F&B 腐向け転生パラレル二次創作小説:Rewrite The Stars 6
薄桜鬼 昼ドラオメガバースパラレル二次創作小説:羅刹の檻 10
黒執事 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:碧の騎士 2
天上の愛 地上の恋 転生現代パラレル二次創作小説:祝福の華 10
黒執事 転生パラレル二次創作小説:あなたに出会わなければ 5
YOI火宵の月パロ二次創作小説:蒼き月は真紅の太陽の愛を乞う 2
薄桜鬼 現代ハーレクインパラレル二次創作小説:甘い恋の魔法 7
火宵の月 転生オメガバースパラレル 二次創作小説:その花の名は 10
薄桜鬼異民族ファンタジー風パラレル二次創作小説:贄の花嫁 12
薄桜鬼ハリポタパラレル二次創作小説:その愛は、魔法にも似て 5
天上の愛地上の恋 大河転生パラレル二次創作小説:愛別離苦 0
火宵の月 BLOOD+パラレル二次創作小説:炎の月の子守唄 1
PEACEMAKER鐵 韓流時代劇風パラレル二次創作小説:蒼い華 14
黒執事 異民族ファンタジーパラレル二次創作小説:海の花嫁 1
火宵の月 韓流時代劇ファンタジーパラレル 二次創作小説:華夜 18
火宵の月×呪術廻戦 クロスオーバーパラレル二次創作小説:踊 1
薔薇王韓流時代劇パラレル 二次創作小説:白い華、紅い月 10
薄桜鬼 ハーレクイン風昼ドラパラレル 二次小説:紫の瞳の人魚姫 20
天上の愛地上の恋 転生昼ドラパラレル二次創作小説:アイタイノエンド 6
鬼滅の刃×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:麗しき華 1
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:鳳凰の系譜 1
薄桜鬼腐向け西洋風ファンタジーパラレル二次創作小説:瓦礫の聖母 13
コナン×薄桜鬼クロスオーバー二次創作小説:土方さんと安室さん 6
薄桜鬼×火宵の月 平安パラレルクロスオーバー二次創作小説:火喰鳥 7
天上の愛地上の恋 転生オメガバースパラレル二次創作小説:囚われの愛 8
天上の愛地上の恋 昼ドラ風時代パラレル二次創作小説:綾なして咲く華 2
ツイステ×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:闇の鏡と陰陽師 4
天愛×腐滅の刃クロスオーバーパラレル二次創作小説:夢幻の果て~soranji~ 0
ハリポタ×天上の愛地上の恋 クロスオーバー二次創作小説:光と闇の邂逅 2
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:月の国、炎の国 1
天愛×火宵の月 異民族クロスオーバーパラレル二次創作小説:蒼と翠の邂逅 0
陰陽師×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:君は僕に似ている 3
黒執事×ツイステ 現代パラレルクロスオーバー二次創作小説:戀セヨ人魚 2
黒執事×薔薇王中世パラレルクロスオーバー二次創作小説:薔薇と駒鳥 27
薄桜鬼×刀剣乱舞 腐向けクロスオーバー二次創作小説:輪廻の砂時計 9
火宵の月×薄桜鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:想いを繋ぐ紅玉 54
天上の愛地上の恋 昼ドラ転生パラレル二次創作小説:最愛~僕を見つけて~ 1
バチ官腐向け時代物パラレル二次創作小説:運命の花嫁~Famme Fatale~ 6
FLESH&BLOOD×黒執事 転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:碧の器 1
腐滅の刃 平安風ファンタジーパラレル二次創作小説:鬼の花嫁~紅ノ絲~ 1
天愛×薄桜鬼×火宵の月 吸血鬼クロスオーバ―パラレル二次創作小説:金と黒 4
黒執事×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:悪魔と陰陽師 1
火宵の月 戦国風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:泥中に咲く 1
火宵の月 地獄先生ぬ~べ~パラレル二次創作小説:誰かの心臓になれたなら 2
PEACEMAKER鐵 ファンタジーパラレル二次創作小説:勿忘草が咲く丘で 9
FLESH&BLOOD ハーレクイン風パラレル二次創作小説:翠の瞳に恋して 20
火宵の月 異世界ファンタジーロマンスパラレル二次創作小説:月下の恋人達 1
天上の愛地上の恋 現代転生パラレル二次創作小説:愛唄〜君に伝えたいこと〜 1
天上の愛地上の恋 現代昼ドラ風パラレル二次創作小説:黒髪の天使~約束~ 3
火宵の月 異世界軍事風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:奈落の花 2
天上の愛 地上の恋 転生昼ドラ寄宿学校パラレル二次創作小説:天使の箱庭 5
天上の愛地上の恋 昼ドラ転生遊郭パラレル二次創作小説:蜜愛~ふたつの唇~ 0
天上の愛地上の恋 帝国昼ドラ転生パラレル二次創作小説:蒼穹の王 翠の天使 1
名探偵コナン腐向け火宵の月パラレル二次創作小説:蒼き焔~運命の恋~ 1
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火宵の月 和風ファンタジーパラレル二次創作小説:紅の花嫁~妖狐異譚~ 3
天上の愛地上の恋 昼ドラ風パラレル二次創作小説:愛の炎~愛し君へ・・~ 1
黒執事 昼ドラ風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:君の神様になりたい 4
天愛×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:翼がなくてもーvestigeー 2
魔道祖師×薄桜鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:想うは、あなたひとり 1
火宵の月 昼ドラハーレクイン風ファンタジーパラレル二次創作小説:夢の華 0
薄桜鬼腐向け転生刑事パラレル二次創作小説 :警視庁の姫!!~螺旋の輪廻~ 15
FLESH&BLOOD ハーレクイロマンスパラレル二次創作小説:愛の炎に抱かれて 10
PEACEMAKER鐵 オメガバースパラレル二次創作小説:愛しい人へ、ありがとう 8
天上の愛地上の恋 現代昼ドラ転生パラレル二次創作小説:何度生まれ変わっても… 0
薄桜鬼腐向け転生愛憎劇パラレル二次創作小説:鬼哭琴抄(きこくきんしょう) 10
薄桜鬼×天上の愛地上の恋 転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:玉響の夢 5
黒執事×天上の愛地上の恋 吸血鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:蒼に沈む 0
天愛×火宵の月陰陽師クロスオーバパラレル二次創作小説:雪月花~また、あの場所で~ 0
天愛×F&B 昼ドラ転生ハーレクインクロスオーパラレル二次創作小説:獅子と不死鳥 1
天上の愛地上の恋 現代転生ハーレクイン風パラレル二次創作小説:最高の片想い 4
バチ官×天上の愛地上の恋 クロスオーバーパラレル二次創作小説:二人の天使 3
FLESH&BLOOD 現代転生パラレル二次創作小説:◇マリーゴールドに恋して◇ 2
YOI×天上の愛地上の恋 クロスオーバーパラレル二次創作小説:皇帝の愛しき真珠 6
火宵の月×刀剣乱舞転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:たゆたえども沈まず 2
薔薇王の葬列×天上の愛地上の恋クロスオーバーパラレル二次創作小説:黒衣の聖母 3
火宵の月×薄桜鬼 和風ファンタジークロスオーバーパラレル二次創作小説:百合と鳳凰 2
薄桜鬼×天官賜福×火宵の月 旅館昼ドラクロスオーバーパラレル二次創作小説:炎の宿 2
薄桜鬼×火宵の月 遊郭転生昼ドラクロスオーバーパラレル二次創作小説:不死鳥の花嫁 1
薄桜鬼×天上の愛地上の恋腐向け昼ドラクロスオーバー二次創作小説:元皇子の仕立屋 2
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:碧き竜と炎の姫君~愛の果て~ 1
F&B×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:海賊と陰陽師~嵐の果て~ 1
F&B×天愛 昼ドラハーレクインクロスオーバ―パラレル二次創作小説:金糸雀と獅子 1
天愛 異世界ハーレクイン転生ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の巫女 氷の皇子 0
相棒×名探偵コナン×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:名探偵と陰陽師 1
F&B×天愛吸血鬼ハーレクインクロスオーバーパラレル二次創作小説:白銀の夜明け 2
名探偵コナン×天上の愛地上の恋 クロスオーバーパラレル二次創作小説:碧に融ける 0
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「PEACEMEKER鐵」の二次創作小説です。沖田さんが女性という設定です。苦手な方はご注意ください。捏造設定あり、オリジナルキャラ多めです。苦手な方はご注意ください。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。 歳三と雪は京都観光を終えた後、歳三が泊まっている宿へと向かった。「お父様、お仕事お忙しいのではなくて?」「大丈夫だ。それよりも雪、お前ぇはちゃんと勉強しているのか?」「ええ。」 そう言って笑う雪の顔は、総司にそっくりだった。「最近、俺に縁談が来てな・・そのことをお前ぇに伝えようと思って来たんだ。」「再婚ねぇ・・お父様が再婚なさることにわたしは反対しないわ。お相手によるけれど。」「そうか。」 歳三は窓の外からかつて青春時代を過ごした京の街を眺めた。 この街で大きな夢を抱き、仲間達と共に過ごした日々は、今になって思い出しても宝石のようにキラキラとしたものだった。 あの頃の仲間達とは、戦が起きてから離散してしまったり死別したりして居なくなってしまったが、時折歳三は晩酌をしながら彼らの事を思い出すのだった。「ねぇお父様、昔の事をもっと教えてよ。」「昔の話なんざ聞いてどうする。」「だってお父様の若い頃がどんなものだったのかを知りたいのよ。」「しょうがねぇなぁ・・」 雪にねだられ、歳三は仕方なく若い頃の話を彼女にした。「雪、お前ぇこれからどうするんだ?」「将来の事は、まだ考えていないわ。ただ、お父様とお母様みたいに素敵な仲間達と出会えたらいいなって思ったわ。」「そうか、そうだな・・」 翌日、雪は歳三と宿の前で別れ、女学校の学生寮へと戻っていった。「ねえ土方さん、昨日寮にいらした方って、土方さんのお父様なの?」「ええ、そうよ。」「素敵な方ね、土方さんのお父様!背が高くて何処か渋みがあって、その上とても洋装がお似合いだわ。」「そうかしら?別にわたしはお父様の事をそんなに素敵だとは思わないわ。」「嫌だ土方さん、貴方はお父様の魅力に気づいていらっしゃらないからそんな事が言えるのよ!」 そう言ってはしゃぐ友人の姿に雪は首を傾げた。 そんなある日、体育の授業があり、雪達は薙刀を習う事になった。「雪さんは、薙刀を習うのははじめて?」「いいえ。昔父に剣術と薙刀の稽古をつけて貰ったわ。」「そうなの。」 やがて薙刀の授業が始まり、生徒達はそれぞれ一対一形式で試合をすることになった。 雪の対戦相手は、明治政府高官の娘だった。「はじめ!」 幼少の頃から薙刀と剣術を父親から厳しく教えられた雪と、薙刀に触れたことがほぼ皆無の初心者である娘との実力差は火を見るよりも明らかだった。「土方さん、見事だったわ。」「有難うございます、先生。」 雪はそう言って対戦相手に礼をすると、息を弾ませながら友人達の元へと向かった。「土方さん、凄いわ!」「そんな事ないわ、日頃の鍛錬のお蔭よ。」雪が友人達とそんな話をしていると、突然憎悪に満ちた声が背後から響いた。「いい気になるんじゃないわよ、逆賊の娘の癖に!」「逆賊ですって、お父様が?」「貴方、知らないの?貴方の父親は、天子様に弓引いた逆賊、壬生狼だったのよ!」 雪はその言葉を聞いて、怒りで血が沸騰した。にほんブログ村
2023年05月09日
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「PEACEMEKER鐵」の二次創作小説です。沖田さんが女性という設定です。苦手な方はご注意ください。捏造設定あり、オリジナルキャラ多めです。苦手な方はご注意ください。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。 戊辰の戦の後、鉄之助は函館で歳三と別れ、斎藤の家で世話になっていたが、数年前に恋人の沙夜と所帯を持ち、彼女との間にもうすぐ子が産まれる。「市村君、先程土方さんから電報が届いた。沖田さんが亡くなられたそうだ。」「そうですか・・沖田さん、土方さんと娘さんを残して亡くなるなんて、辛いだろうなぁ・・」「愛する者との死は辛いが、その者の魂は滅びない。愛する者がその人を思い出す限り、その人の魂は生き続けるのだ。」斎藤の言葉に、鉄之助は亡くなったかつての仲間達に想いを馳せた。「市村君、もうすぐ父親になるんだろう?」「はい・・本当は沙夜の傍に居てやりてぇけど出来ないから、遠くから沙夜の無事を祈っています。」「新選組に来た時は小さい坊主だった君が、もう父親か・・時が経つのはあっという間だな。」 斎藤がそう言って感慨に耽っていると、遠くから銃声が聞こえた。「市村君、必ず生きて帰るぞ。」「はい!」 鹿児島で起きた日本最後の内戦・西南戦争は西郷隆盛の自刃で幕を閉じた。「お父様、どうしたの?」「いや、何でもない。それよりも雪、もうすぐ支度しねぇと学校に遅れるんじゃねぇのか?」「あ、そうだった!お父様、行って参ります!」「気を付けて行けよ。」 艶やかな黒髪を揺らしながら馬車へと乗り込む雪に向かって手を振った歳三の頬は自然と弛んでいた。「旦那様、鹿児島から郵便です。」「そうか、有難う。」 執事から斎藤の文を受け取った歳三は、書斎でその文に目を通した。 そこには、鹿児島で鉄之助と再会したこと、戦が終わり鉄之助は沙夜と子供が待つ東京へと戻ったことなどが書かれていた。「あいつが父親か・・市村なら、良い父親になれるだろうな。」 1883(明治16)年4月、京都。 歳三と総司の娘・雪は、京都の女学校に通い、寮生活を送っていた。 母譲りの剣の腕前と、父譲りの聡明さで、雪は女学校の中で人気者となっていた。「雪様、今日もお美しいわ。」「いつ見てもお召し物が素敵ね。」 遠巻きに雪を眺めながらそう囁き合う下級生達の視線を感じながら、雪は学校から寮へと戻った。「土方さん、お父様がいらっしゃっているわよ。」「わかりました。」 部屋に荷物を置いた雪は、寮の食堂に居る父に抱きついた。「お父様、お会いしたかった!」「雪、元気そうで良かった。」歳三はそう言って愛娘の頭を撫でると、頬を弛ませた。 その後、雪は歳三と共に両親が青春時代を過ごした京の街を歩いた。「何だか不思議ね、お父様とお母様が青春時代を過ごした京の街をお父様と一緒に歩いているなんて。」「そうだな・・」 桜が咲く京の街を歩きながら、歳三は総司達と過ごした日々の事を思い出していた。―土方さん 総司が自分を呼んだような気がして歳三は背後を振り返ったが、そこには誰も居なかった。「お父様?」「いや、何でもねぇ。」にほんブログ村
2023年05月09日
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「PEACEMEKER鐵」の二次創作小説です。沖田さんが女性という設定です。苦手な方はご注意ください。捏造設定あり、オリジナルキャラ多めです。苦手な方はご注意ください。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。「それでは、わたしはこれで失礼いたします。」「斎藤さん、もう帰ってしまうのですか?」「ええ。もっと土方さん達とお話ししたいことがあるのですが、明朝早くにここを発つことになっております。」「そうですか・・では、お気をつけてお帰り下さいね。」 病院の前で総司と歳三が斎藤と別れ、病室に戻ると、そこでは雪が斎藤から貰った絵本を読んでいた。「雪、その絵本は斎藤さんから貰ったの?」「うん。英語で書かれているけれど、わたし全部読めるわ。」「そう、凄いねぇ。お母様にも見せて。」雪から絵本を受け取った総司がそれを開いて見ると、その絵本は美しいイラストとともに全編英語で書かれていた。「この絵本ね、“不思議の国のアリス”っていうの。洞穴に落ちて不思議な世界に迷い込んでしまった女の子のお話なんですって。」「へぇ、何だか面白そうね。読み終わったら、お母様にもこの絵本を貸してね。」「うん!」「雪、帰るぞ。」「え~、まだ一緒にお母様と居たい。」歳三がそう言って雪の方を見ると、彼女は駄々をこねて総司の傍から離れようとしなかった。「我儘(わがまま)言うんじゃねぇ。」「雪、お母様は急にいなくなったりしないから、安心してお家に帰りなさい。」「本当に?本当に急にいなくなったりしない?」「本当だよ。」「また来るわね、お母様。それまで元気で居てね。」雪はそう言うと、歳三に手をひかれながら総司に向かって手を振った。「ねぇお父様、お母様はいつお家に帰って来るの?」「それは解らねぇよ。ただ、お前ぇが我儘言ってお母様を困らせたらいけねぇよ。」「うん。」 “その日”は、桜が満開の頃にやって来た。「お母様、まだ死んじゃ嫌だ!お母様と一緒に居たい!」「雪、ごめんね。お母様は、天国から雪の事を見守っているからね。」総司はそう言って泣きじゃくる娘の頬を優しく撫でると、歳三に向かって手を伸ばした。「歳三さん・・雪の事を、宜しくお願いしますね。」「ああ、解っているよ。総司、俺達の事は心配するな。」歳三は涙を堪えながら総司の手を握ると、彼女は弱々しく歳三に微笑んだ。「貴方と会えて、本当に良かった・・」総司はそう呟いた後、ゆっくりと目を閉じた。「お母様?」「総司、おい、目を開けろ!」 幕末の動乱を新選組一番隊組長として生き抜いた沖田総司は、愛する夫と娘に看取られながら、33歳の生涯に幕を閉じた。総司の訃報が鹿児島に居る斎藤の元に届いたのは、彼女の死から一週間後の事だった。 斎藤がふと空を見上げると、そこには近藤と手を取り合って空の中へと消えてゆく総司の姿があった。(沖田さん、今頃は近藤さん達と楽しくやっているだろうな・・)「斎藤さん、こんな所に居たんですか?」「今は斎藤ではなく、藤田だと何度も言っただろう、市村君。」「すいません、昔の呼び方の方が呼びやすいので、つい癖で呼んでしまいました。」 そう言って斎藤に向かって屈託のない笑みを浮かべたのは、歳三の小姓であった市村鉄之助だった。にほんブログ村
2023年05月09日
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「PEACEMEKER鐵」の二次創作小説です。沖田さんが女性という設定です。苦手な方はご注意ください。捏造設定あり、オリジナルキャラ多めです。苦手な方はご注意ください。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。「あなた、誰?」 そう言って雪が男を見つめると、彼は驚愕の表情を浮かべた。「沖田さん・・」「あなた、お母様の事を知っているの?」男の口から母の旧姓が出て来たので、雪は彼に対する警戒心を解いた。「済まないね、突然話しかけて。わたしは藤田五郎、君は?」「雪よ、土方雪。」「君のお父様は何処に居るんだい?」「お父様なら、病院に居るわ。わたしが案内してあげる!」雪はそう言って男に微笑むと、彼と共に病院へと向かった。「雪、何処に行っていたんだ、心配したんだぞ!」「ごめんなさい、お父様・・」 病院に雪と男が着くと、中から歳三が出て来て安堵の表情を浮かべながら雪を抱き締めた後、彼女の隣に立っている男の方へと視線を移した。「斎藤、お前ぇ斎藤か?」「今は藤田ですよ、土方さん。」男はそう言うと、頭に被っていた制帽を脱いで歳三に向かって頭を下げた。「お久しぶりです、土方さん。」 数分後、男―元新選組三番隊組長・斎藤一は、病院の応接室で歳三と向かい合って紅茶を飲んでいた。「お前ぇはてっきり会津で戦死したと風の噂に聞いたが・・まさか生きていたとはな。」「戊辰の戦の後、会津で所帯を持ち、今まで東京で暮らしておりました。土方さんの消息が気になって今まで調べておりましたが、まさか神戸で成功しておられたとは思いませんでした。」「そうか、お前ぇも所帯を持ったのか・・その制服は警視庁のものだな?これから何処へ行くんだ?」「今、九州で士族達の反乱が起きている事をご存知ですか?」「ああ。何でも明治政府と袂を分かった西郷隆盛が、政府に不満を持つ士族達に呼び掛けて反乱が起きたとか・・新聞でそんな事が書かれていたな。」「その反乱を鎮めるため、わたしは警視庁抜刀隊の一員として鹿児島へ赴くことになりました。会津で無念に死んでいった者達への弔い合戦として、戦って参ります。」 斎藤の言葉を聞いた歳三の脳裏に、幕末の京で新選組副長として駆け抜けた日々の事が浮かんだ。「必ず無事に家族の元に帰れよ、斎藤。あの頃の事を後世に語り継げるのは俺とお前、そして新八だけだ。」「はい、解りました。それよりも先ほど、娘さんにお会い致しました。沖田さんと瓜二つの顔をしていらっしゃいますね。」「雪に会ったのか。あいつは最近、総司の小さい頃に似ていやがる。成長すればさぞや美人になるだろうさ。今の内に悪い虫がつかねぇようにしねぇと・・」「京で散々浮名を流していた土方さんも、今では立派な父親ですね。」「まぁな。守りてぇものがあると、生きていられるのさ。」歳三がそう言って斎藤と笑い合っていると、応接室に総司が入って来た。「斎藤さん、お久しぶりです。」「沖田さん、久しぶりだね。」総司と9年振りに再会を果たした斎藤は、彼女の蒼褪めた顔を見て彼女の死期が迫っている事に気づいた。「さっき土方さんと君の娘さんについて話をしていたところだ。本当に、雪ちゃんは君とそっくりだね。」「ふふ、そうですか?でもわたしと似ているのは顔だけで、性格は土方さんにそっくりなんですよ。最近土方さんが俳句を詠んでいる事を知って、詩を書いたりしているんですって。」そう言って嬉しそうな顔をする総司は、母親の顔になっていた。「それに最近、土方さんたら捨て猫を拾って来ては使用人の皆さんを困らせるんですよ。」「総司、それは言うな!」「別に隠す事でもないでしょう?」にほんブログ村
2023年05月09日
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「PEACEMEKER鐵」の二次創作小説です。沖田さんが女性という設定です。苦手な方はご注意ください。捏造設定あり、オリジナルキャラ多めです。苦手な方はご注意ください。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。 鳥羽・伏見の戦いで惨敗した新選組をはじめとする旧幕府軍は、富士山丸で大坂から江戸へと向かった。 負傷者を乗せている船内は、絶えず血の臭いに満ちていた。「ねぇ、お願いだから泣き止んで。」総司は空腹を訴える雪に母乳を与えようとしたが、労咳に罹った上に少し栄養失調気味だった彼女は、まったく母乳が出なかった。(どうしよう、このままじゃみんなに迷惑を掛けちゃう。)焦っても、母乳は一滴も出ない。泣きじゃくる雪をあやしながら、総司は自分も泣きそうになった。その時、部屋に歳三が入って来た。「総司、これを雪にやれ。」「有難うございます。」 歳三が総司に渡したのは、米の研ぎ汁に白湯を入れたものだった。「これだったら、雪の乳代わりになるだろう。」「わたしがいけないんですよねぇ、雪にお乳をあげることもできないなんて・・」「そんなに自分を責めるな、総司。江戸に着いたら、光さん達に雪を見せてやれるな。」「ええ・・きっと姉様達、驚くでしょうね。」「ああ。光さん達には俺の方から説明するから、お前ぇは何も心配せずに休んでろ。最近雪の夜泣きが酷くてお前ぇ全然寝てねぇだろう?」「はい・・」「雪は俺が面倒を見る。」「じゃぁ、お願いしますね。」 歳三が雪を抱いて自室へと戻ると、総司は七日ぶりに熟睡した。 雪の子守を始めてした歳三だったが、彼女は空腹を訴えた後、おむつが汚れている事を訴えて泣き始めた。「今換えてやるから、泣くんじゃねぇよ。」歳三は雪をあやしながら彼女のおむつを換えると、一晩中彼女が泣き止むまであやし続けた。 赤ん坊の雪はよく夜泣きをする手のかかる赤ん坊だったが、歳三にとってはこの世で最も愛おしい存在だった。 その娘を、歳三は傷つけてしまった。 娘に総司の病状を知られない為に、歳三は娘に下手な嘘を吐いた―その報いを今、受けたのだ。(俺ぁ、これからどうすればいいんだ・・)「歳三さん・・」「総司、余り無理するんじゃねぇ。」 病室で総司の手を握っていた歳三は、彼女が目を覚ましたことに気づいた。「雪は、何処に居るんですか?」「総司、済まねぇ。俺は今まで、お前ぇの病状を雪には伝えなかった・・あいつには、お前ぇの病がすぐに治ると嘘を吐いたんだ。」「そうですか・・でもそれは、雪を傷つけたくないから、吐いた嘘なんですよね?」「あぁ、そうだが・・それがどうした?」「土方さんって、優しい人だけど、不器用なんですよね、やり方が。」総司はそう言って笑うと、歳三を見た。「人を心配させまいと嘘を吐いたり、わざと憎まれ役になったり・・昔から、土方さんは不器用で優しい人なんですよね。」「う、うるせぇ!」「そんなに赤くならなくてもいいじゃないですか。雪には、わたしから言い聞かせておきますから、土方さんはあの子の事を探してあげてください。」「わかった・・」 歳三が雪の姿を探している頃、雪は自宅の近くにある公園で白詰草を摘みながら泣いていた。(お父様なんて大嫌い。)「君、もうすぐ日が暮れるよ?」 突然背後から声を掛けられて雪が振り向くと、そこには見知らぬ洋装姿の男が居た。にほんブログ村
2023年05月09日
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「PEACEMEKER鐵」の二次創作小説です。沖田さんが女性という設定です。苦手な方はご注意ください。捏造設定あり、オリジナルキャラ多めです。苦手な方はご注意ください。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。「先生、あいつは・・総司は、あとどれくらいの命なのでしょうか?」「長く持って一年、短く持って半年です。お嬢様には、奥様の余命は知らせてはいらっしゃらないのですね?」「はい。」歳三の言葉に、総司の主治医は渋い顔をした。「お嬢様には、一刻も早く奥様の事をお伝えした方がよろしいでしょう。奥様がお亡くなりになった時、お嬢様に奥様の事を説明して差し上げられるのは、土方様しかおりませんから。」「はい・・」 主治医の部屋から出て、総司が居る病室へと廊下を歩きながら、歳三はこんなにも早く妻との別れの時が迫っている事を思い知らされ、呆然としていた。 (もしあの時、俺が総司に子を諦めろと強く言っていたら、こんな事にはならなかったはずだ。) 総司の病状は、雪を出産してから悪化の一途を辿った。男である自分には一生解らないが、出産というものは女性の身体にとって大きな負担がかかるもので、総司のように労咳に罹っている身では更に大きな負担がかかる。 自分の命と引き換えにしてでも、総司は歳三との間に出来た愛の結晶をこの世に産みだしたかったのだ。 その結晶―二人の娘である雪が生まれたのは、京に初雪が降った9年前の冬の事だった。 1868(明治元)年1月―奇しくも鳥羽・伏見の戦いが始まる前に、総司は療養先である大坂で産気づいた。 労咳に罹り体力が急激に落ちた総司の出産は、稀に見る難産だった。近藤から無事に総司が女児を出産し、母子ともに無事であるという文を歳三が受け取ったのは、3日後の事だった。 その後歳三が娘と対面を果たしたのは、旧幕府軍が新政府軍に惨敗し、新選組が大坂に引き上げた時だった。「総司、よく頑張ったな。」「土方さん、可愛いでしょう?早くこの子に名前を付けてあげてください。」「この子の名前は雪だ。将来はお前ぇに似て美人になるだろうよ。」「ふふ、そうですね。土方さん、この子を抱いてあげてください。」 歳三が総司から雪を受け取ると、腕全体に彼は命の重みを感じた。 戦いの最中、まだ赤子だった雪は、今では元気に尋常小学校に通っている。 9年もの月日は、歳三にとって長いようで短く感じられた。「お母様、しっかりして!」「雪、どうした?」「お父様、お母様が血を吐いたの!お父様を呼んでは駄目だって言われたけれど、わたし・・」 そう言った雪の目には、涙が溜まっていた。「総司!」 歳三が総司の病室のドアを開けると、中には医師と看護婦が数人居て、ベッドの上で喀血している総司の処置に当たっていた。「先生、妻は大丈夫なのですか!?」「申し訳ありませんが、暫く外に出てください。」医師に促され、歳三は雪と病室から出た。中からは、総司が苦しそうに咳込む声が聞こえた。「お父様、お母様はいつお家に帰って来るの?」「雪、俺は今までお前に嘘を吐いていた。お母様は、もう永くはねぇ。」 歳三の言葉を聞いた雪の瞳が、大きく見開かれたかと思うと、彼女はそこから大粒の涙を流した。「お父様どうしてわたしに嘘を吐いたの!?お父様なんて大嫌い!」「雪!」 雪は歳三と繋いでいた手を振り払うと、彼に背を向けて何処かへ行ってしまった。(お前ぇを傷つけたくなかった・・それなのに、結局俺ぁお前ぇを傷つけちまった。)にほんブログ村
2023年05月09日
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「PEACEMEKER鐵」の二次創作小説です。沖田さんが女性という設定です。苦手な方はご注意ください。捏造設定あり、オリジナルキャラ多めです。苦手な方はご注意ください。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。「お母様、これお家のお庭で摘んできたの!」雪はそう言うと、リボンで束ねた白詰草の花束を総司に手渡した。「有難う。」「ねぇお母様、来年のお花見が楽しみね。」「ええ、そうね。」 娘の艶やかな黒髪を優しく梳きながら、総司は彼女を身籠った時の事を思い出していた。 池田屋で喀血し、伊東達が屯所を襲撃した時に総司は歳三の子を身籠っていることに気づいた。 二月前から体調が優れないのは、労咳の所為だと思い込んでいた総司だったが、月のものが遅れていることに気づいた。元から食が細く、労咳に罹ってから更に食欲が落ちていた総司であったが、つわりが酷くなり益々食欲がなくなっていった。「総司、腹の子は諦めて欲しい。」「どうして、そんな事を言うんですか?」「お前ぇは労咳に罹っている。そんな身体じゃぁ、腹の子を産むまでもたねぇかもしれねぇ。」「嫌です。」「総司、お願いだから聞き分けてくれ。」「土方さん、わたしはこの子を産みたいんです。貴方と愛し合った証を、この世に産みたいんです。」「総司・・」 歳三は苦痛に満ちた顔で、総司を見た。 華奢な身体は病の所為でますます痩せ細り、目の下には隈が出来ていた。こんな身体で子供を産むなど無理だと歳三は思い込んでいた。 だが総司は、頑として子供を産みたいと言い張った。女は強い―歳三は総司のそんな姿を見て、労咳に罹りながらも自分を育ててくれた亡き母と姉の姿を彼女に重ねていた。 総司に折れた歳三は、松本良順医師と山崎に総司の妊娠を報告した。「沖田さんが出産するいうんは、並の事ではありません。健康な女子がお産の時に死ぬことも多いいうのに、ましてや沖田さんは労咳に罹っている身。最悪の事態を考えておかなあきまへん。」「最悪の事態、だと?」「母子共にお産で亡くなるいうことです。これからは沖田さんには無理をさせんようにしてください。」「解った。」 歳三が山崎の部屋から出て行き、副長室へと戻ろうとした時、開かれた襖の隙間から、総司が縫物をしている姿が見えた。 時折まだ膨らんでもいない下腹を撫でながら、総司は赤子の産着を人は一針一針丁寧に縫っていた。「総司、身体の調子がいいのか?」「はい。何もすることがないので、縫物でもしようかなと思って。」「余り無理をするんじゃねぇぞ。」「わかっていますって。それよりも土方さん、この子の名前、考えておいてくださいね。」「俺が考えるのかよ?」「だって、あんなに素晴らしい俳句を作る土方さんだったら、きっとこの子にも良い名前をつけてくれるかなぁって思って!」「・・てめぇ、後で覚えてろよ?」歳三は眉間に皺を寄せながらそう言って総司を睨みつけると、彼女は軽やかな声で笑った。 今にして思えば、この時が自分達夫婦の幸せな時間だったかもしれない。 乱世の只中に生きながらも、歳三の隣には常に総司の存在があった。だが、今は―「残念ですが、奥様の体調は余り芳しくありません。そろそろ覚悟しておいた方がよろしいでしょう。」にほんブログ村
2023年05月09日
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「PEACEMEKER鐵」の二次創作小説です。沖田さんが女性という設定です。苦手な方はご注意ください。捏造設定あり、オリジナルキャラ多めです。苦手な方はご注意ください。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。 新選組一番隊組長であり新選組最強の剣士・沖田総司は、女として生を享けた。 歳三が総司と男女の関係となったのは、総司が元服した日の事だった。 総司は元服し、名を宗次郎から総司へと改めた。「おめでとう宗次郎、これでお前も大人の仲間入りだな!」「有難うございます、若先生。」「くだらねぇ。元服したっていっても、まだ餓鬼だろうが。」「トシ、お前は相変わらず宗次郎に厳しいな。」「宗次郎、後でここへ来い。」「は、はい・・」 歳三が指定した場所は、試衛館から少し離れた出逢い茶屋だった。「土方さん、どうしてこんな所へわたしを呼び出したのですか?」「宗次郎・・いや、総司、お前ぇはまだ生娘か?」「と、突然何を言い出すんです?」「生娘かって聞いてんだ、早く答えろよ。」「生娘に決まってるでしょう!一体何なのですか、こんな所へわたしを連れて来て、わたしに何をするつもりなのですか!?」「お前を抱く為にここへ来たんだ。」歳三はそう言うと、総司を褥の上に押し倒した。「いや、やめてください!」総司は歳三から逃れようと暴れたが、歳三の強靭な身体はビクともしなかった。「総司、こうして俺に組み敷かれる気分はどうだ?てめぇが女だっていう事を思い知らされるだろう?」そう言って総司を見つめた歳三の瞳は、獰猛(どうもう)な獣のそれだった。「どうして、こんなことをするんです?」「どうしてだと?惚れた女を抱く事に何の理由があるってんだ?」「土方さん・・」「ずっとこの日を待っていた。お前ぇが大人の女となる日を・・」歳三はそう言うと、総司の唇を塞いだ。総司は歳三を押し退ける事をせず、寧ろ歳三の唇を求めた。彼女が歳三と互いの唇を貪り合っていると、歳三の手が総司の着ている小袖の中へと入り、少し膨らみかけた乳房を揉み始めた。「ん、はぁっ!」歳三の手が自分の乳房に触れた途端、甘い痺れが総司の全身に走った。それは、今までに感じたことがない感覚だった。その様子に満足したかのように、歳三は空いている方の手を総司の秘所へと伸ばした。「や、そこは・・」「安心しろ、痛いようにはしねぇよ。」歳三はそう言って総司に優しく微笑むと、彼女の秘所に顔を埋めた。それから、総司は歳三に初めて抱かれた。初めは痛くて辛かったが、歳三はまるで壊れ物のように総司を優しく抱いてくれた。「土方さん・・」「総司、愛している。」「土方さん・・わたしも、貴方を・・」 愛しています。 総司が閉じていた目を開け、ベッドから起き上がって窓の方を見ると、そこには神戸の美しい街が一望できた。(何だ、夢か・・)彼女がそんな事を思いながら溜息を吐いていると、ドアの方から元気な娘の声が聞こえて来た。「お母様~!」 総司が窓から視線を外し、ドアの方を見ると、そこには自分と瓜二つの顔をした娘と、愛する夫の姿があった。にほんブログ村
2023年05月09日
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「PEACEMEKER鐵」の二次創作小説です。沖田さんが女性という設定です。苦手な方はご注意ください。捏造設定あり、オリジナルキャラ多めです。苦手な方はご注意ください。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。 1877(明治10)年5月11日。 その日、土方歳三が函館・五稜郭にて戦死した“命日”である筈だった。だが―異国情緒あふれる神戸の街に、かの人は居た。「お父様~!」「おお雪、どうした?」 土方歳三が自宅の書斎で書類仕事をしていると、そこへ白詰草を両手に抱えた一人の少女が入って来た。 母親から艶やかな黒髪と、黒真珠のような美しい瞳を受け継いだ少女は、父親に向かって笑顔を浮かべ、彼に白詰草の花束を差し出した。「お庭で四つ葉のクローバーを見つけたの、お父様にあげる!」「おぉ、有難うよ。」歳三は娘の頭を優しく撫でると、掌の中にある四つ葉のクローバーを見つめた。『土方さん、西洋ではこれ、“くろぉばぁ”って言うのですって。この四つの葉には、それぞれ花言葉があって、“愛・勇気・愛情・希望”って素敵なものなんですって。』 ふと歳三が目を閉じれば、脳裏に初めて総司が歳三に四つ葉のクローバーを見せた時の光景が浮かんだ。 それは、まだ上洛して間もない頃で、その時総司は健康そのものだった。 あの頃は、同じ夢を抱いた仲間達―近藤や平助、そして山南が居た。「お父様、どうして泣いているの?」娘からそう言われて初めて、歳三は自分が泣いている事に気づいた。「いや、何でもねぇ。なぁ雪、今日はお母様のお見舞いに行こうか?」「うん!」 書類仕事を終えた歳三は、娘と共に妻が入院する病院へと徒歩で向かった。「お父様、肩車して~!」「ったく、しょうがねぇな。しっかり掴まれよ。」「うん!」歳三が娘を肩車していると、通行人達から好奇の視線を浴びたが、娘はそんな事を気にせずに楽しそうに笑った。 こうしていると、歳三は日野で娘と同じ年頃だった総司を肩車していた時の事を思い出していた。「ねぇお父様、お母様いつお家に帰って来るの?」「まだお母様はお家に帰ることは出来ねぇが、お前が良い子にしていればお母様の病気はきっと治るよ。」「本当?」「ああ。」 歳三は娘を安心させる為に嘘を吐いた。妻の―総司の病はもう治らない。池田屋で喀血し、不動堂村にある屯所に火が放たれて御陵衛士が襲撃された時、歳三は総司が不治の病に罹っている事を知ってしまった。“お願いです土方さん、貴方の傍に居させてください。”あの時―喀血している総司は、そう言って歳三に縋った。総司を失いたくない―その一心で、歳三は総司にこう言った。『馬鹿、俺がお前ぇを捨てる訳ねぇだろうが。』 総司を捨てることなど―総司なしの人生を送ることなど、歳三は考えられなかった。 その時、総司は自分の子を腹に身籠っていたのだから。にほんブログ村
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