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小説 「scene clipper」 Episode 33 上の写真に写っています「代一元」です。京王線側から甲州街道を挟んで反対側に見えます。ビルの右側に黄色の看板が見えます。アップではないので分かり辛いですが、これも貴重な写真です。何故かと言うと、何時もなら甲州街道を絶え間なく行き交う車に隠れてしまってなかなかこんなふうには見えません。これも正月の時分だと分かります。笹塚駅前の写真とおなじくS・W君がLINEで送ってくれたものです。S・W君ありがとう! さあ、このお店に水城とマリと私を入れて3人で食べに行きます。因みにこのお店「代一元」は大衆食堂のような所謂「街中華」と言われる気軽に楽しめる中華屋さんです。3人は「代一元」の暖簾の前に立った。リョウが暖簾をくぐろうとすると、水城が首を振って押しとどめる。「何だよ・・・」「レディファーストでしょ、マリさんどうぞ」と暖簾を手の甲で押し広げてマリをくぐらせた。「ありがとう水城君・・・先に入ろうとした誰かさんと違って優しい・・・」マリは俺の顔を見て柄にもなく品を作りながら入っていく。俺は水城に一言くれてやろうかとしたが、視界ギリギリのところで脚を組むのが見えた。「リョウさん、ホント好きねタイトスカート」ここは何も反応しないでおくのが正しい選択だろう。リョウはマリの隣りに座り水城がその横に座った。「さて今日は・・・」とメニューに目をやる「フンフン、今のは賢い。無反応なのが大人って感じよ」「・・・・・・」「大将、僕は餃子とビールください」「あいよっ」「水城昼間からビールか・・大将彼が未成年かどうか確かめなくていいの?」「大丈夫、彼は高校生の頃から来てるから、あれからもう5~6年は経つよね」 水城は嬉しそうに「はい」と元気よく返事をした。ほう、ここの大将がこんなに愛想よく接客するとは知らなかった・・・。「じゃあ私は天津飯をお願い、あと、リョウも餃子食べるでしょ?」 頷く「餃子も・・二つください」「はい」最後かよ俺が・・・その時例の音がした。カラッと揚げた太麺の入った斗缶のふたを開ける音だ!「五目堅揚げそば」がリョウの好物だと覚えてからここの大将は斗缶のふたを開けて用意するようになったのだ。そして悔しいけどその魅力に負けて「五目堅揚げそば」を注文すると勝ち誇ったように無言で白い歯を見せるのである。なのに今日もまた「五目堅揚げそば」と言ってしまった。どこまで好きなんだ。そして嬉しそうな大将の声が「あいよっ」 おまけにニヤついてるし・・・「どうしたの?悔しそうな顔してるわね」マリが心配そうに顔を覗き込む「悔しいさ、でも仕方がないんだ」「・・・・・」やがてリョウの前に降りてきた「五目堅揚げそば」は気のせいじゃなく大盛りだ。勝者による敗者に対する余裕の慰めか!でもやっぱり美味しいし大盛りにも無言で感謝した。 やがて3人は「ごちそうさま」を言い店を出た。 「リョウさんごちそうさまでした」と二人が言い、「スカートのスリットは前じゃなきゃだめなのか」と言うリョウに、「リョウが嫌ならやめるけど嫌じゃないでしょ?」とからかうマリ「いいっすねえお二人は仲が良くって・・夕子どうしてるかなあ」水城がつぶやきリョウとマリは吹き出してしまった。 腹を満たし、軽口を叩きながら歩いていたら水道道路に出た。右を向いて、つまり東の方に行けば新宿の都心に出るが、それよりずっと手前であの事件が待っていることをこの時、誰一人予想できる者などいるはずもなかった。 (写真の代一元は2022年7月時点営業中でしたが、残念ながらその後閉店してしまったそうです。残念!) いつも応援頂きありがとうございます。今日もよろしくお願いします。
2023.11.29
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小説 「scene clipper」 Episode 32 「もしもし・・・」「水城です・・・二人して何を熱く語ってんすか?」「え!おまえ今?・・・」「見えるところにいますよ、当たり前でしょ・・・お二人の姿を見て電話してん ですから」 リョウは首を高く伸ばして辺りをまるで潜望鏡のように見回した。 「あ、そこかあ・・・で、なんでスマホなんだ?こっち来いよ」 水城君、仕方なさそうに、電話を切ってやってきた。 「・・・たく状況が分かってないっすねえ、周囲の視線に気付かないんです か?」 水城にそう言われて再びロビーを見渡すと・・・怪訝な顔してこちらを見てた人 がカウンターに向き直る、若しくはリョウと目が合ってそれまで見ていたスマホ の画面に目を戻す人、等々、かなりの視線を浴びていたのに気づいた。 「ね・・」「ああ、そんなに声大きかったか?」「はい・・よく注意されなかったですねえ・・皆さんほんとお騒がせしました」 水城が周囲の人たちに向けて頭を下げた。リョウとマリはさすがに居たたまれなくなり立ち上がって軽く頭を下げ、速足 で信金の出入り口に向かった。「もういいんじゃないですか?ここまで来れば」 いつの間にか信金の建物が見えなくなる曲がり角に来ていたのだ。 「いや参った、参った」「何が参ったよ!リョウがあんな訳の分からない説明を長々としてるからじゃ ない」 「おい、それはないぞ。説明してくれって言ったのマリじゃないか!」「だって、あんなに面倒くさい話になるなんて思わないもの!」「もう、いい加減にしてくださいっ!もうお願いしますよ・・・」 俺とマリはこの時初めて水城に頭を下げた。悪さして𠮟られた子供のよう に・・・。 と、神妙にしている2人を見て水城は密かにほくそ笑んだではないか。こういう時の水城って何か「美味しいこと」を考えているんじゃなかったか?リョウさんよ! 「そうだ、今日久しぶりに夕子が里帰りしたんでパチンコやったらメッチャ勝 っちゃって!昼飯、お二人に日頃お世話になってるから、お返しに奢らせて もらおうかなってさっき南台に行ったらそば屋のケンちゃんに会って「なん かさっき西〇信金に入ってくとこ見たよ」って。で、来てみたんですよ」 「ほう、それはいい心掛けじゃん。なあマリ・・・」 「・・リョウさん読めてないねえ、水城の顔に何が書いてあるか・・・」 「水城が何だって?・・・」 「マリさん正解!今日は立場逆転してますよね」 「水城、いいこと教えてあげる。さっきねリョウさんの口座に上妻さんからギ ャラが振り込まれたんだよ。結構貯めてたし」 「あ、それすごい情報!決まりですよね。リョウさん今日は『代一元』でいい すよね?」 リョウは横目でマリを睨むと 「余計なこと言ってくれてありがとうよ・・・」と言った。 「どう板橋区(『どういたしまして』という意味のギャグ。ごく仲間内でし か通用しない )」 ※この後、おまけの画像有ります。この小説にちょっと味付け♪ おまけ! さて、今日はこの小説の主な舞台の一つである京王線笹塚駅前の甲州街道 と例の歩道橋の写真を皆さんに見て頂きましょう。以前私が懐かしがっていたら中野育ちの友達、S・W君がわざわざLINE で送ってくれていたものです!S・W君本当にありがとう。 これは確か正月の写真だと思います。東京の街がこんなに車も人通りも少ないのって、盆と正月くらいなので。いつもお読みいただきありがとうございます。今日もよろしくお願いします。(^^♪
2023.11.22
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小説 「scene clipper」 Episode 31あの後、南南食堂の大将が「マリちゃん、もう許してやってよ、いつもの通り悪気はないんだし、リョウさんだし、ね」という援護射撃を受けてリョウは店を出た。マリの手を取って・・・一度は振り払われたが二度目で許された。そして二人して環七の手前、杉並区方南町方面に向けて歩き始めたのである。 「ん、入ってる。C十G万(ツェ―ジュウゲー万=15万)か・・・上妻と二人でE十万(ェージュウ万=30万)と・・・まあまあだな」表に名前が出ない創作者のギャラはこんなもの・・というか名無しの権兵衛でいる内は文句なんて言えないのだ。それでもリョウの場合、上妻のご両親が口利きをしてくれている関係でフリーのコピーライターの方の収入は安定しているとは言えないが年に200から500万(幅は広い)はある。なので苦手であり他には誰にも贈らないお中元もお歳暮も、リョウは欠かさず上妻のご両親にだけは贈らせてもらっている。南南食堂で朝食を済ませた後、二人は10分ほど歩いて西〇信用金庫方南町支店のATMでリョウの通帳の記入を済ませた。マリはリョウにぴったり身体を寄せて通帳を覗いていたのだが、意味不明なことを言うリョウの顔を眉間にしわを寄せて見上げた。「ちょっとリョウさん、そのツェ―ジュウなんとかって何?」「ああ、これはな・・・業界用語だ音楽業界のな・・・」「説明を要すぞ私には」リョウは辺りを見渡して待合の一番後ろのイスを指差してマリを座らせた。「さっき食ったばっかだから、ちょっと座ろうぜ」「OK・・・」「音階ってあるだろ、ドレミファってやつ」「うんうん」「あれアルファベット表記だとどうなる?」「・・・・・わかんない音楽の授業って退屈だったし」「だよな、俺だってガッコで教わる音楽には興味無かった・・・」「へえ、ライブハウスに浸るような人がね・・・」「俺だけじゃないだろうけど、俺らビートルズで音に目覚めたから、それまではな」「うん、それ分かる」「・・・・・・・どこまで話したっけか」「っとね・・・あ、ドレミファのアルファベット表記が何だとか言ってた」「今度はちゃんと最後まで説明させてくれる?わかんなくなるから」「あ、ごめん・・聞く・・・・けど、途中で相槌を打つてのはいい?」「それはさあ、お前が理解できてるかどうか知るためにも是非やって欲しいことだな。良い悪いじゃなくて必要だと思うぜ」「あ、分かった・・・うんそうだよね」 「・・・・・・・・」マリが「え?」という顔して「え?」と言ったあと続けて言った。「あれだよアルファベット表記、ドレミファの・・・」「・・・わかってる・・・あれを、C・D・E・F・G・A・Bと表すんだ」マリちゃんはいったん頷いたもののすぐさま首を傾げた。「さっきリョウさんが言ってた言葉が出てこないよ・・」「そうだな、うん確かに・・・音楽っていうとヨーロッパって思わない?特に作曲家っていうとバッハとかベートーヴェンとかこの二人はすぐに思い浮かぶだろ?」「何?突然音楽家の名前上げて・・・でも、うんそうね、その名前は私でもすぐに思い出すけど・・・」「だろ、二人共ドイツ人だ。他にもドイツの作曲家って多いし、オーストリアだってほぼドイツ語圏、特に若い世代はドイツ語でって聞いたよ。だからなんだろう、アルファベットをドイツ語読みするんだ。」「へえー知らなかった」 「でな、Cはツェーと読み、Dをデーと読む。あとEはエー、Fは・・まんまエフ、でGはゲー、Aはアー、Bはべーと読む。ここまではいいかな?」今度はマリちゃん頷きもせず、すぐさま首を傾げた。「で、この7つの音階は1・2・3・4・5・6・7とする。これを金額に当てはめたんだな誰だかが・・」「・・・・・・」けどなんとか頷いた。「で、さっき俺の口座に振り込まれていたのは15万円だね。先ず10をツェージュウ、次に5は?・・・ゲーだな。それを続けて言うとツェージュウゲー万となる、ジュウはまんま十、単に日本語で言うわけ、分かるよね」「・・・めんどくさいんだね音楽やってる人って」「まあ、そう言えば・・・けどさあ、人前で15万円て口に出すとなんか生々しくないか?」「うーん、まあそう言えばそうかな、と・・・」「こいつ、人が一生懸命に説明してやったのに・・・」マリが何か言い返そうとした時、リョウのスマホが鳴った。何時もお読みいただきありがとうございます。今日もどうぞ宜しくお願い致します。
2023.11.17
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小説 「scene clipper」 Episode 30電話だ・・・今日2回目の朝飯中断! 最初のは仕事の電話、上妻からで、「マリさんのClip記事、とりあえず3カット分だが某放送作家が「使う」ということで局でギャラもらったから今日中に振り込んでおくよ」 「おう、ありがと、また飯おごるよ」「なら明大前になかなかのカレーショップ出来たから、そこで」「おう、分かった、そっちの都合のいい日時決まったら電話くれ」 で、スマホの電源切ってすぐのこと。しかし、今度も好ましい相手だという直感がした。 「リョウさん起きてた?」「おう、マリ、当たりだな」「何が?」「大事な相手だという直感が当たったっていうこと」「それは大当たりだねえ」「ああ、もう朝飯食ったかい?」「まだだよ、それより先に聞いておきたい声があってね」「またそんな、朝っぱらから俺をその気にさせないでくれよ」「うふふ・・・ところで何処で何食べようか?」 15分後、杉並区方南町 定食屋「南南食堂」(なんなんしょくどう)リョウは結構な速足だったからすでに中にいたマリは彼が足を止める音で到着に気づいた。『カララッ』この店は福寿と違ってまだ新しく両開きの扉はアルミ製だから滑りが滑らかだ。「らっしゃい!」「おはよう、大将、相変わらず太ってんな」「余計なお世話だよっと・・・あ、リョウさんと待ち合わせだったんですか?」大将がマリに向き直ってそう言った。白い歯を見せたマリに「今日はえらくご機嫌だと思ったらそういうことだったんだ」 マリはそれには答えず、彼女の向かい側に腰を下ろしテーブルに乗せたリョウの左手に右手を重ねた。 「まあ、笹塚のお姫様にまた春が来たんだねえ・・・」これは大将を手伝っている彼の母親だが、まるで江戸の昔の奉公人が主筋の良縁を喜んでいるような口ぶりだ。「お姫様って、またずいぶん時代がかった言い方だなあ、おかあちゃん」 「そっか、リョウさんは知らないんだね。マリさんのご先祖様は内藤家3000石の大身旗本だったんだ、だから世が世なら長女のマリさんはお姫様に間違いないってことなんだよ」「え、そうなんだ」おかあちゃんの解説に大きく頷いたリョウはマリを振り返って 「3000石っていうと水城んとこの3倍強じゃない。 こりゃああれだなちょっと考えなきゃだな」「何を?」「いや、格が違うだろ・・・うちは800年続いてるって言っても 農家だからね・・・」「それで・・」(彼女の目の色に気付けば?リョウさんよ)これは大将の心の声だが 出来れば口に出して欲しかったな。リョウは特に意識したわけではないが、左手薬指をこすっていた。 こすっていながら目を上げた瞬間に失敗を悟ったのである。 そこで緊急避難行動をとることにした。「マリ、俺の目を見ろ!」そう言ってリョウは大きく目を見開いた。「はあ!?」「いいからよく見てみろ!」 カウンターの奥で大将はしゃがみ込み笑いをこらえている。リョウの意図が見えたからだ。(多分あれだ、以前も連れの客が機嫌を悪くした時やったあれだ、相手の気を逸らすというか、はぐらかすって寸法だな。ちょっと狡いが上手くいくときもある。リョウさんは結構上手いぞ、はぐらかされてやんなお姫様) 「だから、あんたのその目を見て何があるっていうの!」 (えーい、一か八かだ!こんな時は勢いのある方が勝つ!)もうやけくそである。 「マリ!俺の目の奥を見ろ」「あんた馬鹿か!?活きの良くないマグロのようなその目の奥に何があるって言うんだい!」「わかんねえかなあ、見えねえかなあ・・・『反省』っていう字が書いてあるだろ?良―く見てくれよマリちゃん・・・」 マリはたまらなくなってついに噴出した。「プツ! コンチキショー!訳の分かんない・・ことを・・あ、は、は~!」 カウンターの中でも約一名、腹を抱えて笑いながら 「バカだねー!リョウさんよー勘弁してくれよー、堪んねえよ~笑い過ぎて、あ、涙でてきたじゃねーか!」 他の客とおかあちゃんは狐につままれたように呆然としている。 いつも応援、コメント頂きありがとうございます。今日もよろしくお願いします。(^^♪
2023.11.04
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