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2019.02.04
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カテゴリ: 教養書

数学を使わずにわかりやすく書かれたミクロ経済学の入門書。

●面白かったところのまとめ

・ミクロ経済学は何をどれだけ生産して、できた生産物を誰にどれだけ分配するかを探求する。生産資源を何の生産にどれだけ配分するかという配分の問題、生産技術の選択の問題、生産物の消費者間の分配の問題がどう解決されるかは経済の仕組みに依存していて、資本主義諸国では市場メカニズムによる私的な利益追求で解決している。

・市場の失敗:所有権がない財やサービス、所有権があっても退化を支払わずに購入できる財やサービスの場合は市場メカニズムはうまく機能しなくなり、狭い意味の「市場の失敗」と呼ばれる。

・家計の行動は生産要素保有量以上は市場に供給できず、生産要素と消費財の価格が変われば需給が影響を受けて、家計の嗜好に依存する。ミクロ経済学では各家計は与えられた生産要素保有量と市場で決まる価格のもとで、実現可能なすべての生産要素供給量、消費財需要量の組み合わせを考え、この中でもっとも家計の嗜好にあった選択をすると考える。

・嗜好は「選好関係」、「無差別曲線図」、「効用関数」、「限界代替率」で表すことができる。家計は予算制約線上の組み合わせから嗜好に最も合致した組み合わせを選ぶ。家計の最適消費計画は予算制約線の形状に依存するので、所得や財の価格が変化すれば需要が変化する。異なる水準の所得に対応する最適消費の軌跡は「所得消費曲線」と呼ばれる。所得消費曲線からある財の消費と所得の関係を導き出して図にしたのを「エンゲル曲線」と呼ぶ。財が食料のような必需品なら必要消費量が決まっているので所得が増えても消費はそれほど増加せずに消費の所得弾力性が小さくて、奢侈品は所得が増えれば消費が増えるので消費の所得弾力性が大きい。

・所得が増えることで需要が増えるものを「正常財」と呼び、ファストフードなど所得が増えることで需要が減る財を「下級財」と呼ぶ。価格が変化して需要がシフトする現象を「消費の代替」と呼び、その財を「代替財」と呼ぶ。

・生産主体である企業は組織であるがゆえの自己増殖的性格と、組織間競争に伴う組織防衛の問題を解決していく。技術(生産関数)を満たす生産要素(労働や機械など)の投入量と産出量の組み合わせから企業利潤を最大化するものを見つけることが行動基準となる。生産量が決まっている場合は総費用を最小にする生産要素量の組み合わせを見つけて、最低限必要な総費用額を導き出せて、この関係を「費用関数」と呼ぶ。しかし企業は必ずしも常にすべての生産要素の投入量を調整できるとは限らないので、短期では量が決まっている工場や機械などの「固定投入物」と、投入量を調整できる原材料などの「可変投入物」を区別する。費用も固定投入物を買う費用は固定費用、可変投入物を買う費用は可変費用として区別する。長期の場合はすべての生産要素は可変的で、機械や工場も償却が終わるので固定費用はない。

・減価償却費用、利子費用、維持費用は現存する機械の台数に比例する。多くの機械設備は買い手がなくて中古市場で売却できないので、操業を中止しても機械を売却して債務を返済することができず、債務が残る限り減価償却費と利子費用を支払い続けないといけない。このような費用を「サンクされた」固定費用と呼ぶ。

・労働者を一人多く雇用することによって追加的に得られる生産量を「労働の限界生産性」または「限界生産物」と呼ぶ。限界生産性は労働量が増えるほど減少すると考えられていて、これを「限界生産性逓減の法則」と呼ぶ。労働投入を一人増やすことで企業の利潤は[限界生産物価値]-[賃金]の分だけ増加するので、限界生産物価値と賃金が一致する水準まで雇用される。

・二つ以上の可変投入物があるとき、企業は利潤最大化の前提条件である費用最小化のために投入物の組み合わせを検討して、この組み合わせの軌跡は「等量曲線」と呼ばれて、等量曲線の接線の勾配に-1を乗じた値は「技術的限界代替率」と呼ばれる。

・市場メカニズムが実現する一般均衡が効率的配分であるための一つの条件は完全競争の仮定(各市場での各企業のマーケットシェアがほぼゼロで一企業が供給を変化させても市場全体の総供給がほとんど変化せず価格に影響がない)が成立することだが、現実には完全競争に近い市場は少なくて大部分の産業で上位数社が大きなマーケットシェアを持っていて、各企業が程度の差こそあれ市場価格を動かすことができることを「独占力」を持つという。

・寡占の場合の二つの企業の戦略が高価格をつけるか低価格をつけるかだとすると、相手側の戦略が自己の選択にかかわらず現状のままだと予想した時、現在の戦略選択が最適となっている状態をナッシュ均衡と呼ぶ。ゲーム理論の囚人のジレンマのように寡占企業が競争的に行動するか結託して行動するかによって結果が異なる。寡占企業が結託してカルテルを結ぶ場合は経堂利潤を最大化しようとして独占的な高価格になる。寡占は需要が減退した時や原料価格の下落などで費用が低下したときにも価格が低下しない「価格硬直性」を作り出して、下がるべき価格が下がらない下方硬直性が存在すれば価格の調整が行われなくて資源配分が非効率になり、インフレーションの要因にもなる。

・すべての財・サービスは排除費用と混雑費用の程度によって、私的財、純粋公共財、準公共財に区分できる。資源配分の効率性は限界代替率、限界変形率などの条件で決まるので、費用の負担の違いは効率性には影響しないが、費用の負担の違いは所得分配に大きな影響を与える。公共財の費用負担は所得の多い者に負担させる「応能原則」か、利益を受ける者に負担させる「応益原則」を適用するかが問題になる。応益原則に基づいて各消費者がそれぞれの限界代替率に比例して費用を負担して、公共財の供給量が最適になっている場合を「リンダール均衡」と呼ぶ。限界代替率の虚偽の申告で利益を得ることを「フリーライダー」問題と呼び、正しい申告をさせるインセンティブを持つメカニズムを「インセンティブ・コンパティブル」と呼ぶ。

・不確実性や情報の非対称性の下では市場は必ずしも望ましい資源配分を実現しない。労働者がどの程度真面目に働いているかを企業側がわからないとモラルハザードが起きる。固定給では労働努力(労働のインセンティブ)を引き出せないが、ボーナスや歩合給制度では企業側は労働者が選ぶ努力水準を直接コントロールできなくても生産額に応じた給与システムを使うことで労働者に適切な労働努力を選択させることができて、労働のインセンティブを引き出す。

●感想

ミクロ経済学というのは小学校の算数で予算500円でリンゴとみかんを何個買うかみたいな問題に似ていて、思っていたよりとっつきやすい。しかし日常で使わない専門用語がどしどし出てきてひとつでも読み飛ばすと続きを理解できなくなるので、理解に合わせてちょっとずつ読んでいかないといけなくてわかりにくくて面倒くさい。あと奢侈(しゃし)とか逓減(ていげん)とかにふりがながふられていないので読めない。経済学者は見慣れている単語なのだろうけれど、私のような漢字を読めないアホに対して配慮が足りないのは入門書として不親切である。ミクロ経済学的な考え方はたいていの社会人にとって役に立つだろうけれど、入門書レベルでも読むのがつらい。


読者は本1冊から得られる満足感(便益)があって、読者は面白いかどうかわからない別の作者の本を買うより、既存の人気作品が完結するまで続巻を買う限界費用をかけるほうが面白さの限界便益を得られる。作者は取材して新しい作品を作って宣伝して市場参入する費用より、既存の作品を長引かせて世界観やキャラクターを使いまわすほうが少ない限界費用で物語が作れて、作品が完結するまで限界収入を得られる。
こう考えると読者も作者もウィンウィンで人気作の続編がやたらと作られるのには納得がいくけれど、物語が長大化したらそのぶん面白くなるわけではないというのがコンテンツビジネスの問題で、利益目的で引き延ばされた長編でシリーズを全部見る価値のある傑作というのはほとんどなくて、話が長くなるほど登場人物が増えすぎてプロットを回収できなくなったり蛇足が増えたり作者のやる気がなくなったり休載が増えたり作風が変わったりして完成度が落ちてつまらなくなる。例えばアメドラは人気になってシーズンが増えるほど俳優の拘束期間が長くなってギャラが高騰して、製作側は可変費用を下げるために俳優をくびにして、次のシーズンに登場人物が突然死んだり新登場人物のエピソードをこじつけたりして話に辻褄があわなくなって視聴者が離れていって、限界収入<限界費用で負の利潤になって打ち切りみたいな終わり方をして台無しになる。あるいは漫画は1冊の値段は小説よりも安いけれど、20巻を超えるような長期連載になると読者はコミックスを買い続けているうちに作品ひとつに1万円以上かけていて予算制約線を越えているのにそれほど便益を得られていないことや、いつ完結するのか不明なまま限界費用を払い続けないといけないことに気づいて、完結前に脱落してそれまで集めていたコミックスを古本屋にまとめ売りする。作品が面白いうちは限界費用<限界便益なので視聴者は続きを買うけれど、作品がつまらなくなると限界費用>限界便益になって、完結するまで続きを買い続けるよりも別のコンテンツを買うほうがより便益を得られるわけである。製作者側にとっては続編の値段は変わらなくても、続編を増やしたぶんだけ面白さが落ちて収入が減って、続編1作あたりの限界収入も減っていくわけである。面白さを縦軸、巻数を横軸にしたときに面白さと作品の長さの相関の曲線はたぶん山型になって、冒頭部分から風呂敷を広げ始めて徐々に盛り上がっていって主要登場人物が出そろって因果関係を掘り下げて問題を解決したところで面白さがピークになって、そこから後日譚やらサイドストーリーやらどうでもいい新キャラ加入やらで引き延ばされるほど面白さが下降していくような感じになると思う。読者の予算内に面白さのピークを持ってきて終わると、作者と読者がウィンウィンになる。
作品の長さの点では、1作品で完結する映画や小説のほうが引き延ばしがないぶん漫画やドラマよりも娯楽としては完成度が高くて満足度も高くなる。しかし食べ物のように同じものを繰り返し消費する財と違って、コンテンツはたいてい一回限りの消費で、費用に見合う便益があるかどうかは視聴してみないとわからないというところに問題がある。本の場合は再販制度があって定価が一定で、面白い作品もつまらない作品もページ数に応じて似た値段なので面白さに見合う適正価格もない。となると、読者は巷で話題の小説を選ぶよりも、嗜好に合わせて好きなジャンルの中でお気に入りの作家をみつけるのが最大の便益を得られる組み合わせになる。しかし作品を作るのには時間がかかるので作者の労働サービス供給よりも読者の余暇のほうが多くなり、作家はファンの余暇を満たせるほどポンポン新作を出せるわけではなくて需要に対して供給が追い付かなくなるので、作風やテーマが似た別の作家の作品が代替財となって需要がシフトする。雑誌は読者のお気に入りの作家の連載が終わったときに代替財の候補を見つけやすくするところに存在意義がある。それゆえに編集長が読者の需要を理解して作品を取捨選択して供給することが重要になる。
「小説家になろう」というサイトはユニークユーザー数が約400万人いて人気なのは、いわゆるなろう系の読みやすい作風や異世界転生のテーマに偏っていて、編集長がいなくてもタグから嗜好にあう作品やその代替財を見つけやすいのが一因だろう。その一方でマンガ図書館Zはプロの漫画が無料で読み放題なのにユーザー数は月間100万人で素人のなろう小説ほど人気がないのは、大雑把なジャンル分けしかなくて作風やテーマや品質でのフィルタリングがうまくできていなくて、読者が嗜好に合う作品や代替財を見つけづらいのが一因だろう。例え無料でも嗜好に合わなければ時間の無駄になるので、費用>便益となって読者は読まないほうがましという選択をする。
芸術はエンタメとは話が違ってきて、芸術は唯一無二のコンテンツであるほど価値が高くなるので、同じ満足度を得られる代替財がなくて需給が不安定になる。あまり芸術的でない作品を何作も鑑賞しても限界代替率が小さくて、すばらしい芸術1作と同じ満足度はなかなか得られない。例えばスタジオジブリは人気作品の続編を安易に作らずに作品の価値を長期的に保つというやり方をしているけれど、ジブリファンは宮崎吾朗や米林宏昌や細田守では満足していなくて代替財がないので、宮崎駿作品特有の満足度を得る需要があるのでラピュタやナウシカが何度もテレビで再放送されることになる。
コンテンツビジネスは製作に高度な技術が必要であるがゆえに個々のクリエイターの技術水準がばらばらで、クリエイターの数を増やせばそのぶん限界生産性が高くなるわけではなく、計画的に増産して供給量を増やすことができないのが長期でビジネスをする際の欠点になっている。特に漫画は新人がなかなか育たなくて後継者不足のせいで、雑誌の看板になっている長期連載の人気作品がいっそう引き延ばされるという悪循環になっている。
というわけで、技術承継ができず才能を育成できないのがコンテンツビジネスの問題の根源なのだろうと思う。少子化が加速する中でどう才能を見つけて育てるのかが今後のコンテンツビジネスの課題になるだろう。YouTuberは企業案件やスーパーチャットで楽に稼げるけれど、小説の新人賞は50-100万程度の賞金額でいろいろな権利が出版社にとられるのでは創作のインセンティブにならないんじゃなかろうか。

★★★☆☆


ミクロ経済学入門 (日経文庫) [ 奥野正寛 ]






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最終更新日  2019.02.04 22:07:28
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