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昨日の木曜日はデートの予定はなかった。しかし、私が仕事の相談でW氏に1時間ぐらい話したいと言ったら、それならば、せっかくだから個室の料亭で食事しようということになり、都心部なのに閑静な住宅街の中にある、昭和初期の民家を改築した料亭に行った。そこは一日あたり、わずか3組しか客をとらないような料亭で、ちょっと聞いてみると、政治家なども利用しているらしい。6畳ぐらいの居心地のよい和室に掘りごたつで、向かい合って会席料理を3時間かけて楽しんだ。料亭を出て、暗い住宅街の道を歩いていたとき、W氏は私の肩に手をまわし、ときおりディープキスをしてきたり、あるいは歩いている途中におでこにキスをしてきたり、とにかくいちゃいちゃぶりがすごかった。暗いから、と安心しているかもしれないが、誰がいるか分からない。私は気が気ではなかったが、無邪気に「こうして出逢えたということは奇跡なんだよ」と言いながら、私の肩をぎゅっと抱き寄せるW氏に対して、嬉しく思う気持ちを抑えられなかった。私たちの関係はまもなく1年になる。付き合い始めて1か月ぐらいしてから今まで、およそ2週間に1度のペースでデートしている。でも、正直に言えば、セックスしなくてもいいから、週に1度ぐらいは会いたくなってきた。食事しながらいろいろ話したいのだ。W氏は頭の構造が私とは全く違って、とても頭がいい。昨日話しているなかでわかったのは、W氏は私が話したことは、ほとんどそのまま、つまり音声データとしてそのまま全部覚えているらしい、ということだ。音楽も一度きいたらほぼ覚えてしまうらしい。「それだったら、これまで私、きっと何度も同じ話をしてたこともあったのに、 ”それ、前に聞いた”って言ってくれればよかったのに」と私が言うと、「そんな失礼なことしない。それに別バージョンかもしれないじゃないか」とW氏。こういうところは医者っぽい。彼は内科だが、半分ぐらいは心療内科のようなこともやっているようなので、患者の話は同じ話だろうが、何度でも聞くというスタイルができているのだろうと思う。そうでなければ「別バージョン」かどうかの検証なんて、普通やらない。その一方で、彼は自分がしゃべったことはほとんど忘れている。つまり、彼の性質として、人の話はよく覚えているが、自分のしゃべったことは覚えていない、ということだ。私にとっては、この性質はとても好ましく思えた。ときどき、自分が話したことばかり覚えていて、人の話は全く聞いていない人がいる。「あのとき、俺はこう言った、ああ言った」ということばかり自慢されたって聞かされるこっちは面白くもなんともない。帰宅してしばらくすると、W氏からお礼のメールがきた。今日行った料亭も、その前に行った喫茶店も居心地がよくて、私たちにあっているね、というような内容だった。W氏の「私たち」という言い方の中に、私たちが二人でいることがだんだん当たり前のようになってきた感じがして、それも嬉しかった。「私たち」という言葉を使われて嬉しいと思ったのは、夫とW氏だけだ。T氏をはじめとするほかの人たちからこんなことを言われたときには、「あなたと一緒にしないでよ」と言いたくなってしまったから。私は常に、よく分からないけれども明確な基準で、私と相手の男性が「釣り合っているか」どうかをはかっている。この「釣り合っている」という感覚は、自分でもよく説明できないが、それでもふと街でガラスに映った自分と相手の姿をみて、「あ、釣り合ってるな」と思ったり、あるいは逆に「釣り合ってないな」と思ったり、という外見上の問題だけでなく「私たち」という言葉で自分と相手をくくったときに、違和感を感じるかどうか、というところに基準があるように思う。「私たち」という言葉には、自分を拡張したところに相手がいるので、相手と自分を同一視することを自分に許している、ということを示しているように思える。で、W氏と私は、「釣り合ってる」と思えるのだ。こんなに年齢も違うのに。外から見たら、きっと私たちはどうみても不倫カップルそのものだと思うのに。でも、私の心は、W氏と私はお互いにふさわしい相手だと思っているのだ。これがいつまで続くのかなと不安にもなる。W氏もあと数年で70歳になる。いかにもおじいちゃんという風貌になったら、私はあっさりと身をひるがえすのだろうか…。
2016.02.26
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月曜日の夜は、W氏と3時間のショートコースのデートだった。3時間ぐらいしか会えないときには、W氏はたいてい赤坂あたりのホテルを予約するのだが、今回もそうだった。私は一か月ぐらい前の、パニック発作の記憶がまだ残っていて、赤坂はちょっと嫌だなと思っていたのだが、それをよく理解してくれているW氏は、帰りは私の最寄駅まで同じ電車に乗るよ、と言ってくれた。ただ、二人で一緒にいるところを見られるのはまずいので、他人同士のふりをして、ということではあったが。赤坂見附の駅から乗った丸ノ内線の電車は、考えられないぐらい満員で、ふだんの私であったら、もっと空いている車両に移るところなのだが、W氏が先にその車両に乗ってしまったので、仕方なく私も乗った。ドアに押し付けられ、めまいがしたが、私のすぐ後ろにはW氏がいたのでそれで私は安心してなんとか乗換駅まで行くことができた。乗換駅から私の最寄駅までもかなり電車は混んでいたが、なんとか最寄駅まで無事に乗ることができた。ホームから人がいなくなるのを待って、W氏と顔を見合わせたとき緊張感から解放された私は、あははははと笑った。するとW氏は「こういうのを積み重ねていけば大丈夫だから」と言ってくれたのだったが、正直、私はこれまでもこういうことは自分でずっとやってきたけれども、それでも完全に根治することができないのだということは、言えなかった。でも、遠回りになるのにわざわざ私の最寄駅まで送ってくれたW氏の優しさにとても心を打たれた。それから、私のすぐ真後ろにいるにもかかわらず、知らないふりをするW氏の横顔を見て素敵な人だなあとどきどきしてしまったのだ。へらへらしていないW氏は、とてもダンディで知的に見える。それにものすごくおしゃれというわけではないが、帽子をかぶるとこじゃれて見える。私はW氏の顔が好きなのだと、あらためて思ったのだった。
2016.02.17
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夫はものすごい読書好きだ。文庫本ならほぼ一日に一冊のペースで読んでいる。おかげで家は本だらけ、本にかけるお金も月に5万円は下らない。私も買ってしまうからではあるが…。夫を見ていると、私が夫の趣味を取り入れている度合いと比較すると本や音楽に関しては私から受けている影響は少ないようにみえる。だけど、私が不機嫌なときの対応とか、私を笑わせるやり方とか、励まし方とかそういうことに関しては、格段に結婚当初よりも今の方が彼はテクニックを身につけている。で、そのテクニックは当然、私という個人だけでなく、女性全般に通用すると思うのだ。そう考えれば、夫が今の職場(中高年女性ばっかり)のおばさんたちから慕われて、いきなり労働組合の支部長にまでなってしまい、しょっちゅうおばさんたちから飲み会に誘われたり、相談に乗ったりしているのも、私との結婚生活で彼が身に付けたテクニックがあるからだ、と言えるかもしれない。夫は決してハンサムではなく、メタボおじさんなのだが、私がW氏とこんなふうになってしまったように、夫にも誰か女の人がいてもおかしくないだろうと思う。私がこんなに夫のことをずっと好きなのだから、私以外にも夫を好きだと思う女性が現れてもおかしくない。夫は不能だから浮気なんてするわけないと思うのは、おそらく私の願望で、私以外だったらきちんと機能するかもしれない。夫が浮気してたらどうするかなあ…。
2016.02.06
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25歳のころの私は、今の私とは全く違った。大学を卒業したばかりで、まだ2年ぐらいしか仕事をしたことがなく、浅はかで攻撃的で、でも心理的には防御ばかりしていて、批判的だった。まあ、いまだってそんなに変ったわけでもないのだが、少なくとも、夫と二人きりで向き合って過ごしてきたこの17年間という年月が私のかなりの部分を形成したと言ってよいと思うのだ。夫というひとつの事例ではあっても、自分とはまったく違う点を発見するたび、これは個体差なのか、それとも性差なのかと考え、どう対応したらよいのかということを、ずっとトライ&エラーしてきた。夫から学んだことを他の男性にあてはめてみると、かなり理解できる部分が多く、夫とのコミュニケーションで鍛えられたテクニックのようなものが、今の仕事で存分に生きていることは間違いない。それも、私が学んだのは「年上の男」のためのテクニックであるため、W氏にはうまくあてはまったことと思う。また、夫から影響を受けた本や映画、音楽なども、今の私に大きな影響を与えている。夫が面白かったと言う本は、かなり「男性的」なものが多い。例えば外国のマニアックなSFだったり、社会評論みたいなものだったり。これらの本の傾向は、実はW氏ととても重なっている。今の私が、本や音楽や映画の部分でW氏と話が合うのは、私が夫からの影響で自分の中に取り入れたものが多いからだ。そう考えていくと、今の私がW氏とこんな深い関係になってしまったのは、夫にもその要因がある、ということか。逆にいえば、私が夫と結婚していなかったら、W氏とはこんなふうにならなかった。だから、20年前だったら、W氏は私を好きにならなかった、ような気がする。肉体的にはW氏は私のからだが好みのようなので、数回ぐらいはセックスしたかもしれないが。
2016.02.06
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最終面接を受けてから3週間経った今日、不採用の通知がきた。いやはや、こんなに引っ張られて不採用とは…。まあ、ほぼ落ちたかなと思っていたので、ショックではなかったし、もしこれで4月1日付で採用と言われても、引き継ぎなどがすごい大変なことになったので、むしろよかったと思っている。この背景には、やっぱり「それなりに責任がある立場の人間を中途採用するのに、こんなに返事を待たせるなんて非常識だ」という怒りがある。それからもうひとつ。昨日のデートで、W氏に対する愛着がさらに強まってしまい、普段からW氏に近い場所で仕事ができる今の職場は、それなりに楽しく、幸せだと思う自分がいるのだ。日記に書き忘れたが、昨日のデートでW氏から言われた初めての言葉がもうひとつあって、「やっぱりカオルちゃんとは20年前に会いたかったな」とW氏が言うので、「あなたが46歳で私が25歳かあ。でもあなたはもう3人も子供がいたじゃない」と言ったら、「いやいや、46歳だったら離婚して、カオルちゃんと結婚する」と言ったのだ。以前はそんなこと言わなかった。たとえ「もしも」の話であっても。よっぽど奥さんと二人の生活が苦しいのだろう。今回のお正月は、お子さんたちもお孫さんたちもそれぞれに旅行に行ったようで、奥さんと二人で過ごす時間が多かったらしい。あまりにも気が合わないのを痛切に感じて、これまでの数十年間は結局子供や孫で気が紛れているだけだったのだ、夫婦二人になったらこんなにつらいのか、と思ったそうなのだ。だとしても、孫が4人もいる今の状況では離婚は面倒だからしないと思うが、昨日の彼の言動を見ていると、いよいよ私たちは抜き差しならない領域にまで来てしまったような気がしている。恋の陶酔と老いへの諦念。
2016.02.05
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今日は木曜日。前回の赤坂でのデート以来のデートだった。ホテルのチェックインが3時なのでそれまで時間を持て余すのももったいないと思い、今日は落ち着いた蕎麦屋でランチを一緒に食べ、その後、コーヒーを飲んでから、彼が先にチェックインして、後から私が部屋に行った。長い時間一緒にいられる、と思うだけで、同じ3時間でも過ごし方は変わる。今日は3時~6時までの3時間はずっとベッドで過ごし、その後の3時間は飲んだり食べたりしながら主に喋って過ごし、最後の1時間はひたすらぎゅーっと抱きしめあって過ごした。「俺はずっとこうやっていちゃいちゃしたかったんだけど、 これまで付き合った人とはこんなことしたことなかった」とW氏が言うので、いちゃいちゃするかわりに何するの?と聞くと、すぐお風呂にしましょ、とか、食事に行きましょ、とかになった、とのこと。変な話だが、21歳も年下の私が一番甘えられるというのだった。「カオルちゃんも自分のことを俺に全部見せてくれるから、 俺も全部見せられるんだ」と言って、彼はずっと私にキスしながら体中をなでていた。もしかしたら、これは前回のデートの後、赤坂見附の駅ではからずもパニック発作に陥った私の姿を見たからなのかもしれなかった。帰る時間になり、私がいつもどおり先に部屋をでるとき、最後にぎゅっと抱きしめてキスしたら、彼は「好きだよ」と言った。こういうふうに言うのは初めてのことだった。そういえば、今日のセックスで彼はいかなかった。これも初めてのことだった。「ごめんね、私ばっかり気持ちいい思いさせてもらって」と言うと、「いいんだ、カオルちゃんが気持ちよくなっているのを見るのが何よりも嬉しいから」と言うが、最初の段階でいくのを我慢したら、あとはタイミングを逃してしまったらしい。ちょっと申し訳なく思った。
2016.02.04
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先週の金曜日に面接の結果がくるかと思ったのだが、結局なしのつぶてだった。一日、そわそわして仕事が手につかず、ずっとメールのチェックばかりしていたのだが、夜になって、もう今日はこないということが分かったとき、一気に力が抜けた。翌日は温泉旅行に行く日だった。朝起きてメールをチェックすると、なんと「申し訳ございませんが、もうしばらくお待ちください。ご理解のほどお願いいたします」というメールが入っていた。まさか2週間以上も返事を引き延ばされるとは思わなかった。そんなわけで、傷心旅行ともお祝い旅行とも言えず、なんとも宙ぶらりんな気持ちのまま、温泉旅行に出かけたのだった。いろいろ考えてみても、私ともうひとり別の候補者とで意見が分かれているか、あるいは、私は二番手で、一番手の候補者の返事待ちか、そのどちらかだと思う。いずれにしても採用される確率は50%以下と考えてよさそうだ。こんなに長く待たされて不安が募っているせいか、生理が遅れている。最近、ほんのちょっとした心身の不安定さがすぐに生理の周期に影響を与える。以前はこんなことはなく、ほぼ毎月予定どおりにきていたのだが、これもまもなく更年期障害がやってくるという前兆なのか。あさってはW氏とデート。あの赤坂のとき以来だ。今度のデートの場所は私の自宅の比較的近くなので、帰り道は心配ない。私たちの関係もまもなく1年になろうとしている。2週間に1度しか会わないので、数えてみたら今度のデートがわずか21回目だった。この精神的なつながりの深さを考えると、もっと会っているような気がするのだが、21回目なんて言ったら、まだまだ「新婚」状態だ。
2016.02.02
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