5月20日(月)
現代俳句(抜粋:後藤)(50)
著者:山本健吉(角川書店)
発行:昭和39年5月30日
原 石鼎(3)
秋風や 模様 のちがふ 皿 二つ
大正三年作。前書き:「父母のあたゝかきふところにさへ入ることをせぬ放浪の子は伯州米子に去って仮の宿りをなす」
「模様のちがふ皿二つ」とはデリケートな情感を託したもの。小さな卓袱台(ちゃぶだい)模様のそろわない皿二つを置いた殺風景な、落魄(らくはく)した男の独り暮しを想像出来る。模様の違う(おそらくは大きさも違う)皿二つを、秋風との配合のうえに想いうかべるだけでよい。
けさ秋の 一 帆 生みぬ中の海
大正三年作。出雲・伯耆にある鹹水湖で、日本海につながっている。
立秋の日の朝を「今朝の秋」と言い、つづめて「けさ秋」と用いた。「けさ秋の」で小休止。
米子あたりの海辺に立って眺めていると、中の海の沖合に白い帆船が一つ見えて来た。その清々しさ、爽やかさに、秋の気を感じ取った。中の海が秋気に感じて一帆を生んだように感じた。広々とした中の海に一つの帆船を見出した新鮮な感嘆の情がこもっている。
(つづく)
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