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≪シンバル月≫大風が凪いでぶどうだなに明いた穴のような空につみとれそうにして シンバルのような月がなっているわたしのなかの兎をリズムにのせるのはアナタにちがいない――大風のあとをアナタがどんなにうまくシンバルになってもアナタに跳びはねる足が見られるかもとドキドキしている ≪月をのせる≫丸や四角やのやねのならんだ丈のあまりない町のひざこぞうあたりにらっこ寝になったまま潜ってしまいそうになっている弓なり月はあわてて手をのばせばつかめそう弓なり月の潜る辺りを私のぺんぎんがペタペタやってくるそれで たしかに弓なり月の潜りかかっているのを翼にのせているから私といっしょに月に遊んでいます≪月振動≫醒めていられないので月が笑うわたしは暗がりのまま雲の浮き輪につかまって星空を泳いでいるジェット戦闘機の轟きが彼方から響いてくるとやおら月が空中ブランコのようにゆれてそのとっぺんではオリオン座がジェット戦闘機を狩ろうとしている※ タイトルにあるKamenosukeは詩人で抽象画家の尾形亀之助のこと。
2013.10.28
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容《かたち》も、彩《いろ》も、ムーンライトの身元をくすぐりたずねるような星のおしゃべり――――‥たあいの、ない…ガラスの向こうがわでは、時間がぴあのを弾いている。というフシギ‥ さみしがりの兎、 未来の楽譜を、ライムの木に生らそうと トゥルル‥ トゥルル‥ 時間の、奏でるおたまじゃくしに、 トゥルル‥ トゥルル‥今夜、うっかり目のまえの庭におりてまだ植えられてもいないライムの木の身の上話をしちゃった、ムーンライト。「ね、あたしが口軽女だなんて思わないでほしいの。もともとは泥酔したコペルニクスのせいよ。ぶどう色のさざ波で口説いて、イケナイ人。星のバルコニーで頬よせ踊って、地球のヒミツをききだした。あれからすっかり、あたし、おしゃべりが止まらない。」幾何学的なデザインに沿うように、グラスに傾斜してリキュールの湖で、‥あゝ、蜜の、なやましい、粘着。「ここに来る日に、ライムの木ったら、尻もちつくのよ。うふふ、美人がだいなし、危ないったら、ないわよね。」 さみしがりの兎、 未来の楽譜を、ライムの木に生らそうと トゥルル‥ トゥルル‥ 時間の、奏でるおたまじゃくしに、 トゥルル‥ トゥルル‥ライムの木にこっそり耳うちしちゃった、私。(尻もち…。)(ありがとう。気をつけるわ。)「あなたも、すっかりおしゃべりだわね。」 と今夜もムーンライトは、ほろ酔い加減で‥。
2013.10.21
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黒くろ…………………………………………………………………まっくろ…………………………………………………………………くろ…………………………………………………………………くろ…………………………………………………………………くろい風…………………………………………………………………くろ…………………………………………………………………クロ…………………………………………………………………くろ………………………………………………………………… 黒 風 狂 飆《きょうひょう》 台 風 嵐 It has gone! 街 を さ ん ぽする虹色の りんご …… リンゴを一口かじり見あげた。 虹。 ゆめのブラックBoxが、今、明いた。 のオレンジ色の傘 傘傘傘傘傘傘傘傘傘傘傘傘のオレンジに街では明るさが生るんだね のあおい 秋空 +++ 秋空に生る、みすゞの大漁旗。 波のようによせて、自由の詩を起てる。 の 白い 雲 .... 雲、あゝイワシ雲だねえ、むかしは安かったのにねえ、イワシ。 おばあさん魚屋なう の 銀色 ひこうき ↑↑↑ ひこうき!/曲もジブリの独り占めズルイよー/ユーミンなう の 銅 い 鉄 塔 A―A―A―A―A 塔たちの揺るがない骨格。 ずっとずっと高く、トトロの猫バスを飛ばしたいな。 の黄いろい看板の パン屋 パン屋さんの匂い‥。「猫にマタタビ」か「パブロフの犬」か、 それが問題だ。――――歩く胃袋にうかぶ ハムレット、ハムオムレット、ハムサンド‥。 の 青いろ 信号 信号機のない町、とおい異国の蜃気楼にうかぶ。 の 水いろスベリ台 スベリ台には「キケン!」の貼り紙。 ブランコなくなったのかなって、赤トンボがさがしてる。の象牙色ビル 「ルーレットの玉が昨日は滑っただけさ。」って ねむらない試験管 神さまのダイスを科学はさがしてるのかな…の 茶いろい クツ クツにはその人の生活が削り込まれてる。 すり減ったクツを見て、徹夜しながら、お父さんいってたな。 の パ ア プ ル 風船 風船が、暮らしのなかをシアワセそうに、ふわりふわり。 のピンク花束 花束はheartのart/花の束はinteriorのmaterial 花が幸せのバロメーターとは、イカシテル。 の 紺 Gパン Gパンのおしりがイケテル男の子。 ずんずん行っちゃって、ふりむかないで。 のグレーな歩道 歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩道をずんずん。 田舎にいるよりずっとよく歩くよ。 わたし、風景画の中のシルエットみたい。の 街 街は 色えんぴつ画みたいだ。 「ママ、ふうせんやさん」 「カラフル風船はいかがですか?街をあんないしてくれますよ。」 「ひとつ、いくらですか?」 「おじょうちゃん、夢のなかの風船に値段はつけられませんよ。」
2013.10.20
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黒くろ…………………………………………………………………まっくろ…………………………………………………………………くろ…………………………………………………………………くろ…………………………………………………………………くろい風…………………………………………………………………くろ…………………………………………………………………クロ…………………………………………………………………くろ………………………………………………………………… 黒 風 狂 飆《きょうひょう》 台 風 嵐 It has gone! お さ ん ぽする7色のりんご ………… りんごの模様にこだわるgeekとアップル社製品 のオレンジ傘 傘傘傘傘傘傘傘傘傘傘傘傘傘傘傘傘傘傘傘傘の道 のあおい 秋空 +++ 秋空みたいなファッションの流行 の 白い イワシ雲 ..... イワシは昔は安かったのにっておばあさん魚屋なう の 銀色 ひこうき ↑↑↑ ひこうき雲の名曲ジブリにもっていかれた の 銅 い 鉄 塔 A―A―A―A―A塔のてっぺん送電線ぶおんぶおん嵐にゆれてた の黄いろい看板の パン屋 パン屋さんの匂い‥思わずヨダレが!パブロフの犬が吠える の 青いろ 信号 信号機のない町も外国にはあるんだってひき逃げされたりしないのかな の 水いろスベリ台 スベリ台には危険の貼り紙きっと子どもの事故があったんだねの象牙色ビル ルービックキューブの速回しみたいなルーレットの確率みたいな賞とりたいゲームの 茶いろい クツ クツの量販店で¥イチキュッパ の パ ア プ ル 風船 風船ウォークふうらふう のピンク花束 花束はartの香り/花の束はmaterialの値 の 紺 Gパン Gパンのおしりがセクシーな男の子ふりむかないで のグレーな歩道 歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩道のスターの手形ふめないよの色えんぴつ画みたいな 街。 「ママ、ふうせんやさん」 「カラフル風船はいかがですか?街をあんないしてくれますよ。」 「ひとつ、いくらですか?」 「おじょうちゃん、夢のなかの風船に値段はつけられませんよ。」
2013.10.12
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嵐一過の空の青さに、Darkな灰色の抽斗《ひきだし》か明らみ、閊《つか》えのとれた心が今、ようやくに押しだされ、等閑《ないがしろ》にされていた、_______日々の悦び‥十月初旬の風はぬくもりの途惑いをとどめ、薄着の私をまぶしい波濤の光へと誘う。海辺の広場から、漂い揚る小さな凧たちの群・・・はしゃぎ泳いで、しゃくりあげるように泳いで、幼い紅で、汗ばむ銅《あか》で、うまく、どれもうまく歌おうとして、哂い、鳴き、熾《おこ》り、鎮み、揚り、時に青々と、謳《うた》いたいと想いながら――--‥鬱々とHydrophoba 泳ぎたいと願いながら――--‥諾々とAcrophobia 飛びたいと希いながら――--‥恐々とPhobia ……≪死≫…への……怖……れ……………明滅する…………赤と、黒と、白と、凧の飛行士たちは松林沿いを走り去る小刻みにふるえる翼のピースたち陽炎のようにうつろいゆく夢のジグソーパズル儚さを嵌め込まれた彼らの部屋の壁には空の墓標‥風は人々を見送り、夕凪に‥ 目を瞑る海辺のテラスたち時刻を思い出した外気が、私にカーディガンの袖を通させ温かな想いが1日と対話を始める瞬かな星斗1つの夜に熾され光を覚ます・・・心はメロディーにたしかなリズムを、羽のように錨《いかり》のように携えて狂飆《きょうひょう》のあと…、一縷《いちる》のけれど途切れぬ情熱で輝かなテンペストの結末の空へと…。
2013.10.10
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をみなご、の天よりふり降りあそべる、陽のなか‥陽は、金枝の木漏れ日、サラ‥サ‥サララ‥、ぬばたまの髪をすべり降りふくよかなる乳肌の匂い、は遅々として風に、あまやかなる回帰を呼び、わたくしをして、purpur《紫》 なる苑へと至らしめるひとつの、流れ、として_________歌は、あふれ出で流れにみちて1つのグラスに扇情の泪‥やがては慈雨のごとふり降り、こころを洗い流し‥、かなしみの累を埋めるブランデーいろの埋み火、仕舞いには、ゆたらかな扇状地のごと秘の谷合を押しだし豊饒のむねに、チチと、をみなごを萌え起《た》たさんと‥うすい半とうめい、濁り灯のまるい桃、ようやくに熟れ裂け、息、をつかみわたくしのグラスに‥、透明なる こ・と・ば‥
2013.10.08
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日ごと、・・・と謂う、日、は太陽系を根こそぎ抱え、私を、私、という拘泥の微小を、1つの蒼穹の星に儚く、…dreaming……夢… 夢 (果たして、天空の夢の1つの欠片だろうか‥。)そこでは始原、未だ1に至らぬ、生命)―-澱、ん、で――(スウプ、原始の子として・・・・・ふ・・・ふら・・ふらす、ふ‥太古の海に++フラスコ、++を振らす 「時間よ、私を目覚めさせた。」 「ああ! おまえは、何処に生まれる意志なのだ。」こうした問いは湧泉の窮みからは程遠い、常にだが悠久への啓かれた、目。なのに…、ふわふわと羽をさがし彷徨っているヒナ鳥のように私は孵化したての谷間にいま、居て霧______私__して_______膚穴___閉_塞 野の 棘を 花と 匂う 迷 _者___―――――仄蒼き慣性のベール、に蔽われた、まま、、、に、を、の、へ、と向かうべきObjectivesをその手触りを隠蔽したインク壺、甘い混沌の青い果実、そこからは母の胎内、羊水が滲み出し・・ 起てよ 蟻のアンテナでも 起てよ 蟻のアンテナでも 起てよ 蟻のアンテナでも アゴラの甘い香り――――‥in #### 夏 広場に集うものたちは、いま世界を孵卵器用にこまかく解体して なにやら薀蓄中 ↓ ↓ ↓梟 「粒子の狐が、ア、ホイ、ってな具合にお面を剥がされ、剥がされかねましてね。」猪 「ああ、じれったい、つまり分子の計算で割り切れて、面が割れたって話でしょ。」梟 「いやぁ、事象は、ア、ホイ、ってな具合にはいきかねますよ。」猪 「アタシのどこがアホなんですか!」熊 「危険分子を通り越して、いまや危険原子ですよね。社会の縮図ですね。」 ここで、鼠、メガネを掛けなおす。鼠 「僕が読んだ本には原子は雲隠れしたとあり、隠遁者は危険ではないですが。」熊 「『チクショー!ぶっ叩いてやるー!』って猪さんが言ってますよ。」梟 「いやぁ、電子雲はサイコロの壺振り師ですから叩いても誇りにはなりませんよ。」 ここで、猪、すごすご退場。犬 「雲隠れしてるのは陽子、中性子、さらには素粒子。子どもなのに賭博とは!」猫 「生命自体が賭博。発生は、ドーキンスの言う生命のスープですから。」犬 「猫さんの言うのは遺伝子。子ども違いです!」猫 「だって梟さんが『狐』って言ってましたよ?」梟 「それは、化かされたように面が割れないって比喩ですよ。猫さん、ド近視。」 ここで、猫、忍び足で梟に近づく。猫 「近視眼への差別発言がなされた場には断固、僕はイヤガラセしますよ。」梟 「はぁ、黄昏てますね。出遅れないように闇を飛びます…クォーク、クォーク、クォーク‥。」――――赤く燃える、時代の闇‥――――赤く燃える、時代の闇‥――――赤く燃える、時代の闇‥を越え、遥か彼方への光の粒子へと なにものでもなく なにものであろうと矮小化された孵卵器の世界の底から…ヒナ鳥は、羽ある意志、ただ飛びたいと手を伸べ、いまだ、触れられたことのないいまだ、熟されたことのないいまだ、歌われたことのないいまだ、噤まれたことのないいまだ、記されたことのないいまだ、想われたことないいまだ、至ったことのない 天の花蕊、の実を孕む為に――――――日ごと‥
2013.10.07
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なにゆえの生の点描かとアルタ・コジンスキーは自らに問う。金曜日のウキウキとした花の絵は彼女の弱弱しい視線に散らばり、ツィガーヌ‥。1つの呟きに落ちてゆく。 『ツィガーヌ』。以前は然程感情に食い込まなかったラヴェルの放浪民族音楽のヴァイオリン曲だが、近頃は心に潜む感情の蓋が次々開け放たれてゆくのを感じ、彼女は密かに旅行鞄を抱え込んでいる。彼女はロム(放浪者)ではない。否、むしろ部屋の囚われ人である。大学の授業にも真面目に出席し、金曜日の夜には友人たちと行きつけのパブで陽気なアヒルのように騒いでは、靴は失くさずシンデレラの帰宅。そんなことの繰り返しで2年目の春学期が夏の匂いを漂わせ始めても、まだ何も人生の遷移を見せてはいなかった。この土曜日はいつものように掃除と洗濯を済ませた後、手作りのフルーツケーキを隣国に赴任中の両親に送り、姉たちに頼まれた買い物。盛り上がりは、血の繋がらない従兄アレックスの油彩画の個展。 「アレックス、個展成功おめでとう!」 「ありがとう、僕のかわいいおチビちゃん。」 栗色の髪の長身の青年は木管楽器のような少しくぐもった声でソフトに話す。アルタの心に忘れていた淡雪が降る…。初恋の相手とはいつまで経ってもそうしたものなのだからとアルタは自分に言い聞かせる。 展示されている20点の作品の中でひときわ目を惹くのは、ギャラリーの壁中央に掛けられた『ツィガーヌの少女』だ。幾層にも塗り重ねられた抽象画の物悲しい色彩。絵の少女は泣いているのだろう、恋心に…。 うっとりとその絵に見惚れたまま時を忘れて佇む、少女アルタ。 赤葡萄酒色のスカーフを黒髪に編みこんで。 ためいきを1つ。 それは、ツィガーヌの少女‥。 ゆっくりと画家は美女の砦の中から辺りの景色を消し、抱きしめたい衝動を抑えながら鳶色(とびいろ)の瞳に少女の横顔だけを浮かび上がらせる。 (僕の愛しいアルタ‥。) アルタは帰宅後、2つのレポートをきっちりまとめ、読書と趣味の点描画。だがこの規則正しい囚われ人の時間がふと秒針を止める、前触れもなく。そして戸惑いもなく、この日曜日の朝早く彼女は部屋から脱出しようと突然決心する。 ツィガーヌの赤と黒。 その旋律だけで…。 アルタの部屋は定まった大きさというものを持たない不可解な器だ。兎の巣穴であり、土竜《もぐら》の地下王国であり、コンドルの岩山であり。彼女自身それを不思議とも思わず、ずっと揺り篭のように感じていた。体の芯をドリルで刳《く》り貫かれるような幾多の悲しみに遭遇したときにも精神が壊れずに済んだのは、全くこの部屋のおかげだった。だが彼女は今その部屋を後にしようとしている。 驚きは、時として事象の指向ではなくそれを引き起こす人の志向にある。 彼女は妹の形見の赤い帽子をひょいとかぶると、やおら旅行鞄を窓から放り投げ、自らも窓を跨《また》ぎ飛び降りてしまった。そんな風に呆気なく見捨てられた扉は所在投げに部屋の壁に立ち尽くしていた。机の上には1枚の点描画。赤い帽子をかぶるロム兎の横顔は、踊るヴァイオリン弾き。その絵からは、ああ、哀愁のツィガーヌ‥。 月曜の午後3時、フレベンス教授はオークの梢から漏れ踊る光と影の中、ヘイゼルナッツ風味のフレンチロースト珈琲を啜る。甘やかな苦味がまどろみの風船を軽く弾けさすのに程よい。彼は人間行動における‘バタフライ効果’をテーマにした研究で知られていたが、有名な短編小説家ラリー・Fと同一人物と知るものはない、唯1人を除いて。私的に多忙を極めてはいても学生にとっては1教師に過ぎないという自覚はある。 午後の珈琲タイム。 カフェテラスの椅子で10分ばかりリラックスするには、学生からのメールはちょうどよい。発想の奇抜さに学ぶところが多々あり、シルク・ド・ソレイユの観客席といった趣き。この日は差出し人の中にアルタ・コジンスキーの名を見つけ、鼻歌交じりにめずらしく珈琲をおかわりしアップル・タルトまで注文する。辛党の彼にも、この店のあっさりとした味わいは口にあう。 「サワークリームではなくてヨーグルトなのよ。」 その秘密を教えてくれたのはアルタだ。貴公子Fと異名を取る売れっ子青年作家は芳しい花々に囲まれて蜜に困ることはなく、アルタは噂にのぼるほどの綺麗な女子大生であったが、教師としての彼がプライベートで触覚を伸ばすことはなかった。 あの日、あのメールが届くまでは…。 「ラリー・Fことフレベンス教授の名著『タイム・バタフライ』について。」 彼の度肝を抜いたメールはこう始まっていた。アルタは彼の講義ノートの特徴からラリー・Fだと看破した上で、課題『小説に見るバタフライ効果』の題材として、ラリー・Fの代表作を取り上げたのだった。『タイム・バタフライ』は12篇からなるオムニバス形式の短篇集で、最初のシーンに登場する1羽の蝶の設定を微妙に変えることで、その後のストーリー展開にどんな変化がもたらされたかを見事に描き出している。映画化されなおさら有名になった。 アルタは理学部の2回生で生物物理学を専攻する奨学生だ。理学部の学生がこの科目を受講することは非常に珍しく、彼はこのキャンパスの花を風変わりな学生として意識にとどめてはいたのだが。彼女の無駄のない明解なレポートは美しくすらあり、正体を暴かれ、彼はもう舌を巻くほかなかった。 切れ者の編集長エレノア・シュゼッガーなどは…。 「このフレベンス教授の研究論文なんて、単に文学作品の追っかけでくだらないわ。そうでしょ、ラリー・F。」 こう本人の耳元で囁いたというのに。いつもの彼なら、ご高説を拝聴した後、彼女のセクシー・ボディーに拝謁をと決め込むところだが。 「エリー、ある読者からの指摘で気づいたんだが、『タイム・バタフライ』はこの論文にある‘決定論的なのに’というところが抜け落ちているんだ。そこを次作では挑戦しようと考えている。」 ゆうべの彼は取っ掛かりのない金属板といったふうで素っ気なく、美人編集長のあからさまなベッドへの誘いも耳に入らないようだった。 事実は小説より奇なり。 木漏れ日のなか、おかわりした珈琲をジノリの白いカップから啜りながら、アルタからのメールをクリックする。音楽が流れ、ロム兎が跳ね踊り、ヴァイオリンを弾く。哀愁のツィガーヌだ。彼はしばらく頬杖をつきスクリーンを眺めていたが、いきなり笑いを吹きこぼす。そうして、やおら立ち上がると鞄を抱え、店の前に止めていた彼の愛車までピューマの俊足でダッシュする。 助手席でほほえむティガーヌの少女は、赤い帽子で‥。
2013.10.05
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毎日がバースデー って詩を書いた人がいるほどかれた心の鈴がそらいろを瞳にあかるく映した だいじょうぶっていわれた気がして秋桜の畑から たかくたかく 今日生まれたひこうきぐものように私の詩も しろい風に たかくたかく うたった
2013.10.02
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パンダ これでもリズムを守って、けっこう多忙。 多忙 ベッドの横の窓にクモ、がぶらさがって、 図鑑があれば、目は虫めがね。 ・・・・・・好奇的な。 窓 くもり硝子越しは光のいろが射す。 硝子越し 犬の散歩の速さはひくい吐息のテンポでわかる。うっすらとした隙間からのぞく雀の瞳は、つぶらでしずやかな音の断続に人波の青いステップの響きがする。
2013.10.01
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