F&Bハーレクインパラレル二次創作小説:Rewrite The Stars 6
薄桜鬼 昼ドラオメガバースパラレル二次創作小説:羅刹の檻 10
黒執事 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:碧の騎士 2
天上の愛 地上の恋 転生現代パラレル二次創作小説:祝福の華 9
黒執事 転生パラレル二次創作小説:あなたに出会わなければ 5
YOI火宵の月パロ二次創作小説:蒼き月は真紅の太陽の愛を乞う 2
薄桜鬼 現代ハーレクインパラレル二次創作小説:甘い恋の魔法 7
火宵の月 転生オメガバースパラレル 二次創作小説:その花の名は 10
薄桜鬼異民族ファンタジー風パラレル二次創作小説:贄の花嫁 12
薄桜鬼ハリポタパラレル二次創作小説:その愛は、魔法にも似て 5
天上の愛地上の恋 大河転生パラレル二次創作小説:愛別離苦 0
火宵の月 BLOOD+パラレル二次創作小説:炎の月の子守唄 1
PEACEMAKER鐵 韓流時代劇風パラレル二次創作小説:蒼い華 14
黒執事 異民族ファンタジーパラレル二次創作小説:海の花嫁 1
火宵の月 韓流時代劇ファンタジーパラレル 二次創作小説:華夜 18
火宵の月×呪術廻戦 クロスオーバーパラレル二次創作小説:踊 1
薔薇王韓流時代劇パラレル 二次創作小説:白い華、紅い月 10
薄桜鬼 ハーレクイン風昼ドラパラレル 二次小説:紫の瞳の人魚姫 20
天上の愛地上の恋 転生昼ドラパラレル二次創作小説:アイタイノエンド 6
鬼滅の刃×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:麗しき華 1
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:鳳凰の系譜 1
薄桜鬼腐向け西洋風ファンタジーパラレル二次創作小説:瓦礫の聖母 13
コナン×薄桜鬼クロスオーバー二次創作小説:土方さんと安室さん 6
薄桜鬼×火宵の月 平安パラレルクロスオーバー二次創作小説:火喰鳥 7
天上の愛地上の恋 転生オメガバースパラレル二次創作小説:囚われの愛 8
天上の愛地上の恋 昼ドラ風時代パラレル二次創作小説:綾なして咲く華 2
ツイステ×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:闇の鏡と陰陽師 4
天愛×腐滅の刃クロスオーバーパラレル二次創作小説:夢幻の果て~soranji~ 0
ハリポタ×天上の愛地上の恋 クロスオーバー二次創作小説:光と闇の邂逅 2
魔道祖師×薄桜鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:想うは、あなたひとり 1
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:月の国、炎の国 1
天愛×火宵の月 異民族クロスオーバーパラレル二次創作小説:蒼と翠の邂逅 0
陰陽師×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:君は僕に似ている 3
黒執事×ツイステ 現代パラレルクロスオーバー二次創作小説:戀セヨ人魚 2
黒執事×薔薇王中世パラレルクロスオーバー二次創作小説:薔薇と駒鳥 27
薄桜鬼×刀剣乱舞 腐向けクロスオーバー二次創作小説:輪廻の砂時計 9
火宵の月×薄桜鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:想いを繋ぐ紅玉 54
天上の愛地上の恋 昼ドラ転生パラレル二次創作小説:最愛~僕を見つけて~ 1
バチ官腐向け時代物パラレル二次創作小説:運命の花嫁~Famme Fatale~ 6
FLESH&BLOOD×黒執事 転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:碧の器 1
腐滅の刃 平安風ファンタジーパラレル二次創作小説:鬼の花嫁~紅ノ絲~ 1
天愛×薄桜鬼×火宵の月 吸血鬼クロスオーバ―パラレル二次創作小説:金と黒 4
黒執事×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:悪魔と陰陽師 1
火宵の月 戦国風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:泥中に咲く 1
火宵の月 地獄先生ぬ~べ~パラレル二次創作小説:誰かの心臓になれたなら 2
PEACEMAKER鐵 ファンタジーパラレル二次創作小説:勿忘草が咲く丘で 9
FLESH&BLOOD ハーレクイン風パラレル二次創作小説:翠の瞳に恋して 20
火宵の月 異世界ファンタジーロマンスパラレル二次創作小説:月下の恋人達 1
天上の愛地上の恋 現代転生パラレル二次創作小説:愛唄〜君に伝えたいこと〜 1
天上の愛地上の恋 現代昼ドラ風パラレル二次創作小説:黒髪の天使~約束~ 2
火宵の月 異世界軍事風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:奈落の花 2
天上の愛 地上の恋 転生昼ドラ寄宿学校パラレル二次創作小説:天使の箱庭 5
天上の愛地上の恋 現代昼ドラ転生パラレル二次創作小説:何度生まれ変わっても… 0
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天上の愛地上の恋 帝国昼ドラ転生パラレル二次創作小説:蒼穹の王 翠の天使 1
名探偵コナン腐向け火宵の月パラレル二次創作小説:蒼き焔~運命の恋~ 1
FLESH&BLOOD ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の花嫁と金髪の悪魔 6
火宵の月 和風ファンタジーパラレル二次創作小説:紅の花嫁~妖狐異譚~ 3
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黒執事 昼ドラ風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:君の神様になりたい 4
火宵の月 昼ドラハーレクイン風ファンタジーパラレル二次創作小説:夢の華 0
薄桜鬼腐向け転生刑事パラレル二次創作小説 :警視庁の姫!!~螺旋の輪廻~ 15
FLESH&BLOOD ハーレクイロマンスパラレル二次創作小説:愛の炎に抱かれて 10
PEACEMAKER鐵 オメガバースパラレル二次創作小説:愛しい人へ、ありがとう 8
天愛×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:翼がなくてもーvestigeー 2
薄桜鬼腐向け転生愛憎劇パラレル二次創作小説:鬼哭琴抄(きこくきんしょう) 10
薄桜鬼×天上の愛地上の恋 転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:玉響の夢 5
黒執事×天上の愛地上の恋 吸血鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:蒼に沈む 0
天愛×F&B 昼ドラ転生ハーレクインクロスオーパラレル二次創作小説:獅子と不死鳥 1
天上の愛地上の恋 現代転生ハーレクイン風パラレル二次創作小説:最高の片想い 4
バチ官×天上の愛地上の恋 クロスオーバーパラレル二次創作小説:二人の天使 3
FLESH&BLOOD 現代転生パラレル二次創作小説:◇マリーゴールドに恋して◇ 2
YOI×天上の愛地上の恋 クロスオーバーパラレル二次創作小説:皇帝の愛しき真珠 6
火宵の月×刀剣乱舞転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:たゆたえども沈まず 2
薔薇王の葬列×天上の愛地上の恋クロスオーバーパラレル二次創作小説:黒衣の聖母 3
火宵の月×薄桜鬼 和風ファンタジークロスオーバーパラレル二次創作小説:百合と鳳凰 2
薄桜鬼×天官賜福×火宵の月 旅館昼ドラクロスオーバーパラレル二次創作小説:炎の宿 2
薄桜鬼×火宵の月 遊郭転生昼ドラクロスオーバーパラレル二次創作小説:不死鳥の花嫁 1
天愛×火宵の月陰陽師クロスオーバパラレル二次創作小説:雪月花~また、あの場所で~ 0
薄桜鬼×天上の愛地上の恋腐向け昼ドラクロスオーバー二次創作小説:元皇子の仕立屋 2
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:碧き竜と炎の姫君~愛の果て~ 1
F&B×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:海賊と陰陽師~嵐の果て~ 1
F&B×天愛 昼ドラハーレクインクロスオーバ―パラレル二次創作小説:金糸雀と獅子 1
天愛 異世界ハーレクイン転生ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の巫女 氷の皇子 0
相棒×名探偵コナン×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:名探偵と陰陽師 1
F&B×天愛吸血鬼ハーレクインクロスオーバーパラレル二次創作小説:白銀の夜明け 0
名探偵コナン×天上の愛地上の恋 クロスオーバーパラレル二次創作小説:碧に融ける 0
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*注意事項*・この小説は、平井摩利先生の「火宵の月」ヴィク勇パラレルです。・原作と若干違う設定にしております。・オリジナルキャラ多めです。・勇利が両性具有設定です。作者様・出版社様・制作会社様とは一切関係ありません。「JJ、いつまで居るの?」「それは、お前を嫁にするまでだ、勇利!」「またそんな事を言って・・」JJ―かつて同じ時を過ごした幼馴染の言葉を聞いた勇利は、何度目かわからぬ程の溜息を吐いた。「僕は、ヴィクトル様以外とは・・」「何言っている、勇利?あいつは、自分のようなガキを作りたくないから、お前を抱かないんだろう?要するに、あいつは・・」「俺が、何だって?」氷のように冷たいヴィクトルの声に、二人が背後を振り返ると、そこには出張から帰って来たばかりの彼が、眉間に皺を寄せながら立っていた。「お帰りなさい、ヴィクトル様!」「俺が居ない間にこいつと浮気したの、ユウリ?」「え、そんな事は・・」「へっ、よく言うぜ!てめぇは姫君達に囲まれて嬉しそうに鼻の下を伸ばしていたくせによぉっ!」「え?」「お前の目は節穴か、JJ?婆共に囲まれ、その上子供達に纏わりつかれて嬉しいもんか。」「ヴィクトル様・・」勇利がそう言いながらヴィクトルに抱きつこうとした時、彼のつけた香とは違うものが彼から漂っている事に気づいた。「あ・・」「気にするな。」 ヴィクトルはそう言うと、恋文を直衣の袖の中から出した。「風呂に入って来い、あちこち泥だらけだぞ。」「はい・・」(こいつ、勇利の気も知らねぇで・・)JJは、湯殿へ向かう前、勇利が泣いていた事に気づいた。「なぁにむくれてんのよ、この子は。」「むくれてなんかないよ!」湯船に浸かりながら、勇利はヴィクトルに恋文を送った女性の事を想っていた。きっと彼女は美しくて、教養があって、ヴィクトルの妻に相応しいのだろう。中途半端な自分とは違って。(有能だし、養子とはいえ貴族だし、ヴィクトル様綺麗だし、それに比べて・・)「勇利ちゃん、まだお風呂に入って・・きゃぁ~!」和紗が中々風呂から出て来ない勇利を心配して湯殿の方を見ると、勇利は湯船の中で気絶していた。「風呂でのぼせるなんて、全く・・」「まぁ殿、どちらへ?」「俺の部屋に決まっているだろう。」「まぁ、そうですの。」“殿、もしかして・・”、“きゃ~、それ以上言うのは野暮よ~”と言う式神達の声を聞きながら、ヴィクトルは舌打ちして自室の中に入った。「ったく、ユウリは俺が少しでも目を離すと、こうなんだから。」勇利を御帳台の中に寝かせると、ヴィクトルは彼と共に横になった。「ん・・」翌朝、勇利が寝返りを打つと、何かが指先に触れた。それは、ヴィクトルの長く、美しい銀髪だった。「え、えっ!?」「そんなに驚くな、ユウリ。」「どうして、僕・・」「ユウリ、お風呂でのぼせちゃって、俺が自分の部屋まで運んで来たんだよ、憶えてない?」「え、あ、わぁ・・」勇利はパニックになり、暫くヴィクトルに抱きついたまま離れようとしなかった。「勇利ちゃん、おはよ・・きゃぁ~!」ヴィクトルの式神達がヴィクトルの部屋で見たのは、抱き合っているヴィクトルと勇利の姿だった。「もぅ~、二人共狡いわよ、抜け駆けなんて~」「ち、違うって、おねーさん達っ!」「あらぁ、さっきの様子だと、殿も満更でもなかったようなだけど?」「ね~」「もぉ~、ヴィクトル様に言いつけてやる!」「残念でした、ヴィクトル様ならお仕事へお出かけになられたわよ。」「そ、そうなんだ・・」「あら、元気ない。そんなにヴィクトル様が恋しいの?」「そりゃぁ、共寝した仲だもんね~」「お、おねーさん達、いい加減に・・」「一体、何の話だ、勇利?」「あ、JJ・・今の話・・」「俺は、認めないぞ!」JJはそう叫ぶと、勇利に抱きついた。「ぎゃ~!」「あ~、また出たわ。」「殿、早く追い出してくれないかしら?」「無理よぉ、最近呪術師殺しが多発していて、殿はその捜査に追われているんだもん。」「それにしても、被害者がみんな雷で焼き殺されるなんて怖いわよね~」(ヴィクトル様、大丈夫かな?)式神達の話を聞きながら勇利がヴィクトルの身を案じている頃、ヴィクトルは執権に命じられ、逗子に住むある貴族の姫君を警護する仕事に就いていた。(全く、何だって俺がこんな事を・・)そんな事を思いながら、ヴィクトルは自分が警護する姫君と御簾越しだが会う事になった。「お初にお目にかかります、ヴィクトル=土御門=ニキフォロフと申します。」「まぁ、あなたが・・」「姫様、なりません!」ヴィクトルが俯いていた顔を上げると、自分の前には勇利と瓜二つの顔をした姫君の姿があった。(ユウリ、なのか・・?)「あなたが、京からいらっしゃったという方・・」勇利と瞳の色は違えども、琥珀色の瞳にヴィクトルは魂を吸い込まれそうになった。「俺・・わたしを、知っているのですか?」「ええ。わたくしの従兄のオタベックから、京に居た頃色々とお話を聞いておりましたのよ。」「オタベック・・」以前、宮中で顔を合わせた事がある、ギオルギーの異母弟。「あなた、京から何故、逗子に?」「あなた様の事が忘れられず、こうして参りましたの。」「わたしを?」「ええ。」(おかしい・・どうして、俺は・・)勇利と瓜二つの顔をした姫君―椿に、ヴィクトルは次第に溺れていった。(遅いなぁ・・ヴィクトル様。)ヴィクトルが出張から帰って来たのは、ヴィクトルが逗子へと向かってから七日後の事だった。「ヴィクトル様、お帰りなさ・・」「まぁ、あなたが勇利様?本当に、わたくしと瓜二つの顔をなさっているのね。」ヴィクトルに抱きつこうとした勇利は、彼の背後に立っている椿を見て動揺した。(この人・・)「ヴィクトル様、この方は・・」「初めまして。わたくし、帝の護持僧・オタベックの従妹の、椿と申します。」こうして、椿は暫くニキフォロフ邸に滞在する事になった。「ねぇ、何なのあの女?」「もしかして・・」「まさかぁ、殿に限ってそんな事・・」 突然の恋敵の出現に、勇利と和紗達は激しく動揺した。「一体どうなさるおつもりなのかしら?」「さぁねぇ~」(ヴィクトル様とお似合いだったな、椿様・・)自分と同じ顔をしていても、椿は女だ。中途半端な自分とは、全く違う。その日の夜、ヴィクトルが自室で寝ていると、渡殿から強い妖気が自分の方へと近づいて来ている事に気づいた。(何だ、この妖気は?)「何者!?」「あら、驚かせてしまったみたいで、申し訳ないわね。」「椿殿・・」「あなたともっと、お話したくて・・構いませんこと?」(吸い込まれる・・)翌朝、勇利がヴィクトルの部屋へと向かうと、そこで御簾越しに裸で抱き合うヴィクトルと椿の姿を見てしまった。「まぁ、勇利様・・」「失礼します!」居た堪れなくなった勇利は、その場から逃げ出した。「ユウリ!」「ヴィクトル様、ここはわたくしが。」勇利は、人気のない塀の近くで泣いていた。(そうだよね、僕みたいのよりも、ヴィクトル様は・・)「見つけたわぁ。」「つ、椿様・・」勇利は、自分を見つめている椿の全身から凄まじい殺気を感じた。「あなたには、消えてくれないと・・」(ヴィクトル様、助けて・・)「ユウリ、何処だ、ユウ・・」ヴィクトルは、“何か”の中へと沈む勇利と、それを眺める椿の姿に気づいた。(強い妖気、こいつ・・)「何者だ!?」「ちぃっ、勇利と同じ顔をして化けてお前を油断させる気でいたけど、甘かったようだね!傀儡師のあたしもヤキが回ったもんだ!」「ユウリを、どこへやった!?」「あの子なら、もうこの世には居ないさ。あたしが魔界に堕としちまったんだもの。」「魔界だと・・?」「勇利を取り戻したかったら、あたしに協力するんだね。」椿はヴィクトルに、鶴岡八幡宮に祀られている頼朝を調伏するよう目地た。「さぁ、早くおし!」「魔界へ行くなら、このJJに任せな。」「は?お前が、魔界に?」「次元通路なんざ一発で開けるからな。勘違いするな、俺は勇利の為を思って・・」「いいだろう。」魔界へ逃げた椿を追う為、JJとヴィクトルは魔界へと潜入し、勇利を発見した。勇利は、魂を喰われてしまった。「あぁ、そんな・・」「おい、女が逃げたぞ!」「許さない・・ユウリを、返して貰う!」ヴィクトルはJJと協力して椿を倒し、彼女の中から勇利の魂を救い出した。「この役立たずが、失敗しただと!?」「申し訳ありません、主上・・」オタベックはそう主に詫びながら、ヴィクトルの弱点が勇利である事に気づき、勇利を攫う事を企んだ。「え、どういう事ですの、それ!?」「件の呪術師殺しが殿の仕業だと密告した者が居ると!?」「あぁ。その者が“誰”なのか、見当がつくけど。」(間違いない・・あいつだ・・)呪術師殺しの疑いをかけられたヴィクトルは、勇利をギオルギーの部下によって攫われてしまい、その途中で呪力を失った。「ヴィクトル様、ごめんなさい・・」「謝るな。」勇利はヴィクトルがオタベックに狙われている事を知り、その身を挺して彼からヴィクトルを守ろうとした。矢を受け倒れた勇利の姿を見たヴィクトルは、オタベックの企みを挫き、その額に醜い傷を刻んだ。「おのれ、ヴィクトル・・」呪術師殺しの疑いが晴れたヴィクトルと勇利は、再び共に暮らす事になった。勇利の身体に異変が起きたのは、冬の訪れを告げる木枯らしが吹いた頃だった。その頃ヴィクトルは仕事で多忙を極め、職場に泊まり込む事が多くなり、勇利と顔を合わさない日も多くなっていった。「久し振りのご帰宅かよ、陰陽師サマ。」「何だ、お前まだ居たの?」ヴィクトルは勇利の為に屋敷周辺に強い結界を張り巡らし、勝手に勇利が外に出られないようにしていた。その所為で、JJは勇利に会う事が出来ず、日に日に苛立ちが募っていった。「勇利をほったらかしにして、平気なのかよ?あいつは今・・」JJがそう言ってヴィクトルに詰め寄った時、屋敷の中から何かが倒れる音がした。「ユウリ?」「あ、ヴィクトル様、お帰りなさ・・」そう言ってヴィクトルを出迎えた勇利は、激しく咳込んだ。その足元に、血が滴り落ちた。「ユウリ!」勇利は、そのまま床に臥せってしまった。「全部テメーのせいだ、ヴィクトル。変化期に抱かれなかった未分化は、そのまま血を吐いて死ぬんだ。」「けれど、俺は・・」「JJ、僕の相手をしてくれる?」「ユウリ・・」「あぁ、わかった。」「ユウリ・・」「部屋、かりるぜ。」ヴィクトルは、部屋の中へと入っていくJJと勇利を、黙って見送る事しかできなかった。「あ、ごめん・・」勇利は、とうにJJに抱かれる覚悟をしていたのに、彼の唇を噛んでしまった。「いいって事よ。」その時、ヴィクトルが部屋に入って来た。「ユウリは、お前にしか抱かれたくないってさ。はぁ~、50年も片想いしてきて、キツいよなぁ。」JJはそう言うと、ヴィクトルと勇利を見た。「ユウリの命を助けたいっていうのなら、他にも方法があるぜ。」「え?」「唐土に・・紅牙族に代々伝わる不死の妙薬がある。」「不死の妙薬?」「あぁ、紅牙族の雌の涙―紅玉さ。嫌なら、いいぜ。」「僕、行きたい。」「ユウリ・・」「僕、“ふるさと”を知りたいんだ。紅牙族の村がどんなものなのか、見てみたいし。」「そうか・・」こうして、ヴィクトルと勇利はJJと共に唐土へ向かう事になった。「ここが、唐土?」強い雪と風で周りが見えず、勇利は寒さで死にそうになった。「おい、村にはいつ着くの?」「もう着いているぜ。」「え・・この焼けた廃墟が?」勇利達の眼前に広がっているのは、“村”だったものだった。「助けて!」焼けた村の跡地で、一人の子供が兵士と思しき男達に囲まれていた。「樹里、大丈夫か?」「JJ、帰ってたの!?」「こいつらは?」「政府の役人じゃないよ。村を焼いたのも、こいつらだよ。」「へぇ~、紅牙狩り再開って訳か?じゃぁ、ここで殺しても誰も文句言わないよな?」「やめて、JJ!」男達を殺そうとしたJJを、ヴィクトルが止めた。「JJ、どうして早く帰って来なかったんだ!」「雌と子供達は?」「人質に取られた。」「JJ、そちらの客人達は?」紅牙族の長がそう言って勇利とJJを指した先に、紅牙族の雄達がどよめいた。「な、何だ!?」「雌(おんな)か!?」唐土の服に着替え、ヴィクトルと勇利は紅牙族の雄達と共に食卓を囲んだ。「JJ、あの男は誰だ?」「あいつか・・あいつは、日本幕府お抱えの呪術師様さ。」「お前、何を考えて・・」「まぁ。こっちにも色々と考えがあるんだよ。血を流さずに、人質を取り戻す方法をな。」JJがそんな事を長と話している間、勇利は酒を飲み過ぎてしまった。「おい、順番な!」「わかってるって・・」紅牙族の雄達がそう言いながら酔い潰れた勇利を運ぼうとしていると、彼らの前にヴィクトルが立ちはだかった。「な、何だテメー!?」『類友だな、まさに。』ヴィクトルはそう言うと、薄笑いを浮かべた。『それに触るな、妊娠する。』「あのさぁ、俺らやる事やらねぇと溜まる訳よ、わかる?」紅牙族の雄がそう言ってヴィクトルの胸倉を掴んだ時、勇利が彼に噛みついた。「ヴィクトルをいじめるな!ヴィクトルは、僕の大切な人なんだから!」「え、じゃぁ、こいつがあんたの伴侶?」「そうだよ~」「酒乱め!」ヴィクトルはそう言って勇利の唇を塞ぐと、長から用意された部屋に入った。「よ、飲むか?」「あぁ。」ヴィクトルは、JJから雌の紅玉が入手出来ないと知った時、微かに手の痺れを感じた。「貴様、はめたな。」JJは王と交渉する為、ヴィクトルを連れて都にある城に来ていたが、王は南の離宮で休暇中だった。上手く交渉が出来ると思っていたJJだったが、ヴィクトルと共に彼は牢に繋がれてしまった。「馬鹿だな。」「うるせぇ!」何とか牢から脱出した二人だったが、雌と子供達の命を盾にとられ、なす術がなかった。「畜生・・」「目を閉じていろ。」ヴィクトルは、“神風”を起こし、城から脱出した。「ねぇユウリ、大丈夫?」「うん、大丈夫・・」JJ達が雌の救出作戦を考えている間にも、勇利の容態は徐々に悪化していった。「樹里、シーツ換えておいて。」「ねぇ、ヴィクトルに頼めばいいじゃん、そうしたら・・」「駄目。ヴィクトル様には心配かけさせたくないんだ。」「でも・・」「お願い。」樹里と勇利がそんな事を話していると、渋面を浮かべたヴィクトルが部屋に入って来た。(うわぁ、機嫌悪そう・・)「ヴィクトル様、どうされたんですか?また、JJが失礼な事を?」「あいつは存在自体が迷惑だからな。」ヴィクトルは、そう言うと勇利を見た。「ユウリ、いつまで意地を張っているつもりだ?俺が言っている意味、わかるな?」「え・・」「ユウリをいじめるな!」樹里はそう言ってヴィクトルの部屋から出ると、自分とJJの部屋へと入った。「俺、わかんない!何でヴィクトルはユウリを抱いてやんねーの?」「色々と複雑なんだよ、大人ってのは。」「ガキ扱いすんなっ!」その日の夜、ヴィクトルは悪夢を見た。子供の頃、父に殺されかけた悪夢を。「ヴィクトル様?」「お前は俺に、何を望みたいの?」「僕は、ヴィクトル様と一緒に居たい・・それだけです。」翌朝、勇利は意識不明の状態に陥った。「もう、このまま・・」“お父さん、しっかりして!”目の前で父を喪った悲しみ。大事な存在を失った苦しみ。そんな思いを、二度としたくない。「ユウリは誰にも渡さない。」その時、JJはヴィクトルの髪が紅く染まるのを見た。「最初から、こうすれば良かったね、ユウリ。俺は、絶対にお前を失いたくないんだ。」ヴィクトルはそう言うと、勇利の上に覆い被さった。ヴィクトルと結合した勇利は、その七日後に意識を取り戻した。だが、勇利は記憶を失っていた。「落ち着け、ユウリ!俺がわからないのか!?」「嫌~!」勇利は、己の名さえ忘れてしまっていた。「なぁ、冗談だよな?」「猫族の言葉、しゃべってみな?」「んと・・えと・・」言葉がたどたどしい勇利を見た紅牙族の雄達は、困惑した。「これは・・」「マジでヤバイぜ・・」「ねぇユウリ、ヴィクトルの事、わからないの?あんなにヴィクトルの事、大好きだったじゃん!」「わかんないよ・・」厩で樹里と馬の世話をしながら、勇利が樹里とそんな事を話していると、JJが厩に入って来た。「樹里、長が呼んでる。」「わかった。」勇利は馬の世話をしながら、自分の名前を思い出そうとしていた。「名前・・僕の・・」「ユウリだ。」厩に、銀髪の男が入って来た。「お前の名だ。」男―ヴィクトルは、鋭い刃物のような“気”を纏いながら、勇利の腕を掴んだ。ヴィクトルは、数時間前に長と話した内容を思い出していた。「俺がユウリと結合したから、ユウリが記憶を失ったって!?」「あんたは呪術師だ、我々にはわからない術を使う。それに、死者が蘇生された時、生前の記憶を失うという。」「何だって・・」(俺が、ユウリを・・)「長は、俺がお前を蘇生させたとさ。今ここに居るユウリは、俺が知っているユウリじゃないって。」(怖い、この人・・)「お前の記憶は、俺が・・」(怖い!)恐怖の余り、勇利は黒豹に姿を変え、厩から逃げ出した。「うおっ!?ユウリ、どうした?こいつに何かされたか?」「お前と一緒にするな、ユウリ、こっちへ来・・」ヴィクトルがそう言って勇利を見ると、勇利はJJに抱きついた。「あ、こいつお前が怖いんだよ。」暫く勇利は、JJ達と同じ部屋で寝る事になった。「何だかわかるような気がするなぁ、あいつの“気”、刃物みたいに鋭くて怖いもん。」「陰陽師なんざ、俺達妖にとっては天敵そのものだからなぁ。」JJはそう言いながら、自分に抱きつく勇利を見て嬉しそうな顔をしていた。(ガキの頃から手なづけて来たっていうのに、あいつにとっちゃきついよなぁ。)勇利が記憶喪失になってから、一月が過ぎた。「いいか、今日は俺とお前の関係を話す。」「か、関係?」「お前と俺は、約二十年前に出会い、長い空白期間を経て、再会した・・おい、何で逃げる!?」「だ、だって、追い掛けて来るから・・」勇利は恐怖の余り、木の上に登ってしまった。「降りて来い、ユウリ!話を聞けと言っているだろう!」「い、嫌だっ!」勇利は足を滑らせて木から落ちたが、そのまま逃げてしまった。その日から、勇利とヴィクトルの“追いかけっこ”が始まった。「まぁた、酷い顔してんなぁ。」JJはそう言うと、顔に勇利の爪で引っ掻かれた傷があるヴィクトルを見て、ニヤニヤと笑った。「いい加減諦めろよ、記憶を取り戻すのは至難の業だって、お前にもわかっているんだろう?ま、同族の俺達がユウリの面倒を見てやるから安心しな。あ、それともユウリなしで寝るのは辛いってか?」「うるさい!」「で、どうやってユウリの記憶を取り戻すんだ?」「ユウリの“精神内”に潜る。」「そ、そんな事、成功すんのか!?前は、成功したけどよぉ・・」「やってみないと、わからないだろう?」(自分でも、良くわからないけどね。)ヴィクトルは、城攻めについて紅牙族の雄達と揉め、城攻めに加わる気がない事を彼に話した。「あ~あ、誰かさんに冷たくされて、いじけちゃったんだろうな。」JJはそう言ってヴィクトルにあてつけるかのように、彼の前で勇利とキスをした。ヴィクトルはJJの頭を壁にぶつけた後、そのまま人気のない湖へと向かった。「あいつ、こっちの気も知らないで・・」そんな事を思いながらヴィクトルが独り言を呟いていると、そこへ勇利がやって来た。「僕の所為で、ごめんなさい・・」「俺は、昔からこの力の所為で利用されたり、怖がられたりした。それに、沢山失ったものが多い。」「そ、そう・・」勇利はそう言ってヴィクトルに背を向けて歩き出そうとした時、誤って凍った湖に落ちてしまった。「ユウリ!」―馬鹿、暴れるな、人が助けてやっているのに!「わぁっ!?」洞窟の中で目を覚ました勇利は、ヴィクトルと自分が裸である事に気づいた。「まだ動くな。」「あの、それ・・」「お前に引っ掻かれて、毒が少し躰に回って来た。」「毒?」「猫族の爪には毒があるんだ。お前との追いかけっこで慣れたが、凍死寸前の躰にはきつい。」「あの、どうすれば・・」「中和してくれ。」「中和?」「傷口に口をつけるんだ。出来ないなら、いいさ・・」「やる・・ユウリの所為だから・・」ヴィクトルは、勇利にキスをして、勇利の”精神内“に潜ろうとしたが、失敗した。それから、JJはヴィクトルが城攻めに加わる事を知り、驚いた。「どんな心変わりなんだよ、あいつは?」「もしかして、ユウリが頼んだのかも。」湖で助けてくれた日から、勇利はヴィクトルの事が気になってしまった。そして、城攻めの日が来た。「じゃぁ、行って来るぜ。」「留守番なんてつまらないよ、一緒に連れて行ってよ!」「駄目だ、村で大人しく待ってな。」JJと樹里がそんな話をしている頃、勇利はヴィクトルと話をしていた。「それ・・」「お前の耳飾りだ。なくさないように身につけた。行って来る。」ヴィクトル達が紅牙の村を発った頃、城では大臣達が南の離宮から帰って来た一人の呪術師を迎えた。「これはこれは、ユーリ=プリセツキー殿、随分とお早いお帰りで・・」「城の“気”が乱れてるな。俺に隠し事なんて無駄なんだよ、ばぁか。」そう言って大臣達の前に現れたのは、金髪に美しい翡翠の瞳をした少年だった。「これの所為だろ?」ユーリはそう言うと、城内に残っていた残留思念を呼び出した。すると、二人の男がユーリの前に現れた。一人は、紅牙族の雄。だがもう一人の男は・・「どうしたの、ユウリ?ヴィクトルの事が、気になる?」「そんなんじゃないよ・・」樹里にそう言いながらも、勇利はヴィクトルに会いたくて堪らなかった。「追い掛けよう、ユウリ!」「今から?」「今から追い掛ければ、間に合うよ!」 勇利と樹里はヴィクトル達を追い掛け、彼らと共に城責めに加わった。「え~、俺行けないの!?」「もしユウリに何かあったら、お前が唯一の雌候補だ。言っている意味、わかるな?」「うん・・」「じゃぁ、行って来る。」 樹里は城へと入って行くJJ達を見送った。「結界に侵入者・・あいつら、人質を奪いに来た。」「兵を早く集めよ!」「心配ねぇよ。俺の結界は誰にも破られねぇし。」(馬鹿な奴ら、俺の結界から逃れられねぇし。) ユーリがそう思いながら笑っている頃、ヴィクトル達は迷路の中に居た。「なぁ、ここおかしくねぇ?」「そうだな・・」(何だ・・まるで・・) ヴィクトルがそう思いながら鏡の中を覗き込むと、突然それに大きなひびが入った。「うわぁ~!」「皆、大丈夫か?」「あぁ・・」 謎の空間に巻き込まれ、ヴィクトル達は謎の黒い霧に包まれた。 JJ達の様子が少しおかしい事に、ヴィクトルは気づいた。「どうした?」「シラクチヅル・・猫族だけに効く麻薬よ。」 そう言ったJJ達は、何かに怯えていた。「どうした?」「嫌、来ないでっ!」 勇利が突然怯えたので、ヴィクトルは祭文を唱えた。「飲み込め、少しはマシになる。」 勇利はヴィクトルから渡された護符を飲み込むと、幻覚を視なくなった。「世話が焼ける連中だ。」 ヴィクトルはそう言うと、ユーリの結界を破った。「結界が破られた・・」「な、なんですと!?」(こいつ、未分化か・・丁度いい。)「ちょっと、行って来る。」(僕、どうしてここに?さっきまで、みんなと・・)「おいお前、そこで何をしている!?」「白の塔から抜け出して来たな、来い!」 兵士達に連れられて勇利がやって来たのは、人質が監禁されている白い塔だった。 そこには、麻薬で魂を奪われ、涙を流す雌と子供達の姿があった。(何、ここ・・) シラクチヅルの、黒い霧に包まれた勇利は、気を失った。 終わらない悪夢の中で、勇利は涙を流していた。 そんな中、ヴィクトル達は、“白の塔”へと辿り着いた。「何だ、これ・・」「ユウリ!」 ヴィクトルは、何を流している勇利の頬を叩いたが、反応は無かった。(おかしい、まるで、“壁一枚”隔てているかのような・・) ヴィクトルは、勇利の“精神内”に潜入し、勇利を救い出した。「ヴィクトル様・・」「ユウリ?」(まさか、記憶が戻っ・・)「お前か、俺の結界を破ったのは?」 そう言ってヴィクトルを睨んだのは、一人の少年だった。「誰だ、てめぇ?」「ユーリ=プリセツキー、今はこの城の全権を預かっている。ていうか、人の遊び場にズカズカ入ってくんじゃねーよ。」「遊び場ぁ?」「ま、退屈しのぎには良かったぜ。」「テメェ~!」 少年の言葉に激昂したJJは、少年に向かって妖火を放ったが、彼はすぐさまJJに反撃した。「ここ、俺の結界内だって忘れてねぇ?」 そう言ったユーリの髪は、赤くなっていた。「お前、人間じゃ・・」「人間なんて、こっちを怖がるか利用する事しか知らねぇ、下等動物さ。」 ユーリがJJにそう得意気に話していると、ヴィクトルがユーリを抱き上げた。(こいつ、俺の結界を、まるで自分のものみたいに・・) ユーリは、ある事に気づいた。「お前・・俺と同じ“匂い”がする。」「ユーリ様、大変です!南の離宮に・・」「クソが。ここはひとつ貸しだ。」「お前、妖狐か?妖狐は普通、魔界に棲むと聞くけど?」「半端なんだよ、半分人間だから。お前と同じでな。」 無事人質達を救出したJJ達は、南の離宮へと向かうユーリの龍を見た。「あれは・・」「妖狐族は生まれつき龍と契約できる力を持っている。元々は龍族だったという言い伝えがある。」「へぇ。」 雌達が戻り、紅牙の村に活気が戻った。 だが―「いい加減、機嫌直せよ、ユウリ!俺が抱いてやるから、いいだろう!」「バカ、ユウリはね、ヴィクトルじゃなきゃ駄目なのっ!それ位わかってやれよっ!」 樹里はそう言うと、JJの顔に蹴りを入れた。「ユウリ、俺だ、開けてくれ。」「畜生~!」「ユウリは、ヴィクトルしか見ていないんだからさぁ、諦めろって。」「でもよぉ~」「多分、ヴィクトル気づいちゃってるよ、自分の気持ちに。」「ヴィクトル様、これ・・」「証だ、専属契約更新の。」 ユウリの事が大好きだって事にね。 唐土から遠く離れた京では、ある男がヴィクトルへの復讐にその胸を滾らせていた。「う・・」「僧正、また発作ですか?」「放っておけ。」 ヴィクトルから呪詛返しを受け、男―オタベックは法力を失った。(おのれ・・ヴィクトル・・)「オタベック、法力は戻ったか?」「いえ・・」「朕はお主を頼りにしているぞ、オタベック。一刻も早く、法力を取り戻してくれ。」「はい、主上・・」 オタベックは、そっと額の傷に触れた。 それは、ヴィクトルによってつけられたものだった。(俺は、あの男を許さない・・あいつが、血の涙を流すその日まで。) その頃、唐土ではちょっとした騒動が起こっていた。「はぁ、伴侶になる?お前とユウリが?」「そうだよ、ナイスカップルだろ!」「どちらが雄になるの?」「じゃんけんで決める!」 樹里とユウリの言葉を聞いたJJとヴィクトルは、同時に笑い出した。「ヴィクトル様、真面目に聞いて・・」「好きにすれば?でも、俺は男とは寝ないからね。」「ヴィクトル様~!」にほんブログ村二次小説ランキング
2024年04月10日
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*注意事項*・この小説は、平井摩利先生の「火宵の月」ヴィク勇パラレルです。・原作と若干違う設定にしております。・オリジナルキャラ多めです。・勇利が両性具有設定です。作者様・出版社様・制作会社様とは一切関係ありません。注意事項を無視して読んで気分が悪くなった等の苦情は一切受け付けませんので、ご了承ください。その夜は、空に炎の様な紅い月が浮かんでいた。夜な夜な鎌倉の町に出現する人喰いの妖・野猫族調伏の為、京で暮らしていたヴィクトル=ニキフォロフは、宮中から追い出され、生まれ故郷の鎌倉へと戻って来た。邸の自室で星の動きを見ていたヴィクトルが邪悪な気を感じて鶴岡八幡宮へと向かうと、そこには野猫族に食い荒された男女の遺体が転がっていた。「・・遅かったか。」美しい顔を怒りで歪ませ、ヴィクトルがそう言って舌打ちした後、何かが茂みの中で動く気配がした。「何者だ!」ヴィクトルが筮竹を投げると、それは近くの木に当たった。「あ、すいません・・僕、驚かせるつもりじゃなかったんです。」茂みの中から現れたのは、黒髪紅眼の青年だった。白い着物に緋色の袴姿の青年は、じっと真紅の瞳でヴィクトルを見ていた。「あの、貴方がヴィクトル=ニキフォロフ様ですか?」「そうだけど、お前は?」「初めまして、僕は勝生勇利と申します。あの、早速なのですがヴィクトル様にお願いがありまして・・」「お願い?」「僕、貴方の子供を産みたいんです!」青年が頬を赤く染めながらそうヴィクトルに言い放った時、気まずい沈黙が二人の間に下りて来た。「・・俺は、男に子を授ける術は持っていないけど?」「あの、僕男でもないです。女でも、ないし・・僕の一族は、紅牙族といって、野猫族の一種で・・」「ふぅん、それじゃぁお前、妖の一種か。運が悪いね、俺は今機嫌が悪いんだ。」「え、あの・・」「行け、式神!」突如ヴィクトルの掌の中から現れた青龍に驚き、慌てて逃げようとした青年は、そのまま階段を踏み外し転落してしまった。(妖だというのに情けない奴だな・・)ヴィクトルがそう思いながら呆れ顔で青年の様子を見に行くと、そこには黒豹が転がっていた。このままここに青年を転がしておくわけにもいかず、ヴィクトルは彼を邸まで連れて帰る事にした。まだ幼さが残る顔に、華奢な身体、そして漆黒の髪。巷を最近騒がしている野猫族とは似ても似つかない容姿をしているが、奴らの仲間かもしれない。そう思いながらヴィクトルが青年を寝かせようと彼の身体を抱き上げると、その拍子に彼が右耳につけていた紅玉の耳飾りがシャラリと揺れた。それを見た瞬間、ヴィクトルの脳裏に幼い頃、可愛がっていた黒猫の姿が浮かんできた。“暴れるな、今手当てしてやろうとしているのに!”池で溺れていた黒猫を助けたヴィクトルは、逆にその黒猫に引っ掻かれた。全身に酷い傷を負っていた黒猫の手当てをしていたヴィクトルは、猫の目から美しい紅玉が零れ落ちるのを見た。“お前の瞳の色、綺麗だな。僕は赤が一番好きな色なんだ。そうだ、お前の名前は紅玉にしよう!”黒猫はヴィクトルの言葉を理解したのか、嬉しそうな声で鳴いた。孤独だった少年と黒猫は、出逢ってから互いの魂を温め合うように、いつも一緒に居た。だが、ヴィクトルは突然親戚筋の叔父によって京に連れて行かれ、あの黒猫と離れ離れになってしまった。青年の耳飾りにつけている紅玉は、幼い頃ヴィクトルがあの黒猫の首飾りにしたものと同じ紅玉だった。(まさか、な・・)「気が付いたか?」「あの・・僕・・ここは、何処ですか?」「俺の邸だよ。お前、名前は?」「勇利といいます。」青年の名を聞いたヴィクトルは、驚きのあまり顔が強張ってしまった。「どうかなさいましたか?」「いや・・その耳飾りは何処で手に入れた?」「ああ、これは昔、大切な人から贈られた物です。」青年―勇利はそう言うと、紅玉の耳飾りを指先で触れた。「大切な人?」「はい。昔僕が幼い頃、仲間からいじめられて谷底へと突き落とされた時、助けてくれた人から贈られたんです。」勇利の言葉を聞きながら、ヴィクトルは彼が昔飼っていた愛猫“紅玉”であると確信した。「その大切な人は、今どうしているの?」「知りません。随分昔に、生き別れになったから・・でも、もし生きているのなら、会いたいです。」勇利はそう言って両膝の間に顔を埋めた。「怪我が治ったら出て行け。」「はい・・」(少し、冷たくしてしまったかな・・)その日の夜、ヴィクトルがそう思いながら寝返りを打っていると、廊下から控えめな足音が聞こえて来た。誰だろうと思いながらヴィクトルが再び寝返りを打とうとすると、胸の上に温かい感触がした。(何だ?)ヴィクトルがゆっくりと目を開けると、そこには自分の上にのしかかっている勇利の姿があった。「お前、何をしているの?」「え、あの、それは・・夜這い・・です・・」勇利はか細い声でそう言うと、頬を羞恥で赤らめながら俯いた。「君、大人しそうな顔に似合わず大胆な事をするね。俺が誰なのか知っていて夜這いしに来たんだ?」「すいません・・」「謝らなくてもいい。」ヴィクトルはそう言うと、勇利を抱き寄せた。「え、あの・・」「どうした、俺を誘惑するんじゃないのか?」至近距離でヴィクトルから見つけられた勇利は、顔を赤く染めながら慌てて彼の傍から離れた。「すいません、忘れてください!」耳飾りをシャラシャラと言わせながら、勇利は慌ててヴィクトルの部屋から飛び出して自分の部屋へと戻ってしまった。(本当に、妖らしくないな・・まぁ、それが可愛いけれど。)ヴィクトルはクスクスと笑いながらそんな事を思った後、ゆっくりと目を閉じた。―・・めてまた、あの夢を見た。―やめて、お父さん、苦しいよ・・自分の細い首に絡みつく父の指。そして、耳元で囁かれる呪詛の言葉。“子供など、作らなければよかった。”昨夜は悪夢を見た所為で、一睡も出来ずにいた。「・・トル殿、ヴィクトル殿?」「何か?」誰かに呼ばれたことに気づいてヴィクトルが振り向くと、そこには意地の悪い笑みを浮かべた男が立っていた。「ここ最近、野猫族が大人しくしているようですなぁ。やはり雨の所為で奴らの動きが鈍ったのでしょうね。」「そのようですな。他に話がないのなら、俺はこれで失礼いたします。」ヴィクトルがそう言って男に背を向けた後、“愛想のない奴だ”と、先程の男が仲間に向かって陰口を叩いているのが微かに聞こえた。昔から“愛想がない”、“可愛げがない”などと言われるのはもう慣れている。他人と馴れ合うつもりも、親しくなるつもりもないのだから、いい加減放っておいて欲しいものだ―ヴィクトルがそんな事を思いながら帰宅すると、式神の和紗が何やら慌てた様子で自分の方へと駆け寄って来た。「ヴィクトル様、大変です!勇利様が・・」「ユウリが、どうかしたのか?」「先ほど、勇利様にお会いになりたいという客人が来て、断ったら急にその男が勇利様を連れて行かれてしまったのです!」「何だって・・」和紗の言葉を聞いたヴィクトルは、自分の顔から血の気がひくのがわかった。他人の結界内、敏腕陰陽師として名を馳せているヴィクトルの強固な結界を容易に破る者など居ない。もしそのような者が居るとしたら、ヴィクトルと同等の、またはそれ以上の呪力を持っている同業者―呪術師しか居ない。「ユウリを探せ、今すぐに!」(ユウリ、どうか無事でいてくれ!)何処かでカラスがヴィクトルを嘲笑うかのようにしわがれた声で鳴いていた。ピチョン、と水滴が落ちる音で、勇利は閉じていた両目をゆっくりと開いた。「ん・・」辺りを見回すと、今自分が居るのは何処かの洞窟のようだった。「目が覚めたか?」闇の中から突然ぬぅっと男の顔が現れたので、勇利は思わず悲鳴を上げてしまった。「驚かせてしまって済まない。お前がユウリだな?」「はい、そうですが・・貴方は?」「わたしはギオルギー。ヴィクトル無き今、わたしが宮中の権力を全て掌握していると言っていい。」そう言った男―ギオルギーは、欲望に滾った瞳で勇利を見た。「僕を、どうするつもりなのですか?」「ここでお前を殺し、わたしは不老不死の力を手に入れる!」ギオルギーは勇利を睨みつけてそう叫ぶと、彼の上に馬乗りになった。(助けて、ヴィクトル!)「そこまでだ、ギオルギー。」「ふふ、来たなヴィクトル。漸くお前と互角に戦える時が来た。」「俺と互角に戦えるだって?ふざけた事を言うね、ギオルギー。」ヴィクトルはそう言って口元に冷笑を浮かべると、ギオルギーを衝撃波で吹き飛ばして彼を気絶させ、勇利を優しく抱き上げた。「怪我はない、ユウリ?」「ごめんなさい、ヴィクトル、心配を掛けてしまって・・」「無事だったから、ユウリが俺に謝ることはないよ。」「ヴィクトル・・」「勇利、探したぜ。まさかお前がこの陰陽師様とデキていたとはなぁ?」二人の背後から嘲るような冷たい声が洞窟内に響いたかと思うと、数頭の黒豹が洞窟内へと入って来た。彼らは巷を騒がせている野猫族だと、ヴィクトルは勘で解った。「君達、俺に何か用?まさか、俺の呪力欲しさに俺を殺しに来たとか?」「へへ、まぁそんな所かな!」野猫族達はそう言うと、一斉にヴィクトルに飛びかかった。「ヴィクトル様、危ない!」ヴィクトルを庇った勇利は、胸を野猫族の爪に切り裂かれた。「しっかりしろ、ユウリ!」「やっと会えた・・ヴィクトル様・・」苦しそうに喘ぎながら、勇利はそう言うとヴィクトルの頬を撫でた。「けっ、ザマァねぇな。まぁ、これでこいつを殺す手間が省け・・」「お前達がユウリに手を出す前に、俺がお前達を殺す!」全身から怒りのオーラを発しながら、ヴィクトルは碧い瞳で野猫族達を睨みつけ、祭文を唱えた。「業火招来!」野猫族達の身体はあっという間に紅蓮の炎に包まれ、彼らは断末魔の悲鳴を上げながら息絶えた。「ユウリ、俺の元へ戻っておいで・・俺の愛しい紅玉。」ヴィクトルは祭文を唱えた後、自分の気を勇利に吹き込むため、彼の唇を塞いだ。「ヴィク・・トル様・・?」「さぁユウリ、俺と共に家に帰ろう。」「はい。」ヴィクトルに抱きかかえられながら、勇利は彼と共に洞窟を後にした。「ねぇユウリ、俺が一番好きな色が何か、知ってる?」「いいえ。」「俺は、紅が一番好きなんだ。お前の瞳の色の様な、綺麗な紅が。」「ヴィクトル様、もしかして僕の事を思い出してくれたんですか?」「俺がお前の事を忘れる訳がないだろう。」ヴィクトルはそう言って勇利に微笑むと、彼がつけている紅玉の耳飾りに触れた。「ヴィクトル様、ずっと貴方のお傍に居てもいいですか?」「勿論だ。」月が優しく、睦み合う恋人達の姿を照らしていた。(ヴィクトル様、今日も帰りが遅いなぁ・・)巷を騒がしている野猫族を退治したヴィクトルは、そのまま勇利とのんびりと休めると思っていたのだが、有能な陰陽師を逃がしたくない執権は、何かにつけてヴィクトルに仕事を依頼し、その結果彼は職場に連日泊まり込む位多忙な日々を送ることになってしまった。そして今夜も、勇利が待つ自宅に帰って来なかった。あの時―野猫族から身を挺してヴィクトルを勇利が庇い、生死の境に彷徨っていた時、ヴィクトルが自分の耳元で囁いた言葉が忘れられなかった。“ユウリ、俺の元へ戻っておいで・・俺の愛しい紅玉。”その言葉を聞いた時、ヴィクトルは自分を幼い頃に助けてくれたあの少年だと言う事を、勇利は思い出した。野猫族を退治した後、傍に居てもいいかとヴィクトルに勇利が尋ねると、彼はいいと言ってくれた。(僕は、ヴィクトル様のお傍に居てもいいんだろうか?)「あら勇利ちゃん、どうしたの?またそんな所で殿の帰りを待っているの?」「うん、そんなとこ・・ねぇお姉さん、僕はヴィクトル様に相応しいと思う?」「あら、どうしたのよ。そんな事をあたしに聞いてどうするの?」和紗はそう言って袖口で口元を隠しながら笑うと、勇利は深い溜息を吐いた。「ヴィクトル様は男の僕から見ても綺麗で、ヴィクトル様の隣に立つのは僕じゃなくて綺麗な女の人がふさわしいじゃないんかなぁって・・」「まぁ、殿はモテるからねぇ。独身で仕事が出来て、その上イケメンだと、出自なんて関係ないって思っちゃう女の方が多いわよね。」和紗は苦笑しながら、ヴィクトルが女性から恋文を毎日のように貰って来ていることを思い出した。「何だか僕、自信失くしちゃうなぁ。」自分がヴィクトルの“一番”だと思っていた幼い頃、勇利は彼と離れ離れになった時、悲しくて寂しくて辛い日々を送った。だからヴィクトルと再会した時、これから彼の傍にずっと居られるのだと、一人ではなくなるのだと勇利は嬉しく思った。だが、勇利の夢は、厳しい現実の前に儚く散った。大人になって美しく、そして凛々しく成長したヴィクトルは、“自分だけのもの”ではない事に勇利が気づいたのは、数日前の夜、ヴィクトルが久しぶりに職場から帰宅した時の事だった。「お帰りなさい、ヴィクトル様!」「ただいま。」いつものようにヴィクトルに抱きついた勇利は、彼の身体からいつも彼がつけている香とは違う香りがすることに気づいた。「ヴィクトル様、これ・・」カサリという音を立てて勇利の前に落ちた物は、女性からヴィクトルに宛てた恋文だった。「ああ、これか・・俺は結婚するつもりは全くないよ。もし結婚するとしても、ユウリを傍に置くつもりでいるから、安心して。」―そんな言葉なんて欲しくない。勇利はそうヴィクトルに向かって叫びたかったが、出来なかった。(僕は、ヴィクトル様の恋人に相応しいのかな?)そんな事を思いながら勇利が再び溜息を吐いていると、突然茂みの中から一人の青年が飛び出して来た。「会いたかったぞ、ユウリ!」青年は勇利の顔を見るなりそう叫ぶと、逞しい両腕で勇利の華奢な身体を抱き締めた。「JJ、どうしてここに?」「決まっているだろう、お前を俺の嫁として迎える為だ!」(すっかり遅くなってしまったな・・)執権の館で開かれた宴に渋々と顔を出したヴィクトルは挨拶だけして帰ろうとしたが、執権がなかなか彼を帰さず、ヴィクトルは執権を酔い潰して漸く執権の館から出たのは、空に月が浮かぶ頃だった。(ユウリ、今頃俺の事が恋しくて泣いているのかな・・)そんな事を思いながら馬から降りて自宅へとヴィクトルが向かっていると、勇利が見知らぬ男と抱き合っている姿を彼は見た。「やめて、離してよJJ!」「そんなに恥ずかしがることはないだろう、ユウリ!」「やめてよ!」JJの拘束から逃れようとした勇利だったが、体格差があるJJから勇利はなかなか逃げられなかった。「君、俺のユウリに何をしているの?」「ヴィクトル・・」勇利が背後を振り向くと、そこには冷たい碧い瞳で自分とJJを見つめるヴィクトルの姿があった。「ユウリ、こいつは誰だ?」「君こそ一体誰?そして俺のユウリに何故抱きついている?」ヴィクトルは全身から殺気を発しながら、JJにそう尋ねると、彼は舌打ちして勇利から離れた。「俺は、ユウリの許婚のJJだ!今夜ここに来たのは、ユウリを抱く為だ!」「抱く?君が、ユウリを?」JJの言葉を聞いたヴィクトルの周囲の空気が、突然冷えていくように勇利は感じた。「ああ。今ユウリは子を孕める大事な時期だからな!」「ユウリ、一体どういうことなのか、俺にもわかるように説明して?」その場から逃げ出そうとした勇利の肩を掴んだヴィクトルはそう言って彼に微笑んだが、目は全く笑っていなかった。「鶴岡八幡宮で、僕最初に説明したよね?僕は両性体で、伴侶と契りを交わした後、雄と雌、どちらにもなれるって。」「そんなの初耳だよ。酷いよユウリ~、何で俺に黙ってた?」「黙っていたも何も・・その説明を僕がしようとした時、ヴィクトルが勝手に襲って来たんじゃないか!」「そのことは今でも悪かったと思ってるよ!ねぇユウリ、あの男はユウリとは一体どういう関係なの?」「えっと、JJとは幼馴染みたいなもので、それ以上でもそれ以下でもないっていうか・・」「酷いなユウリ!子供の頃一緒に寝ていたじゃないか!それに水浴びだって・・」「一緒に寝た?水浴び?」「ヴィクトル、JJが言ったことは真に受けないで!JJ、用がないならもう唐土に帰ってよ!」「嫌だ、お前を俺の嫁にするまでは帰らないぞ!」「君、俺に殺されに来たの?」「ヴィクトル、落ち着いて~!」唐土に帰れと言う勇利と、彼を嫁にするまで唐土に帰らないと言い張るJJに困り果てたヴィクトルは、暫くJJが自宅に滞在することを許した。「ユウリ、まだ夜はこれからだぞ~!」「ひっつかないでよ、JJ!」「ユウリから離れろ、この変態!」JJがヴィクトル邸に滞在するようになってから数日が経ち、JJは隙あらば勇利を襲おうとしているので、ヴィクトルはJJに対して全身から凄まじい殺気を放ちながら彼を睨みつけていた。「ねぇ、あれいつまで続くのかしら?」「さぁね。」勇利を抱き締めたまま離そうとしないヴィクトルの姿を廊下から見ながら、彼の式神たちはそんな話をした後溜息を吐いた。にほんブログ村
2024年02月17日
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