FLESH&BLOOD 二次創作小説:Rewrite The Stars 6
薄桜鬼 昼ドラオメガバースパラレル二次創作小説:羅刹の檻 10
黒執事 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:碧の騎士 2
天上の愛 地上の恋 転生現代パラレル二次創作小説:祝福の華 9
黒執事 転生パラレル二次創作小説:あなたに出会わなければ 5
YOI火宵の月パロ二次創作小説:蒼き月は真紅の太陽の愛を乞う 2
薄桜鬼 現代ハーレクインパラレル二次創作小説:甘い恋の魔法 7
火宵の月 転生オメガバースパラレル 二次創作小説:その花の名は 10
薄桜鬼異民族ファンタジー風パラレル二次創作小説:贄の花嫁 12
薄桜鬼ハリポタパラレル二次創作小説:その愛は、魔法にも似て 5
天上の愛地上の恋 大河転生パラレル二次創作小説:愛別離苦 0
火宵の月 BLOOD+パラレル二次創作小説:炎の月の子守唄 1
PEACEMAKER鐵 韓流時代劇風パラレル二次創作小説:蒼い華 14
黒執事 異民族ファンタジーパラレル二次創作小説:海の花嫁 1
火宵の月 韓流時代劇ファンタジーパラレル 二次創作小説:華夜 18
火宵の月×呪術廻戦 クロスオーバーパラレル二次創作小説:踊 1
薔薇王韓流時代劇パラレル 二次創作小説:白い華、紅い月 10
薄桜鬼 ハーレクイン風昼ドラパラレル 二次小説:紫の瞳の人魚姫 20
天上の愛地上の恋 転生昼ドラパラレル二次創作小説:アイタイノエンド 6
鬼滅の刃×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:麗しき華 1
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:鳳凰の系譜 1
薄桜鬼腐向け西洋風ファンタジーパラレル二次創作小説:瓦礫の聖母 13
コナン×薄桜鬼クロスオーバー二次創作小説:土方さんと安室さん 6
薄桜鬼×火宵の月 平安パラレルクロスオーバー二次創作小説:火喰鳥 7
天上の愛地上の恋 転生オメガバースパラレル二次創作小説:囚われの愛 8
天上の愛地上の恋 昼ドラ風時代パラレル二次創作小説:綾なして咲く華 2
ツイステ×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:闇の鏡と陰陽師 4
ハリポタ×天上の愛地上の恋 クロスオーバー二次創作小説:光と闇の邂逅 2
天上の愛地上の恋 吸血鬼パラレル二次創作小説:夢幻の果て~soranji~ 0
魔道祖師×薄桜鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:想うは、あなたひとり 1
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:月の国、炎の国 1
天愛×火宵の月 異民族クロスオーバーパラレル二次創作小説:蒼と翠の邂逅 0
陰陽師×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:君は僕に似ている 3
黒執事×ツイステ 現代パラレルクロスオーバー二次創作小説:戀セヨ人魚 2
黒執事×薔薇王中世パラレルクロスオーバー二次創作小説:薔薇と駒鳥 27
薄桜鬼×刀剣乱舞 腐向けクロスオーバー二次創作小説:輪廻の砂時計 9
火宵の月×薄桜鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:想いを繋ぐ紅玉 54
天上の愛地上の恋 昼ドラ転生パラレル二次創作小説:最愛~僕を見つけて~ 1
バチ官腐向け時代物パラレル二次創作小説:運命の花嫁~Famme Fatale~ 6
FLESH&BLOOD×黒執事 転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:碧の器 1
腐滅の刃 平安風ファンタジーパラレル二次創作小説:鬼の花嫁~紅ノ絲~ 1
天愛×薄桜鬼×火宵の月 吸血鬼クロスオーバ―パラレル二次創作小説:金と黒 4
黒執事×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:悪魔と陰陽師 1
火宵の月 戦国風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:泥中に咲く 1
火宵の月 地獄先生ぬ~べ~パラレル二次創作小説:誰かの心臓になれたなら 2
PEACEMAKER鐵 ファンタジーパラレル二次創作小説:勿忘草が咲く丘で 9
FLESH&BLOOD ハーレクイン風パラレル二次創作小説:翠の瞳に恋して 20
火宵の月 異世界ファンタジーロマンスパラレル二次創作小説:月下の恋人達 1
天上の愛地上の恋 現代転生パラレル二次創作小説:愛唄〜君に伝えたいこと〜 1
天上の愛地上の恋 現代昼ドラ風パラレル二次創作小説:黒髪の天使~約束~ 2
火宵の月 異世界軍事風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:奈落の花 2
天上の愛 地上の恋 転生昼ドラ寄宿学校パラレル二次創作小説:天使の箱庭 5
天上の愛地上の恋 現代昼ドラ転生パラレル二次創作小説:何度生まれ変わっても… 0
天上の愛地上の恋 昼ドラ転生遊郭パラレル二次創作小説:蜜愛~ふたつの唇~ 0
天上の愛地上の恋 帝国昼ドラ転生パラレル二次創作小説:蒼穹の王 翠の天使 1
名探偵コナン腐向け火宵の月パラレル二次創作小説:蒼き焔~運命の恋~ 1
FLESH&BLOOD ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の花嫁と金髪の悪魔 6
火宵の月 和風ファンタジーパラレル二次創作小説:紅の花嫁~妖狐異譚~ 3
天上の愛地上の恋 昼ドラ風パラレル二次創作小説:愛の炎~愛し君へ・・~ 1
黒執事 昼ドラ風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:君の神様になりたい 4
火宵の月 昼ドラハーレクイン風ファンタジーパラレル二次創作小説:夢の華 0
薄桜鬼腐向け転生刑事パラレル二次創作小説 :警視庁の姫!!~螺旋の輪廻~ 15
FLESH&BLOOD ハーレクイロマンスパラレル二次創作小説:愛の炎に抱かれて 10
PEACEMAKER鐵 オメガバースパラレル二次創作小説:愛しい人へ、ありがとう 8
天愛×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:翼がなくてもーvestigeー 2
薄桜鬼腐向け転生愛憎劇パラレル二次創作小説:鬼哭琴抄(きこくきんしょう) 10
薄桜鬼×天上の愛地上の恋 転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:玉響の夢 5
黒執事×天上の愛地上の恋 吸血鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:蒼に沈む 0
天愛×F&B 昼ドラ転生ハーレクインクロスオーパラレル二次創作小説:獅子と不死鳥 1
天上の愛地上の恋 現代転生ハーレクイン風パラレル二次創作小説:最高の片想い 4
バチ官×天上の愛地上の恋 クロスオーバーパラレル二次創作小説:二人の天使 3
FLESH&BLOOD 現代転生パラレル二次創作小説:◇マリーゴールドに恋して◇ 2
YOI×天上の愛地上の恋 クロスオーバーパラレル二次創作小説:皇帝の愛しき真珠 6
火宵の月×刀剣乱舞転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:たゆたえども沈まず 2
薔薇王の葬列×天上の愛地上の恋クロスオーバーパラレル二次創作小説:黒衣の聖母 3
火宵の月×薄桜鬼 和風ファンタジークロスオーバーパラレル二次創作小説:百合と鳳凰 2
薄桜鬼×天官賜福×火宵の月 旅館昼ドラクロスオーバーパラレル二次創作小説:炎の宿 2
薄桜鬼×火宵の月 遊郭転生昼ドラクロスオーバーパラレル二次創作小説:不死鳥の花嫁 1
天愛×火宵の月陰陽師クロスオーバパラレル二次創作小説:雪月花~また、あの場所で~ 0
薄桜鬼×天上の愛地上の恋腐向け昼ドラクロスオーバー二次創作小説:元皇子の仕立屋 2
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:碧き竜と炎の姫君~愛の果て~ 1
F&B×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:海賊と陰陽師~嵐の果て~ 1
F&B×天愛 昼ドラハーレクインクロスオーバ―パラレル二次創作小説:金糸雀と獅子 1
天愛 異世界ハーレクイン転生ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の巫女 氷の皇子 0
相棒×名探偵コナン×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:名探偵と陰陽師 1
F&B×天愛吸血鬼ハーレクインクロスオーバーパラレル二次創作小説:白銀の夜明け 0
名探偵コナン×天上の愛地上の恋 クロスオーバーパラレル二次創作小説:碧に融ける 0
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表紙素材は、このはな様からお借りしました。「黒執事」の二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。シエルが両性具有です、苦手な方はご注意ください。 セバスチャンとユリウスは、日本人の母と、英国人の父との間に産まれた。 母は、かつて隆盛を極めた士族の出で、家計を助ける為芸者となり、お座敷で父に見初められ、二人を授かった。 しかし、父には英国に婚約者を残していた。 英国貴族である父にとって、母は星の数ほど居る愛人の一人だった。 混血の上に私生児を産んだ母は、置屋から追い出さされた。 路頭に迷い、行き倒れ寸前となっている彼らを救ったのが、今の義父だった。 義父は華族で、訳有りの母を正妻として迎えた。 彼は母方の祖母を呼び寄せ、共に暮らすようになった。 母方の祖母・文乃は、優秀なセバスチャンだけを溺愛し、ユリウスを事あるごとに蔑ろにし、時折彼を折檻するようになった。 同じ顔をしているのに、何でも出来るセバスチャンと、病弱で役立たずな自分。 いつしかユリウスは、自分に劣等感を抱くようになっていった。 そんな中、遠縁の伯父が亡くなり、彼の診療所をセバスチャンが継ぐ事になった。 セバスチャンは時折ユリウスに手紙を送ってくれたが、ユリウスは一度も返事を寄越さなかった。 だが、セバスチャンから出征するという連絡が来た。『わたしが帰って来るまで、シエルをお願いします。』 セバスチャンの手紙の中にある『シエル』が何処の誰なのかわからず、ユリウスは混乱した。 取り敢えず、ユリウスは手紙に書かれていた住所を頼りに、セバスチャンの診療所を訪ねる事にした。 すると、そこには一人の少女の姿があった。 彼女が、セバスチャンが言っていた“シエル”だと勘で解った。「失礼、貴殿がシエル=ファントムハイヴ殿か?」 ユリウスがそう少女に尋ねると、彼女は訝し気な視線を自分に送った後、静かに頷いた。 シエルはユリウスがセバスチャンの双子の弟だと名乗ると、彼女は証拠を見せろと迫って来たので、彼女に戸籍謄本を見せると、彼女の頑なだった態度はすぐさま軟化した。 そして、少女―兄の恋人・シエルを深川へと連れて来た。 自分の妻とする為に。 シエルは、美しい少女だった。 雪のように白い肌、そして左右違う色の瞳。 その瞳には兄しか映っていないが、それでもいいと、ユリウスは思っていた。「シエル様、何をなさっているのです?」「米を炊こうと思って・・」「まぁ、ユリウス様の奥様となられる方に、そのような事はさせられません。」「今、何と言った?」「申し訳ありません、今の事は忘れて下さいませ!」 菊はそう言ってシエルに頭を下げると、台所から出て行った。 ユリウスが帰って来たら色々と問い詰めようとしたシエルだったが、彼は中々帰って来なかった。「向こうのお宅で何かあったのでしょうか?」「向こうのお宅?」「ユリウス様のご実家は、銀座にあるのですよ。まぁ、色々と複雑な事情がおありなのかも・・」「そうか・・」 シエルは米を研ぎながら、戦地に居るセバスチャンに想いを馳せていた。 同じ頃、セバスチャンは満州に居た。(シエルは、元気にしているのでしょうか?) セバスチャンはそんな事を思いながら、シエルへ手紙を書いていた。「何だ、これ?」「手紙ですよ、見てわからないのですか?」「フン、相変わらず愛想のない・・」 セバスチャンの手紙を見ていた男は、そう言うと何処かへと行ってしまった。 彼は、セバスチャンとは同じ部隊で、何かとセバスチャンに突っかかって来る。「またあいつかい。気にするな。」「はい。」「その手紙、里に居る恋人宛かい?」「ええ。」 セバスチャンは、そう言うと部隊長にシエルの写真を見せた。「ほぉ、中々の別嬪さんじゃないか。いくつだい?」「今年で13になります。結婚は、シエルが成人するまで待とうと思っています。」「健気だねぇ。」 舞い散る雪の中で、セバスチャンは凍える手を時折擦りながら、何とかシエル宛の手紙を書き終えた。『シエル、元気にしていますか。ちゃんとご飯は食べていますか?こんなつまらない事を書くな、と、あなたはこの手紙をご覧になった後、お怒りになるでしょうね。ですが、このような月並みの言葉しか書けないわたしを許して下さい。どうかお元気で、あなたのセバスチャンより。』 その手紙は、シエルの元に届く事はなかった。 1945(昭和20)年元日。 新年だというのに、食糧難の所為でお節料理を作れず、元日の食卓には芋ばかり並んでいた。 育ち盛りのシエルにとって、それは満足な物ではなかったが、野菜の屑を浮かべただけの汁物や、大根の切れ端しかない漬物ばかり食べていなかったので、我が儘は言えなかった。「ごちそう様でした。」「あなたが、ユリウスのお嫁さんとなる方?おいくつなの?」 そう言った文乃は、シエルが床に入るまでシエルを質問攻めにした。「いい加減にして下さい。シエルさんが怖がっているじゃありませんか。」「でも・・」「シエルさん、この人は放っておいていいので、先に部屋で休んでいて下さい。」「はい・・」 セバスチャンとユリウスの継父・尚哉はそう言うと、シエルに微笑んだ。「ありがとうございます、お義父様。」 その日の夜、シエルが自室で寝ていると、誰かが寝室に入って来る気配がした。「セバスチャン・・?」 シエルが目を開けると、そこには文乃の姿があった。「あの、何かご用ですか?」「死ね!」 文乃はそう叫ぶと、老人とは思えないような力で、シエルの首を絞めた。「お止め下さい、お祖母様!」「この子が、この子が居るから、あの子は・・」「大奥様、いけません!」 文乃を、女中達が数人がかりでシエルから引き離した。「シエルさん、大丈夫ですか?」「はい・・」「お祖母様の事は、お気になさらないでください。」(あの人は、何かを隠している・・) シエルは深川の家に戻り、家事をしながら昨夜の事を思い出していた。“この子が居るから、あの子は・・” 錯乱した文乃が言った、“あの子”とは、一体誰の事なのだろうか?にほんブログ村二次小説ランキング
2024年05月17日
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表紙素材は、このはな様からお借りしました。「黒執事」の二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。シエルが両性具有です、苦手な方はご注意ください。「す、済まない、僕は怪しい者じゃないんだ。」 そう言った男は、シエルに一枚の名刺を差し出した。 そこには、“私立探偵・アバーライン”と印刷されていた。「私立探偵が、この僕に何の用だ?」「君が、ファントムハイヴ君だね?セバスチャン=ミカエリスさんから伝言を預かりました。」 アバーラインは、そう言うと自分を睨みつけているシエルを見た。「ここは人目があるから、中に入れ。」「あ、ありがとう・・」 アバーラインを診療所の中へと招き入れたシエルは、彼に水が入った湯呑みを出した。「茶を出したいが、茶が無いから水で我慢してくれ。」「ありがとう、朝から歩き通しだったから、丁度喉が渇いていたところなんだ。」 アバーラインはそう言った後、一気に湯呑みの中の水を飲み干した。「はぁ~、生き返るっ!」「それで、伝言というのは何だ?」「実は・・」 アバーラインは、数日前セバスチャンと会った事をシエルに話した。「もうすぐ、わたしは出征する事になるでしょう。わたしが出征する時、この書類をシエルに渡して下さい。」「必ず、この書類をあなたに渡してくれるようにと、セバスチャンさんから・・」 アバーラインから書類を受け取ったシエルは、それに目を通した。 そこには、セバスチャンの親族の住所が書かれていた。「わざわざ書類を届けに来てくれて、ありがとう。」「じゃぁ、僕はこれで失礼するよ。」「あぁ・・」 アバーラインを玄関先で見送った後、シエルは下腹の鈍痛に襲われ、その場に蹲った。(セバスチャン、助けて・・)“シエル”―坊ちゃん、またこんな所で寝てしまっては、風邪をひきますよ。 また、誰かの声がした。 シエルが目を開けると、そこはいつもの自分の部屋だった。「僕は、どうして・・」「君が玄関先で倒れているのを見て、部屋まで運んだんだよ。」「すいません、ご迷惑をおかけしてしまって・・」「いいんだ。」 シエルは月の障りが来ると、下腹の鈍痛とそれに伴う貧血の所為で五日も寝込んでしまう事があった。「シエル君は、ここの生まれじゃなかったよね?」「はい。家族と数年前まで東京で暮らしていました。」「そうか。それにしても、ここにはセバスチャンさんと二人で暮らしていたの?」「はい。」「僕は向こうの部屋に居るから、何かあったら呼んでくれ。」「わかりました・・」 アバーラインが自室から出て行ったのを確認した後、シエルは机の引き出しから通帳と印鑑が入っている袋を取り出し、それをリュックの中に入れた。 いつ出掛けられてもいいように、着替えや通帳、現金を入れたリュックを、シエルは枕元に置き、再び布団の中へと戻って寝た。 月の障りが終わり、シエルが診療所の前で掃き掃除をしていると、シエルの前に一人の男が現れた。「失礼、貴殿がファントムハイヴ殿か?」「はい、そうですが・・あなたは?」「失礼、わたしはセバスチャン=ミカエリスの双子の弟の、ユリウスと申します。貴殿をお迎えに上がりました。」「え・・」 突然、セバスチャンの双子の弟と名乗る男に腕を掴まれそうになったシエルは、慌てて男の手を乱暴に振り払った。「僕に気安く触れるな!」「そんなに怒らなくてもいいでしょう。出征した兄の代わりに、あなたを守りに来たのですよ。」「お前の言葉は信用出来ない。お前がセバスチャンの弟だという証拠を見せろ!」「そう来ると思いましたよ。」 男はそう言って深い溜息を吐くと、持っていた鞄の中から戸籍謄本の写しを取り出してそれをシエルに見せた。「これで、納得頂けましたか?」「あぁ。支度をしてくるから、待っていてくれ。」「わかりました。」 シエルは診療所の中へと入ると、素早く自室に置いていたリュックと旅行鞄を持って診療所から外へと出て行った。「では、行きましょうか。」「何処へ?」「東京へ、わたし達の新しい“家”へ。」「わかった。」 ユリウスに連れられ、シエルがユリウスの自宅がある東京・深川に着いたのは、その日の夜だった。「お帰りなさいませ。」「今すぐ風呂と寝床の用意を。」「はい。」 玄関先でユリウスとシエルを出迎えたのは、彼の家政婦・菊だった。「そちらの方が・・」「わたしの花嫁となる方ですよ。」「まぁ、それは嬉しゅうございます。」 二人の会話を、熟睡していたシエルは聞いていなかった。「おはようございます、シエル様。」 シエルが目を開けると、そこは全く知らない部屋の中だった。「ここは?」「ここは、ユリウス様のお宅ですよ。わたくしは、こちらで家政婦として働いております、菊と申します。」「ユリウスは・・あいつは何処だ?」「坊ちゃま・・ユリウス様なら、お仕事へ出掛けられていますよ。」「お仕事?」 シエルが深川の家で戸惑っている頃、ユリウスは銀座にある実家に居た。「ご無沙汰しております、義父上、お祖母様。」「ユリウス、ここに来るなんて珍しいわね。」 そう言ったのは、セバスチャンとユリウスの祖母・文乃だった。「お祖母様、お元気そうで何よりです。」「全く、久し振りにこちらへあなたが顔を見せる時は、何か厄介事を持ち込むと決まっているのよ。今回はどんな厄介事を持ち込んだの?」「厄介事とは、わたしの未来の花嫁に向かって失礼ですよ、お祖母様。」「未来の花嫁ですって?」 文乃の眦が、ユリウスの言葉を聞いて吊り上がった。「はい。いずれこちらへ彼女と挨拶に伺うつもりです。」「セバスチャンならともかく、あなたにそんな相手が出来たなんてねぇ。」 文乃はジロリとユリウスを睨んでそう言った後、溜息を吐いた。 そんな彼女の反応を見ても、ユリウスは眉ひとつ動かさなかった。 彼女は昔から、兄のセバスチャンばかりを可愛がっていた。にほんブログ村二次小説ランキング
2024年05月15日
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表紙素材は、このはな様からお借りしました。「黒執事」の二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。シエルが両性具有です、苦手な方はご注意ください。「助けて・・」少女は、苦しそうに呻きながら、シエルに向かって手を伸ばしたが、その手も酷く焼け爛れていた。「シエル、諦めなさい。」「でも・・」「わたし達には、どうする事も出来ません。」 少女は、夜明け前に死んだ。「シエル、いい加減泣き止みなさい。」「でも・・」「どんなに泣いても、死んだ人は戻って来ませんよ。」 セバスチャンはそう言うと、診療所の中へと戻っていってしまった。 あの少女は、生きていた。 それなのに、理不尽に命を奪われてしまった。(これが、戦争なのか・・) 全ての人を、救う事は出来ない。 ならば、自分に出来る事をしよう。 シエルは涙を手の甲で乱暴に拭うと、診療所の中へと戻った。「シエル、もう大丈夫なのですか?」「あぁ。」「もう皆さん落ち着いたようですし、わたし達も休みましょう。」「お休み。」 シエルは泥のように眠った。「おはようございます、シエル。」「ん・・」「朝ごはんが出来ましたよ。」 そう言ってセバスチャンに連れられて台所へと向かったシエルが見たものは、白米の小さな塩むすびだった。「これは?」「朝早くにお米の配給があったので、作ってみました。」「頂きます・・」 その塩むすびは、美味しかった。 その日を境に、シエルは滅多な事では泣かなくなった。 死と常に隣り合わせの日々の中で、涙を流す時間すら惜しいと思ったからだ。 実際、空襲は連日あり、配給があった米は徐々にその量が減り、それに比例するかのように書籍や文房具類、医薬品などが不足していった。「これが、一日分の食事です。」 ある日、そう言ってセバスチャンがシエルに渡したのは、十粒の大豆だった。「そうか。」「シエル、今日は大事な話があるので、早く帰って来てくださいね。」「わかった。行って来ます。」「行ってらっしゃい。」 セバスチャンは玄関先でシエルを笑顔で見送った後、診療所の中へと戻って行った。 事務机の上に置かれた手紙を見たセバスチャンは、それに目を通すと、火鉢の上に置いた。 それはたちまち灰となった。(シエルには・・坊ちゃんには決してこの事は知られてはならない・・) 昼休み、シエルは朝セバスチャンから貰った十粒の大豆をハンカチの中から出し、一粒口に放り込んで良く噛んだ後、水を飲んで空腹を満たした。「あ~、毎日空襲ばかりで嫌になる。」「毎日寝不足になるわ。」 シエルが少し離れた所で女学生達が話しているのを聞いていると、郵便配達人が彼女達の元へとやって来た。「佐伯静子さんですね?」「あ、はい・・」「お手紙が届いています。」 女学生達の一人が郵便配達人から一通の手紙を受け取った後、彼女は突然泣き崩れた。「どうしたの?」「彼が・・」 その手紙は、彼女の恋人の死を知らせるものだった。「ただいま。」「お帰りなさい、シエル。今日はご馳走ですよ。」「ご馳走?」 シエルがセバスチャンと共に居間に入ると、そこには赤飯と野菜の味噌汁、そして鯛の塩焼きが食卓の上に並べられていた。「どうしたんだ、これ?」「知り合いの方が、調達して下さったのですよ。さぁ、冷めない内に頂きましょう。」「あぁ・・」 シエルは、セバスチャンの様子が少しおかしい事に気づいた。「頂きます。」 夕食の後、シエルはセバスチャンに呼ばれて彼の自室へと向かうと、彼は床に正座してシエルを待っていた。「どうした、そんなにかしこまって?」「シエル、わたしに赤紙が来ました。」「赤紙・・」「これを。」 セバスチャンがそう言ってシエルに手渡したのは、金の懐中時計だった。「父の形見です。これをわたしだと思って、大切に・・」「嫌だ!」「坊ちゃん?」「そんな言葉、お前はこれから死に行くと言っているようなものじゃないか!お前が、こんな物の代わりになるもんか!」 シエルはそう叫ぶと、セバスチャンに抱きついた。「必ず生きて僕の元に帰って来い!僕を独りにするなんて、許さないからな!」「あなたという方は、“昔から”わがままで、放っておけない方でしたが、それは“今でも”変わりませんね。」 セバスチャンはそう言うと、シエルの唇を塞いだ。「必ず、生きてあなたの元へ帰ります。約束します。」「あぁ。」 シエルとセバスチャンは、セバスチャンが出征する数日後まで、共に過ごした。「シエル、もしわたしが死んだら、どうしますか?」「お前の後を追って死んだりなんてしないぞ。」「・・あなたなら、そう言うと思っていましたよ。」 セバスチャンの出征前夜、セバスチャンはそう言うとシエルを抱いた。 そして、セバスチャンが出征する日が来た。 彼を見送る為、地域の婦人会の女性達が千人針をセバスチャンに贈り、駅で立派な幟を振って盛大に彼を見送った。「万歳!」「万歳!」 セバスチャンは汽車に乗り込んだ後、シエルの姿を捜したが、シエルは何処にも居なかった。 シエルは、敢えて元気よく振る舞って、別れの涙を自分の前で流したくないから、ここに来ないのだろう―セバスチャンがそう思っていると、盛大に見送りする人々から少し離れたところで、自分を見つめるシエルとセバスチャンは目が合った。『帰って来い。』 唇だけでそう自分に告げたシエルに、セバスチャンは微笑んだ。(必ず、あなたの元に帰ります。だから、その日まで・・わたしが帰って来るまで、あなたもどうか死なないでください、シエル。) 汽車の汽笛が高らかに鳴り、汽車が静かにホームから離れ、やがてそれはトンネルの中へと消えていった。(セバスチャン・・) シエルは、そっとハンカチに包んだ懐中時計を握り締め、駅から去った。 診療所へと戻ろうとしたシエルは、その前に一人の男が立っている事に気づいた。「おい、そこで何をしている?」にほんブログ村二次小説ランキング
2024年05月10日
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表紙素材は、このはな様からお借りしました。「黒執事」の二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。シエルが両性具有です、苦手な方はご注意ください。 シエルの右足の骨折は、一月経った頃には完治した。「ごめん下さい。」「女将さん、わざわざこちらにいらしてくれて、ありがとうございます。」「いいえ。こちらこそ、うちのシエルがお世話になりました。今日は、この子の荷物を持って来ただけですよ。」 山田旅館の女将・静子は、そう言うとシエルの私物が入った風呂敷包みをセバスチャンに手渡した。「伯母様、僕は・・」「セバスチャンの言う事をちゃんと聞くんだよ、いいね?」「はい・・」 静子は、シエルに背を向け、診療所から出て行った。 こうして、シエルはセバスチャンと共に暮らす事になった。「坊ちゃん、おはようございます。」「おはよう、セバスチャン。」 シエルは診療所の奥にある台所へ向かうと、すいとんを作った。「坊ちゃんが料理を作るなんて、珍しいですね。」「あの家に居たら、碌に食事もとれなかったからな。すいとんが作れるだけマシだ。」「そうですね。それよりも今日、お米の配給がありますから、行って来ますね。」「わかった。」 セバスチャンが配給に行った後、シエルは縫製工場へと向かった。「シエル~!」 昼休み、シエルが工場の隅で休憩を取っていると、そこへ白衣の裾を翻しながら自転車でこちらに向かって来るセバスチャンの姿に気づいた。「セバスチャン、どうして・・」「お弁当作ったので、どうぞ。」「あ、ありがとう・・」 セバスチャンから渡された弁当箱に入っていたのは、白米の上に梅干しが乗っているだけのものだった。 だが、毎日稗や粟ばかり食べていたシエルにとって、それはご馳走そのものだった。「シエルさん、ちょっと。」 昼食の後、シエルが持ち場に戻ろうとした時、シエルは数人の女学生達に工場の裏へと連れて行かれた。「さっきの方、あなたとどのような関係の方なの?」「セバスチャンとは、ただの同居人で・・」「嘘よ、ただの同居人に対して、あんなに優しい笑顔を浮かべる訳がないわ!」「そうよ、年端もいかない癖に男を誘惑するなんて、ふしだらね!」 恋愛に疎いシエルは、最初彼女達が話している内容が良く解らなかった。 だが彼女達の顔を見ると、セバスチャンと一緒に暮らしている自分に彼女達が嫉妬している事に気づいた。(下らない・・)「ちょっと、何笑っているのよ!?」「いえ、話はそれだけですか?話がもう終わったのなら帰ります。」 工場を出たシエルが診療所へと帰ると、セバスチャンが何処か疲れたような顔をして診察室の椅子に座っていた。「ただいま。」「シエル、お帰りなさい。」「疲れているようだが、何かあったのか?」「えぇ、実は・・」 セバスチャンは、シエルに昼間起きた事を話した。「先生、助けて下さい!」「どうなさったのです?」「胸が・・苦しくて・・」 シエルに弁当を届け、診療所へと戻ると、その前には一人の女性が蹲っていた。「そうですか、では中へ・・」「胸をさすってくださるだけでもいいのです。」 女性の言葉を聞いたセバスチャンは、彼女の様子に違和感を抱いた。 ふと周りを見渡すと、近くの木に女性の連れと思しき男が立っていた。「申し訳ありませんが、わたしではあなたのお力になれません。」 セバスチャンがそう言って女性を見ると、彼女は舌打ちして何処かへと行ってしまった。「美人局に引っかかりそうになるとは、お前少し弱くなったな?」「おや、そうでしょうか?」 セバスチャンはシエルを自分の方へと抱き寄せると、シエルの唇を塞いだ。「やめろ・・」「そう言っても、まんざらではないでしょう?」 セバスチャンはシエルの唇を塞ぎながら、シエルの下半身を触り始めた。「んっ、やぁっ・・」 シエルは身を捩って暴れたが、セバスチャンの逞しい身体はビクともしなかった。「今すぐ、楽にしてさしあげますね。」 シエルはセバスチャンの愛撫によって絶頂に達した。「坊ちゃん、起きて下さい。」「ん・・」 シエルが起きると、そこは布団の中だった。 いつの間にかブラウスとモンペから、浴衣に着替えさせられていた。「今、何時だ?」「午後八時ですね。」「はぁっ!?」「最近お疲れのようですし、ゆっくり休めて良かったじゃないですか。」「お前なぁ・・」 シエルがそう言って溜息を吐いた時、外から誰かが診察所の扉を激しく叩く音がした。「先生、助けて下さい!うちの子が熱を出して・・」「娘さんを診察台に寝かせて下さい。」 セバスチャンは少女の父親に指示を出すと、無駄のない動きで少女を診察した。「ただの風邪ですね。風邪薬を出しておきますから、安心して下さい。」「ありがとうございました、先生!」 その様子を奥の部屋から見ていたシエルは、翌日セバスチャンにある事を話した。「診療所の手伝いをしたい?」「僕には何も出来ないが、ここに置いて貰っている限り、何かお前の力になりたいんだ。」「わかりました。では、今日からわたしがあなたを厳しく指導致しますので、覚悟していて下さい。」 セバスチャンはそう言うと、シエルに微笑んだ。 脅しかと思ったが、セバスチャンはその日からシエルに厳しく指導した。「包帯の巻き方が遅いですよ!こんな状態では手当てに半日もかかってしまいますよ!」「うるさい、わかっている・・」「ならば、口答えするより手を動かしなさい!」 日が暮れた頃には、シエルはクタクタになっていた。「この程度で疲れるとは、情けないですね。」「うるさい・・」「あなたが言い出したんですよ?」 シエルとセバスチャンがそんな事を言い合っていると、空襲警報が鳴り響いた。「早く、防空壕へ!」「わかった!」 診療所は焼けなかったが、空襲で負傷した人々が次々と診療所に運ばれて来た。「シエル、向こうを頼みます。」「わかった!」 シエルが怪我人の手当てをしていると、微かに自分を呼ぶ声が聞こえて来たので振り向くと、そこに昨夜セバスチャンが診察した少女の姿がある事に気づいた。 彼女の上半身は、酷く焼けただれていた。にほんブログ村二次小説ランキング
2024年05月10日
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表紙素材は、このはな様からお借りしました。「黒執事」の二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。シエルが両性具有です、苦手な方はご注意ください。―坊ちゃん、お目覚めの時間ですよ。誰かが、自分の耳元で優しく囁く声。目を開けると、そこには何の変哲もない自分の部屋。「いつまで寝ているんだい!」「すいません・・」「まったく、義姉さんは何だってこんな穀潰しを・・」ブツブツと小声で自分の陰口を叩く遠縁の伯母の声を背に受けながら、シエルは家から出て行った。―ほら、あれ・・―山田さんのところの・・学校へと向かう道すがら、通行人達が好奇の視線をシエルに送った。三年前、両親と双子の兄を交通事故で亡くし、シエルは、遠縁の親族の元に引き取られた。華族の令嬢として何不自由なく生きていたシエルは、今の家では使用人同然の生活を送っている。唯一の救いは、伯母の“お情け”で学校に通わせて貰っている事だった。学校といっても、シエルが入学した時に戦争が始まり、授業らしい授業は何もなかった。「鬼っ子!」「早くこの町から出て行け!」家でも学校でも、シエルは独りだった。少し青みがかったダークシルバーの髪、雪のように白い肌、紫と蒼い瞳を持ったシエルは、周囲から浮いていた。病弱な上に良く熱を出して寝込んでいたシエルは、勤労奉仕も満足に出来ない所為で同級生達から疎まれていた。(僕は、独りだ。)―坊ちゃん。風に乗って、懐かしい声が聞こえて来た。あれは、一体誰の声なのだろう。何処かで、聞いたことがあるような声。「おいそこ、手が止まっているぞ!」「す、すいません・・」「全く、この穀潰しが・・」縫製工場での勤務を終えたシエルは、額の汗を拭いながら、工場から家へと向かった。すると、上空で轟音が響き、空襲警報のサイレンが鳴り響いた。「敵機襲来、待避~!」人々の悲鳴や怒号、そして機銃掃射の銃声が響いた。防空壕に逃げ込もうとしたシエルだったが、そこは既に人がひしめいていて入れなかった。逃げ場をなくしたシエルは、近くの木の下に隠れた。その直後、バリバリという音と共に、銃弾の雨が容赦なく降り注いだ。シエルが両手で耳を塞ぎ、身体を丸めていると、誰かが自分を抱き寄せる感覚がした。―坊ちゃん。「あぁ、やっと見つけましたよ、坊っちゃん。」俯いていた顔をシエルが上げると、そこには一人の青年の姿があった。射干玉のような艶やかな黒髪、美しい紅茶色の瞳をした青年は、シエルを見て優しく微笑んだ。「セバスチャン・・」シエルは、そう言うと気を失った。「傷は浅いですね。銃弾が後数センチずれていたら、死んでいましたね。」シエルが目を開けると、そこは診療所と思しきベッドの上だった。「ん・・」「目が覚めましたか?」「ここは?」「遠縁の伯父が経営している診療所ですよ。あなたは怪我をしていたので、こちらに運びました。」「ありがとうございます。」シエルが青年に礼を言ってベッドから起き上がろうとすると、右足に鋭い痛みが走った。「まだ動いてはいけませんよ。あなたはあの時、右足を骨折していたのですよ。ここで暫く休んでいなさい。」青年はそう言うと、シエルに微笑んだ。―坊ちゃん。「あなた、お名前は?」「シエル・・シエル=ファントムハイヴ・・」「確か、山田旅館に引き取られた子ですね?わたしは、セバスチャン=ミカエリス。」その名を聞いた時、シエルの目から自然と涙が流れていた。(あぁ、やっと会えた・・)シエルが溢れ出る涙を必死に手の甲で拭おうとした時、青年がそっとレースのハンカチでシエルの涙を拭ってくれた。「泣かないで、坊っちゃん。こうしてまた、会えたのですから。」「あぁ、そうだな・・」シエルとセバスチャンは、暫く抱き合っていた。「セバスチャンは、どうしてこの町に?」「伯父が亡くなりましてね。遺言状にこの診療所をわたしに譲るとあったので、東京の病院を辞めてこの町に来たのですよ。」「そうか・・」「坊ちゃん・・もし良ければ、一緒に暮らしませんか?」「え・・」「今すぐ、という訳にはいきませんがね。今は、足の怪我を治して下さいね。」「わかった。」こうして、シエルとセバスチャンの、奇妙な同居生活が始まった。「へぇ、あの子がねぇ・・」「どうしますか、女将さん?」「別にいいんじゃないの、あの子が向こうで暮らしたいって言えば、勝手に暮らせばいいのよ。」にほんブログ村二次小説ランキング
2024年05月10日
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