FLESH&BLOOD 二次創作小説:Rewrite The Stars 6
天上の愛地上の恋 夢小説:千の瞳を持つ女 0
薄桜鬼 昼ドラオメガバースパラレル二次創作小説:羅刹の檻 10
黒執事 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:碧の騎士 2
天上の愛 地上の恋 転生現代パラレル二次創作小説:祝福の華 9
黒執事 転生パラレル二次創作小説:あなたに出会わなければ 5
YOI火宵の月パロ二次創作小説:蒼き月は真紅の太陽の愛を乞う 2
薄桜鬼 現代ハーレクインパラレル二次創作小説:甘い恋の魔法 7
火宵の月 転生オメガバースパラレル 二次創作小説:その花の名は 10
薄桜鬼異民族ファンタジー風パラレル二次創作小説:贄の花嫁 12
薄桜鬼ハリポタパラレル二次創作小説:その愛は、魔法にも似て 5
天上の愛地上の恋 大河転生パラレル二次創作小説:愛別離苦 0
火宵の月 BLOOD+パラレル二次創作小説:炎の月の子守唄 1
PEACEMAKER鐵 韓流時代劇風パラレル二次創作小説:蒼い華 14
黒執事 異民族ファンタジーパラレル二次創作小説:海の花嫁 1
火宵の月 韓流時代劇ファンタジーパラレル 二次創作小説:華夜 18
火宵の月×呪術廻戦 クロスオーバーパラレル二次創作小説:踊 1
薔薇王韓流時代劇パラレル 二次創作小説:白い華、紅い月 10
薄桜鬼 ハーレクイン風昼ドラパラレル 二次小説:紫の瞳の人魚姫 20
天上の愛地上の恋 転生昼ドラパラレル二次創作小説:アイタイノエンド 6
鬼滅の刃×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:麗しき華 1
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:鳳凰の系譜 1
薄桜鬼腐向け西洋風ファンタジーパラレル二次創作小説:瓦礫の聖母 13
コナン×薄桜鬼クロスオーバー二次創作小説:土方さんと安室さん 6
薄桜鬼×火宵の月 平安パラレルクロスオーバー二次創作小説:火喰鳥 7
天上の愛地上の恋 転生オメガバースパラレル二次創作小説:囚われの愛 8
天上の愛地上の恋 昼ドラ風時代パラレル二次創作小説:綾なして咲く華 2
ツイステ×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:闇の鏡と陰陽師 4
ハリポタ×天上の愛地上の恋 クロスオーバー二次創作小説:光と闇の邂逅 2
天上の愛地上の恋 吸血鬼パラレル二次創作小説:夢幻の果て~soranji~ 0
魔道祖師×薄桜鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:想うは、あなたひとり 1
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:月の国、炎の国 1
天愛×火宵の月 異民族クロスオーバーパラレル二次創作小説:蒼と翠の邂逅 0
陰陽師×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:君は僕に似ている 3
黒執事×ツイステ 現代パラレルクロスオーバー二次創作小説:戀セヨ人魚 2
黒執事×薔薇王中世パラレルクロスオーバー二次創作小説:薔薇と駒鳥 27
薄桜鬼×刀剣乱舞 腐向けクロスオーバー二次創作小説:輪廻の砂時計 9
火宵の月×薄桜鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:想いを繋ぐ紅玉 54
天上の愛地上の恋 昼ドラ転生パラレル二次創作小説:最愛~僕を見つけて~ 1
バチ官腐向け時代物パラレル二次創作小説:運命の花嫁~Famme Fatale~ 6
FLESH&BLOOD×黒執事 転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:碧の器 1
腐滅の刃 平安風ファンタジーパラレル二次創作小説:鬼の花嫁~紅ノ絲~ 1
天愛×薄桜鬼×火宵の月 吸血鬼クロスオーバ―パラレル二次創作小説:金と黒 4
黒執事×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:悪魔と陰陽師 1
火宵の月 戦国風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:泥中に咲く 1
火宵の月 地獄先生ぬ~べ~パラレル二次創作小説:誰かの心臓になれたなら 2
PEACEMAKER鐵 ファンタジーパラレル二次創作小説:勿忘草が咲く丘で 9
FLESH&BLOOD ハーレクイン風パラレル二次創作小説:翠の瞳に恋して 20
火宵の月 異世界ファンタジーロマンスパラレル二次創作小説:月下の恋人達 1
天上の愛地上の恋 現代転生パラレル二次創作小説:愛唄〜君に伝えたいこと〜 1
天上の愛地上の恋 現代昼ドラ風パラレル二次創作小説:黒髪の天使~約束~ 2
火宵の月 異世界軍事風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:奈落の花 2
天上の愛 地上の恋 転生昼ドラ寄宿学校パラレル二次創作小説:天使の箱庭 5
天上の愛地上の恋 現代昼ドラ転生パラレル二次創作小説:何度生まれ変わっても… 0
天上の愛地上の恋 昼ドラ転生遊郭パラレル二次創作小説:蜜愛~ふたつの唇~ 0
天上の愛地上の恋 帝国昼ドラ転生パラレル二次創作小説:蒼穹の王 翠の天使 1
名探偵コナン腐向け火宵の月パラレル二次創作小説:蒼き焔~運命の恋~ 1
FLESH&BLOOD ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の花嫁と金髪の悪魔 6
火宵の月 和風ファンタジーパラレル二次創作小説:紅の花嫁~妖狐異譚~ 3
天上の愛地上の恋 昼ドラ風パラレル二次創作小説:愛の炎~愛し君へ・・~ 1
黒執事 昼ドラ風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:君の神様になりたい 4
火宵の月 昼ドラハーレクイン風ファンタジーパラレル二次創作小説:夢の華 0
薄桜鬼腐向け転生刑事パラレル二次創作小説 :警視庁の姫!!~螺旋の輪廻~ 15
FLESH&BLOOD ハーレクイロマンスパラレル二次創作小説:愛の炎に抱かれて 10
PEACEMAKER鐵 オメガバースパラレル二次創作小説:愛しい人へ、ありがとう 8
天愛×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:翼がなくてもーvestigeー 2
薄桜鬼腐向け転生愛憎劇パラレル二次創作小説:鬼哭琴抄(きこくきんしょう) 10
薄桜鬼×天上の愛地上の恋 転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:玉響の夢 5
黒執事×天上の愛地上の恋 吸血鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:蒼に沈む 0
天愛×F&B 昼ドラ転生ハーレクインクロスオーパラレル二次創作小説:獅子と不死鳥 1
天上の愛地上の恋 現代転生ハーレクイン風パラレル二次創作小説:最高の片想い 4
バチ官×天上の愛地上の恋 クロスオーバーパラレル二次創作小説:二人の天使 3
FLESH&BLOOD 現代転生パラレル二次創作小説:◇マリーゴールドに恋して◇ 2
YOI×天上の愛地上の恋 クロスオーバーパラレル二次創作小説:皇帝の愛しき真珠 6
火宵の月×刀剣乱舞転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:たゆたえども沈まず 2
薔薇王の葬列×天上の愛地上の恋クロスオーバーパラレル二次創作小説:黒衣の聖母 3
火宵の月×薄桜鬼 和風ファンタジークロスオーバーパラレル二次創作小説:百合と鳳凰 2
薄桜鬼×天官賜福×火宵の月 旅館昼ドラクロスオーバーパラレル二次創作小説:炎の宿 2
薄桜鬼×火宵の月 遊郭転生昼ドラクロスオーバーパラレル二次創作小説:不死鳥の花嫁 1
天愛×火宵の月陰陽師クロスオーバパラレル二次創作小説:雪月花~また、あの場所で~ 0
薄桜鬼×天上の愛地上の恋腐向け昼ドラクロスオーバー二次創作小説:元皇子の仕立屋 2
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:碧き竜と炎の姫君~愛の果て~ 1
F&B×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:海賊と陰陽師~嵐の果て~ 1
F&B×天愛 昼ドラハーレクインクロスオーバ―パラレル二次創作小説:金糸雀と獅子 1
天愛 異世界ハーレクイン転生ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の巫女 氷の皇子 0
相棒×名探偵コナン×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:名探偵と陰陽師 1
F&B×天愛吸血鬼ハーレクインクロスオーバーパラレル二次創作小説:白銀の夜明け 0
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表紙は、装丁カフェ様からお借りしました。「天上の愛 地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。両性具有·男性妊娠設定あり、苦手な方はご注意ください。二次創作・オメガバースが苦手な方はご注意ください。一部性描写が含まれます、苦手な方はご注意ください。「あっ・・」「どうした、アルフレート?」「いえ、何でもありません・・」 内腿を生温かい体液が伝う感触がして、アルフレートは思わず悲鳴を上げた。(どうして、こんな時に・・) アルフレートは溜息を吐きながら、トイレの個室内で、経血で汚れたスラックスを見た。 アルフレートは、ある“秘密”を持っていた。 それは、彼が半陰陽(両性具有)であるという事だった。 その事を知っているのは、マイヤー司祭と亡くなった幼馴染・ローザと、友人のテオドールだけだった。 男性のΩ自体その存在が珍しいが、半陰陽のΩは稀少価値が高く、それ故に乱獲され、絶滅危惧種とされていた。 そんな“秘密”が周囲に露見したらどうなるのか―アルフレートはそんな事を想像するだけでも恐ろしかった。 発情期(ヒート)の発作はルドルフと番になってから以前より軽くなったが、月経に伴う下腹の鈍痛と出血は、アルフレートが初潮を迎えた頃よりも酷くなっていった。 その痛みを和らげる薬はあるものの、非常に高価な上に入手困難なものなので、アルフレートは月経の間、只管痛みに耐えるしかなかった。 アルフレートはトイレの個室から出てアウグスティーナ教会へと戻ると、同僚から顔色の悪さを指摘され、心配された。「すいません、少し疲れが溜まっているだけですから・・」「余り無理しない方がいいよ。」「ありがとうございます・・」 アルフレートはそう言って仕事に戻ったが、強烈な倦怠感に襲われた。「アルフレート。」「マイヤー司祭様。」「酷い顔をしているね。あとで、わたしの部屋へおいで。」「はい・・」 アルフレートの蒼褪めた顔を見たマイヤー司祭は、彼に生理痛を和らげる薬を手渡した。「これで少しは痛みがマシになる筈だ。」「ありがとうございます。」「この事を、ルドルフ様には・・」「伝えていません。心配をかけさせたくないので・・」「そうか。」「薬、ありがとうございました。」 アルフレートはマイヤー司祭から薬を受け取ると、彼の部屋から出た。「アルフレート!」「ヴァレリー様、フラン様。」「アルフレート、酷い顔をしているけれど、風邪でもひいたの?」「いいえ、少し疲れが溜まっているだけです。」「そう?余り無理しないでね。」「ありがとうございます、ヴァレリー様。」 アルフレートがそう言ってマリア=ヴァレリーに微笑んだ時、彼は下腹の鈍痛に襲われ、その場に蹲った。「アルフレート、どうしたの!?フラン、誰か呼んで来て!」「う、うん!」「マリア=ヴァレリー、フラン、どうした?」「ルドルフ兄様、アルフレートが突然苦しみ出して・・」 アルフレートが苦しそうに喘ぎながら俯いた顔を上げると、そこには蒼い瞳で自分を見つめるルドルフの姿があった。「ルドルフ様、わたしは・・」「フラン、医者をわたしの部屋に呼べ。」「はい、わかりました!」 ルドルフが苦しそうに喘いで廊下に蹲るアルフレートを抱き上げると、彼から微かに血の臭いがする事に気づいた。―アルフレート、お前はわたしのものだ。 闇の中で、自分を呼ぶ声がした。(嫌だ、来るな!)「アルフレート、大丈夫か?」「ルドルフ様、ここは?」「わたしの寝室だ。お前、急に廊下で倒れたから驚いたぞ。」「申し訳ありません・・」「謝るな。まぁ、わたしもお前の事を余り気遣えなくて済まなかった・・お前の身体の事を、知らなかったからな。」 ルドルフはそう言うと、アルフレートの手を握った。「ルドルフ様には、知られたくなかったのです・・こんな、身体の事を・・」「そうか。」 ルドルフの手が、そっとアルフレートの項を愛撫した。「あの、ルドルフ様?」「すまない、こんな状態のお前を見て、欲情してしまった。」「あ・・」 ルドルフのモノが己の腰に当たっている事に気づき、アルフレートは身体の奥が疼くのを感じた。「ルド・・こんな、あぁっ!」「お前の中は、いつにも増してわたしを締め付けて離さない・・」「そんな事、言わないで・・あぁっ」 アルフレートはルドルフによって両足を大きく広げられ、結合部が丸見えになる姿をさせられていた。 ルドルフに突かれる度にアルフレートは頭がクラクラして、何も考えられなくなってしまった。(いけない、こんな・・) まだ発情期(ヒート)は先なのに、ルドルフのラットに誘発され、アルフレートは発情してしまった。「ルドルフ様、もう、抜いて下さい・・」「もう遅い。」「そん・・なぁぁ~!」 アルフレートはルドルフの欲望が中で爆ぜるのを感じ、意識を手放した。 アルフレートを寝台の中に寝かせた後、ルドルフはナイトガウンを羽織り、寝室を出て執務室に入った。 執務机に置かれていた書類に目を通していたルドルフの元に、ヨハン=サルヴァトールがやって来た。「大公、こんな夜遅くに何か用か?」「ルドルフ、お前あいつを番にしたそうだな?」「あぁ。アルフレートとわたしは、“運命の番”だからな。」「あいつをどうするつもりだ、愛人にでもするのか?」「アルフレートは、わたしの妻にする。」「馬鹿を言うな、あいつは・・」「男でもあるが、女でもある。」 ヨハンはルドルフの言葉を聞いて驚愕の余り、絶句してしまった。「ルドルフ、お前はあいつの為に王冠を捨てるというのか?」「アルフレートは、わたしだけのものだ、誰にも渡さない。」 そう言ったルドルフの蒼い瞳は、暗く淀んでいた。「ルドルフ、あいつとは別れた方が良い、手遅れになる前に・・」「わたしに指図するな、大公。」 ルドルフはそう言ってヨハンに背を向け、寝室へと戻った。 寝台の中で眠るアルフレートの艶やかな黒髪を梳いた後、ルドルフはアルフレートの薄い腹を撫でた。―半陰陽だとしたら、彼は子を産めるのか?―はい。 昼間アルフレートを診察した医師の言葉を聞いたルドルフは、アルフレートをますます独占したくなった。(アルフレートはわたしの、わたしだけのΩだ。誰にも渡さない・・)「ん、ルドルフ様・・」「お休み、アルフレート。良い夢を。」にほんブログ村二次小説ランキング
2024年09月12日
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※BGMと共にお楽しみください。「天上の愛 地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。両性具有·男性妊娠設定あり、苦手な方はご注意ください。二次創作・オメガバースが苦手な方はご注意ください。一部性描写含みますので、苦手な方はご注意ください。ルドルフと番になったアルフレートは、さほど日常生活に変化を感じる事はなかった。ただひとつ変わった事といえば、発情期(ヒート)の時に発するフェロモンが少なくなった事だった。「アルフレート。」「ルドルフ様、おはようございます。」「アルフレート、こんな所に居たのね!」ルドルフとアルフレートとの間に割って入って来たのは、マリア=ヴァレリーだった。「マリア=ヴァレリー、アルフレートに何の用だ?」「アルフレート、クリスマスミサはあなたがなさるのでしょう?楽しみだわ~!」「クリスマスミサ?そんな話は聞いていないぞ。」「マイヤー司祭が、体調を崩されてしまったので、わたしが代わりにする事になりまして・・」「そうか。」微かに眉間に皺を寄せたルドルフは、アルフレートに背を向けて去っていった。(ルドルフ様、あなたは一体何をお考えなのですか?)「ト・・アルフレート!」「はい、マイヤー司祭様。」「どうしたんだい、考え事かい?」マイヤー司祭はそう言うと、アルフレートの憂い顔を見た。「ミサの事で・・他の司祭の方に、代わって頂く事は出来ないでしょうか?」「何を言っている、君に足りないのは経験だよ。」「は、はぁ・・」マイヤー司祭の部屋から出たアルフレートは、窓辺に座っているルドルフに気づいた。「ルドルフ様、どうかなさったのですか、そんな所で?」「クリスマスミサの話、受けるんだな。」「は、はい・・」「では、暫くお前と会うのをやめておこう。わたしも丁度忙しくなるし・・それに、わたしの穢れが、これ以上お前を穢さぬように。」「お待ち下さい、ルドルフ様!」アルフレートは慌ててルドルフを追い掛けようとしたが、彼はもう居なくなってしまった。「いよいよ今夜ね、楽しみですわ。」「ルドルフ様はどちらへ?」「ルドルフ兄様は、今夜ロシアの犯罪者の引き渡しがあるらしくて、ミサにいらっしゃるかどうか・・」クリスマスの日、ウィーンには雪が降り、街を白く染めた。「お帰りなさいませ。」ルドルフがスイス宮にある自室に戻ると、そこにはアルフレートが自分の帰りを待っていた。「何をしている、出て行け。」「そんな薄着では、お風邪を召してしまいます・・あぁ、こんなに手が冷えて・・」「離せ、わたしに触れるな!」ルドルフがそう叫んでアルフレートを睨みつけたが、彼はルドルフに優しく微笑み、こう言った。「ルドルフ様、わたしはあなたに一度も穢された事などありません。」そっとルドルフの頬に触れるアルフレートの手は、温かった。「ルドルフ様・・」ルドルフは、そっとアルフレートの腰に手を回し、彼の唇を塞いだ。そのまま流れるように寝室へと入ると、ルドルフはアルフレートの口内を舌で犯しながら彼の胸を愛撫すると、彼は甘い嬌声を上げた。ルドルフは寝台の上にアルフレートを押し倒すと、そのまま彼の白い肌に唇で所有の証をつけた。「あ、ルドルフ様・・」「アルフレート・・」共に甘い時を過ごした後、ルドルフはアウグスティーナ教会へと向かうと、そこには白い法衣姿のアルフレートがミサをしていた。クリスマスミサの後、何故かアウグスティーナ教会にはひっきりなしに告解を求める者達が訪れるようになった。「こんなに忙しくなるとは思っていなかったよ。」「ええ、そうですね・・」「アルフレート、後は頼むよ。」「はい・・」マイヤー司祭が帰り、アルフレートが戸締りを確認していると、告解室の方から何か物音がした事に気づいた。(誰か、居る・・)「誰か、居るのですか?」アルフレートが恐る恐る告解室に入ると、そこには苦しそうに喘ぐルドルフの姿があった。「ルドルフ様、どうなさったのですか?」「アルフレート・・」アルフレートがそっとルドルフに近づくと、彼は尋常ではない程の汗を掻いていた。「何処か、お加減でも悪いのですか?」病弱なルドルフは、人から己の身体を気遣われたりする事を嫌い、己の体調が悪くても決して周りに気づかせず、無茶な事をする。故に、アルフレートはルドルフの様子を見て、すぐさま侍医を呼ぼうとしたが、ルドルフに突然腕を掴まれ、動けなくなってしまった。「何処へ行く?」「侍医を・・」「必要ない。」「ですが・・」アルフレートがルドルフの方を見ると、彼の蒼い瞳は熱く潤んでいた。(もしかして、ルドルフ様は・・)彼の様子を見たアルフレートは、ルドルフがラット、αの発情期(ヒート)を迎えている事に気づいた。「アルフレート・・」「ルドルフ様、ん・・」ルドルフに口内を激しく犯され、アルフレートは意識が微かに遠のき、身体の奥が疼くのを感じた。「アルフレート・・」「ルドルフ様・・」ルドルフに唇と指、舌で愛撫される度、アルフレートは声を上げた。「力を抜け・・」パサリ、と、アルフレートの法衣が床に落とされ、濡れた下肢が露わになり、アルフレートは思わず羞恥の余り俯いてしまった。「ここが、いいのか?」「あうっ!」ルドルフが、己の奥を緩慢な動きで突くのを感じながら、アルフレートは首に提げたロザリオが彼の動きに合わせて小刻みに揺れている事に気づいた。神に仕える身でありながら、自分は禁断の果実を一口齧ってしまった。(神よ、お許し下さい、わたしは・・)「アルフレート、わたしを見ろ・・」「ルドルフ様・・」「今は、何も考えるな・・」「はい・・」ルドルフが己の中で果てるのを感じたアルフレートは、彼の腕の中で意識を失った。彼が目を覚ましたのは、ルドルフの寝台の中だった。「お前の中は、気持ちがいいな・・」「もう、お止め下さい・・あぁっ!」「夜は始まったばかりだ。」「これ以上は・・」「孕め、アルフレート。」漆黒の闇のような天蓋に向かってアルフレートが手を伸ばした時、ルドルフは彼の中で果て、彼の上に覆い被さった。静寂に包まれた寝台の中で、二人は朝まで互いの手を握り合ったまま眠った。雪が、空から降って来た。にほんブログ村二次小説ランキング
2024年08月27日
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表紙は、装丁カフェ様からお借りしました。「天上の愛 地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。両性具有·男性妊娠設定あり、苦手な方はご注意ください。二次創作・オメガバースが苦手な方はご注意ください。娼館でルドルフから罵倒され、夜の街を彷徨っていたアルフレートは、連続殺人犯の男に監禁されたところを、バーベンブルクに救われ、彼と共にこの村へ来た。「アルフレート、まだ動いちゃ駄目よ。傷口が塞がったばかりなんだから。」そう言ってアルフレートの元へと駆け寄って来たのは、村の少女・アンナだった。「わたしを放っておいてくれ!君は、あの男にわたしを監視するよう、命じられて来たのか!」大声で叫んだ所為で、アルフレートは傷口が開いて、痛みで顔を顰めた。「アンナ、こんな所に居たのかい。」「バーベンブルク様!」「アルフレート、さぁ・・」「放っておいて下さい。」「でも・・」「アンナ、おいで。」バーベンブルクがそう言ってアンナの手をひいて村へと戻る姿をアルフレートが見送った時、背後に誰かの視線を感じて振り向いたが、そこには誰も居なかった。「バーベンブルク様はね、3年前にこの村に来たの。いい方だって、父様達が言っているわ。」「そうなのか・・」翌日、アルフレートが村の近くの森を散策していると、アンナが勝手について来て、自分達が住んでいる村の事を彼に話した。「君を見ていると、昔あった子の事を思い出すよ。」「そうなの?アルフレートは、その子の元へ帰りたいの?」「わからない・・わたしには、帰る場所が・・」「おい、お前達、そこで何をしている!?」二人の前に突然現れたのは、オスマン=トルコ帝国軍の兵士達だった。「いえ、わたし達はこの近くの村に住んでいて・・」「そうか。」兵士達はあっさりと引き下がったが、アルフレートは嫌な予感がした。そしてその予感は的中し、トルコ兵が村を襲撃した。アンナの父親は、アンナとアルフレート、バーベンブルクを自宅の地下室へと避難させた。「バーベンブルク様、あなたと会えて幸せでしたよ。」アンナの父親は、別れ際にそう言って微笑むと、地下室の扉を閉めた。村はトルコ兵に焼き尽くされて、アンナの両親を含む村人達は皆殺しにされた。「一緒に来るかい、アンナ?」「うん・・」「アルフレート、お前はお前の道をゆけ。」「アルフレート、元気でね。」バーベンブルクとアンナと別れた後、アルフレートは、己が“帰る場所”へとひたすら歩いた。薄手のシャツ一枚とスラックスという薄着で雪が降る中をアルフレートは歩いていたが、不思議と彼は寒さを感じなかった。アルフレートが失踪してから、ルドルフは娼館に入り浸り、荒れた生活を送っていた。「皇太子様は、一体何をお考えに・・」「全く、どうしたものかしら・・」女官達の噂話を、マリア=ヴァレリーが渋面を浮かべながら聞いていると、フランがすかさず彼女の両耳を塞いだ。「大丈夫、アルフレートはルドルフ兄様の元に帰って来るよ。」「本当?」「本当だよ、きっとアルフレートは帰って来る・・」「フラン様、ヴァレリー様。」二人がそんな事を話していると、そこへアルフレートが現れた。ルドルフが寝室で死んだように横たわっていると、誰かが部屋に入って来る気配がした。それは、黒髪の美しい司祭だった。「わたしは死ぬのかな、枕元に司祭が立っている。」「あなた様の元を勝手に離れた癖に、何度考えても、わたしはあなた様の元に変える事しか考えていませんでした。」そんなアルフレートの言葉を聞いたルドルフは、彼を寝台の上へと押し倒した。「逃げるなっ!わたしの元に戻ったというのなら、わたしに全てを寄越せ!」そう叫んだ、ルドルフの顔は、まるで母の愛を求める幼子のようだった。「わたしは、わたしである事が恐ろしい・・」「ルドルフ様・・」アルフレートがそっと唇をルドルフに寄せると、ルドルフはアルフレートの唇を塞いだ。小鳥同士が啄むようなキスが、徐々に互いの舌を絡め合う激しいものとなった。「アルフレート、手を・・」「見ないで下さい、わたしは・・」バーベンブルクにつけられた背中の傷をルドルフに見せたくなくて、アルフレートはその身を捩って抵抗した。「アルフレート。」そんなアルフレートに、ルドルフは優しく微笑むと、そっと彼の頬の傷を撫でた後、こう言った。「お前の傷は、わたしがつけた、これだけだ。」そこから先は、二人の間に言葉は要らなかった。ルドルフに愛撫された所が、甘く蕩けてゆくのを感じながら、アルフレートは彼に身を委ねた。「あっ、もう・・」「アルフレート・・」己の項に、ルドルフの熱い吐息がかかるのを感じたアルフレートは、彼がこれから何をしようとしているのかがわかった。「噛んでも、良いのか?」「噛んで下さい・・」項に痛みが走った時、アルフレートはルドルフと共に快感の波に浚われ、意識を手放した。「アルフレート、何処に居るの、返事してよ~!」外から、マリア=ヴァレリーが自分を捜す声が聞こえて来た。寝台から起き上がろうとした時、ルドルフは彼の腕を掴み、素早くガウンを羽織ると、寝室の窓を開け放ち、中庭に居るマリア=ヴァレリーに向かってこう叫んだ。「マリア=ヴァレリー、アルフレートは返して貰った、諦めろ!」「お兄様は横暴ですわ~!わたしは認めませんからね、聞いているの、お兄様~!」閉めた窓越しからでも聞こえる、マリア=ヴァレリーの喚き声にアルフレートは慌てた。「ルドルフ様、あれは・・」「ではどうしろと?」「どうしろって言われましても・・」アルフレートがルドルフの言葉に動揺していると、ルドルフが徐に彼の唇を塞いで来た。「揶揄わないで下さい!」そう言ってアルフレートがルドルフを見ると、彼は優しい笑みを浮かべていた。恋人達の、甘い時間が再び始まった。「お兄様、何故なの!?」「ヴァレリー様、落ち着いて下さいませ。」「アルフレートを要らないって言った癖に、返して貰うなんて、身勝手過ぎよ、お兄様!」「ヴァレリー・・」聡いフランは、二人がどうなったのかを知っているだけに、何も言えなかった。「お兄様は、横暴よ~!」「もうよしなよ、ヴァレリー・・」にほんブログ村二次小説ランキング
2024年08月23日
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表紙は、装丁カフェ様からお借りしました。「天上の愛 地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。両性具有·男性妊娠設定あり、苦手な方はご注意ください。二次創作・オメガバースが苦手な方はご注意ください。バーベンブルクによって凌辱され、心身共に深い傷を負ったアルフレートは、ルドルフを拒絶した。擦れ違う二人の想いに比例するかのように、ルドルフの体調が悪化していった。病弱な身体に加え、ルドルフはα特有の本能に苦しめられていた。それは、目の前のΩを、アルフレートを孕ませたいというものだった。彼の全身から―アルフレートから漂う他のαのフェロモンの残り香を、ルドルフは消したかった。しかし、アルフレートに拒絶され、ルドルフは誰にも言わずに、一人で本能に抗っていた。そんな中、何者かに扇動され、デマに踊らされ、反ユダヤ思想を掲げた暴徒達が、皇帝とイタリア国王が居るシェーンブルンに向かって行進している事を知り、ルドルフは彼らの前に立ち、暴徒達を鎮めた。立っているだけでも精一杯だったルドルフは、ローザとアルフレートの姿を見て、彼の名を叫んだ。「ルドルフ様・・」彼が自分の名を呼んだ時、ルドルフは彼を抱き締めていた。メルクの事件の後、アルフレートはウィーン大学に入学した。一見彼の心の傷は癒えたかのように思えたが、アルフレートは悪夢にうなされ、それを振り払うかのように勉学に励んだ。二人の間に生じた溝は、埋まるどころかますます深まるばかりだった。そんな中、皇太子暗殺を目論む者達が現れ、彼らの背後にバーベンブルクの存在を知ったルドルフは、ヨハン=サルヴァトールと共にバーベンブルクを討とうとしていた。「アルフレート、どうしたの、暗い顔をして?」「ローザ、僕はどうすればいいんだろう?僕はもう、穢れてしまった・・」「アルフレート、何があっても、あなたはルドルフ様の元に戻らなくちゃ駄目なのよ。」「でも・・」「大丈夫、あなたなら・・」ローザの言葉は、アルフレートには響かなかった。ルドルフと気まずい関係が続く中、アルフレートはルドルフの妹・マリア=ヴァレリーに気に入られ、英国へと発つエリザベート達と同行する事になった。イシュルでの火事を知り、ルドルフの元へと向かったアルフレートだったが、彼を待っていたのは幼馴染の死だった。「浮かない顔をしているのね、アルフレート。」「皇妃様・・」渡英して一月後、アルフレートが溜息を吐きながら窓の外を見ていると、そこへエリザベートがやって来た。「ルドルフの事を考えているの?」「いいえ、わたしは・・」「あなたを要らないと言った時、わたしは信じられなかったわ。ルドルフがわがままをわたし達に言ったのは、あなたをバイエルンからウィーンへと連れて帰りたいと頑として譲らなかった時の、ただ一度だけよ。あの子は、わたしの前・・いいえ、フランツの前ではオーストリアの皇太子らしくあろうとしていたわ。ジゼルに、ルドルフがあなたの前では子供らしい顔をしていたとわたしに手紙で教えてくれたわ。」「ジゼル様が?」「わたしは、母親失格ね。ジゼルもルドルフもわたしの子供なのに、我が子の事を全く知らないなんて・・」「皇妃様・・」これ以上、エリザベートの話を聞いてはいけないような気がして、アルフレートが口ごもった時、マリア=ヴァレリーの声が聞こえた。「アルフレート、マリア=ヴァレリーと、ルドルフをお願いね。」「は、はい・・」アルフレートがエリザベート達と共に英国からウィーンへと戻った後、ルドルフとの関係は冷え切ったままだった。「ねぇフラン、“きょうき”って何ですの?」「わからないなぁ。それよりもヴァレリー、そろそろ戻らないと・・」「あ、お兄様だわ!」茂みの中で舞踏会の様子を除いていたフランことフランツ=サルヴァトール、マリア=ヴァレリー、アルフレートだったが、フランとマリア=ヴァレリーが口論を始め、茂みの中から飛び出してしまった。「ア、アルフレートぉ・・」「お嬢さん、一緒に踊りませんか?」ルドルフとマリア=ヴァレリーが踊っている姿を見たアルフレートは、もう子供の頃のような、純粋な気持ちには戻れないと思った。(わたしは、どうすれば良いのだろうか?)そんな事をアルフレートが考えながら歩いていると、彼は突然男に刃物で腕を刺された。「お前が・・お前の所為で!」錯乱した男はアルフレートを更に刃物で傷つけようとしたが、その前に人の気配を感じ、闇の中へと逃げていった。「あなた、大丈夫?」「はい・・」「腕から血が出ているわ、手当てをしてあげるから、わたしと一緒に来て。」そう言ってアルフレートをオペラ座へと連れていったのは、オペラ座の舞姫・ミリだった。ミリがアルフレートの腕の怪我の手当てをしていると、そこへミリの同僚達が現れた。彼女達の口から、“ジャンナ”という聞き慣れない名が出て来たので、それがヨハンの愛称だという事をミリから知り、アルフレートは驚いた。「あの、どうして私の事を・・」「ジャンナから、色々と愚痴を聞いたのよ。特に、ルドルフ様とあなたの事をね。あの噂は本当なのかどうかわからないけれど・・」「噂?」「最近、ルドルフ様がいかがわしい娼館に入り浸っているという話よ。まぁ、そんなのは・・」「詳しく教えて下さい!」ミリから、ルドルフがいかがわしい娼館に入り浸っているという噂を聞いたアルフレートがその娼館へと向かうと、そこには女達と裸で戯れるルドルフの姿があった。「服を脱いでこちらへ来い。」ルドルフがそんな冗談を言ってアルフレートの方を見ると、彼は本当に服を脱ぎ始めたので、ルドルフは怒りの余り彼の頬を打った。「あなた様は、こんな所に居る方では・・」「一度わたしから離れた癖に、今更戻って来て親切の押し売りか!?ふざけるな!」ルドルフはそうアルフレートに怒鳴ると、彼の唇を塞いだ。逃げようとするアルフレートの腕を掴んで逃げられないようにすると、彼は首に提げた十字架を握った。(こんな時に、神に縋るのか・・)「出て行け。」アルフレートを部屋から追い出したルドルフは、娼館の女主人と戯れた。「お兄様の馬鹿、アルフレートが居なくなったのは、お兄様の所為なんだからっ!」王宮へ戻ったルドルフは、マリア=ヴァレリーからそう詰られ、アルフレートが失踪した事を知った。そして、ウィーンを騒がせた連続殺人犯が潜伏していた部屋にルドルフが警官隊と突入すると、そこには連続殺人犯と思しき男の遺体と、鎖が切れた十字架があった。アルフレートは、バルカン半島にある、小さな村に居た。にほんブログ村二次小説ランキング
2024年08月23日
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表紙は、装丁カフェ様からお借りしました。「天上の愛 地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。両性具有·男性妊娠設定あり、苦手な方はご注意ください。二次創作・オメガバースが苦手な方はご注意ください。その言葉で、アルフレートは全てを悟った。自分が王宮へ連れて来られたのは、“口封じ”の為だった。(僕は・・)ルドルフとの関係を修復出来ぬまま、アルフレートは皇帝一家と共に、バート・イシュルと向かった。「アルフレート、君は狩りに興味はあるかい?」「いいえ・・」「そうか。さてと、わたしはもう休むとするよ。」「お休みなさいませ。」フランツ=ヨーゼフは、そう言うとジゼルの額にキスをして、自室へと下がっていった。「あ~あ、つまんないわ。この休暇が終わったら、お母様は旅へ出てしまわれるし、アルフレートはメルクへ行ってしまうのでしょう。」「ジゼル様・・」「そういえば、ルドルフは何処に居るのかしら?」「僕が、ルドルフ様を捜しに行って参ります。」城館から出たアルフレートがルドルフを捜していると、彼はアレクサンダーと共に夜空に広がる星を見上げていた。「こんな所に居たら、お風邪を召されますよ。」「うるさい・・」「まだ、僕がメルクに行く事を拗ねていらっしゃるのですか?」「う、うるさいっ!」図星だったようで、ルドルフは顔を赤くしてアルフレートにそっぽを向いた。「ルドルフ様、僕は今のままだと、あなたの隣に立てる力がありません。だから、僕がメルクに行くのをお許し頂けませんか?」「ぼ、僕の許しなどなくても、お前はメルクに行くのだろう?」「はい。メルクで多くの事を学んで、あなたの力になりたいのです。」「綺麗だな。こんな星空の中に、天上の神はいるのだろうか?」「いらっしゃると思います。ですが、僕の地上の神は教会ではなく、あなたです、ルドルフ様。」アルフレートの言葉を聞いたルドルフは、目を大きく見開いた後、アルフレートにこう言った。「大きく、出たな。」ルドルフの笑顔を、アルフレートは初めて見たような気がした。その後、ルドルフが熱を出してしまって、ジゼルや女官達からアルフレートはこっぴどく叱られてしまった。「それでは、行って参ります。」「気を付けてね、アルフレート。ねぇアルフレート、こんな事を聞いてもいいのかわからないけれど・・あなた、まだ発情期(ヒート)は来ていないの?」「それは・・」Ωには三ヶ月に一度、発情期(ヒート)というものがある。それは繁殖に特化したΩだけが持つ発情フェロモンを放ち、αを誘うものだった。それ故にΩは“劣等種”として社会から蔑まれ、迫害されて来た。「これ、抑制剤よ。お守り代わりに持っておいて。」「ありがとうございます。」ジゼルから抑制剤を受け取ったアルフレートは、メルクへと旅立っていった。「どうしたのルドルフ、そわそわして?」「別に・・「もしかして、アルフレートからの手紙を待っているの?」「そ、そんなんじゃない!」(あらら、図星みたいね。)ジゼルがそんな事を思っている頃、アルフレートはメルクで初めて発情期(ヒート)を迎えた。「はぁっ、はぁっ・・」絶え間なく襲う激しい疼きに、アルフレートは耐えるしかなかった。地獄のような一週間を過ごした後、アルフレートはジゼルの結婚式に参列する為、皇帝一家と共にミュンヘンへと向かった。「ジゼル様、おめでとうございます。」「ありがとう、アルフレート。」ミュンヘンでジゼルの結婚式に参列した後、ウィーンに戻ったルドルフはアルフレートを連れてウィーン市内の賑わいを馬車の窓から見ていた。「メルクへ帰る?」「ええ。」「メルクへ行って、もう5年だぞ?いつでも帰ると言っていたのに・・」「ルドルフ様、ジゼル様が居なくなられてお寂しいのですね?」「馬鹿を言え!アルフレート、僕はお前を神にくれてやったつもりはないからな!」ルドルフはそう言うと、馬車から出て行ったが、人混みの中で起きた騒ぎに巻き込まれ、足を負傷してしまった。アルフレートがルドルフを抱き上げた時、彼はバイエルンに居る筈の幼馴染・ローザと再会した。「元気そうで良かったわ。」「ローザ、君も元気そうで良かった。」ローザと彼女の雇い主に礼を言い、ルドルフとアルフレートが王宮へと戻った数日後、ローザの雇い主が自殺した。その自殺の原因はわからないが、彼女の他にも何人かが“不審な自殺”を遂げている事がわかった。彼らの共通点は、熱心なカトリック教徒だという事と、ベルトルト=バーベンブルクに心酔していたという事だった。「ルドルフ様、この件はわたしにお任せください。」「アルフレート。」「わたしは、大丈夫ですから。」ルドルフは、その時アルフレートの手を離してしまった事を、酷く悔いるようになる。メルクへと戻ったアルフレートは、メルクの隠し通路からバーベンブルクが行うミサを目撃し、彼に捕えられてしまう。「アルフレート、君は強情な子だね?己が不利な状況に置かれているにも関わらず、わたしの元に来ようとしない。」「“あれ”は何ですか?」「わたしは、彼らの後押しをしているだけですよ。わたしは、神の代わりに彼らの全てを受け取った。あぁ、神に感謝を!」「あなたは狂っている・・」「狂っているのは、この世界ですよ。わたしは、この時代に神となって生まれたのです!」「あなたは、自分が支配する国が欲しいだけ・・」バーベンブルクはアルフレートの頬を平手打ちし、彼に威嚇フェロモンを放った。「う・・」「通常ならば、この量のフェロモンを浴びたΩは発狂して死んでしまう。だが君は、正気を保っている・・あぁやはりそうか、君が皇太子の“運命の番”か・・ふふ、これは楽しくなりそうだ。」アルフレートは逃げようとしたが、両手足を縛られてなす術がなかった。「怯える事は無い。わたしは、皇太子から君を奪うだけだ。」「やっ・・」「生まれながらに全てを持った皇太子・・彼が一番、こたえる方法で、ね・・」(ルドルフ様、助けて・・)アルフレートがメルクへ戻ってから数日以上経ったが、彼の消息が突然途絶え、苛立ちと不安を抱えながらバーベンブルクに探りを入れたが、あっさりとかわされた上に彼から脅迫された。―アルフレートは、メルクに居る。己の奥底に眠る、αの本能に従い、ヨハン=サルヴァトールと共にアルフレートの友人を巻き込みメルクへと乗り込んだ。ルドルフが目にしたものは、残酷な現実だった。にほんブログ村二次小説ランキング
2024年08月22日
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表紙は、装丁カフェ様からお借りしました。「天上の愛 地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。両性具有·男性妊娠設定あり、苦手な方はご注意ください。二次創作・オメガバースが苦手な方はご注意ください。(あれは、一体何だったんだろう?)湖で起きた衝撃的な“事件”の後、あの美しく蒼い瞳をした少年は、使用人達と何処かへ消えてしまった。「アルフレート、どうしたの、ボーッとしちゃって。」「ごめん・・」(嫌な事は早く忘れよう。)そんな事を思いながら、アルフレートが掃除をしようと窓から離れた時、何処か慌てた様子の神父が彼の元へとやって来た。「ア、アルフレート、大変だ!」神父と共に教会の外へと向かうと、そこには豪奢な馬車が一台、停まっていた。「アルフレート=フェリックス様、ルドルフ皇太子の命により、あなた様をお迎えに上がりました。」(ルドルフ・・オーストリアの皇太子だ!)ハプスブルク家の皇太子が、一介の孤児である自分に何の用なのだろう―そんな事を思いながら、アルフレートは彼の部屋へと向かった。「この間は、ごめんなさ・・うわぁ~!」部屋に入ったアルフレートは、黒くて大きい犬を見て、驚きの余り叫んでしまった。「アレクサンダー、おいで。」寝台の中に居た少年―ルドルフは、そう言って愛犬を呼んだ後、入口の近くに立ったまま動こうとしないアルフレートを見た。「君は元気そうだね、アルフレート。」「あ、あの、僕・・」「あの後情けない事に熱が出てしまってね。まぁ、色々と寝込んでいた方が、都合が良いんだよね。アルフレート、彼は自殺としてではなく、病死として処理されたよ。まぁ、当然だよね。自殺じゃ、葬儀が出せないから。」口調は穏やかだったが、自分を見つめる蒼い瞳は鋭かった。「ねぇアルフレート、君は自殺をどう思っているの?」「僕は、流行病で両親を亡くしました。両親が亡くなる際、“命は神様から貸し与えられたものだから、粗末にしてはならない”と言われました。」「へぇ・・アルフレート、神様は嘘もお赦しにならないんじゃないの?」「え・・」「君は、何処から見ていたの?」「僕は・・」アルフレートは、ルドルフから目を逸らした。「あの、失礼な事をしてしまったのなら、僕はもう帰ります。」「勝手に何処かへ行く事は、僕が赦さないよ。」ルドルフはそう言うと、苛烈な光を宿した蒼い瞳でアルフレートを見つめた。「君はウィーンに行くんだ、僕と一緒に。」こうして、アルフレートはルドルフと共にウィーンへと向かう事になった。ウィーンは、静かな山村で暮らしていたアルフレートにとって、刺激的な場所だった。「アルフレート、資料の整理は終わったのかい?」「はい、マイヤー司祭様。」アウグスティーナ教会で、父親代わりのマイヤー司祭の元で彼の手伝いをしながら、アルフレートは宮廷暮らしに慣れていった。「今日はルドルフ様の聖体拝領式だから、色々と忙しいけれど、アルフレート、君が居てくれて助かったよ。」「いえ・・」「そうだ、今日から君がいつも王宮図書館に入れるよう、許可を取っておいたよ。これからは、いつでも本が読めるようになるよ。」「ありがとうございます!」(ルドルフ様があの子を連れて来た時はどうなるかと思っていたけれど、アルフレートがここに馴染んでくれてよかった。)マイヤー司祭はそんな事を思いながら、廊下を駆けてゆくアルフレートの背中を見送った。ルドルフの聖体拝領式は滞りなく終わった。「アルフレート、その手紙は?」「ジゼル様・・これは、えっと、その・・」「もしかして、故郷に残した恋人に宛てたものね!」ルドルフの姉・ジゼルからそう指摘され、顔を赤くして俯いた。「ち、違いますっ!」「赤くなってムキになるところがあやしいわ!」「ふぅん、お前にもそんな相手が居たとはな。」「ル、ルドルフ様・・」アルフレートが背後を振り向くと、そこには何処か不機嫌そうな表情を浮かべているルドルフが立っていた。「違います、僕は・・」「行くぞ、アレクサンダー。」ルドルフはアルフレートにそっぽを向くと、そのまま何処かへ行ってしまった。「どうしちゃったのかしらね、あの子?ヤキモチかしら?」「さ、さぁ・・」「ねぇ、アルフレートは本当にメルク行きの話を断るの?」「はい。今までよくして頂いているのに、これ以上は・・」アルフレートがそんな事をジゼルと話していると、アレクサンダーの泣き声が庭園の方から聞こえて来た。「ルドルフ様!?」ルドルフの元へとアルフレートとジゼルが駆け付けると、苦しそうに息をしながら生垣にもたれかかるルドルフの姿があった。「どうかされたのですか?」「うるさい、僕に構うな!」アルフレートがルドルフに声を掛け、彼の肩に触れようとしたが、ルドルフはそんな彼の手を邪険に振り払った。「ルドルフ様・・」「ルドルフ様、あなた凄い熱じゃないの!誰か、誰か来て頂戴!」アルフレートは居てもたってもいられず、ルドルフの華奢な身体を抱き上げた。「何をする、下ろせ!」「暴れないで下さい!」アルフレートがそう言ってルドルフを見ると、彼はアルフレートにそっぽを向いた。「ジゼル様、ルドルフ様は・・」「あの子は、生まれつき病弱でね、次から次へと病気をして、周りが神経質になっちゃったものだから、他人に自分の身体を気遣われるのが一番嫌いなのよ。まぁ、今は少し丈夫になったけれどね・・」ルドルフの熱は、数日後に下がった。そんな時に、長い間ウィーンを留守にしていたフランツの妻でありルドルフ達の母でもあるエリザベート皇妃がハンガリーから帰って来た。「アルフレート、皇妃様がお呼びだよ。」「え!?」マイヤー司祭と共にエリザベート皇妃の元へと向かったアルフレートは、緊張で顔が強張っていた。「こ、皇妃様には、ご機嫌麗しく・・」「堅苦しい挨拶など要らないわ、同じバイエルン出身ではないの。」俯いた顔を上げたアルフレートは、エリザベートの美しさに暫し見惚れてしまった。「皇妃様、そろそろ・・」(え、帰って来られたばかりなのに・・)「アルフレート、メルクで頑張ってお勉強していらっしゃい。」アルフレートがルドルフの方を見ると、彼は何処かへ行ってしまい、アルフレートは慌ててルドルフを追い掛けた。「ルドルフ様、メルクの事は初耳だったんです、僕は・・」「お前は、あんな女にしっぽを振って!」頬に激痛が走り、アルフレートはルドルフに鞭で打たれた事に気づいた。「君はとっくに、僕の共犯者だ!」そう叫んだルドルフは、涙を流していた。にほんブログ村二次小説ランキング
2024年08月20日
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※BGMと共にお楽しみください。「天上の愛 地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。両性具有·男性妊娠設定ありです、苦手な方はご注意ください。二次創作・オメガバースが苦手な方はご注意ください。シュテファン寺院、シェーンブルン宮殿―ウィーンの観光名所を歩きながら、ルドルフは隣を歩いているアルフレートの姿を、“誰か”の姿と重ねていた。(誰だろう?)「ルドルフ様、どうかなさいましたか?」「いや、少し歩いていたから疲れた・・」「少し、休みましょうか?」二人は、ウィーン市内にあるカフェで少し早めの昼食を取る事にした。「ウィーンに来てから、変な感覚に襲われる。」「変な感覚?」「あぁ。初めて来たのに、以前にも来た事があるような気がするんだ。」「デジャ・ヴというものですか?」「もしかしたら、もしかしたらだが・・ここへ来たのは、わたし達の高祖父の導きかもしれないな。」「ええ・・」アルフレートと共にカフェを出たルドルフは、ホーフブルク宮殿へと向かった。宮殿の中に足を一歩踏み入れた途端、ルドルフは己の胸の鼓動が高鳴るのを感じた。「ルドルフ様?」(ここは・・何もかも知っている・・ここは、かつてわたしが住んでいた所だ・・)脳裏に浮かぶ、“過去”の記憶。それらすべてに、“彼”が居た。(あぁ・・これは・・)かつての自分の、記憶なのだと。「大丈夫なのですか?」「大丈夫だ。」アルフレートからハンカチを手渡され、ルドルフは自分が泣いている事に気づいた。「みっともない姿を見せてしまったな。」「いいえ・・それよりも、わたしも何だかここが妙に懐かしいような気がするのです。」スイス宮の廊下を歩きながら、アルフレートは窓に映る己の姿が、“誰か”のものと重なるような気がした。何だか、ルドルフと同様、アルフレートも次々と脳裏に、ここで過ごした“日々”の記憶が浮かんで来た。(ここは・・どうして忘れていたんだろう・・ここは、わたしが“あの方”と過ごした、大切な場所だ。)「アルフレート?」「ルドルフ様、やっとデジャ・ヴの正体が判りました。わたし達は、きっと“昔”のわたし達に導かれてここへやって来たのかもしれませんね。」「そうだな。」ホーフブルク宮殿からホテルへと戻ったルドルフとアルフレートは、そんな事を話しながらアルフレートの高祖父の日記を読んでいた。「お前の高祖父は、几帳面な性格だったようだな?」「ええ。ですから、小説を書く時には大いに助かりました。」「それにしても、この写真がいつ撮られたものなのかが気になるな。」「えぇ・・」自分達の高祖父が、どのように出逢い、生きて来たのかを知りたくて、アルフレートは日記帳の最初のページを捲った。『この日記を、誰よりも大切なあの方との思い出に捧げる。アルフレート=フェリックス 1855~1925』 そんな文章の下に、高祖父の流麗な文字が並んでいた。『今、目を閉じても、あの方と出逢った日の事を思い出す。バイエルンの、美しく澄んだ湖と同じような蒼い瞳をした、あの方の事を―』高祖父の日記を読み進めてゆく内に、アルフレートは深い眠りの底へと引き摺り込まれてしまった。「アルフレート、起きてよ、起きてったら!」1855年、バイエルン・シュタルンベルク湖畔にある村で、アルフレート=フェリックスは生を享けた。この世には、男と女、そして“第二性”と呼ばれるものがある。王侯貴族などの特権・支配階級が多く属するα、聖職者や医師などを占める中流階級や、労働者階級など、人口の多くが属するβ、そして繁殖に特化した“劣等種”であるΩ。アルフレートは、医師の診察を受け、Ωだと判った。 幸い、幼馴染のローザや自分の養い親である神父はβであった為、彼の日常は今までと何も変わらなかった。「アルフレート、起きなさいったら!」「ん・・」涼しい日陰で休んでいる内に、いつの間にか眠ってしまったらしい。ゆっくりと目を開けると、アルフレートの前には少し呆れたような顔をしたローザの姿があった。「ごめん、ローザ。」「もう、早く畑仕事を終わらせて、お茶を・・」「・・ここは小さな村です、あの子が生きてゆくのは・・」「ごめんローザ、おばさんにお茶はまた今度と言っておいて。」「ちょっと、アルフレート!?」アルフレートは村から出ると、無我夢中に湖まで走った。流行り病で両親を亡くし、小さな村でΩの自分がこの先生きてゆくのは難しいと、わかっていた。何の後ろ盾もない、孤児である自分がどう生きてゆけばいいのかわからない―アルフレートは、そう思いながらシュタルンベルク湖の蒼く煌めく水面を見つめていた。(神様、どうすれば早く大人になれますか?どうすれば、誰の力も借りずに生きる事が出来ますか?)そうアルフレートが神に向かって問い掛けても、神は何も答えてくれなかった。(もう村に戻らないと・・ローザが心配しているだろうし。)アルフレートがそんな事を思いながら湖を後にしようとした時、一発の銃声が響いた。(今のは・・)銃声が聞こえた方へとアルフレートが向かうと、そこには血塗れの男が木の根元にもたれかかるように倒れており、男の前には一人の少年が屈んで何かをしていた。「その人、死んで・・」「君、名前は?」 そう言った少年は、美しく澄んだ瞳で、アルフレートを射抜くように見つめた。その時、アルフレートは胸の鼓動が高鳴り、立っていられない程息苦しくなった。『ねぇ、アルフレートは“運命の番”って知ってる!?』『“運命の番”?』『出逢ったら最後、死ぬまで離れない運命の相手なんだって!ロマンティックだとは思わない?』『うん、そうだね。』その時、アルフレートは“運命の番”は単なるお伽話だと思っていた。だが今、彼は自分の前に立っている少年が自分の“運命の番”だという事に気づいた。(どうして・・こんな・・相手は、子供なのに・・)何とか俯いていた顔を上げると、少年もアルフレートに何かを感じているのか、視線をアルフレートから外さなかった。「どうしたの、自分の名前も言えないの?」「ぼ・・僕は、アルフレートだけれど、君は・・」「ルドルフ様~!」「ルドルフ様、どちらにおられますか~!」遠くから、女達が誰かを呼ぶ声が聞こえた。「この人、急に銃を口に咥えて・・アルフレート、君も見ていたよね!?」「は、はい・・」ルドルフと呼ばれた少年が兵士に抱きかかえられた時、アルフレートは彼が笑ったように見えた。にほんブログ村二次小説ランキング
2024年08月02日
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※BGMと共にお楽しみください。「天上の愛 地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。両性具有・男性妊娠設定あり、苦手な方はご注意ください。二次創作・オメガバースが苦手な方はご注意ください。2020年、アメリカ・NY。世界中で謎のウィルスが猛威をふるい、ロックダウンされた地区で暮しているアルフレート=フェリックスは、忙しなくパソコンのキーボードを叩きながら、ある小説を仕上げようとしていた。それは、自分の高祖父にあたる同姓同名の司祭―厳密に言えば元司祭だが―が、第一次世界大戦後、身寄りのない孤児達にその生涯を捧げた彼の足跡と功績を描いたものであった。「ふぅ・・」アルフレートはブルーライトカットの眼鏡を外して溜息を吐いた後、すっかり冷めてしまったコーヒーを流しに捨てた。空腹を覚えた彼は、冷蔵庫の中からパンとチーズを取り出して簡単なサンドイッチを作ると、それを一口齧った。数日前に近くのスーパーで買い物を済ませたばかりだというのに、冷蔵庫の中にはワインとパン、そしてチーズしか残っていない。この僅かな食糧でこのロックダウン期間中を乗り切る事が出来るのか―アルフレートがそんな事を考えていた時、誰かがアパートの呼び鈴を鳴らした。「どちら様ですか?」自衛の為に所持している拳銃をデスクの引き出しから取り出したアルフレートは、恐る恐る拳銃を構えながらドアチェーンを解除した。「わたしだ、アルフレート。」「ルドルフ様・・」恋人の顔を見た途端、安堵の表情を浮かべた。「物騒なものを下ろせ。」「すいません・・」「最近、連絡が来ないから、心配してみたが・・元気そうで安心した。」「ルドルフ様、どうしてこちらへ?」「そろそろ、抑制剤が切れる頃だと思ってな。」ルドルフはそう言うと、アルフレートに抑制剤が入った袋を手渡した。「ありがとうございます。」「今、何をしていたんだ?」「高祖父の生涯を題材に小説を書いていたんです。」「そうか。」ルドルフは、アルフレートの為に持って来た食糧を冷蔵庫に入れていると、ワインボトルが一本入っている事に気づいた。「これ、空けていいか?」「いいですよ。今夜は、飲みたい気分なんです。」アルフレートは小説の執筆を中断すると、ルドルフと共に軽い夕食を取った。「その本は?」「これは、高祖父の日記です。」古い革張りの日記帳をアルフレートから受け取ったルドルフは、日記帳の内表紙に一枚の写真が貼られている事に気づいた。その写真には、司祭服姿のアルフレートの高祖父と、軍服姿の自分の高祖父の姿が写っていた。「これは・・」「高祖父がかつて勤務していたアウグスティーナ教会で見つけました。まさか、隣に写っておられるのがルドルフ様の高祖父様だったなんて、驚きました。」「わたしもだ。」ルドルフは、そう言うと写真に写っている自分の高祖父―ルドルフ=フランツ=カール=ヨーゼフ=フォン=オーストリア、オーストリア=ハンガリー帝国皇太子を見た。「アルフレート、明日付き合って欲しい所があるんだが、いいか?」「はい。」翌日、アルフレートがルドルフと共に向かったのは、ルドルフの自宅にある書斎だった。「高祖父の書斎に、こんな本があった。」「“Ω迫害の歴史”・・ルドルフ様の高祖父様は、αだったのですか?」「あぁ。それに、お前の高祖父とわたしの高祖父は、恋人同士だったのかもしれないな。」「何故、それがわかったのですか?」「高祖父が南米で農園を経営していた事は知っているだろう?その頃の写真に、君の高祖父と写っている写真が多いし、それに、ペアリングが見つかった。」ルドルフがアルフレートに見せたペアリングは、互いの誕生石が嵌め込まれ、“from R to A”と裏に彫られていた。「アルフレート、わたしの高祖父とお前の高祖父との関係を軸に書いてみたらどうだ?」「面白そうですね。」ルドルフの助言を受け、アルフレートはルドルフの書斎を時折借りながら、小説の執筆に励んだ。だが―「わからない・・」「何が、わからないんだ?」「何故、あなたの高祖父が、身分を捨て、わたしの高祖父と暮らしたのだろうと・・」「そこが最大のミステリーだな。少し休め、根詰めると疲れるぞ。」「わかりました。」アルフレートは、暫く小説の執筆を休み、ルドルフと共に高祖父達の故郷であるウィーンで休暇を取る事にした。「何だか、この街は100年以上経っても変わらないな。」「ええ・・」にほんブログ村二次小説ランキング
2024年07月30日
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