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(走ることについて語るときに僕の語ること:村上春樹:p156/p157:文藝春秋)より引用『僕は僕であって、そして僕ではない。そんな気がした。それはとても物静かな、しんとした心持ちだった。意識なんてそんなにたいしたものではないのだ。そう思った。もちろん僕は小説家だから、仕事をするうえで意識というのはずいぶん重要な存在になってくる。意識のないところに主体的な物語は生まれない。それでも、そう感じないわけにはいかなかった。 意識なんてとくにたいしたものでもないんだと。』
2008年01月19日
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(キッチン日記/J.クリシュナムルティとの1001回のランチ:p150/p151:マイケル・クローネン(著):高橋重敏(訳):コスモス・ライブラリー)『彼女は静かに会話の成り行きを見守っていたが、クリシュナムルティの方を振り向いた。「推理小説などはどうですか? 何かお読みになりましたか?」 彼は彼女の質問にすぐには答えずに、戸惑った表情で彼女を見た。彼女は素早く言葉を繰り返した。「あのー、神秘もの、探偵ものなどですよ」 喜びのひらめきが彼の眼にやどった。「ええ、スリラー」と彼は答えた。「スリラーを読むのは好きです。あなたはどうですか?」「私もです、神秘小説はすばらしい。お気に入りの作家は誰ですか? クリシュナジ?」「アガサ・クリスティは随分読みました。レックス・スタウトの著作もいいですね。彼の名前、あの太った探偵の名は何でしたっけ?」「ネオ・ウルフです」「そして彼の助手、あのへまな奴…」「アーチーです」と彼女は言った。「レーモンド・チャンドラーはどうですか、何か読まれましたか?」「誰のことですか?」「彼はフィリップ・マローを作り上げました。がっちりした私立探偵で、四十年、五十年代にロスアンジェルスに住んでいました」「ああ、判りました。彼のはみんな読んだと思います」』 ああ…レイモンド・チャンドラー…大好きな「長いお別れ」「プレイバック」… アガサ・クリスティ…大好きな「アクロイド殺人事件」…初めて読んだときの衝撃!…「オリエント急行殺人事件」「ABC殺人事件」「そして誰もいなくなった」…
2008年01月16日
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(生と覚醒(めざめ)のコメンタリー1:p329:J.クリシュナムルティ:大野純一(訳)春秋社)より引用『子犬たちは丸々と太り、汚れがなく、そして暖かい砂の中で遊んでいた。六匹いたが、どれも白と薄茶色のぶちだった。母親は、かれらからやや離れた日陰に横たわっていた。彼女はやせており、疲れきっていて、その上ひどく疥癬にかかっていたので、彼女の体にはほとんど毛がなかった。彼女の体の上にはいくつかの傷があったが、しかし彼女は自分の尾を振りながら、その丸々とした子犬たちをたいそう自慢にしていた。彼女の余命は、おそらくあと一ヵ月かそこらしかないだろう。彼女は、うろつき回り、不潔な街路や貧しい村々から拾えるものは何でも拾い、いつも飢え、そしていつも逃げ回っている、そういう犬たちの一匹だった。人間たちは彼女に石を投げつけ、かれらの戸口から彼女を追い払った。そして彼女は人間たちを避けて通らねばならなかった。しかしこの日陰の中では、昨日の記憶は遠かった。そして彼女は疲れ果てていた。その上、子犬たちはかわいがられ、そして声をかけられているところだった。遅い午後のことだった。広い川を渡ってきた微風はすがすがしく、そして涼しかった、そしてさしあたり満足があった。次の食事をどこで得るかは別の問題だったが、しかしなぜ今あがくことがあったろうか?』
2008年01月03日
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