女が生涯に渡って信条とし、語り続け、奮闘してきた理念と価値観を伝えるものとなった。」というもの。取り上げられているオリジナルがどれもが素晴らしい曲ぞろい。ウォルター・アファナシェフをはじめとする編曲とオーケストレーションが素晴らしく、いやが上にも興奮させられる。最初の「What's On My Mind」からスカンジナビアの厳しい自然を思い出させるような歌。内に秘めた熱い思いが吐露されているかのようで、アコースティック・ギターが効果的だ。「Don't Lie to Me」は政治的な激しさを持ったテンポの速い曲。歌詞に激しい生の感情が出ていて、当ブログとしてはあまりいいとは思はない。何しろ美しさが感じられないのだ。歌詞はyouに対して詰問しているような歌詞で聴き手が詰問されているようにも感じられる。ところでこのyouとは誰のことをさしているのだろうか。政治家やエスタブリッシュメントの人たちのことだろうか。ImagineとWhat a Wonderful Worldのメドレーは二つの歌が2回繰り返されるが、単なる繰り返しではなく二回目が素晴らしい。イマジンはそれほどでもないが、「What a Wonderful World」はバーブラの歌唱に心を揺さぶられてしまう。タイトルチューンの「Walls」はアファナシェフの曲にバーグマン夫妻の歌詞がついている。ジャケット写真はタイトルに因んだ石が積まれた空間にバーブラが佇むというもの。この壁はトランプの公約であるメキシコ国境に作る壁のことで、歌詞のなかの「you」はどうやらトランプのことで、最終的には壁のない世界を願っているという歌詞だ。バーグマン夫妻の歌詞はストライサンドの直截な歌詞に比べると洗練(老練?)されていて、さすがだ。辛辣な歌詞とは裏腹に、ダークグレーの景色が見えるような寂しい曲調で、美しいメロディーと後半の盛り上がりが素晴らしく感動的な名曲。まあ歌詞が分からないほうが楽しめる感じはする。「Lady Liberty」は劇的な展開で心を揺さぶられる。バーブラは絶唱とでもいうべき歌唱を聞かせている。バカラックの「 What the World Needs Now」もイントロが重厚で、その後も普通聞かれるような軽い感じの編曲ではない。テンポが速くなるところからはソウルテイストの編曲で、バックコーラスもソウルフルで全く別な曲に変わっている。アファナシェフの編曲のセンスが抜群で興奮すること請け合い。「Better Angels」もドラマチックな展開で、特に後半に入る「Rise up!」というコーラスの掛け声は鳥肌もので、映画の一場面を見ているような感覚に襲われる。「Love's Never Wrong」は愛について教え諭すような心温まる歌。「The Rain Will Fall」はアップテンポの力強い曲だが、なにか説教を聞いているいるような歌詞だ。エンディングに雷とざあざあと降る雨の音が挿入されている。最後はデビューアルバムの「The Barbra Streisand Album」(1963)に収録されているバーブラの代表的なナンバー「Happy Days Are Here Again」今回は劇的な展開でスケールが大きいが、現在とはまるで違うデビュー盤のバーブラの若々しい引き締まった声と突き放したような歌い方も何とも魅力的だ。ということで、久しぶりのオリジナル中心のアルバムは当ブログのバーブラのアルバムに対する最近の不満を一掃するような素晴らしい出来で大満足だった。この手の音楽には疎い妻も、漏れてきた音楽を聴いて「いい感じだ」といっていたので、わからない人にも良さが伝わったようだ。なお、wikiによると、バーブラのアルバムで4週間で5万枚以下というもっとも売り上げが低いアルバムだそうだが、Metacricでは84/100と評価はそう悪くないらしい。Metacricは音楽、TV、映画などのネットでの評価を集計するサイトだそうだ。なお、当ブログの入手したのは海外盤で歌詞は載っていない。こちらの下のほうに全曲の歌詞毎のリンクが貼られているので、ご覧ください。Barbra Streisand:Walls(COLUMBIA 19075895482)1. Barbra Streisand/Carole Bayer/Jonas Myrin/Joy Landers:What's On My Mind2. Barbra Streisand/John Shonks/Jonas Myrin/Jane Landers:Don't Lie to Me3. John Lennon/Yoko Ono:Imagine /Bob Thiel/David Weiss: What a Wonderful World4. Walter Afanasieff/Alan Bergman/Marilyn Bergman:Walls5. Desmond Child:Lady Liberty6. Burt Bacharach/Hal Dvid:What the World Needs Now7. Carole Bayers/Jons Myrin/Jy LOnders:Better Angels8. Steve Dorff/Marty Pnzer/Jay Londers:Love's Never Wrong9. Barbra Streisand/Jonas Myrin/Carlie Midnight/Jane Landers:The Rain Will Fall10. Leonarl Bernstein/Alan Jay Leiner:Take Care of This House11. Milton Anger/Jack Yellen:Happy Days Are Here AgainBarbra Streisand(vo)
2018年12月14日
コメント(0)
このコンサートの情報を知ったのは、それほど前のことではなかったが、別の予定が入っていたため、諦めていた。ところが、日時が変更になったことを知り、速攻で予約した。出演者の都合ということだが、珍しいことだ。予想では、日時が変更された影響で入りは悪くなると思っていたが、ほぼ満席だったのは、御同慶の至り。この方は名前は知っていたが、演奏を聴くのは初めて。今回は最新アルバムの「ピアソラ」発売記念のツアーのコンサート。キャラホールの自主事業なので¥3000と低廉な料金で聞けるのもいい。もし、これが¥5000ほどだと、まず聴きに行かないが、聴きに行ってよかったコンサートだった。新しいアルバムはピアソラのみなのだが、コンサートは前半がガーシュイン、後半がピアソラという構成。そのためか、最後の5人目が、前半は石川智のドラムス、後半は大坪純平のエレキギターというメンバーだった。始まってすぐ上手のドラムスの音が小さいことに気がついた。当ブログの座席が下手の前の方で、PAの近くだったこともあるのか、とてもバランスが悪い。アコーディオン以外は、全体的にオフ・マイクの感じで、よくいえばソフト、悪くいえば弱弱しい感じがする。ヴァイオリンを見たら、マイクが結構上のほうにあって、わざわざ近づいて演奏していたのが、何とも気の毒。ピンマイクを使うことは考えなかったのだろうか。まあ、全体のサウンドがクラシックに近いミキシングなので、敢えてそのようにしたのかもしれないが。。。そのため、後半のピアソラは、こちらの期待している攻撃的な演奏が聞けなかった。バンドネオンだけは十分に聞こえていたのに、他の楽器が聞こえなかったのが物足りない。バンドネオン以外の楽器の音がもっと大きかったら印象は全く違っていたものになっていたに違いない。特に、エレキ・ギターの音が小さくて、最も期待していた「五重奏のためのコンチェルト」の最後の速弾きがほとんど聞こえないのはがっかりした。この曲のハイライトなのに台無しになってしまったのは何とも残念。念のため、新しいアルバムでの同曲を聴いたら、普通に聞こえる。CDだと他の曲も普通のバランスで、どうも今回のコンサートのPAのバランスがおかしかったとしか思えない。演奏者はバランスはよくわからないので、関係者が調整しなければならないのだが、そこはどうなっていたんだろうか。とてもいいコンサートだったのに、何とも残念だ。結局、音に関しての不満ばかりになってしまったが、肝心の演奏について一言。前半のガーシュインは「三浦一馬プレイズ・ガーシュウィン」からの選曲。訴える力が弱く、なんとも中途半端な出来に終わってしまった。基本的には作曲された当時の感じに編曲されていたが、PAのために、音楽が薄められていたと思う。良く知られる歌ばかりだが、歌の良さもあまり感じられない。「ラプソディー・イン・ブルー」も全曲ではなく、うまく縮められてはいたが、あまりいいとは思えなかった。最後の「ガール・クレージー」序曲は珍しい選曲で、CDで聴くと洗練されていて面白いのだが、生ではそこまで聴き手には届かなかった。CDで聴くと一種のサロン風音楽で活気のある演奏だったので、今回はPAの失敗が何とも痛い。後半のピアソラは次第に熱を帯びてきて、お目当ての「五重奏のためのコンチェルト」では素晴らしい盛り上がり方だった。コンサートの途中では珍しいことに、かなり長い時間拍手がやまなかった。大曲で技巧的にも難しいため、めったに演奏されることはない曲だが、聴衆がこの曲の良さを認めてくれたのだろう。三浦のバンドネオンはうまいが、時々陳腐なフレーズが出てくるのが気に入らない。また、少しクールで、当ブログとしてはもっと熱のある演奏をしてほしかった。ヴァイオリンの石田泰尚は神奈川フィルのソロ・コンサートマスター。短髪でやくざみたいな風貌や癖のあるステージマナーは良くも悪くも印象に残るキャラクターだ。黒眼鏡にすればジャーナリストの勝谷誠彦にそっくりだ。何故かメンバー紹介で、ただ一人声援があっちこっちから飛んでいた。音は美しいが線が細く、ポピュラー音楽に必要な踏み込みが足りない。ましてやピアソラなので、もっと濃厚なヴァイオリンを聴きたかった。ピアノの中島剛は線が細いが、ダイナミックな演奏でかなり頑張っていた。ベースの高橋洋太は堅実なサポートで、ところどころいい味出していた。ドラムスの石川智は控えめなプレーながら、いろいろな小物を使って面白い音を出していた。残念な結果になってしまったが、ほかの席で聴いた人にはどのように聞こえたのだろうか。ポテンシャルは大きそうなので、出来ればもっといい音で聞きたい。三浦はリーダーとして大変だろうが、できるだけ恒常的なメンバーで活動して、音楽を深めてもらいたい。新作がレコード芸術今月号の特選になっていたことも、彼らの励みになるだろう。ただ、取り上げられたのが器楽曲部門というのは解せない。三浦一馬キンテート20181.ス・ワンダフル2.魅惑のリズム3.誰か私を見守って4.サマータイム5.ラプソディー・イン・ブルー6.「ガール・クレイジー」序曲休憩1.オヴリヴィオン2.デリカシモ3.アディオス・ノニーノ4.ブエノスアイレスの冬5.五重奏のためのコンチェルト6.リベルタンゴ三浦一馬(Bandneon)石田泰尚(vn)高橋洋太(b)大坪順平(e.gt.)中島剛(p)石川智(ds)2018年11月20日盛岡市都南文化会館キャラホール 6列7番にて鑑賞
2018年11月21日
コメント(0)
前作以来3年ぶりのパンチ・ブラザーズの新作は、初のセルフ・プロデュース作品。クリス・シール曰く「このアルバムは、今日の、特に今日の政治社会情勢下における、真剣な交際についての沈思黙考だ。僕たちは、完全なる思想みたいに説得力のあるものを作り出せたらいいなと思っている。この場合は、9楽章もしくは、9章の思考になるね。ただ何を意味しているのかは、幅広い捉え方が出来る、それを語る登場人物もね」とのこと。難解な文章で「特に今日の政治社会情勢下における、真剣な交際についての9楽章の沈思黙考(黙ってじっくりと深く物事を考え込むこと)」の件がよくわからない。原文では「a meditation on committed relationships」となっているので、日本語訳とは違うニュアンスのように思う。ディストリビューターのコピーによると「超進化型アメリカーナへ聴くものを誘う」そうだ。この言葉自体よくわからないのだが。。。どのナンバーも高水準で、速いテンポでリズミックな曲が多い。アコースティックなサウンドで、アメリカ南部の鄙びた田園風景を思い起こさせるような、懐かしい雰囲気が感じられる。考えてみると、弾くのと擦るの違いはあるが、擦弦楽器だけなのも鄙びた雰囲気を感じさせる要素かもしれない。アンサンブルの精度が非常に高く、こういう音楽を聴いた時の雑然とした雰囲気は皆無。余りにもそろいすぎているともいえるが、がちがちの音楽ではなく、適度なリラクゼーションが感じられるのはこのバンドのいいところ。曲はメリハリがあり、ヴァラエティに富んでいる。殆どがヴォーカル入りだが、「Three Dots and a Dash」のようにインストの曲もある。「Three Dots and a Dash」はメンバーのテクニックがさえていて、後半の激しくなる部分では熱を帯びたバトルに思わず興奮してしまう。同じインスト・ナンバーであるテンポの速い「Jungke Bird」のブルー・グラスらしい躍動感も愉しい。多分難しい曲なのだろうが、難所を難所と感じさせないメンバーのスーパー・テクニックが素晴らしい。テンポを落とした中間部の、まったり感も悪くない。ヴォーカル入りは親しみやすいメロディーで、歌いたくなるナンバーも多い。具体的なクレジットがないので、誰が歌っているのかわからないが、殆どはクリス・シーリー。幸いyoutubeに多数アップされているので、確認することが出来る。コーラスも、フレーズごとにメンバーを変えて、細かいアレンジがされていることが分かる。「The Angel of Doubt」の後半3分13秒当たりでバンジョーが出すパーカッシブな音が面白い。映像で見ると、右手でフレットを高速に移動させながら弦をかき鳴らしているようで、見ていて結構楽しい。「Just Look at This Mess」はいくつかの部分に分かれていて、変化に富んでいる。後半コーラスで盛り上げるところも素晴らしい。個人的にはベースのリズムで始まるイントロのまったりとした雰囲気が気に入った。「Jumbo」は陽気なナンバーで、途中のリフもキャッチーだ。 「The Gardener」はスローテンポのしっとりとした曲。コーラスの後ろで聞こえるアルコベースのオブリガートが、なかなかシュールだ。最後は静かな「Like It's Going Out of Style」で締めくくられる。演奏時間は40分余りで、今時のCDにしては短めだが、演奏が充実しているので、物足りなさは全く感じられない。録音は静かなところでサーフェスノイズが薄くかかっているナンバーがあり、少し気になる。ブックレットには歌詞が載っているのは歓迎だが、各ナンバーの作詞作曲のクレジットも欲しかった。youtubeにPVやライブの映像がアップされている。これらを観てから音だけを聴くと、観たほうが楽しめると感じられる。2016年に来日しているが、次回は是非生で聴きたいものだ。Jumboベースのポール・コワートとフィドルのゲイブ・ウィッチャーの変顔?が面白い。It's All Part of the Plan中間部でのノーム・ピケルニーのバンジョーやシーリーのウクレレの超絶技巧が音だけ聴くよりもずっとインパクトがある。Punch Brothers :All Ashore(Nonsuch 571873-2)1.All Ashore2.The Angel of Doubt3.Three Dots and a Dash4.Just Look at This Mess5.Jumbo6.The Gardener7.Jungle Bird8.It's All Part of the Plan9.Like It's Going Out of StylePunch BrothersRecorded at the United Sound studio in Los Angeles, CA and East West Studios,Hollywood,CA
2018年09月28日
コメント(0)
小松亮太のデビュー20周年記念アルバムで、昨年の7月に東京オペラシティで行われたコンサートのライブ録音。小松亮太は名前は知っていたが音を聴くのは初めて。きっかけは「レコード芸術」9月号で取り上げられていたからだ。イ・ムジチとの共演と知った時に、何故と思ったのだが、イタリアにはタンゴが盛んのようだ。もっとも、初期のアルゼンチン・タンゴはイタリアからの移民が始めたらしいので、本家といってもおかしくない。タンゴはクレーメルをはじめとして、これまでもレコード芸術で何回か取り上げられていた。ただ、リーダーがクラシックの演奏家でないミュージシャンのアルバムが取り上げられたことは当ブログの記憶にはない。今のところ購入する気はないので、様子見でTSUTAYAからこのCDと「ブエノス・アイレスのマリア」をレンタル。イ・ムジチとの共演ということで、軽い感じの仕上がりかと思ったら、まるで違っていた。タンゴとは思えないほど重厚で、これがイムジチと思うほど分厚い響きで圧倒される。特にソロ・ヴァイオリンの凄みったらない。タンゴのヴァイオリンとは次元の違うクラシックの演奏家の凄みを認識させられた。小松亮太のアコーディオンは暗めの音色で、腰を割った表現がイ・ムジチのサウンドとマッチしている。どの曲もテンポは若干遅めで、じっくりと演奏しているのが分かる。ライブということもあるのかメンバーの意気込みがダイレクトに伝わってくるのが、よくわかる。特に「ブエノスアイレスの四季」がこれほどの迫力と圧倒的な説得力で迫ってくる演奏は、聞いたことがない。決して華やかな演奏ではなく、むしろ荒々しい迫力さえ感じられる。バンドネオン、ソロ・ヴァイオリンとも、これでもかというほど熱気あふれる演奏。それは抒情的な「冬」でも変わらず、雪も溶けるかと思わせるような熱い演奏が続く。「レコード芸術」で特選になったのも頷けるが、「冬」と「春」は曲順を入れ替えたほうがより感度てきだインパクトが強かった気がする。「リベルタンゴ」も斬新な編曲で、弦、バンドネオンともに熱気あふれるというか、鬼気迫る音楽に聞き手はたじたじとなるばかりだ。「オブリヴィオン」も普通の静かに進行していくという感じよりは、もう少し突っ込んだ表現で、Bメロの濃厚な表情もちょっとした驚きがあった。バンドネオンのソロがアグレッシブで実に素晴らしかった。小松亮太のオリジナル「夢幻鉄道」はとてもいい曲だった。鉄道を思い起させるリズムに乗って、大空にはばたくようなメロディが流れていく。まるで映画の一場面をどきどきしながら見ているような瞬間が味わえる。ガルデルの「首の差で」はピアソラの曲に比べると、新しさがあまり感じられないし、出来も最も平凡。当日はこれらのほかに、ピアソラの「ピアノと室内オーケストラのための3つの」から 「フーガ」、それにヴィバルディの「四季」が演奏されている。「四季」はいいとしても「フーガ」は収録してほしかった。ピアソラ:ブエノスアイレスの四季 他 with イ・ムジチ合奏団(SONY MUSIC SICC-30485)1.ブエノスアイレスの夏2.ブエノスアイレスの秋3.ブエノスアイレスの冬4.ブエノスアイレスの春5.首の差で6.夢幻鉄道7.リベルタンゴ8.オブリヴィオン小松亮太(バンドネオン)イ・ムジチ合奏団2017年7月7日東京オペラシティ タケミツメモリアルにてライブ収録
2018年09月17日
コメント(0)
Presto Classicalで「Delphian」というレーベルのセールが行われていて、Spotifyでチェックして気に入ったCD。Delphianはイギリスのクラシックのマイナーレーベルだそうだ。実際に買ったのは、価格の安いimport CDから。ピアソラの唯一のタンゴ・オペリータ(小オペラ)「ブエノス・アイレスのマリア」は作曲者自身の演奏を含めて結構出ている。簡単にまとめると、maria(タンゴ)の栄枯衰退と新たな胎動というストーリー。ピアソラの友人であるオラシオ・フェレールの脚本による。この曲は作曲者以外も何種類か持っているが、いまだによくわかっていない。新しい録音でもあり、この曲をじっくりと聞いてみるために購入した。もう一つは、主役のマリアを演じている歌手の声がかわいらしいというのも理由の一つ。他の演奏では、どうもドスが聴いた声の歌手が多く、当ブログのマリアのイメージとは違うということもある。メンバーは詳しいところが書かれていないが、イギリスのミュージシャンたちらしい。Mr McFall’s Chamberという室内オケはスコットランドのオケで、いろいろなジャンルの音楽を手掛けているようだ。マリアを歌っているバレンティナ・モントーヤ・マルティネスは元政治囚の娘で政治難民として1977年にチリからイギリスに移住したという経歴の持ち主。編成はヴァイオリン、バンドネオン、ギターなどは基本だろうが、この作品ではフルートが使われている。この演奏ではあまり上手くないこともあって、どうも場違いな気がする。それにソロ・ヴァイオリンやピアノ、ギターがあまり目立たないため、音楽が弱い。パーカッションが目立っているのも違和感がある。室内オケが加わっているトラックのほうが安心して聴ける。他では、Juanjo Lopez Vidal の深みのある声が良かった。それにコーラスが揃っていないのがいい。ブエノスアイレスの下町の雰囲気を感じさせるようだ。わざと不揃いにしたとしたら、なかなかの知能犯だ。気に入ったナンバーは何と言っても「私はマリア」情熱的でキャッチーなメロディーで、メロディーメーカーの本領発揮といったところだろう。最近未入手だったクレーメルのCDがワーナーから再発されて届いたので、参考までに聞いてみた。さすがにクレメラータ・バルティカを中心としたアンサンブルは整然として、高品質だ。ソロも出るべきところで出ている。フルートや打楽器の扱いも控えめで、今回のCDのような違和感はない。歌手も端正な歌唱だ。ただ、タンゴの持つ猥雑さやブエノスアイレスの喧騒は伝わって来なかった。綺麗すぎるのだ。それに少し弱くしてから盛り上げるなど、クラシック風のアプローチが、ここでは却ってわざとらしく聞こえてしまう。クレーメルのピアソラは最初のころからフォローしているが、その時はそういう違和感はなかった。働き始めた頃に、偶然テレビで放送していたバレエの音楽がピアソラだった。随分モダンな音楽だなと思ったものだ。本格的に聴き始めたのはクレーメルがブームの時で、他のミュージシャン、最後にピアソラ当人とさかのぼって聞いてきた。今となってはピアソラの演奏がデフォルトになってしまったので、クレーメルの初期のピアソラを今聴いたら、同じような感想を持つかもしれない。音楽とは難しいものだ。Piazzolla: María de Buenos Aires(Delphian DCD34186)Valentina Montoya Martínez(Maria,The Shadow of Maria)Nicholas Mulroy(The voice of a payador,Sleepy Buenos Aires, Sparrow First Psychoanalyst,The voice of That Sunday)Juanjo Lopez Vidal (The Duende-narrator)Victor Villena (bandoneón)Mr McFall’s ChamberRecorded on 18-19 June 2016 at The Tom Fleming Centre,Erskine Stewart's Melville Schools,Edinburgh
2018年03月12日
コメント(0)
レコチョクのアンケートでシングルのダウンロード券が当たったので「日本フィル・プレイズ シンフォニック・フィルム・スペクタキュラー2」という2003年発売の映画音楽集から、一番演奏時間の長い(せこい!)「マイ・フェア・レディのセレクション」をダウンロード。録音は少し前のものだが、192kHz/24bitのFlacなので音がいい。Flacでもおしつけがましいところはなく、サウンドに余裕がある。編曲は定番のロバート・ラッセル・ベネットによるもので、ゴージャスなサウンドが楽しめる。ただ、沼尻竜典の指揮がテンポが少し遅いところが気になる。手持ちのカンゼルの演奏を聞いてみたが、カンゼル盤は演奏時間がだいぶ長く、中身も異なっていた。別なバージョンだろう。ところで、イージー・リスニングなんて、ほとんど好事家以外は興味を持たないものだが、日本人演奏家による、このようなアルバムが出ていたことは、大変よいことだ。日本人による、この手のアルバムのバタ臭さがないのもいい。これでアルバムを買うかと言ったら別な話で、あとはバーゲンなどで安くなったら購入を検討するといったところだろうか。ハイレゾは時々かなり安くなることがあるので狙い目だ。ところで、こういうイージー・リスニングの需要はどういうものなのだろうか。放送されることが少ないだろうし、まして、なかなか耳に留まることも少ないと思う。たまに興味を引く曲があっても、曲名や演奏者が分かって、CDの販売につながるという機会は殆どないと思われる。個人的には、昔はボストン・ポップスやカンゼルのアルバムはよく聴いていた。特にカンゼルはポップスの新譜が出ると、速攻で買い求めていたものだ。今メジャーなポップスのオーストラはどこなのだろうか。ジョン・ウイルソンのオーケストラだろうか。いずれにしても、あまり商売になりそうもないが。。。日本フィル プレイズ シンフォニック・フィルム・スペクタキュラー25.マイ・フェア・レディ セレクション沼尻竜典 指揮 日本フィルハーモニー交響楽団
2017年11月28日
コメント(0)
今年はアントニオ・カルロスジョビンの生誕90年ということで、ジョビンのアルバムがユニヴァーサル等で再発されているようだ。その中で、伊藤ゴローによるジョビン・アルバムがリリースされた。このアルバムはだいぶ前から知っていたのだが、国内盤ということでなかなか踏ん切りがつかなかった。一時ハイレゾでの購入を考えていたのだが、最も安上がりなのはレンタルを利用することだと最近気づき、TSUTAYAでレンタルした。残念だったのは、取り寄せのためブックレットが付いていなかったことだが、仕方がない。共同プロデューサーの中原仁のブログによると、コンセプトは「ジョビンの音楽のバックグラウンドにあるクラシックの素養と、ジョビンがブラジルの自然から受けたインスピレーション、このふたつを柱に、室内楽的なアプローチによるジョビンの作品集」とのこと。音楽はsoptifyで聴いていたのでそう印象は変わらないが、96kHz24bitにハイレゾ化したサウンドは肉厚でぐっと迫ってくる。spotifyで聴いていた時の自己主張の少ない音楽とは打って変わって、モリモリと迫ってくる。弦のみのアンサンブルで、その清楚な佇まいが、ボサノヴァの「サウダージ」を強く感じさせる。「Luisa」のみ村治佳織のギターと藤原真理のチェロが加わっている。クラシックの演奏家たちだが、音楽が硬くなることもなく、他の曲との違和感も全くない。さすがだ。タイトル・チューンは伊藤ゴローのオリジナルで、サウダージはあまり感じさせないが、しみじみとしたモノクロの世界を思わせ、映画のエンドロールで流れていてもおかしくない音楽で、見事に締めくくられている。カバーイラストも無駄をそぎ落としたイラストで、このアルバムといえば、このイラストを最初に思い出すと思う。日本人が作ったとは思えないハイセンスなアルバムで、七月度のハイレゾ音源大賞受賞作にふさわしい。なお、ハイレゾ音源大賞とはハイレゾ音源配信サイト7社合同企画でその月に発売された各社の推薦音源からその月の大賞を選ぶというものだ。ということで、ボサノヴァやクラシックにご興味のある方は是非お聴き頂きたい。ただし、有名な曲は殆んどないので、後で後悔しないように事前にspotifyなどで音源をチェックしたほうがいいと思う。Goro Itou Ensemble:Architect Jobim(ユニヴァーサル UCCJ-2142)01. Jobim:バラに降る雨(Chovendo na Roseira)02. Jobim:トゥー・カイツ (Two Kites )03. Jobim,Dolores Duran:エストラーダ・ド・ソル(Estrada do Sol)04. Jobim:ルイーザ(Luiza)05. Jobim,Chico Buarque,Vinicius de Moraes:アンパーロ(オーリャ・マリア)(Amparo (Olha Maria))06. Jobim:ジャルヂン・アバンドナード(Jardim Abandonado )07. Jobim、Vinicius de Moraes:インセンサテス(Insensatez )08. Jobim:シャンソン・プール・ミシェル(Chanson Pour Michelle )09. Jobim:パッサリン10. Jobim:アルキテトゥーラ・ジ・モラール(Arquitetura de Morar)11. Goro Ito:アーキテクト・ジョビン伊藤ゴロー (g)澤渡英一(p)鳥越啓介(b)伊藤 彩ストリングカルテットspnb;伊藤 彩(Vn),沖増菜摘(Vn),三木章子(Va),結城貴弘(Vc),村治佳織(g 4 Only) - classical guitar 遠藤真理(g 4 Only))
2017年09月24日
コメント(0)
つい最近、Amazonをチェックしていて、Joana Amendoeira(ジョアナ・アメンドエイラ)という歌手の歌が気に入って、アルバムを聴いた。 ア・フロール・ダ・ペーリこの歌手はポルトガルの民族歌謡ファドの歌手だ。なかなか良かったので、他の歌手をチェックしていて、気に入ったアルバムが今回取り上げたボボンのCD。写真を見ると若そうに見えるが1974年生まれで、40歳を過ぎている。とてもそうは見えないむしろアメンドエイラの方が年上の感じがしたが、1982年生まれと8歳も若い。歌のうまさはボボンより上で、こぶしの回し方もうまい。ボボンは美しい容姿と澄み切った歌声が魅力的だ。ボボンの歌は哀愁を帯びていて、万人に好かれる歌声だろう。従来のファドを越えた新しいファドを追求しているそうだ。アメンドエイラの歌に聞けるような、鋭角的なものを感じさせない、あくまでも滑らかな歌だ。ファドは主にポルトガルギター(ギターラ)と現地ではヴィオラと呼ばれるクラシック・ギター(スチール弦使用)、(時には低音ギター(ヴィオラ・バイショ)が加わる場合もある)で伴奏される。出典 wikiこのアルバムではピアノとベースが主で、時々ポルトガル・ギターが加わる。とてもシンプルだが、味わい深い。彼女の歌唱からは勿論哀愁は感じるが、全体にとても爽やかだ。後半、シンプルな歌も何曲かあるが、それらはボボンにぴったりの歌で、まるで日本の童謡を聞いている様な感じがする。まさかファドに首を突っ込むとは思わなかったが、ファドの女王アマリア・ロドリゲスなどの大御所にも守備範囲を広げていきたい。ただ彼女の歌はちょい聞きだと、結構ハードルが高そうだ。ここまで書いてから、spotifyでボボンのアルバムをチェクした。最新のものではsmooth(2014)というアルバムがヒットした。聞いて見ると、「カントリー」みたいな感じで、ファドとは全く別物だ。もう少し詳しく聞かないとわからないが、ほんの2年ぐらいでこうも変わるとは思っていなかった。確かにファドを越えたようだが、方向が違っていないだろうか?Maria Ana Bobone:Fad & Piano(ARC Music EUCD 2423)1 Frederico Varerio:Que Deus Me Perdoe 2 Antonio Mestre:Namorico Da Rita 3 Maria Ana Bobone:Auto-Retrato 4 Armandinho:Melancolia 5 Frederico Varerio:Fado Xuxu 6 Jose Marques do Amaral:Fria Claridade 7 Pedro Colderia Cobral:Enigma 8 Pedro Colderia Cobral:Love Ballad 9 Pedro Colderia Cobral:Dança 10 Trad:Sao Bentinho 11 Manuel Bobone:Balada 12 Trad:Mariao 13 Maria Ana Bobone:Image 14 Trad:Senhora de Almortao 15 Pedro Colderia Cobral:TwilightMaria Ana Bobone(p,g)Rodrigo Serrano(b)Bernardo Couto(Portuguese guitar,3,5,7,10,14,15)Recorded at K Branca Studio,March 2011- January 2012
2017年06月12日
コメント(0)
最近spotifyで聴いて、気に入ったアルバムを購入する機会が多くなった。このアルバムもその一つで、きっかけはミラバッシのアルバムを最近聴いていなかったことから見つけたもので、Claire Taïbというフランスの歌手とのデュオ。姓はなんと発音するのかわからない。ブックレットにはバイオグラフィーらしいものはなく、ネットで調べてみでも見つけることが出来なかった。写真からは30代半ばのようだ。歌はうまいが、なかなか辛口で悪くない。タイトルは「Songs for Tomorrow」という意味で、副題は「ベルナール・ディメに捧ぐ」とある。この作詞家の名前は初めてお目にかかったが、1931年フランス生まれで、1981年にパリで死去している。フランシス・レイなどと組んで多くのシャンソンも手掛けているそうだ。アズナブールの曲が多いが、Taïb(4,5,10)やミラバッシの作曲した曲(7)も含まれている。多分有名な曲も含まれているのだろうが、シャンソンに疎い当ブログとしては、どれもがいい歌に聞こえる。Taïbの作曲した「Le bel ornement」(鐘のオーナメント)はなかなかコケティッシュな味わいがある。10曲目の「Colere」(怒り)は題名の通り激しいパッションが伝わってくる。ミラバッシの「Ne t'en va pas deja」は「ハウルの動く城」に似たメロディーで、疾走する。アルバム中最もジャズっぽい曲だろう。もとも盛り上がるのはアズナブールの「Les Bateaux Sont Partis」でエンディングは感動的だ。全曲を通して、ミラバッシの的確で温かみのあるバッキングが光っている。雄弁ではあるが、歌を決して邪魔しないところはさすがだ。ジャズではないが、ジャズファンの方にもぜひお聴き頂きたい。Claire Taïbの映像は多数アップされているので、ご興味のある方は是非。歌がうまくて美人なので、日本でも人気が出そうな感じがする。Claire Taïb:Chansons Pour Demain: Hommage a Bernard Dimey(EPM MUSIQUE 5713279)1.Les mots a entendre2.La salle et la terrasse3.La mer a boire4.Les diables sont partis5.Le bel ornement6.Si tu me payes un verre7.Ne t'en va pas deja8.Les matins qui vont suivre9.L'amour et la guerre10.Colere11.J'aimerais tant savoir12.La planete ou mourir13.L'enfant maquille14.Les bateaux sont partis15.De t'avoir aime16.SyracuseClaire Taïb(vo)Giovanni Mirabassi(p)
2017年04月05日
コメント(0)
子供は現在、CDショップにパートとして働いている。先日帰宅して、サチモスのCDの予約が入った話をしていた。知らないミュージシャンだったらしいが、調べて見たらジャズの要素も入ったバンドなので、管理人にも聴いてみたらと勧めてくれた。管理人は初めて聞く名前だったので、スポティファイで聴いてみた。ジャズとは言えなかったが、ジャズ、ロック、ヒップホップなどに影響されたダンス音楽だった。その後、最初のアルバムを含めて何回か聴いたが、ノリのいい音楽で気にいった。CDを購入しようと思って、タワーレコードのポイントが溜まっていたのを思い出して、タワーレコードに注文した。ところが、OTOTOYからのメールで、ハイレゾでこのアルバムが発売されることを知った。タワーの注文は、一緒に他のCDも頼んでいたので、納入されるまでは時間があり、まだ発送されていないので、慌ててキャンセルした。その後OTOTOYからファイルをダウンロード。さすがにハイレゾはいい音がしている。子供も聞きたいということなので、圧縮してCDに焼いた。当ブログはハイレゾをNASに入れてOK。このグループはテレビでも取り上げられるほどの注目株らしい。チケットも入手困難とか。曲がよく、ヴォーカルのYONCEの歌も上手い。YONCEは湘南出身だそうだが、そのせいか、湘南の風が吹いているような感じがする。何回か聴いていると、今は亡き桑名正博の歌を思い出してしまった。全曲スカなしだが、気に入ったのは、やはり車のCMで使われている、「STAY TUNE」ヴォーカルが粋なことと、ギターのリフがキャッチーだからだ。続く「 PINKVIBES」「 TOBACCO」「 SNOOZE」もノリのいい曲だ。インストの、まったりとした静かな曲もあり、間奏曲風だなと思って曲名を確認したら、そのままのタイトルだった。こういう音楽でもいい味出しているのは意外だった。日曜に盛岡へ行ったので、車でじっくりと聴いて見た。ノリがいいので思わず足で拍子をとってしまった。このグループは基本ロックでそこにブラコン、アシッドジャズ、ヒップホップなどの音楽が渾然と一体になっている。ジャンル分けするのが難しい音楽でもある。聴く方はジャンル分けされていることで聞くか聞かないかを判断するので、このグループの音楽はある意味聞き手泣かせの音楽だ。当ブログとしては、聞いてみてとしか言えない。私は気に入ったが、色々な要素が混在しているからと言って、そのジャンルを聞いている方が好きになるとは限らない。オーケストレーションのヴァラエティが多彩で、どの曲でもツボにはまっていて、曲ごとに最適と思えるご機嫌なサウンドに仕上がっている。CDではないのでデータが全くなくので想像の域をでないが、グループ内での編曲だろうか。それにしても編曲者は凄腕だ。メンバーのレベルがかなり高く、穴は見当たらない。ラップは控えめだが、もう少し大胆に使ってもいいような気がする。ベースがファンキーなのもいい。オーバードライブの効いたギターも存在感がある。「TOBACCO」でのエレクトリック・ピアノのアドリブも短いながら素晴らしい。この曲でのオルガンみたいなサウンドもご機嫌だ。聴いていると、このバンドは国内だけでなく海外でも受けそうな気がする。ただ、歌詞を訳したら、日本語の歌詞の味わいを出すのは難しそうだ。それにしても久し振りにインパクトのある新鮮な音楽を知って、とても嬉しくなった。OTOTOYのコピー「2017年最大の衝撃! 」も大げさではない。suchmos:THE KIDS OTOTOY ハイレゾ 24bit 48kHz(PACE SHOWER MUSIC)1. A.G.I.T.2. STAY TUNE3. PINKVIBES4. TOBACCO5. SNOOZE6. DUMBO7. INTERLUDE S.G.S.48. MINT9. SEAWEED10. ARE WE ALONE11. BODYsuchmos
2017年01月30日
コメント(0)
この前バーブラ・ストライサンドのクラシックのアルバムをレビューしたが、その後譜を検索したら、アンコールと題したデュエット集がリリースされていることを知り、速攻でゲットした。このアルバムは、10曲入りと14曲入りの二つのバージョンがあり、14曲入りのほうを購入した。14曲はインターナショナル盤というもので、4曲はボーナストラックという位置づけ。前作の続編のようなものだが、今回は映画俳優を起用押してのデュエット。何故かwith Barbra Streisandとクレジットされている曲もあるがこれらは一人でデュエットしているわけではなくソロで、これらがボーナストラック。デュエットの曲はストライサンドお得意のセリフ入りだが、これがうざい。純粋に歌だけを楽しみたいと思うのは筆者だけだろうか。出来は最高で、実にゴージャスは気分に浸ることが出来る。デュエットの相手も皆さん歌が上手い。ストライサンドは声の艶はいまいちだが、聴いている間にあまり気にならなくなった。フレーズの崩し方が絶妙で、曲の魅力が引き立てられて、聴いているとほれぼれする。昔の「ブロードウェイ・アルバム」を彷彿とさせる。気に入ったのは、クリス・パインとの「I’ll Be Seeing You/I’ve Grown Accustomed To Her Face」とジェイミー・フォックスとの「Climb Ev’ry Mountain」。アイル・ビー・シーイング・ユーの間奏に「マイ・フェア・レディ」の「彼女のことで頭がいっぱい」がフィル・インされていて、洒落ている。「すべての山に登れ」はフォックスのうまさが光っている。この曲がこれほど劇的に演奏されたことも少ないのではないだろうか。最初のコーラスラインからの「アット・ザ・バレエ」はデュエットではなく3人での歌。アン・ハサウェイと「フォースの覚醒」で主役を演じたデイジー・リドリーが歌っている。アン・ハサウェイは「レ・ミゼラブル」で歌がうまいことを知ったが、ここでも深みのある美しい声が聴ける。デイジー・リドリーはそれほどでもないが、コケティッシュな声で悪くない。このトラックはミュージカル仕立てで、実際のミュージカルでのセリフを踏襲しているようで、ディレクターのザック(ブラッドリー・クーパー)の声まで入っている。バックはオーケストラで、歌い手のメンバーも考えると、相当金がかかっているアルバムだろう。ロケーションも十数か所あるので、一曲ずつ違うところで録音したようだ。スケジュール調整も大変だったと思う。まあ、それだけお金とパワーをかけただけのことはあったと思う。Encore- Movie Partners Sing Broadway(COLUMBIA 86985353552)1. At The Ballet – with Anne Hathaway & Daisy Ridley (from A Chorus Line) 2. Loving You – with Patrick Wilson (from Passion) 3. Who Can I Turn To (When Nobody Needs Me) – with Anthony Newley (from The Road of The Greasepaint, The Smell Of The Crowd) 4. Any Moment Now – with Hugh Jackman (from Smile) 5. I Didn’t Know What Time It Was (from Too Many Girls)* 6. The Best Thing That Ever Has Happened – with Alec Baldwin (from Road Show) 7. Not A Day Goes By (from Merrily We Roll Along)* 8. Anything You Can Do – with Melissa McCarthy (from Annie Get Your Gun) 9. Fifty Percent (from Ballroom)* 10. I’ll Be Seeing You/I’ve Grown Accustomed To Her Face – with Chris Pine (from Right This Way / My Fair Lady) 11. Losing My Mind (from Follies)* 12. Pure Imagination – with Seth MacFarlane (from Willy Wonka and The Chocolate Factory) 13. Take Me To the World – with Antonio Banderas (from Evening Primrose) 14. Climb Ev’ry Mountain – with Jamie Foxx (from The Sound Of Music)Barbra Streidand(vo)
2016年10月19日
コメント(0)
何週か前の土曜日、用事があって郵便局に行く車の中でFMを聞いていた。9時ちょっと前だったので、ピーター・バラカンの「 ウイークエンド・サンシャイン」が放送されている時間だ。ドビュッシーの「パスピエ」が弦のアンサンブルで演奏されている。カントリー調でなかなか面白い。終わった後「パンチ ブラザーズ」の演奏だという告げられた。このグループはブルーグラスの団体で絶大な人気を誇っているらしい。矢野顕子がはまっていて、最近日本でもライブを行ったらしい。他の曲も聴きたいと思って、「パスピエ」が入っているアルバムを購入した。クラシックは、この曲のほかにスクリャービンの前奏曲作品22の第2が収録されていたが、そちらは短く物足りなかった。ただ、スクリャービンの冷たく紫水晶のような透明な音楽が、なにやら温かみのある音楽に代わっていたのは驚きだ。バンジョーやベースのサウンドを聞いているとオルゴールでも聞いているような気分になる。それもあまり上等ではないオルゴールのサウンドを思い起こさせるところがいい。不思議な演奏だ。私はカントリーとブルーグラスの違いも知らなかった。調べてみるとカントリーは歌中心、ブルーグラスはインスト中心という違いのようだ。その定義から言うと、パンチ・ブラザースはカントリー寄りのブルーグラスというところだろうか。また、普通のブルーグラスとは違っていて、ロックなどの他の音楽の要素も入っていて、かなり重層的な音楽だ。それに、とても風通しが良く、溌剌とした演奏で、とても気分がいい。実際にブルーグラスだけでなくロックやフォークでもアルバムがチャートインしているようだ。ヴォーカルやコーラスの澄んだ美しさも大変魅力的だ。写真を見ると30歳前後とみられる男たちが5人写っている。声だけ聴いたら、爽やかな青年たちというイメージだ。編成はマンドリン、ヴァイオリンなどで、昔、はまっていた「音楽三昧」のサウンドを思い出した。音楽三昧は管中心なのだが、何故かサウンドが似通っているのだ。最初の「Familiarity」でのマンドリンの超絶技巧も聴きものだ。フィドルの雄弁さも聴目立つ。この曲のスタイリッシュな洗練された音楽はとても魅力的だ。もちろんブルーグラスのテイストは十分出されていると思うのだが、ブルーグラスを知らない身としても、ブルーグラスの新しい形を感じさせるような演奏だと思う。この曲は前半と後半で全く違う曲で後半はブルーグラスらしい草いきれを感じるが、あくまでも爽やかなまったり感?がいい。「I Blew It Off」などはロックそのもので、ぐいぐいと迫ってくる。こういう聞いたことのない音楽を経験できるのは、滅多にあることではない。ルネ・マグリット作の「恋人たち」というシュールな絵画のジャケットもセンスがいい。こういう機会を与えてくれたピーター・バラカンに感謝!Punch Brothers:The Phosphorescent Blues (NONSUCH )1.Familiarity2.Julep5:263.Passepied (Claude Debussy)4.I Blew It Off5.Magnet6.My Oh My7.Boll Weevi8.Prelude (Alexander Scriabin)9.Forgotten10.Between 1st and A11.Little Lights
2016年08月10日
コメント(0)
今日テレビを見ていたら、ナタリー・コールが31日にロサンゼルスの病院で心臓疾患のため亡くなったと報じていた。65歳だったそうだが、最後まで演奏活動をしてらしい。いつまでも若々しく、これからもいろいろな楽しみを提供してくれると思っていたのだが、とても残念だ。以前レビューしたラテンものが最後のレコーディングになるのだろうか。個人的にナタリー・コールを知ったのはご多分に漏れずグラミー賞を受賞した「アンフォーゲッタブル」からだ。それ以来旧作を含め結構フォローしてきたつもりだ。彼女の優れているところは、若いころから現在までの声の若々しさがあまり変わらないことだ。それに、クリッシェに陥ることがなく、常にフレッシュな音楽を聴かせてくれたこともだ。年をとっても新作が待ち遠しい音楽家なんてそういるわけではないことを考えると、惜しい人を失ったと思う。その間の地道な鍛錬は尊敬すべきことだろうと思う。週3回も透析をしなければならず、2008年にはC型肝炎も発症、2009年に腎臓移植を行ったこともあり、人一倍体には気を使っていたことだろう。そういうことを感じさせない生き方は、病気を持つ身として頭が下がる。「So Many Stars」(Ask a Woman Who Knows収録)を聞きながら。。。
2016年01月02日
コメント(0)
スティングの2013年に発表された「The Last Ship」を聴く。発売当時チェックしていたのだが、高くてそのままになっていて、すっかり忘れていた。ちょっと前に、偶然安くなっているのに気がついて、即ゲットした。ニューカッスルの造船所を舞台としたミュージカルだそうで、このCDは、舞台のキャストとは別で、スティングが演奏したもの。全編暗く荒々しいムードが満ちている。聴いていると、場所は違うが、イングランドのお隣のアイルランドでの抗争を描いた「麦の穂をゆらす風」という映画の雰囲気を思い出してしまった。また、あるときはブリテンの音楽の暗さと荒々しさとの同質性も感じてしまった。同郷とはいえ、彼の地の風土をダイレクトに感じさせるのは、いかにかの地が厳しい風土であるか痛感させられるものだ。ここでのスティングの音楽は昔の彼の音楽が硬質で軽量級の音楽とすると、ヘビー級の重いパンチでガツンと殴られる様な重く重量感のある音楽だ。ティンホイッスルやアイリッシュハープなどが使われ、全編アイリッシュムードが横溢している。その中ではタイトルチューンの「The Last Ship」が圧倒的な感動を与えてくれる。シンプルなリフが繰り返されるだけなのだが、それがひたひたと押し寄せる様は凄味を感じる。重苦しい音楽が多い中で、「I Love Her But She Loves Someone Else」 が甘さを排したバラードで、心に染み渡る。労働歌のような「Show Some Respect」のただならぬ迫力も説得力がある。スティングの音楽をそれほど多く聴いているわけではないが、これほど魂を揺さぶる音楽もそうあるとは思えない。Sting:The Last Ship Super Deluxe Edition(CHERRYTREE/A&M RECORDSB0018722-02)CD11. The Last Ship2. Dead Man's Boots3. And Yet4. August Winds5. Language Of Birds6. Practical Arrangement7. The Night The Pugilist Learned How To Dance8. Ballad Of The Great Eastern9. What Have We Got? [feat. Jimmy Nail]10. I Love Her But She Loves Someone Else11. So To Speak [feat. Becky Unthank]12. The Last Ship (Reprise)CD21.Shipyard[feat. Jimmy Nail,Brian Johnson]2.It's Not The Same Moon3.Hadaway4.Sky Hooks And Tartan Paint5.Show So,e Respect
2015年05月03日
コメント(0)
バーブラ・ストライサンドの新作はデュエット特集。デュエットといえば、最近ではトニー・ベネットが有名だ。個人的にデュエットで期待するのは、両者の絡みと聴いたことのない歌手の歌を聴けることだ。期待はある程度は叶えられたが、絡みが面白かったのはそれほどなかった。また、知らない歌手が多かったことは確かだが、強烈な個性の持ち主がいなかったのも、原因の一つだ。全く違う畑の歌手が入っていないのも、変化に乏しい印象を与えてしまう。気に入ったのは、スタンダードの「How Deep is The Ocean?」。息子のジェイソン・グールドとの初のセッション録音。息子の情感のこもった歌がいい。それに比べると母親の歌は芸を弄しすぎたようだ。期待してたスティービー・ワンダーとのデュエットは、最初ハーモニカとの絡みが続いて、歌はないのかと不安になってしまった。後半に出て来て、これがまた鳥肌ものの素晴らしさだった。「People」をこういうように歌う歌手は聞いたことがない。ボサノヴァのリズムに乗って二人とも実に嬉しそうに歌っている情景が見えるようだ。最近のスティービーの動向はまったくフォローしていなかったが、健在であることを知り、とても嬉しかった。最後の「ラブ・ミー・テンダー」を聴いていて、ナタリー・コール父娘のデュオを思い出した。それから、ベイビーフェイスというR&Bの歌手との「Evergreen」もムード満点だった。この歌手は聴いたことがなかった。R&Bの歌手としてはシャウトすることもなく、ソフトな語り口が意外だった。プレスリーの声もノイズが目立たないので、まさかプレスリーじゃないよなと思いながら聴いていたが、ブックレットを見て、当人だと知りびっくりした。このトラックを作るのは多くの困難があり、スタッフは頑張ったのだろうが、個人的には盛り下がってしまった。企画とは万人に受けいられることはなく、なかなか難しいものだ。このアルバムはベビーフェイスとマライヤ・キャリーなどのプロデュースで有名なウォルター・アファナシェフ の共同プロデュース。デュエットの相手を男性だけに限ったのは意図的なものらしいが、個人的には女性とのデュエットも聴きたかった。ボーナスCDとして、既発売のデュエットがレーベルの垣根を越えて集められている。その中に、私がバーブラの素晴らしさに開眼?するきっかけとなった、シナトラとの「アイヴ・ガット・ア・クラッシュ・オン・ユー」も収録されている。久しぶりに聞いたが、そのうまさに吹っ飛んでしまった。少なくとも当時は稀代の歌手だったことを改めて感じたのだった。ということで、最近の彼女の傑作としてぜひお聞きいただきたい。Barbra Streisand:Partners Delux Edtion(COLUMBIA 88875014162)CD11. It Had to Be You2. People3. Come Rain or Come Shine4. Evergreen5. New York State of Mind6. I'd Want It to Be You7. The Way We Were8. I Still Can See Your Face9. How Deep Is the Ocean10. What Kind of Fool11. Somewhere12. Love Me TenderBounus CD13. Lost Inside of You14. I've Got a Crush on You15. I Finally Found Someone16. I Won't Be the One to Let Go17. Guilty Barbra Streisand(vo)
2014年10月03日
コメント(0)
新聞で知ってレンタルした一枚。個人的にはあのトイレの歌を歌う歌手くらいの認識しかなかったが、結構いける演奏だった。何よりもヴォーカルがうまく、いろいろな曲にも適応できる柔軟性があることがいい。それに英語の発音がすごくいい。最初聞き始めた時にこれは海外でリリースしてもいのではないかと思ったほどだ。最後まで聴いた時点で、私の中では結局無理だということになってしまったのだが。。。理由は、彼女の技術上の問題とバックの問題だ。雰囲気としてジャズ仕立てなのだがアドリブができるわけではないし、シャウトをしているがそれも中途半端な印象を持ったからだ。ここら辺は、さらに勉強していけば、今後も期待できると思う。一番問題だったのはバックが何とも貧弱だったことだ。これが一流のジャズ・ミュージシャンを起用していればと思うところだ。特に、ピアノがいまいちだったのが残念。まあ、今後の伸び代はかなり期待できるし、個人的にはJUJUなどよりジャズの適性があるように思ってしまう。ベースとのデュオの場面も結構あったが、歌い手には一番厳しい組み合わせでもあるし、それを堂々と歌っているところは、彼女の実力がなかなかのものであることを表している。ただ、下敷きにした演奏そっくりな曲もあり、知っている人にとってはあまり気持ちのいいことではないかもしれない。録音は曲に応じていろいろなテクニックを駆使していて、とても楽しませてもらった。特に「雨に歌えば」のヴォーカルの処理は秀逸だった。植村花菜:The Covers ~60's to 70's~(KING KICS-3079)1.So Far Away2.Here,There and Everywhere3.Never Can Say Goodbye4.Isn't She Lovely5.Heart of Gold6.Rainy Days and Mondays7.Raindrops Keep Falling on My Head8.Feelings9.Alone Again(Naturally)10.Daydream Believer11.Jailhouse Rock12.Alfie植村花菜(vo,g)栗田妙子(p)工藤精(b)清水勇博(Ds)
2014年09月21日
コメント(0)
映画を見ていて音楽が良かったのでサントラを買った。2枚組で、改めて聞いてみると、映画のシーンが浮かんでくるようだ。出来のよくないサントラだと飽きてくるのだが、このサントラは全く飽きなかった。主題歌の「Let It Go」はそれほどの曲と思えなかったが、他の曲の水準が高くサントラとしてよくできていると思う。歌はロバート・ロペスとクリスティン・アンダーソン=ロペス、その他の音楽はクリストフ・ベックが担当している。ディズニーの映画音楽の王道を踏まえたミュージカル仕立てで、安心感がある。音楽として新たな試みは感じられないが映像と相まってディズニーの映画の世界を満喫できる。聴いていると「美女と野獣」の音楽の作り方と似ているように感じられた。各ナンバーはバラエティに富んでいて、伴奏もいろいろな形態がある。気に入ったのは最初がカントリー調の「Love is an Open Door」(扉を開けて)明るく楽しくアナとハンスの高揚した気分が味わえる。その他に気に入ったのは無伴奏の合唱で歌われる賛美歌風のケルト音楽。「Vuelie」(ヴェリィ)「The Great Thaw (Vuelie Reprise)」の2曲で、透明で教会の中で聴くような荘厳な気分がする。これらはフィンランドのFrode Fjellheim氏が作曲した「Eatnemen Vuelie」で、フィンランドの北部に住む先住民のサーミ族に伝わる口承音楽の種類のひとつとのこと。出典:http://kandelaar.hatenablog.jp/entry/2014/03/18/210739フィンランドの凍えそうな冬の寒さが感じられ、この映画の雰囲気作りにとても効果的だ。その他所々セリフが入っているのもいい。歌手の中ではアナ役のクリスティン・ベルが荒っぽいところもあるが勢いがあって気持ちがいい。特に「For the First Time in Forever」(生まれて初めて)がいい。雪の女王エルサの「Let It Go」を歌っているイディナ・メンゼルはソウルっぽい歌唱で悪くない。またアナとエルサ「Do You Want To Build a Snowman?」(雪だるまを作ろう)、雪だるまのオラフ(ジョシュ・ギャッド)の歌う愉快な「In Summer」など親しみやすい歌が多い。「雪だるまを作ろう」では最初のコーラスはAgatha Lee Monnという子供が歌っていて、ほのぼのとしていい雰囲気だ。 日本語のサントラは音源を聴く限り、かなりいい感じに仕上がっていると思う。雪の女王を演じた松たか子の歌がうまいことに驚いた。アナ役の神田紗也加はアニメの声としては松よりもはまっていて、歌もかなり上手い。2枚めはデモや未収録の歌とインストが収録されている。未収録の音楽やインスト・ナンバーがかなり多く、単なるおまけにとどまらない価値がある。デモはシンプルな伴奏のため歌そのものが味わえ、生の歌の姿を知ることが出来る。これらの音楽を聴いていたら、「ウォルト・ディズニーの約束」でシャーマン兄弟が歌を歌いながら曲を仕上げていくシーンを思い出した。Frozen Soundtrack Delux Edtion(Walt Disney RECORDS D001942202)Disc: 11. Frozen Heart (Performed by Cast)2. Do You Want to Build a Snowman? (Performed by Kristen Bell, Agatha Lee Monn and Katie Lopez)3. For the First Time in Forever (Performed by Kristen Bell and Idina Menzel)4. Love Is an Open Door (Performed by Kristen Bell and Santino Fontana)5. Let It Go (Performed by Idina Menzel)6. Reindeer(s) Are Better Than People (Performed by Jonathan Groff)7. In Summer (Performed by Josh Gad)8. For the First Time in Forever (Reprise) (Performed by Kristen Bell and Idina Menzel)9. Fixer Upper (Performed by Maia Wilson and Cast)10. Let It Go (Demi Lovato Version) (Performed By Demi Lovato)11. Vuelie (Featuring Cantus) (Score)12. Elsa and Anna (Score)13. The Trolls (Score)14. Coronation Day (Score)15. Heimr Àrnadalr (Score)16. Winter's Waltz (Score)17. Sorcery (Score)18. Royal Pursuit (Score)19. Onward and Upward (Score)20. Wolves (Score)21. The North Mountain (Score)22. We Were So Close (Score)23. Marshmallow Attack! (Score)24. Conceal, Don't Feel (Score)25. Only An Act of True Love (Score)26. Summit Siege (Score)27. Return to Arendelle (Score)28. Treason (Score)29. Some People Are Worth Melting For (Score)30. Whiteout (Score)31. The Great Thaw (Vuelie Reprise) (Score)32. Epilogue (Score)Disc: 21. For the First Time in Forever Demo2. Love Is an Open Door Demo3. We Know Better Outtake4. Spring Pageant Outtake5. More Than Just the Spare Outtake6. You're You Outtake7. Life's Too Short Outtake8. Life's Too Short (Reprise) Outtake9. Reindeer(s) Remix Outtake10. The Ballad of Olaf & Sven (Teaser Trailer) Score Demo11. Queen Elsa of Arendelle Score Demo12. Hans Score Demo13. It Had to Be Snow Score Demo14. Meet Olaf Score Demo15. Hands for Hans Score Demo16. Oaken's Sauna Score Demo17. Thin Air Score Demo18. Cliff Diving Score Demo19. The Love Experts Score Demo20. Elsa Imprisoned Score Demo21. Hans' Kiss Score Demo22. Coronation Band Suite Source Score23. Let It Go Instrumental Karaoke
2014年04月16日
コメント(0)
バーブラ・ストライサンドの新譜が出ていたことを偶然知った。彼女の生まれたニューヨークのブルックリンをテーマにした6年ぶりの「Back To Brooklyn」と題したツアーのハイライトであるブルックリンのバークレイ・センターにおけるライブ。結構なお年なので期待はしていなかったが、まあ予想通りだったと思う。殆どは懐メロ大会なのだが、最近リリースしたアルバムからの新しい曲も歌っていて、健在ぶりを示していた。声はそれほど衰えているとは思えないが、さすがに切れは失われている。悲惨な状況にはなっていないが、声量がなく、ささくれだっていて聴きたくなかったという気がする。ただ、崩れがあまりないところは立派だ。殆どが懐メロ大会で新鮮味がない。最初ブルックリンに地下鉄が着いて、そこの住民にバーブラについてインタビューしているところは、映像では当たり前の演出だが、CDでも収録されているのはドキュメントとしての価値を高めていると思う。このコンサートでは、今まで生で歌うことのなかった曲が9曲歌われているらしいが、どれかはわからない。トランペットのクリス・ボッティと共演したスタンダードの「What I'll DO」と「My Funny Valantine」はストリングスが加わってムーディーで気持ち良くなってしまう。クリス・ボッティのトランペットはいささか訥弁だが、曲にあっていて、いい味出している。ボッティとはそのほか「Lost Inside Of You」と「Ever Green」の2曲を共演しているが、「Lost Inside Of You」は聴いたことがないためか新鮮に聴こえ、出来もこちらがいい。これもスタンダードの「How Deep is the Ocean」を歌っているのも注目される。これは息子のジェイソン・グールドとのデュエット。ジェイソン・グールドは俳優らしいが、意外に聴かせる。ソロの部分もハモル部分もいい感じで、親子という関係を知らなくても第一級の出来だと思う。血筋だろうか。このアルバムではライブ感を大切にするためか会話の部分もおさめられているが、映像が伴っていないCDには不向きだ。Barbra Streisand:Back to Brooklyn(COLUMBIA 88843 00758 9)CD:1. As If We Never Said Goodbye2. Nice 'n' Easy / That Face3. The Way He Makes Me Feel4. Bewitched, Bothered and Bewildered5. Didn't We6. Smile (duet w/ Il Volo)7. Marvin Hamlisch intro8. The Way Were Were/Through The Eyes Of Love9. Jule Styne intro10. Being Good Isn't Good Enough11. Roses Turn / Some People/Don't Rain On My Parade12. You're The Top13. What'll I Do / My Funny Valentine (w/ Chris Botti)14. Lost Inside Of You (w/ Chris Botti)15. Evergreen (w/ Chris Botti)16. Jason Gould intro17. How Deep Is The Ocean (duet w/ Jason Gould)18. People19. Here's To Life20. Make Our Garden Grow21. Some Other TimeDVD:1. BACK TO BROOKLYN:2. "As If We Never Said Goodbye"3. I REMEMBER BROOKLYN4. "Nice 'N' Easy/That Face"5. "The Way He Makes Me Feel"6. "Bewitched, Bothered, and Bewildered"7. "Didn't We"8. "Smile"(featuring Il Volo)9. "Q & A"10. "Sam, You Made The Pants Too Long"11. "No More Tears (Enough Is Enough)"12. MARVIN HAMLISCH TRIBUTE, a)The Way We Were, b)Through The Eyes of Love'13. JULE STYNE TRIBUTE "Being Good Isn't Good Enough"14. "Rose's Turn/Some People/Don't Rain On My Parade"15. I REMEMBER BARBRA16. "You're The Top"17. "What'll I Do" w/Chris Botti18. "Funny Valentine" w/Chris Botti19. "Lost Inside Of You" w/ Chris Botti20. "Evergreen" (Love Theme From “A Star Is Born”) w/ Chris Botti21. BIRTHDAY SURPRISE22. "How Deep Is The Ocean W/ Jason Emanuel Gould)23. "This Masquerade"24. "People"25. "Here's To Life"26. "Make Our Garden Grow (Finale)27. "Some Other Time"28. "Happy Days Are Here Again"29. This Masquerade30. I Remember Barbra Documentary FilmBarbraStreisand(vo)Recorded on October 11th & 13th ,2012
2014年04月12日
コメント(0)
偶然見つけたグロリア・エステファンのスタンダードナンバーを歌った「Standards」。名前は知っているが本業での歌声はほとんど知らない。昔シナトラのデュエットで聞いたぐらいだが、その時の歌が結構耳朶に残っていて、音源をチェックしたらなかなかいい感じだった。実際全曲を聞いてみると期待を裏切らない素晴らしい出来で、とても満足している。このブログを書いている時点で、5,6回しか聴いていないはずだが、聴くほどに良さがわかってくる感じがする。音楽CDにはいろいろなタイプがあり数回で好きになるもの、何十回も聴いて始めてよさがわかるもの、何回聴いても良さがわからないものなどがある。このアルバムの場合は最初のタイプだが、ちょい聴きで好きになっても次第につまらなくなることもある。このアルバムはその反対で、聴き込むほどますます好きになっていくタイプだ。曲がスタンダードで親しみやすいのと、エステファンのヴォーカルの良さ、アレンジに良さが味わい深さにつながっている。エステファンのヴォーカルはラテン系の歌手なので少し癖があるが、何回も聴いているうちに気にならなくなる。声がハスキーでダイアナ・クラールの声に似ている。殆どがスローテンポのアレンジでまとめられているが、単調さは感じられない。エステファンのしっとりとしたヴォーカルと曲によって編成を変えるなどきめ細かいアレンジが成功している。エステファンのあまり崩さない素直な解釈も好ましい。「What a Wonderful World」などのように、この曲ならこういう感じだろうと思っているとまったく違うアレンジだったりすることが何曲もあり、その意外性がとても良かった。この意外性のあるアレンジとオーケストレーションは米クリーブランド生まれのジャズ・ピアニスト、シェリー・バーグによるもの。普通はスローテンポの「The Way You Look Tonight」がミディアム・テンポで爽やかに演奏されちょっとびくりしてしまった。基本はストリングスにピアノだが、室内オケやホーンの入った比較的編成の大きいジャズバンド、バンドネオン、フルートの入る曲もありバラエティに富んでいる。「The Day You Say You Love Me」冒頭の美しいヴァイオリン・ソロは最近売り出し中のニコラ・ベネディッティあたりかと思ったのだが、何とジュシュア・ベルだった。気に入ったのはしっとりとしたバラード「Embraceable You」や「What a Difference a Day Makes」、ギターが加わりラテンフレーバーの感じられるマイ・フェア・レディの「 I've Grown Accustomed to His Face」などなど。むしろ出来がよくないナンバーを探すのが大変なほどだ。エステファンは英語とスペイン語で歌っているが、いつも英語で聴いている曲がスペイン語で歌われるのが新鮮だった。その曲はチャップリンの「smile」。スペイン語では「Sonre」、イタリア語では「Sorride」と呼ばれている。どちらもラウラ・パウジーニというイタリアの歌手とのデュエット。この方イタリアでは最も有名な歌手らしいが、とてもうまい。すっかりエステファンを食ってしまっている。機会があれば是非アルバムを聴いてみたい。Gloria Estefan:The Standards(Sony Music Latin 88883 74492 2)1. Good Morning Heartache2. They Can't Take That Away from Me3. What a Difference a Day Makes4. I've Grown Accustomed to His Face5. Eu Sei Que Vou Te Amar6. The Day You Say You Love Me7. Embraceable You8. What a Wonderful World9. How Long Has This BeenGoing On10. Sonre11. The Way You Look Tonight12. You Made Me Love You13. Young at Heart14.Sorride15.Tu Sai Je Vais T'AimerGloria Estefan(vo)
2014年03月20日
コメント(0)
「映画音楽999」今回はフランスのピアニストのマーシャル・ソラールが音楽を担当したジャン=リュック・ゴダールの「勝手にしやがれ」のサウンド・トラック。ビッグバンド・ジャズとストリングスの甘いメロディが絶妙な組み合わせだ。映画音楽らしい音楽で一種の安心感を覚える。曲もバラエティに富んでいて、またかと思うこともなく聴き飽きない。ブックレットを見たら5つの映画の音楽が収録されているので、バラエティに富んでいるのも当然だった。全編にフランスの香りが漂っていて悪くない。それにしても、音楽でどこの国の音楽かわかるのもフランスが一番だ。これほどわかりやすい音楽は他の国の音楽では聞けない。理由はなんなんだろうか。最後のボーナストラックの「勝手にしやがれ」 はソロ・ピアノでどフリーの演奏。ソラールがフランスのフリー・ジャズの先駆者だったっことを思い出した。セシル・テイラーばりのフリー・ジャズだが、難解ではない。しかし、当時映画を見た人たちはさぞや吃驚したことだろう。録音はステレオなのだがモノ的な音場なのはちょっと残念。ブックレットにソラールが自分と映画音楽のかかわりについて書いていて、それがとても面白い。ソラールはジャン=ポール・メルヴィルに作曲を依頼されたことから映画音楽を作ることになり、「勝手にしやがれ」を製作中にこの映画に出演していたメルヴィルがゴダールにソラールを推薦し、撮影が終わった後にゴダールから電話がかかってきたことなどが語られている。このアルバムでは、「勝手にしやがれ」のほかに「艶ほくろ」「審判」「敵」「黄金の男」の音楽も収録されている。「黄金の男」は1964年の作品で、次の年あたりになると仕事がぱったりと来なくなった。それは新たなポップ・ミュージックが台頭し始めていたからで、また映画音楽に関わるのはベルトラ、・ブリエ監督の「俳優たち」まで待たなければならなかった。「勝手にしやがれ」の印象的な5つの音譜で出来たフレーズは裏切りや不安を表すもので、なるほどそういわれると印象的なフレーズなことが分かる。これが一番苦労したそうで、他の曲はすんなり出来たという。こういう楽屋の裏話はめったに聞けるものではなく面白かった。この映画の音楽では、ストリングスが美しい「New York Heral Tribune」が気に入った。「艶ほくろ」からの2曲は明るく軽快なジャズで、フランスらしいエスプリが感じられる。女性ヴォーカルがフィーチャーされているのは「黄金の男」だった。演奏者がクレジットされていないので誰が歌っているかはわからないが、単純なフレーズをうたっているだけなのだが結構目立つ扱いだ。この映画では「オルガ」の抒情的なメロディが美しい。これを3ホーンのコンボで演奏した「ダビッドとオルガ」はベイシーのナンバーと言ってもおかしくないほどだ。ということで、古く良き時代のフランスを満喫できる良いアルバムで、映画を見たことがないのにそれっぽい雰囲気を想像させる。ソラールは「勝手にしやがれ」の5つの音符について、映像がなければだれも興味を示さないだろうと語っているが、音を聞くと映像を思い出すという相乗効果もあることには言及していない。先日レビューした「危険な関係」を見たくてレンタルビデオ屋さんに行ったが、置いてなかった。今度の映画もダメもとで探しに行こうと思う。「勝手にしやがれ」 オリジナル・サウンド・トラック(Emercy UCCM-4091)「勝手にしやがれ」(1959)1.死2.デュオ3.ニューヨーク・ヘラルド・トリビューン4.追跡5.愛、死6.ディキシーランド7.愛のテーマ8.死(ヴァージョン2)9.追跡(ヴァージョン2)『艶ほくろ』(1960)10.初遠征11.ヴェルヌイヤード12.行進『審判』(1963)13.審判『敵』(1961)14.タイトル・クレジット15.スパイ行為『黄金の男』(1964)16.タイトル・クレジット17.オルガ18.コンバーチブル車でのレース19.ダビッドとオルガ20.黄金の男Bounus Track21.勝手にしやがれ
2014年03月13日
コメント(0)
先日近くのCD屋さんに行ったところ、「永遠のサントラ999」というシリーズが大量に陳列されていた。私はサントラが好きなので、タイトルを見ていたら気になるものがあり、家に戻ってから通販で買おうと思っていろいろ見ていた。ラインナップがまとまって出ているわけではないので、発売元のユニヴァーサルのサイトを覗いたところ、マイルスやブレーキーの担当したものが載っている。それらをチェックしてからamazonから注文しようとしたのだが、ほしいものが品切れになったりしている。幸いユニヴァーサルでも通販をしていて¥2500以上は送料無料なので在庫のあるものを6枚ほど購入した。ないものは仕方がないと思っていたのだが、昨日夕飯を食べた後に件のCD屋さんにあるのではとピンと(?)閃いて、速攻で行ってみた。そしたらあるではないですか。早速買われないうちにと思って「アメリカン・グラフィティ」と「大空港」のサントラを購入。「アメリカン・グラフィティ」はシリーズの中で人気ナンバーワンなので売り切れは頷ける。ところが何故「大空港」が品切れなのかはわからなかったが、ブックレットを見て納得。今日は、その「大空港」の感想を書いてみたい。作曲はアルフレッド・ニューマンで、彼はアカデミー賞を9回も受賞しているというのを初めて知った。この音楽は彼の最後の作品で、公開されたのは彼の死後だそうだ。テーマは一度聞けば誰でもすぐにわかる有名なものだが、私が気に入ったのは「大空港の愛のテーマ」。これが昔の映画音楽の典型みたいな曲で、実に映画音楽らしい曲だ。機長のバーノン・デマレスト(ディーン・マーチン)と愛人のスチュワーデス グエン・メイゲン(ジャクリーン・ビセット)の会話で流れる音楽。甘く切ないメロディーがミュートをつけた弦で演奏されミュートをつけた甘いトロンボーンが絡むという正統的な愛のテーマだ。実にムーディで気持ち良くなる。昔のマントバーニの演奏を聴いているようだ。後でコンボでの演奏もあり、アルト・サックスのかすれたサウンドがいい感じだ。空港長メル・ベーカースフェルド(バート・ランカスター)と恋仲の地上勤社員ターニャ・リヴィングストン(ジーン・セバーグ)の二人だけのシーンで使われる「メルとタニヤ」も弦とストリングスの甘く切ないサウンドが心地よい。このテーマはメルが自宅へ電話するシーンである「三角関係」でも使われている。金管が咆哮する場面が多く、ジョン・ウイリアムズを思い起こさせるって、ニューマンがウイリアムズに影響を与えているのだが。。。それから、コンガが使われているせいかラテン/・フレーバーが感じられる。描かれている季節は冬なので、当時のアレンジの流行りだったのかもしれない。海老名孝氏の解説によると、ヴィクター・ヤングの「80日間世界一周」に匹敵する価値を有する作品だそうだ。これに同意できるかどうかはさておいて、30分と短いながら映画音楽として充実していることは確かだ。映画はいままでもテレビでさんざんやってきたと思う。多分見たことがあるはずだがまるで覚えていないので、これらの音楽がどの場面で使われているのか、DVDで確かめてみたい。youtubeにアップされているものを見ると、昔のさっぱりとした映像で、懐かしい感じがする。ところで、カバー、ブックレットとも古い版をそのまま使っているので、発売日も最後に発売された年月日のまま。念のため、CDの表示を見たところ新しかったので、ディスクと帯だけ変えたようだ。帯の裏にお断りが書いてある。こんなもの誰も読まないと思うので、ケースの裏の発売日を見て誤解して買わないでしまう恐れがある。帯なんて捨てる人が多いと思うので、何年かして見た時に誤解して古いCDだと思ってしまうことも考えられる。ささいなコストダウンのために、罪なことをしてくれるものだ。アルフレッド・ニューマン:大空港 オリジナル・サウンドトラック(MCA UICYー76057) 1.大空港(メイン・タイトル) 2.大空港のラブ・テーマ 3.イネスのテーマ 4.ゲレロの別れ 5.アダ・クォンセットは密航者 6.メルとタニヤ 7.大空港のラブ・テーマ 8.ジョー・パトローニ/プレーン・オア・プラウズ 9.三角関係 10.イネスー永遠の別れ 11.不時着陸 12.大空港 (エンド・タイトル)
2014年02月22日
コメント(0)
以前見た「タイピスト」のサウンド・トラック。当時国内ではMP3でしか入手できなくて、諦めかけていたところ、Import_CDで販売されていることを知り、速攻でゲットした一枚。原題の「Populaire」はタイプライターの名前で、英語の「popular」と同じで「人気のある」という意味。映画音楽は映画でよかったから音楽だけで聴いてもいいとは限らない。映画で聴いたときに、すごくいいと思った曲がそれほどでもなかったり、映画を見ていて気づかなかった音楽が音で聴いて良いと気がつく時もある。今回は、微妙なところだ。この映画のために書かれた曲は、ロブとエマニュエルのドルランド兄弟?の手になる6曲のみで、あとは過去の音源が使われている。彼らはフランスの作曲家でエマニュエルは1977年生まれ。写真を見るとロブのほうが若い。すべて管弦楽で、大部分ははかない美しさに満ちていた。時にはシンフォニックなサウンドを響かせることもある。ただ、彼らの作品を続けて聴いていると曲の違いが分からなくなる。最初に気に入った、「Girl On The Calender」はClive Richardson(1909-1988)というイギリスのピアニスト、作曲の作品。所謂ムード音楽の分野で活躍した。軽快でおしゃれな音楽はいかにもフランスの音楽のように聞こえた。これがイギリスの作曲家の作品とはとても思えない。冒頭に流れる「Forgotten Dreams」も優しい音楽で気に入った。これがロイ・アンダーソンの作品とは知らなかった。それから、ジョン・ダグラスとロバート・ウォルトンの「Till You Next Meet」も良かった。タイプライターの世界大会での出し物のラテン音楽以外は、ノスタルジックな音楽ばかりだなと思ったら、古い作品ばかりだったが、映画にはフィットしていた。映画でもよかったエラの「I LOVE PARIS」はバーブの「the Cole Porter Songbook」での演奏で、いいのも当たり前といったところ。後半何曲か使われているラテン音楽が、単調になりがちな中で、いいアクセントになっている。ということで、使われている音楽や選曲が良く、なかなか楽しめるサウンドトラックになっている。Populaire (Bande originale du film)(SONY 88765415822)1.Forgotten Dreams (Saint Fraimbault) 2.Girl On Calendar 3.Willow Weep for Me4.Stroll in the Park5.Dactylo Rock6 Forgotten Dreams (Chez 7.Stranger On the shore8.Typewriters Boogie9.First Love, First Tears10.Le tango des illusions 11.Till We Next Meet12.I Love Paris 13.Le désir14.Big Noise from Winnetka15.Tourments de Louis 16.Pas moi!17.Les secrétaires cha cha cha (Las Secretarias) 18.Tenderly19.Popular Rock20.Pearl of Ceylon21.Off the Stage22.Let There Be Drums23.Forgotten Dreams (New York) 24.Rose's Glory 25.Populaire (Main Theme) 26.La machine à écrire 27.Rose souvenir28.Rose's Nerve 29.Les secrétaires cha cha cha (Las Secretarias)Rob & Emmanuel d'Orlando
2014年01月10日
コメント(0)
いつぞやの新聞の批評に興味を惹かれて、レンタルしてみました。 彼女のオリジナルはほとんど聴いたことがなく、数年前に休養に入ったことを知っているくらいだった。このアルバムは他人の曲のカバーで、もともとのファンの方たちには、あまり評判がよくないようだ。私は先入観がないせいか、結構楽しめた。彼女の歌は声がよく伸びていて、なかなか気持ちがいい。こういうカバーを集めたアルバムでは、いかにオリジナルと違う個性を出せるかがカギだと思う。彼女の歌は癖がなく、オリジナルに比べてどうかはわからないが、歌の出来はいいと思う。もともと聴いたことのない歌が多いということもあるが、それぞれの歌の美しさが十分出でていたと思う。気に入ったのは、松任谷由美の「やさしさに包まれたなら」、宇多田ヒカル「Movin’on without you」。「やさしさに包まれたなら」はスピード感があり、アコースティック・ギターを多用したアレンジがこの曲のもつカントリー・テイストを強調して、御機嫌。少なくともヴォーカルに関してはオリジナルをはるかに凌駕している。ギター・ソロもいい感じだ。「Movin’on without you」はノリの良さと歌のうまさが光っている。平井堅の「瞳をとじて」はさすがに私でも知っている。オリジナルに比べて硬質な感じだが、歌が大変うまく、個性が出ていた。続く、中島みゆきの「空と君のあいだに」はあまり好きな歌ではなかったが、絢香の歌を聴いていたらこの曲の良さが分かったような気がする。中島みゆきの細身の声で少しとげのある歌い方に比べると、声が太く、歌い方もフラットのため、素直に曲の良さが響いてくるのかもしれない。久保田利伸の「LA・LA・LA LOVE SONG」もノリがよく、楽しめる。サザンの「真夏の果実」は桑田の歌い方が少し入っていて、トロピカルなまったり感が出ていて悪くない。バックも編成がヴァラエティに富んでいて、飽きさせない作りになっている。ということで、初絢香?の首尾は上々で、オリジナル・アルバムも聴いてみたい気になった。録音は抜けが悪く、ごちゃごちゃしていて、演奏の足を引っ張っていたのは惜しい。絢香:遊音楽倶楽部~1st grade~1. やさしさに包まれたなら2. シーソーゲーム ~勇敢な恋の歌~3. ロビンソン4. タユタ5. 瞳をとじて6. 空と君のあいだに7. LA・LA・LA LOVE SONG8. Movin’ on without you9. 歩いて帰ろう10. 真夏の果実11. たしかなこと
2013年12月04日
コメント(0)
コバのコロムビア移籍第1弾は初めてのアコーディオンでのソロ・アルバム。新聞の批評が良いのを知り、レンタル屋さんでたまたま見つけて聴いた一枚。アコーディオン一台でどれだけポップになれるかを限りなく追求した作品だそうだ。コバはデビュー当初から存在は知っていたが、何となく胡散臭い感じがして、今までまともに聴いたことがなかった。このアルバムを聴いて、偏見だったことを思い知らされた。演奏は勿論のこと良い作品を書いていることも知り、食わず嫌いはよくないことをまた痛感してしまった。8曲の自作曲と5曲のカバーから構成されている。最初の「リベル・タンゴ」から出力全開。重戦車が驀進しているような趣があり、これでもかと繰り広げられるアドリブが凄まじく、たじたじとなってしまいそうだ。非常に挑戦的で、音楽に癒しを求める方は違和感があるかもしれない。他の曲でもその姿勢は窺える。私も、随分挑戦的だなと思いつつ全曲を聴いた。おそらく、彼の演奏に対する姿勢(常に目いっぱい真剣勝負みたいな)そのものなのかもしれない。私が、コバの演奏が初めてだったためかもしれないが、アコーディオンでこんなに挑戦的な音楽を聴いたことはなかった。すべてがこの調子だと困るが、こういうアプローチもありだと思う、癒しを感じた曲は僅かで、あとはアコーディオンのパワーが感じられる音楽が多かった。「嵐を呼ぶ男」とい名前の映画があったような気がするが、前のめりで突き進むリズムが挑戦的なのに対し、悲哀を感じさせるメロディーの対比がとても美しい。劇的な構成も申し分ない。メロディーは久石譲の「ハウルの城」の音楽を思い起こさせるようなフランスの香りも漂ってきそうだ。ラテンの哀しみが感じられる佳曲。勿論も演奏も圧倒的で、アルバム随一の感動を与えてくれる。自作の「チェザレの詩」がシャンソン風の曲で、とてもおしゃれ。ワルツのリズムに乗って踊りだした気分になってしまう。「カバレリア・ルスティカーナ」の間奏曲もいい。この曲をアコーディオンで演奏した録音は聴いたことがなかった。とても雰囲気がよく、まるでオルガンを聴いているような豊麗なサウンドで、気に入った。独特なアクセントとグリッサンドを交えて、かなり隈取の濃い演奏ではあるが、不思議と嫌味にならないところがいい。エンディングでぐっとテンポを落として、スケールの大きな演奏にしているところも、風変りだが悪くない。ただ、こういう展開なら、終わりも弱くしないで、盛大に終わってほしかった。自作の「突撃サンバ」は、突き進むリズムと後半の哀愁を感じさせるメロディーの対比がとてもいい。ピアソラの「失われた小鳥たち」は聴いたことがなかったが、旋律はしみじみとした味わいが感じられる。しかし、途中から不協和音を交えて、おどろおどろしくなってしまう。個人的には最初のムードを持続してほしかった。「上を向いて歩こう」は編曲が大変優れている。フランスの香りが感じられるような、しゃれて、しみじみとした味わいが何ともいい。このブログを書いているときに、盛岡の「プラザおでって」で11/21に公演があったことを知った。これだったら、見に行きたかったと思ったが、遅すぎた。coba:pure accordion(日本コロンビア COCB-54076)1.Piazzolla:リベルタンゴ2.coba:coic"ocolo3.coba:過ぎ去りし永遠の日々4.coba:嵐を呼ぶ男5.Piazzolla:失われた小鳥たち6.coba:Pegasus Passport7.coba:うたかたje t'aime8.Hachidai Nakamura:上を向いて歩こう9.coba:チェザレの詩10.Mascagni:Cavalleria Rusticana - INTERMEZZO11.coba:突撃サンバ(作曲:coba)12.Freddie Mercury:We are the champions(作曲:Freddie Mercury)13.coba:coic"ocolo ~ telephonic love lettercoba(accordion)
2013年11月26日
コメント(0)
大学時代か卒業してからか覚えていないが、友達からLPを借りてカセットにダビングし、ずっと聞いていた。 数年前からそのカセットは車の中にあり、思いついたときに聞いている。CDを買おうと思ったのが2,3年前で、このCDは廃盤になっていて高額で取引されていた。今回コロムビアから「YAMATO SOUD ALMANAC」シリーズのひとつとしてリリースされていることを偶然に知った。楽天のポイントがあったのでそれを使って即ゲット。聴きなれている音源ではあるが、音がいいのにびっくり。36年もたっていて、この鮮度はいったいなんなのかと思ってしまった。この中で一番好きなのは「イスカンダル」。甘くノスタルジックなメロディーが好きだった。それに最初のアルト・フルートの音が大好きだった。ついで、最後の「スターシャ」の絹のような弦のアンサンブルにぞくぞくした。続くフルート・ソロもとてもノスタルジックでいい。編成自体はほぼ2管編成で弦も殆んど通常のオケ並み。ただし、録音用の寄せ集めのオーケストラなので、クラシックのオーケストラみたいなサウンドは望むべくもない。しかし名手が入っていて、彼らの名技が楽しめるのもこのアルバムの魅力のひとつだ。個人的には杉本喜代志の心に染み入るギターがいい。ブックレットも元の物がそのまま復刻されているようだ。YAMATO SOUD ALMANAC 交響組曲 宇宙戦艦ヤマト(COLUMBIA COCX-37382)1.序曲2.誕生3.サーシャ4.試練5.出発6.追憶7.真赤なスカーフ8.決戦 挑戦 出撃 勝利9.イスカンダル10.回想11.明日への希望 夢 ロマン 冒険心12.スターシャ川島かず子(スキャット 1,2,11)シンフォニック・オーケストラ・ヤマト宮川泰(指揮) 録音1977年9月、10月 コロムビアスタジオ
2013年11月10日
コメント(0)
ナタリー・コールの全曲スペイン語のアルバムを聴く。有名なラテンの曲だけであく、ボサノヴァの「カーニヴァルの朝」やレノン=マッカートニーの「And I Love Her」など、幅広い内容です。彼女のスペイン語がどれほどの物かは全く分かりませんが、違和感は全くありません。このアルバムは2008年の「Still Unforgettable」以来の作品です。父親のナット・コールは3つのスペイン語アルバムを残しており、リスペクトを込めて作られたそうです。実に贅沢なアルバムで、聴き手もゴージャスな気分を満喫できます。また、今の季節にピッタリの音楽で、夏の海岸をオープンカーでぶっ飛ばしながら聞いたら、さぞかし気持ちがいいだろうと思うほどです。全12曲のうちデュエットが3曲あり、それらがとても興味深いものでした。こういうデュエットを聴く楽しみの一つに、知らない歌手を聴くことが出来るというメリットがあります。以前、シナトラやベネットでのデュエットで興味を惹き、その後聴き始めたミュージシャンもいました。今回は『べサメ・ムーチョ」を歌ったアンドレア・ボッチェリが最高でした。勿論、クラシック、ポピュラー両方の世界で有名ですが、かなり偏見を持っていました。というのも、一種際物的な感じで見ていたからです。勿論、オペラに出演していることも知ってはいました。今回まともに聞いてみて、その際立ったうまさにびっくりしました、最初聞いたとき、フリオ・イグレシアスかと思ったのですが、完全な勘違いでした。ナタリーはボッチェリに一歩も引けを取らないのは、さすがとしか言いようがありません。父親とは「アセルカテ・マス」で共演しています。ミキシングがうまく言っていて不自然さは全くありません。ただ、曲が短いということもあり、それほどの感動はありませんでした。総じてゆったりして叙情的な曲のほうが彼女には向いていると思います。そのような曲の中ではカルロス・ガルデルの「El Dia Que Me Quieras」(想いの届く日)が曲の素晴らしさもあって、素晴らしい歌唱となっています。また、「キサス・キサス・キサス」のようなコミカルな曲もうまいです。このアルバムのハイライトはなんといっても8曲目のメドレーです。曲は、「オジェ・コモ・ヴァ」、「最後の夜」、「キエン・セラ」、「ヨ・キエロ・コンティゴ・バイラール」、「グアヒーラ」の5曲。曲のつなぎのコードチェンジが巧みで、その部分がスリル満点です。ラテンで活躍しているアーサー・ハンロンのピアノがフィーチャーされていますが、バックの圧倒的なリズムとホーンのまえに、埋没しています。強烈なリズムと熱狂で圧倒されます。成功した原因はアレンジがすごくいいことと、雑踏の中で聞こえてくるような人々の声が入っていることで、熱狂の中にいるような感じさえします。パンチのあるバックも実にすばらしいです。最後にナタリーの笑い声が収録されていますが、これは歌い手にとっても最高のバックで、さぞかし気持ちいいものだったと思います。アレンジと言えば、このアルバムではストリングオーケストラの優美なバックが静かな曲でとても効果的で、聴いていると癒されます。こういうアルバムで聴く弦の響きは、何となく涼やかに聞こえてくるのは気のせいでしょうか?ところで、1950年生まれで、60歳を超えていますが、声の衰えは全く感じられません。それに相変わらず抜群のスタイルで、美貌も健在です。そこでに絶え間のない鍛錬がされているだろうことを思うと、頭が下がります。このアルバムを聴いて、一流であり続けることの大変さをしみじみと感じるなんて、思いもよらないことでした。ということで、これは素晴らしい聴きものでした。Natalie Cole:En Español(Verve Records – B0018158-02)1.Frenesi2.Voy A Apagar La Luz/Contigo Aprendi 3.Acércate Más (Duet with Nat "King" Cole) 4.Mañana De Carnaval5.Bésame Mucho (Duet with Andrea Bocelli) 4:046.Quizás, Quizás, Quizás 2:297.Solamente Una Vez 2:318.Oye Como Va/La Ultima Noche/Quien Sera/Yo Quiero Contigo Bailar/Guajira (Featuring Arthur Hanlon)9.Yo Lo Amo (And I Love Him) (Featuring Chris Botti) 10.El Día Que Me Quieras11.Bachata Rosa (Duet with Juan Luis Guerra)12.AmapolaNatalie Cole(vo)
2013年07月19日
コメント(0)
トニー・ベネットの「DUETSII」(2011)に続くデュエットアルバムの第3弾。 どこかのレビューであまりよく書かれていなかったので、購入を少しためらっていたのですが、気を取り直して?購入しました。今回は趣向を変えてラテン系のアーティストとのデュエットで、ベネットに刺激を与えることで、マンネリを避け、さらなるレベルアップを狙っていたのかもしれません。ところが彼らは火花を散らすことがなく、互いに寄り添う姿勢が伺えます。製作者は、もう少し刺激がほしかったかもしれませんが、狙いはある程度は成功しています。録音日時がブックレットに載っていませんが、ベネット自身の歌は前作と変わらず、これが今年86歳を迎えた男の声とは信じられません。もとも美声ではないし、声域も広くないので、衰えてもあまり変わらないのかもしれません。以前の二枚では、強烈な個性を発揮している歌手がいたと記憶していますが、今回は特に目を見張るような歌を聞かせる方はいなかったように思います。勿論、いいナンバーが多いのですし、できも悪くないのですが、これはというナンバーは少なかったと思います。共演者の中で名前を知っているのはクリスティーナ・アギレラとグロリア・エステファンくらいなもので、知らない歌手の歌を聴くこともこのようなアルバムでは楽しみの一つです。気に入ったのは、フアン・ルイス・ゲーラとの「ジャスト・イン・タイム」。ノリがいいです。特異なのはランチェラの王様と呼ばれるビセンテ・フェルナンデスとの「リターン・トゥ・ミー」(レグレサ・ア・ミ)がなんとメキシコ風のアレンジで、主導権は完全にビセンテ・フェルナンデスが握っていて、ベネットは彼についていっている感じです。メキシコのサボテンのある風景を連想させるような、まったりとした雰囲気が何ともユニークです。最初の「The Best Is Yet To Come」では女性とのデュエットと思ってブックレットを見たらなんと男ではありませんか。プエルトリコ出身のチャヤンという方でした。凄く細い声で、とても男の声とは思えません。ラテン系の歌手の声は線が細いのに強靭な声の持ち主が多いと思いますが、この方もその部類のようです。『The Good Life」でのフランコ・デ・ビータも声はそれほど細くはないのですが、最初ぼんやりと聴いていて、てっきり中年のおばさんかと思ってしまいました。タリアの歌唱はかなり色っぽいですが、あまり癖がなく「The Way You Look Tonight」にふさわしい雰囲気です。イントロ部分でのギターだけの伴奏がまたいいです。マーク・アンソニーとの「フォー・ワンス・イン・マイ・ライフ」は従来の路線の沿ったもので、気持ちよく聴けます。リズミックな曲は少なく、バラード系の曲の方が強い印象を受けました。ところで、収録時間は37分ほどとかなり短いですが、それに関する不満は感じられませんでした。私が聞いたのは海外版ですが、国内盤には3曲のボーナストラックが追加されています。マリア・ガドゥとの「Blue Velvet」、ミゲル・ボセとの「Don’t Get Around Much Anymore」、アナ・カロリーナとの「The Very Thought Of You 」です。ということで、あまり期待していなかったのですが、異文化の衝突は聴けなかったものの、ある程度の水準はキープしていたと思います。ベネットは彼らに触発された部分もあったと思います。Tony Bennett:Viva Duets(RPM RECORDS/COLUMBIA 88725473102)1.The Best Is Yet To Come duet with Chayanne2.The Way You Look Tonight duet withThalia3.Steppin' Out With My Baby duet with Christina Aguilera4.For Once In My Life duet with Marc Anthony5.Are You Havin' Any Fun? duet with Dani Martin6.The Good Life duet with Franco Der Vita7.Who Can I Turn To (When Nobody Needs Me) duet with Gloria Estefan8.Just In Time duet with Juan Luis Guerra9.Cold, Cold Heart duet with Vincentico10.I Wanna Be Around duet with Ricardo Arjona11.Rags To Riches duet with Romeo Santos12.Return To Me (Regresa A Mi) duet with Vincente Fernandez Tony Bennett(vo)Recorded at Avatar Studios(New York,NY),Ben Folds Studio(Nashville,TN)Benett Studios(Englewood,NJ),Capitol Studios(Holywood,CA)Cutting Cane Studios(Davie,FL),Manhattan Center Studios(New York,NY)Vincente Fernandez's Ranch,Guadarajara,Jalisco,Mexico
2012年12月14日
コメント(0)
全110件 (110件中 1-50件目)