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ルーを腕の中に抱き込んだのは……なんといえばいいのか。 心もとなかったから。 結構乱暴に、ユズルの腕から抱き上げたんだけど、ルーはまだくってりと眠りについたままだ。 こんなふうに、何をされても起きないときもあれば。 ホントにささいなことで、すぐ目を覚ましてしまうこともある。 そこにどんな違いがあるのか、わからないけれど。 眠っているから反応はないけれど、それでも、何もないよりは断然、ルーを腕の中に抱いてるほうがよかった。 胸の中にある体温が、心地よかった。 そうして私がルーを腕にだいて。 ……ユズルは。 カラになった腕を私の肩に回して、抱き寄せた。 ごく、自然に。 するりと、ユズルの腕が、肩をつかんでいる。 …………あー……。 うー。えーと……。 そういうつもりじゃあ……なかったんだけど……。 と。思いつつ。 肩にまわされる腕にしたがって、ユズルの肩口に、頭をコツンとのせた。 こうした体勢になってから、気づいたけど。 私がルーを抱き上げたのって。 こうしたかったように……思われても仕方ないなって、思う。 そんなつもりは、なかったけれど。 ……だけど。 こんなふうに、肩を寄せ合うの。 結構、心地いいんだ。 ソファに並んでテレビを見ながら。 私がユズルの肩によりかかることは、よくあった。 よく、あったけれど。 ……今、胸の内で感じているように。 とくとくと、小さな鼓動を感じることは、そうそうなくって。 ほんの少しだけれど、緊張感をおびてきた、私を見越したように、ユズルは抱き寄せた私の頭部に、髪に。 軽く口付けを落とす。 そうしながら、肩に回した手に、私の髪を絡ませている。 ……今がどういう状況なのか、私にもわかる。 いわゆる「いい雰囲気」ってやつだ。 ……えー……っと……。 まさか今日、こんな状況になるとは思ってなかったから、内心、すごく焦っていた。 どうしようとか思いながら、とりあえず、腕の中のルーを確認。 すぴすぴと、寝息が聞こえそうなほど、気持ちよさそうに寝ている。 よし。 とりあえず、起きる気配ナシ。 そう、思ったとき。 不意をうつように、ユズルが耳もとでささやいた。「……向こう、行く?」
2008年07月29日
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土曜と日曜は、鹿児島に旅行に行ってました。 楽しかったですが、暑かった~~!! 普段、室内で仕事してるので、暑さに体が慣れてなくて大変でした。 久しぶりの旅行だったので、いい気分転換になりました。 またこれからもチョコチョコと旅行に行きたいです。 あ。 前々から買おうと思っていた財布も買っちゃいました。 ブランドとかは、あまりこだわりないんです。 機能とデザインと物持ちがよければ。 物持ちのよさで、ヴィトンにしようかと迷ってたんですが、持ってる人、多いんですよね……。身近に。 後から持つのって、気が引けるし。 んで、アニエスの財布を購入。 デザインがかわいかったので、即決でした。 大きさも手ごろで、しっかりしてるし。 では、更新が滞ってしまってますが、これから書きますね。 今日は「背中~」の番外、七夕の方です。 もう少しで終わりそうなので。 ……もともと、2~3話で終わる予定だったんですけど。 ショートストーリー、書くの向いてないのかなぁ。(苦笑)
2008年07月29日
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それからユズルは、なぜか黙り込んでしまって。 私も気恥ずかしさから、口をつぐんでいたけど。 ………………。 ………………。 あんまりだんまりを続けるものだから、ちらりと、ソファに座るユズルを覗き見るように見上げる。 ユズルは神妙な顔をしていた。 なんか……私、変なコト、言ったかな。 思わず、そんなことを考えてしまうほど、ユズルは黙々と思考の海に浸っている。 あんまり長いものだから「……ねえ」と業を煮やして、声をかけていた。 ぽすんとソファに後頭部をのせて、文字通り、ユズルを見上げる姿勢で。「どうかしたの? 私、何か変なこと、言った?」 ユズルはそんな私を見て「いや……そうじゃないけど」とつぶやいた。 何だか判然としない表情だ。「ただ……びっくりしたから」「……?」「チサトだったら『ルーも一緒!』って、言い張ると思ってたから」 いつもそうだってワケじゃないわよ! ……って。 言い返せるなら、言い返したいけど。 前例が多々あるために……思ったって、言えやしません、そんなこと。「だから……意外で、さ」「……何が?」 素直にそう、不思議に思って、首をかしげてたずねると、ユズルはじっと私を見つめていった。「『二人がいい』って……ルーといるより……俺といるほうがいいって、ことだろう?」「…………へ?」 間の抜けたことに。 そういわれるまで、そうした意味を内包しているってことに、気づかなかった。 気づいたら気づいたで。 いまさらながら、カッと頬が熱くなる。 ってかさ! そういうこと、思ってもわざわざ口にして、本人に確認しなくてもいいじゃない!! そういうのは、胸の内でひめといてよ!「信じられないほど、驚いてるから、言ったんだよ」「……って! 何で思ったことに返事が返ってくるのよ、しかも正確に! なんでわかんの? 心読んでる!?」「いや、単にチサトの顔に、すごくわかりやすく出てるから」「それは前から聞いてるけど! だけどやめてって言ってるでしょ! そんな、先回りして答えるの!」「わかるんだから、しかたなくない?」「私はイヤ!」「……こっちの方が話、早く進むし……」「う……ぐ……」「チサト、変なところで口ごもるから。 ……普段は言わなくていいことまで、言うくせに」「く、口ごもるわけじゃなくて……。 口が動かないだけなんだけど……」 いつもの調子のときなら、言葉が声となって出ていたことでも。 さっきのように、焦ったときは、声が口の中で消えてしまう。 ……それがどういうときに起こるのか。 最近になって、わかってきた。 ユズルとは一緒にいても、異性との意識があまりなくて。 けれど、ふとしたときにのぞく、その片鱗に。 私は鼓動が高鳴ってしまう。 いつも不意打ちだから。「……卑怯よ……」「やぶからぼうに、何。そのいいぐさ」 ……そして。 ホントに言わなくていいことがスルっと出てしまう、私自身がうらめしくてしかたない。「卑怯だから卑怯って言ったの。 ……そんな不意打ち、しなくっていいじゃない?」「不意打ちって。 そっちが先にしたんだろ?」「……私? なんで?」「『ルー抜きで二人がいい』なんて。 立派な不意打ちじゃない?」 そう、私を見ながらつぶやいて。 片手を、私の頬へと伸ばして。 子供が遊ぶように、軽くつねったり、頬をなでたりしながら。「こっち、座ったら?」 と、ソファの、ユズルの隣に座るよう、うながされて。 私はもそもそと、その隣に座って。 …………とりあえず。 未だ眠りについているルーを確保すべく、ユズルの腕から抜き取って、しっかりと抱きしめた。
2008年07月25日
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花の名前(第1巻)「花の名前」1~4巻(完結) 作者「斉藤けん」 花とゆめコミック 好きな作品の一つです。 こちらは、全体的に漂う切々とした雰囲気が好きです。 あらすじを、少し。 主人公の蝶子(高校生)は、数年前、両親を事故で亡くす。 その後、遠い親戚にあたる男性、水島けい(すみません。漢字忘れた……)に引き取られる。 両親を亡くした当初、意気消失としていた蝶子だが、水島との共同生活を送るうちに、次第に自分を取り戻していく――。 話は、この後の展開で進んでいます。 水島が小説家っていう設定だからっていうのもあるのでしょうが、情景の端々に織り込まれた文章に、私は胸に来ました。 こういう文章って大好き!! 話の展開も、すごく好みなので悦ってしまいました。 一部、ちょっぴし「……ついていけない……(感情移入できない)」ってところもありましたが、んなの脇にほっぽりだしても「好きな作品!」と言えるものです。 おそらく、一度この作品に関して書いているとは思うのですが。 カテゴリわけしてなくて、いつ書いたかもわかんなかったので、再度掲載しています。
2008年07月23日
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◇◇ ◇◇ 日常は、これまでと変わらず、すぎていく。 仕事の内容は変わりないし、そうした日常の中にいると、和之との出来事も、彼自身に関しても、次第に意識の隅にうつっていった。 ……私自身が、意識的に考えないようにしていた。 電車の時間も、これまでどおり、意識的に不規則にしていたし、和之自身に会わなければ、心が乱れることもなかった。 そうして和之の影を、遠ざけて、一月近くすぎたころだった。 友人の静香に誘われて、食事兼飲みに行ったときだ。 静香とは、定期的に食事をしたり、飲みに行ったりしている。 最近は居酒屋が多い。 他愛のない話をしていたとき「あ」と思い出したように、静香が声をあげた。 アルコールも入って、ほろ酔い気分の私たち。 頬も互いにほんのり朱がさして、言動も少し酔いをにじませている。 静香はライムチューハイのグラスを片手に揺らしながら、私の方へと体を傾げてきた。 必要以上に近づいた彼女に、私は思わず反対の方に体をそらしてしまう。 私たちがいる席は、二人が向かい合って座れる個室で、ほりごたつ式になっている。 その席で私と静香は向かい合って座っていた。 とろんと瞼を落としつつ、けれどまだ意識はハッキリしている静香。 その彼女が体を傾けたまま「そういえばさ」と声をかけてきた。「あれから本橋――元彼と会った?」 唐突に出てきた和之の名に、飲み物に口をつけていた私は、思わず吹き出しそうになる。 軽くむせる私に、静香は「あぶなっ!」と眉をひそめながら「……大丈夫?」とつけたすようなねぎらいの言葉をかけた。「……な、なんで……いきなり……っ!」「……いや、ちょっと、思い出したからさ。 ……そんなに、驚くもん?」「…………。 私は。驚いた」「……元彼だから……そういうものなのかなぁ」「………………」 できることなら。 和之と会ったことは話したくないから。 ……話したら、そのときのことも話すことになるだろうから。 私は無言で、グラスが揺れたとき、テーブルにこぼれたチューハイをおしぼりでふいていた。「いや、会ってないんならいいんだけど」 本心としては、それ以上和之の話なんてしたくなかった。 だけど静香の性格を考えると、ここで話題をそらしても話を戻してくる。 変に思われるよりはと、静香に話をあわせて「……なんで?」と聞いていた。 いつもの静香なら、ここで意気込んで「よくぞ聞いてくれました」とばかりに体をのりだしてくると……思っていたけど。 だけどいつもの静香と違って「……ん……ちょっとね……」と言葉を濁した。「言いにくいことかな」と思って、私もそれ以上追及しなかったけど、そこは話好きの静香。 続きを口にした。「ちょっと、聞いた話なんだけどね。 ……なんか、大変だったらしいよ? 本橋のところ」「……大変……って……?」「……なんか、家のほうがね。 お父さんが倒れたとか、あったみたいで。 仕事やめたのも、そのへんのからみがあったんじゃないかってね」 そう、つぶやくように告げたあと。 静香は私をうかがうように、ちらりとのぞきみた。 驚いて目を丸くする私を確認すると「……やっぱり、知らなかった、よね」と、つぶやいた。 私は。 そんな静香に何もいえなくて。 ただただ、呆然としていた。
2008年07月23日
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お気に入りの作品。……って、わけではないのですが。 私の悦的作品は。 ・独特の雰囲気があること ・予想を、いい意味で裏切ってくれること ・詩のような文章が含まれていて、その空間に陶酔できること ・機転のきく登場人物がいること ・一抹のコメディタッチ 今は無性に、詩を読むような陶酔感にひたれる小説を読んでみたいです。 詩でなく、小説です。 ブログで小説を掲載している私ですが。 私個人としては「詩を読むような小説」ってのは、書けないだろうなって想ってます。 だから、読みたいんですよね……。 詩を書くのは好きですが、詩って結構情緒的っていうか、小説書いてるとき以上に、言葉に注意します。 そうなると、今更新しているような状況では書けません。 というのも、一文を書くのに、すごく神経を使うから。 ブログで更新している小説は、基本、あんまり考えずに、ノリと勢いにまかせて書いてます。 でもって、力をいれたい箇所で、慎重に言葉を選んでるって感じです。 最近、小説読んでません。 何か、私の嗜好にあうおもしろい小説ないかなぁ。
2008年07月20日
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夏目友人帳(第1巻)「夏目友人帳」1~6巻(連載中) 花とゆめコミック 作者「緑川ゆき」 LaLa連載中(おそらく) 私はコミック派なのですが、この緑川さんの、独特の雰囲気がとても好きです。 どの作品でも通じていえることなんですが、淡々とした中に、寂寥としたせつなさというか……。 しん、と心に染み入る感慨を受けます。 作品が持つ雰囲気に浸るのが、好きな人間なので。 作品の説明……しときましょうか。 妖(あやかし)(妖怪)が見えてしまう少年のお話です。彼と同じく、妖が見えていた祖母の遺品にからんで、話が進んでいきます。 基本は一話完結。 人と、人ならざるものとの。 そのあたりの、やっぱり存在してしまう越えることのできない境界とか、それでも互いを想いあう心の、気持ちのあるところとか。 そういったところが、この方の作品の好きなところです。 最近掲載されている(コミックに)特別編も好きです。 ちなみに。 緑川さんの作品は(コミック)全部読んでます。「あかく咲く声」から読んでいます。 この作品も、私好きなんですよね~。 一番好きなのは「蛍火の社へ」です。 この切なさが、胸にきます。 アニメ化もされています。 最近です。 おそらく、放映中。 2話まで見ましたが、よかったです。 作品の雰囲気がしっかりのこっていて。 文字と絵とで、見ていた作品が、音と動きを伴っているのが、また新鮮でした。 久しぶりに、お気に入りの作品について書きました。 好きな作品を、こうして時々掲載できたらいいな。
2008年07月20日
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「離して」と、かすれる声で再度、つぶやいて、和之の胸を押して。 彼の視線から逃れるように、うつむいていた。 腕の戒めは、まだとれない。 再度「お願い」と私は懇願した。「……これ以上……失望させないで……」 声は、消えそうなほど小さかったけれど、和之の腕の力は少しずつ緩められた。 そしてゆっくりと……私から離された。 それから私は、和之を見ることができなくて、うつむたいまま、その場を離れた。 涙は、せつせつとこぼれ出て、その意味も理由も、自分でもわからないまま、歩き続けて。 それでも、家に着くころには涙は止まっていた。 家に帰ってから、のろのろと身の回りのことをしていた。 いつものことを、何を考えるでもなく。 思考も体の動きも緩慢なもので。 体を横たえてからも、ぼんやりとした思考で、何も考えることができなかった。 ただ、和之が触れた感触は、体に残っていて。 体を横たえたまま、両肩をぎゅっと抱いていた。 和之の感触を消すように。 その感触を、別のものにすげかえたかった。
2008年07月20日
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今日は当番の日でした。 お仕事です。 あつ~いうえに、お客さんも多くて、疲れました。 日差しが強くて、キツかったし。 日焼けがどうこうより、日差しが強くて、肌に痛くて、それがきつかったです。 んでもって、疲れていつの間にかバタンキューで、寝てました。 少し前に起きて、身の回りのことをし終わったところです。 んでもって、な~んか呑みたくて呑んでます。 ……最近は連日かなぁ?? そして、考える力ゼロになって「なにやってんだか」って感じですが。 時間の都合がつかなくて、ちょっと更新がとどこうってますが、午前中には更新しようと思ってます。 ……それまでに、起きれれば。 ですけど。(苦笑)
2008年07月19日
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それから、ユズルとどこか行きたいところはあるのかって、そんな話をして。 ユズルは「まだ考えてるところ」って答えた。 近場がいいか、遠出しようか。 そうした話をしたときに、ふとルーをどうしようかって、話になって。「……犬も一緒に泊まれるところ、探そうか」 腕の中でくってり眠っているルーの背をなでながら、ユズルはそうつぶやいた。 私は、ユズルがルーも一緒と考えているとは思わなくて、ちょっと驚いてしまった。 ペットと一緒に旅行というのは、仕方ないけど、いろいろと制限されるところがあるから。 だからユズルがルーも一緒にって、考えてるとは、思ってなかった。「……んー……」 ユズルの申し出に、私は少し考えた。 ルーも一緒に。……というのも、魅惑的だけれど。 ……だけど、できるのなら。「……ねえ」「ん?」「……二人で……じゃ、ダメかな……?」「……え?」 もそもそとつぶやいた私の声に、ユズルはきょとんとした顔をしている。 そんなユズルに、私はカッと頬が熱くなるのを感じながら「あ、あのねっ」と言い募った。「ルーと一緒がイヤとかじゃ、なくてね! できたら……今度のは……二人が……いいなって……。 ルーには悪いけど、行く場所とか、限られてくるじゃない? 今度のはそういうの……気にせずにすごしたいたいな……って……」 何だか照れてしまって、途中、つまりながら話していた。 うつむきながら、話して。 途中、チラチラとユズルを盗みしていた。 ユズルは。 きょとんとした表情のまま、時がとまっている。 ……あきれた、よね。 そう、思ってしまって。 慌てて、焦って。 私は「ご、ごめん! 今のなし!」と、顔の前で手をブンブンと振っていた。 それでユズルは、はっと我に返ったようだった。「え、なんで?」 って、聞いてくる。「なんでって……ユズルは……ルーを、連れて行きたいんでしょ?」「いや、俺じゃなくて……。 チサトが一緒に行きたいんだろうなって、思ったから」 だからルーも一緒にと、考えていたという。
2008年07月16日
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「……どうして……」 我知らず、声がこぼれていた。 その問いに答えはなく。 和之は、皮肉げに口元をゆがめただけだった。「だから……思い入れもない」 そう告げたのと、和之が私との距離を縮めたのは、ほぼ同時だった。 はっと我に返ったときには、目の前に和之がいて、口付けを、受けそうになった。 私は反射的に顔を背けたけれど、肩を片腕で抱きしめられて、背けたあごに手を添えられ、強引に向きをかえられる。 力ずくのその行為に、痛みに顔をゆがめたところへ、和之に唇をふさがれた。「――――っ!」 腕をつっぱねて、その場から逃げようとするけれど、かき抱く和之の腕の力にかなわなくて、また思うように、腕に力が入らない。 和之の口付けから逃れようともがいても、彼はそれを許してくれなかった。「――っ、はっ……、っ!」 一度息苦しくて、呼吸のために唇が離れたけれど、それもすぐにふさがれた。 そうしているうちに、口付けが深いものになったとき。 私は諦めかけていた抵抗を、強いものとした。 呼吸も、胸のうちも、思考も。 混乱と困惑と息苦しさで、胸のうちが、わけのわからない感情に乱れていた。 自分でも、何がどうなっているのか、なぜこんな状況になっているのか。 ……なぜ和之が、こんなことをするのか。 わからないことだらけで……自分がどうしているのかも、わからなかった。 それからふと、何かに気づいた和之が、口付けをといた。 腕の檻はまだ健在で、肩を強く抱いている。 私は乱れる呼吸を整えつつ、和之から顔を背けて、とにかく距離をとりたくて、彼の胸を強く押していた。 ……抵抗は、和之には、かなわなかったけれど。 顎にあてがっていた手は、頬へとうつり、ゆっくりとその頬に指をすべらせる。「……志穂……?」 こぼれた声は、熱を含んだようにかすれていて、そして……痛みも、含んでいた。 その声を聞いて、私は自分が泣いているのだと、初めて気づいた。 だからかとも、納得した。 のどの奥に、しこりができたような異物感を感じるのは。 嗚咽が、喉奥に生じていたからだ。 和之は頬を撫でるように、涙をぬぐっている。 私は和之をまともに見ることができなくて、顔をそむけて、目を閉じていた。「……泣くほど……俺がイヤになった……?」 悲壮の響きをともした和之の言葉に、なぜか反射的に首を振っていた。 そうだけど……そうじゃない。 自分でも自分の感情がわからない。 和之の、これまでの言動に、傷ついたのは……ショックを受けたのは、本当だけれど。 つらいのは……そうしたことじゃ、なくて。 和之が、私にこうした行為をするという事実が、無性に悲しくて仕方なかった。 私が、あいまいな関係を嫌っているというのに、行為を強いてくる和之は。 私を、そうした対象として、見ているということだから。 私も……彼女――佳奈美さんと変わりない。 求められる内容は違っても。 彼女と同じく。 都合のよさを、求められているのだ。
2008年07月15日
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ご指摘いただいた「冷えた指」40の箇所、訂正しました。(汗) またもやってしまいました。 すみません。(滝汗) ちょっとでも気を抜くと、手が「ユズル」と打っています……。 やばいなぁ。 連載、長かったからなぁ……。 で、いまさらながら「背中あわせ~」の影響力に驚いてます。「続きが気になってた」という人も、いらっしゃいましたし。 嬉しいですね、そうおっしゃっていただくと。 嬉しいんですが。 大変、嬉しいことなんですが。 ……そういうこと言われると、ちゃんとした続きを書きたくなってしまいますよぉぉぉ。(ちらほらと、ネタがあったりなんたり) どうするかは、検討中ですが。 とにかく今は、連載中の「冷えた指」を終わらせることですね。 これは予想外の展開がまだ出てきてないので、順調に進むのではないかと思います。 ええ、今の展開も、予想の範疇内なんです。 ……更新回数、増やすかな。
2008年07月15日
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そう、思ったけれど、口にするのにはためらいを覚えた。 口をつぐんでいると「ほかに、何か言ってなかった?」と聞いてくる。 私は……少し迷ったものの、彼女と話すきっかけとなったことを告げることにした。 彼女の心配は、そこにあるのだから。「あの子の父親が、和之の会社の社長だから付き合ってるんだって、言われたって。 それで気になって、私に話しかけてきたの」 和之の過去を知るだろう私に。 彼女が知っている、唯一の手がかりに。 私の言葉に、和之は驚いたように目を見開いて。「……あいつか……」 と、つぶやいて、嘆息する。 わずかだけれどイラだちが、その声にこもっていた。 和之の言う「あいつ」は……おそらく、佳奈美さんの友人の、亜美という子のことだろう。「志穂は? そのこと、何て答えた?」「……その子の、誤解だろうって、言ってたけど」 和之がそういう付加価値を重視するとは、思えなかったから。 だから「心配してたから、誤解だってちゃんと話してたほうがいいんじゃない? あの子も安心するだろうし」と、続けようとしたけれど。 その言葉を告げる前に、和之が口元に嘲笑を浮かべた。「いや、本当だけど」 最初は、その意味が理解できなくて。 言葉だけが、思考にたどりついて、その言葉を認識すると、私の足は自然と止まっていた。 数歩、先に進んだ和之が、足をとめた私に続いて足をとめて、振り向いてくる。 私は、驚きに満ちた表情をしていただろう。 そんな私を、和之はさして驚いた様子もなく、感情のない瞳で私を見ていた。「……え?」 そうつぶやいたのは、足を止めてしばらくしてから。 私が困惑しているとわかっているだろうに、和之は冷めた表情を向けていた。「誤解してるのはそっち。 本当だよ。 あいつが言ったのは」 そう、聞いても。 まだ、理解できない。 ……後になって、思うと。 多分この時の私は、和之の言葉を、信じたくなかったのだろう。 だから、本当は言葉の意味するところも、和之の意志も、わかっていたけれど、認識できなかった。 ……認めたくなかった。 言葉を失っている私に、和之はいいつのった。「あの子の父親が社長だったから、声をかけたんだよ」
2008年07月14日
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保管庫更新しました。「背中あわせにつなぐ手を。」です。 まだまだ、保管庫に移す分がたくさん残ってますね……。(汗)
2008年07月14日
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「……木島さんと、話したんだってね」「…………。 ……木島?」 唐突に切り出された名に、すぐにピンとこなかった。 何度かその名前を胸のうちで反芻して、それから「あ」と声を出してしまった。 同時に、なぜ和之が知っているのかと、体が強張ってしまう。 そんな私の感情は、和之には予想の範疇内だったようで、軽い一瞥をくらう。「彼女から聞いた。 ……まさか、直に話してるとは、思わなかったけど」 まさか……彼女が私のことを、和之に話すなんて……思ってなかった。 冷水を浴びたように、冷える頭と背筋を感じつつ、そういえばと、ふと考えたこともあった。 私は、彼女に「以前を知っている友人」としか話していない。 交際していた事実を……何だか言い出しにくくて、話してなかった。 だったら。 誰だって話のネタとして話すだろう。 あのときは、言いにくくて、言わなかっただけだったけど。 彼女が和之に話すことまで、気がまわらなかった。「……なんて?」 どんな話を、したの? 和之の顔を見れなくて、足元に視線を落としながら聞くと、彼は小さな息をついた。「『いい人ですね』って、べた褒め。 ……まさか、知り合いだったとはね。 ……どんな話、したの?」 「知り合い」というところで首を振って「どんな話」には「……たいした、ことじゃない」と、ぼそぼそとつぶやいた。「和之のこと、聞かれたから……わかること……答えただけ」「……わかること?」「……今は、知らないけど……って……」「ふーん。 ……じゃあ、付き合ってたころの?」 何の気負いもなく告げる和之に、私の方が萎縮してしまう。 同時に、こともなげに告げられた言葉に、胸が軋んだように……痛かった。 私は……あの頃のことを「昔のこと」と……割り切って人に話すほど、まだ心の整理が……できてないというのに……。 和之は、こともなげに言っている。 ……うんん。 私も、一度はふんぎりをつけた。 気持ちを、こころを、切り替えた。 だけど。 再会した和之に、その気持ちを揺さぶられて。 判然としない思いを、抱くことになった。「どんなこと、言ったの?」「……どんなっ、って……」 何ともいいにくくて、口をつぐんで考えていると「……まあ、いいよ」と和之は軽く息をついた。「戻ってきてからの話をしてないならね」 ……多分、私でなくとも。 その物言いに、ひっかかりを覚えただろう。 まるで、以前の和之なら問題なく。 今の和之には問題があるような。 そんな物言いだった。 それなら、いいの……? 昔がよかったら、今は……どうなの?
2008年07月14日
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和之は、時折、時計を眺めつつ、ぼんやりと目の前の情景を眺めている。 あきらかに、人を――誰かを、待っているようだった。 もしかして……。 と、これまでのことを思い出してしまい、自然と体が硬くなる。 和之とは、駅を通しての接触が、多かったから。 待っているのは私なのではと……考えてしまう。 和之は、改札口から流れ出す人の波に気がつくと、頭をめぐらして、駅の中に目を向けた。 その視線が、立ちすくむ私をとらえた。 そうして……こちらに向かって、歩を進めてくる。 私は和之が側にくるまで、彼から目を離せなかった。 和之は、私の前で足を止めた。「不規則なんだな、帰る時間」 前置きもなく、腕時計に目を落として、和之はそう告げた。 やっぱり……私を、待っていたんだ。「……仕方ないでしょ。 こっちだって、都合があるんだから」 なぜだか……まともに、顔を見れなくて。 視線を下方に落として、憮然として答えていた。 あなたには関係ない。 そうした意志を、声にも言葉にも含ませて。「都合……ねぇ」 私の言葉に、和之は小さな笑いをともす。 その声が、何だか私が和之を避けるために、時間をずらしているのだと見透かされてるように思えて、カッとした苛立ちが胸にともった。「何か用?」 目をそらしたまま、ぶっきらぼうに、不機嫌に尋ねる。 和之は「まあな」と軽く流して、視線を駅の外に向けた。「話がある。 ……歩きながらでいいから。 そう、たいしたことじゃないし」 第一声で、あからさまに顔をしかめた私を見て、和之はそう付け加えた。 正直、話すのもイヤだったけれど「そのために3時間、待ってた」と言われては、無下に断ることなんてできなくて、しぶしぶ了承した。 歩き出す和之の隣に、不承不承、並んでついていく。 そうしないと、声が聞こえなくて、話にならない。 話によると、和之はこれまでにも、私と話したいことがあって、こうして駅で待っていたのだという。 けれど、私の帰宅時間があまりにも不規則だから、会えない日々が続いた。 時には速く帰宅したり。 時には遅く帰宅したり。 そうして、予想がつかなかったため、今日、速くからあの場所で待つ手段をとることにしたという。「そんなわけで、何度か待ちぼうけ、食らってる」「……そんなの……知らなかったんだから、仕方ないじゃない」 責められているように思えて、理不尽だと、ちょっとした怒りを覚えてしまう。「責めてるわけじゃない」 そう言いながら、和之は歩みを続けていた。「そうした努力をしてたってこと、知ってほしくてね」 だから適当にあしわらないでほしいと。 和之はそう、暗に含んでいるのだ。 ……先手を、打たれた。 私は軽く、唇をかみ締めていた。 そういわれたら、むげな返事をできないと知っているから。 だから和之は、前もってそんな話をしたのだろう。 そうした和之の行為が……なぜか……たとえようもなく。 悔しい思いをかきたてさせた。
2008年07月13日
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◇◇ ◇◇ それからも、私は帰宅で乗車する電車の時間を、不規則なものにしていた。 それはひとえに、和之に遭遇しないためのものだった。 その行為は、功を奏している。 和之と会うことも、なかったから。 不規則の時間幅を増やしたことも、功を奏した要因の一つだろう。 ……けれど。 使う駅は、いつもと変わらないから。 ……変えようもないから。 ふとした、何気ない意識の隙間に、駅での出来事が脳裏をかすめる。 そのたびに、私は小さく息をのんでしまう。 考えないように、きつく一度目を閉ざして、意識を切り替えて――それから目を開く。 そうした行為を、するようになっていた。 その日も、不意に蘇ったのは、和之が……おそらく、亜美という子に頬をはたかれた場面だった。 事実を告げたと、和之は言っていた。 それは、亜美という子に、気持ちが傾いていないことと同時に。 佳奈美さんとの交際も、告げたからだろう。 ただ、彼女との関係を否定しただけなら、あんなに激しい怒りを感じることもなかっただろうから。 それに。 亜美という彼女としては、自分が仲立ちとなった結果が、不本意でならないのだろう。 彼女がそうした席をセッティングしなければ、和之と佳奈美さんは知り合うことはなかったのだから。 ……それにしても。 つれづれと思いつつ、到着した電車に乗って、いつもの指定位置のポールにつかまって。 金属の冷たさを感じつつ、ポールにこつんと額をあてた。 なにをどう説明すれば、あんなに激しい怒りをかうのか。 それが少し、不思議でもあった。 以前の和之なら――私の知ってる、和之なら。 同じ意味を持つ言葉でも、波風のたちにくいものを選んでいた。 そんな彼が、あんな怒りをかうなんて……。 そう、思ったものの。 すぐ、ため息がこぼれた。 今の和之は。 昔とは、違うから。 それを、何度も目にしているじゃない。 そう、思いなおす。 相手の神経をさかなでることを、言ったのかもしれない。 そんなことをつれづれと考えていると、電車は自宅マンション最寄の駅に到着した。 そこで考えを打ち切って、ホームへ降りて、改札口を抜けて。 いつものように、駅から出ようとしたとき。 その出入り口にたたずむ人影に気づいて、私は足を止めていた。 わずかだが、体が強張っているのがわかる。 どうして。 ……と、声は出ないものの、口が自然と動いていた。 和之が……駅の出入り口に、たたずんでいた。
2008年07月13日
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「りょ、旅行って!?」 驚いて、無意識のうちに、問いつめるように語気が荒くなる。 ユズルの服をつかんでひっぱって。 そうして問いただす私にかまうことなく、冷蔵庫から取り出したミネラルウォーターを、ユズルはグラスに注いでいる。 ちなみにルーは、ユズルの肩にくってりと乗っかってる。 器用なこと、この上ない。 私の慌てぶりに驚く様子もなく、ユズルはミネラルウォーターのボトルを冷蔵庫に戻して、そのドアを閉めると。 振り向きざま、私の額に軽く口付けた。 音もたたないような、ホントに軽く淡い口付けだった。 触れたのも一瞬のこと。 すぐに、ユズルは体を離している。 面食らった私が、声もなく、触れた額を手でおさえて、金魚のように口をパクパクさせている様子に、なごやかで、優しげな笑みを向けていた。「そういうわけだから。 考えといてね」「そ――、そういう、ワケって……」 そんな話――旅行の計画なんて。 一度も聞いてないんだけど……? そう、思ったものの。「……いや、だった?」 なんて。 しょんぼりした顔と表情で聞かれたら。「うん」とうなずけるわけ、ないじゃない!「か……考えとく……」 そう、赤くなりながら答えるのが、精一杯だった。 余裕、ないなって、自分でも、わかってるけど。 こればかりは……どうしようもない。 私の返答に、ユズルは安堵したように、口元を緩めた。 そうして、ルーを肩に抱いたまま、さっき寝転がっていたソファに腰掛ける。 私もつられるように、ユズルのあとに続いて。 もそもそと、ソファを背もたれに。 リビングのテーブルの側に、座っていた。
2008年07月12日
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そのあと、互いの飲み物を飲みきるまで、当たり障りのない話をしていた。 ……と言っても、共通した話題は和之に関することしかないから、必然的、彼の話になってしまったのだけれど。 話のキリがいいところ、そして飲みものの空き具合が兼ねあったところで、席を立ち、彼女と別れた。 店を出てからも、佳奈美さんは何度もお礼を言って、頭を下げていた。 私は「たいしたことじゃないから」と、苦笑交じりに告げていた。 そうして。 佳奈美さんと別れて、駅のホームへ向かって。 電車に揺られて帰る道すがら、自然と、吐息が漏れでていた。 何の感慨もない――つもりだったけれど。 彼女との会話を、思い出すと。 胸が。 胸の、奥が。 苦しくなる。 ――交際を、申し込まれた そう、告げた、彼女の言葉が。 鉛のように重く、胸にのしかかってくる。 彼女と話しているときは、話にあわせること、内容を理解するのに神経をついやして、私の感情を鑑みる余裕なんて、なかった。 彼女の質問を、問いを理解して。 不自然でない答えを。 波風の立たない答えを口にするのに、精一杯だった。 こうして、一人になって。 ぼんやりとしつつ、彼女の言葉を振りかえって。 胸のうちで反芻するうちに、じわじわと現実を、認識するに至った。 彼女は――佳奈美さんは。 和之から交際を申し込まれたと、言っていた。 それは、彼女から、交際を申し込まれた、のではなく。 ただ漫然と、和之が受けたのでは、なく。 和之の意志で――和之の気持ちが。 佳奈美さんに向いていると、言うことだ。 そう、思うと。 そう、理解すると。 ちりちりと、胸の奥部が焦がれるように思えた。 同時に。 自分でもよくわからない困惑も、感じていた。
2008年07月12日
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久々に美容室行きました。 速めに行ったのに、開店20分前に、すでに4人並んでて、びっくり!! 今日を逃すと、いつになるかわからないので、並びましたよ。 これまでに2度も、お客さんの多さに、断念してるので。 で。 開店するときには、計10人並んでました。 そんな、大きなお店じゃないのに。 びっくり~。 久々のストパーでした。 前回染めた色が、思いのほか茶色かったので、今回は染めずにしました。 ……それでも、相変わらず、時間かかりましたが。 でも、おかげで髪のハネを気にしなくてすむようになりました。 遅くなりましたが、これから更新分、書いていきますね~。
2008年07月12日
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まずは。 保管庫更新しました。「背中あわせ~」です。 やっぱり、ちょっとまだ眠いので、もう少し寝ます。 昨日は遅かったんですよね……。
2008年07月12日
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今日は飲み会でした。 で、今帰宅です。(汗) 久々に飲みました。 更新は、朝するので、それまでお待ちを~。
2008年07月11日
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時差ありまくりで申し訳ありませんが。「背中あわせ~」の保管庫、更新しました。 ブログでは、本編完結済みですが。 保管庫では、まだまだ継続中です。 番外編二つも更新中ですし。 あ、七夕編は数話で終わる予定です。 そんなに、ネタはないので。(苦笑)
2008年07月10日
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佳奈美さんは、何のことを言ってるのか、わからなかった。 呆然とする佳奈美さんに、亜美さんは皮肉げな笑みを深めたのだという。「私が……父の存在をチラつかせて、和之さんに近づいたのだと……亜美は、そう言ってました。 そんなことしてない。 父の話などしていないと言っても、信じてくれなくて。 ……結局、話の折り合いがつかないまま、袂を分かつことになったんですけど……。 ……その、去り際に、言われたんです。 彼は、私自身を望んでいるのでない。 父の存在がなければ、目にもとめられなかったはずだと……」 話しながら、声はまた一段と暗いものへと変わっていった。「和之さんって……そういうところ……あるんでしょうか……」 そういうところ、というのは……おそらく、彼女の父親のように。 相手自身だけでなく、その人に付随した付加価値を重視するのか、問うているのだろう。 そうして、恋人を選ぶ人なのかどうかと、彼女は確かめたいのだ。 私は……正直、返答に困った。 迷いながらも、さっきと同じように「前の和之しか、知らないけれど」と前置きをおいて、話していた。「そんなことは、ないと思うけど。 ……私の見ていた限りでは、だけれどね」 彼女の言うように、和之が資産などの付加価値を重視するのなら。 私と、付き合ってるはずがないから。 そうした思いから出た答えだった。 そう、考えながら。 ちくりと、小さな痛みを、胸に感じていた。 それに気づかないフリをしつつ。 彼女の様子を、うかがっていた。 私の答えに、うつむいていた佳奈美さんはゆっくりと、顔をあげて。 正面から、私をうかがうように見つめて。 その視線をそらさずに、まっすぐに返す私に、確信を深めたようで。 その表情が、強張っていた頬が。 ゆっくりと、ほころんでいった。
2008年07月10日
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和之の話では。 亜美さんと一緒にいたとき、佳奈美さんと会ったことがあるのだという。 その時は、亜美さんの友人としか、印象になかった。 二人にしかわからない話をしているとき、和之は蚊帳の外で。 二人の会話をぼんやりと聞くしかなかった。 そうして「用があるから」と慌ててその場をあとにした、佳奈美さんにふと目を向けたとき。 その右の後頭部付近の髪が、くるりと寝癖がついていたのだという。 それこそ、豚のシッポのように、小さな円を描いて。 和之が笑っていたのは、そのことを思い出していたからだ。 その時の和之は。 子供の愛らしい仕草を見るような、そんな表情をしていたのだという。 バカにされたと思っていた佳奈美さんは、そうでないとわかって。 和之に対する思いも、その席で、少しずつ、変わって言ったのだという。「失礼な人」との想いが強かったものの、そうでないとわかって。 それから和之の、何気ない仕草や行動を、自然と目が追うようになって。 もともと一次会で、佳奈美さんは帰るつもりでいた。 それを実行に移したとき、和之に連絡先を聞かれたのだという。 佳奈美さんも、和之の人となりが気になり始めていて、戸惑いを覚えたものの、それに応じていた。 佳奈美さんが気になっていたのは。 彼が、父親の会社の人間だと、いうこと。 父の存在を目当てに、彼女に近づいてきた人間を、彼女はこれまでに何人か知っているから。 そのどれも、望んでいた結果は得られなかった。 彼女とのつながりを、父親は特別視することはなかったから。 あくまで、見るのは本人の資質。 父の眼鏡には「娘の知り合い」など、プラスの要因には成りえなかったから。 和之が父の会社の人間だと、最新の注意を払いながら、和之とメールと電話のやり取りを続けて。 たあいもない話を、友人としてやりとりするようになって……一月、たったころだろうか。 普段の何気ない会話の続きのように、ごく自然に、和之に交際を申し込まれたのだという。 その頃には……佳奈美さんの心も、和之に傾いていた。 素直に、和之の申し出が嬉しかったけど。 父の会社の人間だということが、気になってしかたなかった。 気に、なっていたけれど。 嬉しさが先立って、その申し出を受けて。 正式に交際をするようになってからだ。「友人に――亜美に……。『話がある』と呼び出されて……」 その時から、とげとげしい声、怒りをともした声で、亜美さんは話していたのだという。 怪訝に思いながら。 ……不安に、かられながら。 言われた喫茶店について、にらみつけるような、亜美さんと対峙して。 わけがわからず、戸惑いで、なんと言っていいかわからない佳奈美さんに、亜美さんは皮肉げな笑みを、口持ちに浮かべた。「父親の影響を受けるのはイヤだっていいながら……。 結局は、それを利用してるじゃない」 嫌悪感をにじませた声で、そう告げたのだという。
2008年07月09日
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それから、二人でうなりつつ、考えて。 一応、無難かな? と思えるものを書いていた。 ちなみに私は「みんなが元気でありますように」。 これだとタクも、コメントのしようがないだろうって。 批評しにくいところを、逆手に取ってみた。 具体的なのを、さけるようにしてね。 ユズルも書いたみたいだけど、見せてくれなかった。 だけど、それじゃあ、どうやってタクに渡すっていうの? 聞くと、ユズルは「直接、渡しに行こうかと思って」と言う。 ユズルは実家に来たことがあるから。 場所はわかっている。 私は思いもしなかった言葉に、目を丸くしていた。「なんで?」 そう聞くと、ユズルは肩をすくめた。 私が前、タクがルーとまた会いたがってたって話したのを、覚えていて。 それで都合がつけば、連れて行こうと思ったのだという。「ありがと。 タク、喜ぶよ」 私は、自然と顔がほころんで。 ユズルはちょっと照れたみたいで、膝の上で寝ているルーを抱き上げて、いじっていた。 そしてソファの戻ると、そこに寝転んで胸の上にルーを置いている。 私はそのソファを背もたれにしているから。 距離がぐんと近くなった。「……チサトは?」 ソファに寝転んだまま、ユズルが顔だけを動かして私を見上げている。「なに?」「願い事とか、ないの?」「……願い事……ねぇ……」「うーん」と考えてみるけれど……思いつかない。「……休みが欲しい……?」「現実的すぎ」 苦笑するユズルに、なんだかダメしされたみたいな気持ちになる。 何だか悔しくて、いろいろ考えてみたけれど。 急に言われても、思いつかない。 自然と腕組みして、眉間に皺を寄せる私に、ユズルは「今度の旅行。行きたいところ考えてて」と言いながら、胸の上のルーを抱き上げて、体を起こすと、台所の方へと足を向けた。「……うん……」 上の空で聞いていたから、何も考えずにうなずいたけれど。 あとでふと「旅行……行きたい……ところ?」と復唱して、意味を理解して。「……え!?」 と、驚いてしまって。 慌てて、台所へ行ったユズルの後を追っていた。
2008年07月08日
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「……七夕……かぁ……」 そうしてめでたく。 わが家の行事に巻き込まれたユズルは、渡された長方形の紙片を前に、吐息をもらした。 場所も、座っていたソファから、私の正面に移動している。 そうしてさっき私がしていたように、テーブルにつっぷしていた。「願い事……。 ねがいごと……」 と、まじないを唱えるみたいに、何度も同じこと、くりかえしてるし。「ちゃっちゃか書いちゃったほうが、身のためよ? ふか~く考えて書いたりして、あとの批評が低かったら、傷つくの、自分自身だし」「……チサトみたいに?」「そう。 よくわかってんじゃない」 そう軽く言いつつも。 ……これでも結構傷ついてる。 短冊の願いを見たタクが「ディズニーランド?!」と嬉々とした顔になって。 で、私が「じゃあ、いっしょに行こうか♪」って提案して、タクも大喜びで「うん!」ってうなずいてくれて。 ……なんて考えてた、一年前の私が、むなしくして仕方ない。 かわいい甥のためだ。 少し痛い出費になるだろうけれど(多分、姉夫婦同伴だろうから。ちなみに二人の分の出費も考えていた)、ここはやってやろうじゃないの! ……って……。 意気込んでたのになぁぁぁ。「……そっちは、何て書いたの?」 って、私の手元を見ようとしたユズルから、慌てて短冊を隠した。 そしてほくそ笑む。「……ヒミツ♪」「……まだ書いてないのに?」「細かいこと言わないの。 書いてないだけ。 書くことはもう考えてるから」「だったら、早く書いたら?」「うるさいなぁ。 人の勝手じゃない」「……まだ決めてないくせに」 ……ぐっ! 痛いところをつかれて、私は口をつぐんでしまう。 最近。 ユズルとの距離が、さらに縮まってきたように、思えるけれど。 それと比例して。 こんなふうに、けっこうグッサリと核心をつかれることも多くなった。 ……まあ、振り返れば、ユズルってカンのいいとこ、あったんだけど。 けど最近は……なんていうかなぁ。 ちょっと、とげとげしいときも、あったりする。 それはひとえに、不機嫌が元になってるからだろうって、思うんだけど。 わかっては、いるんだけど。 わかってるがゆえに、何ともしがたいって状態だ。「じゃあ、参考で聞くけど。 去年の最高得点はどんなの?」「……『お金持ちになりたい』byタク」 予想の範疇外だったのだろう。 ユズルは盛大に吹き出した。 くっくっ、と肩を揺らして笑うユズルに「だから難しいのよ」と私はごちる。「どっちが夢がないんだっていうんだか。 ちなみに、次点はおねえちゃんの『大きな家に住みたい』だから」「あくまでチビの主観か。 けど、だんなさん、大変だね。 奥さんの実家でそんな話題出るなんて。 プレッシャーじゃん」「まあねー。 おにいさん、する~って流してたけど、若干、体、強張ってたもんねー」 ちなみに。 姉夫婦は現在、一戸建てを購入すべく、貯金にいそしんでいる。「ま、深く気にしない人だから。 ……で。 そっちは決まったの?」 私がユズルの手元を覗き込むと。 ユズルは隠す素振りも見せなかった。 かわりに、短冊はまっさらなままだ。「願い事は……あるんだけどね」 苦笑交じりにつぶやくユズルに「へえ」と私はつぶやいた。 なんだろう。気になる。「どんなの?」「短冊には関係ないけど」「いいよ。どんなの?」「…………。 とりあえず、こいつをどっかに預けたい」 そういいつつ、一瞥をくれたのは。 ユズルの膝の上にあごをのっけて眠っているルーだ。 視線に気づいたのか、ルーは顔を上げて、小首をかしげている。 そんなルーに、ユズルは不機嫌な眼差しをくれていた。「そそそ、そうなの」 言葉につまりつつ、私はそう返して。 内心、冷や汗の出る思いだった。 ユズルが不機嫌な理由も、それがルーに由来することも、わかっているから。 だから……私の立場としては、何とも……コメントがしづらくて……。 うううう。 ………………。 ………………。 ……言って、しまえば。 ユズルと私、付き合い始めたんだけど。 恋人という、関係では、あるんだけど。 ……その……そういう関係には……まだ、いたっていない。 わ、私がじらしてるとか、どうとか、そういんじゃなくて! なんというか。 そういう、雰囲気になっても、ルーに邪魔されてる現状で。 もっぱら、二人で過ごすのが、このマンションだから、ルーの所在もしかたくて。 二人でどこかに出かける時間も機会も、今のところ、まだなかったから。 ユズルも、仕事の方が休みが取りにくいみたいで。 残業が続いている。 今日だって、帰ってきたの、遅かったし。 だから不機嫌の矛先が、ルーに向かってる。「あとは――」「え!? まだあるの!?」 声を大にして驚く私に、ユズルは「あったらおかしい?」と皮肉めいた言葉を発する。「お、おかしく、ないけど……」 さっきの願いを聞いたばかりだから、他のを聞くのが怖い。「チサトのアパートに行きたい」 ほら、やっぱり!! そういうのが来そうな気配がしてたのよ!! ちなみに。 ユズルはこれまでに何度か、私のアパートに行きたいと言っていた。 それを私が、なんだかんだと理由をつけて断っていた。 洗濯物を片付けてないとか、なんとかかんとか。 異性をアパートに呼ぶのは、何というか、苦手だった。 過去、アパートの前で待ち伏せされた。 ……なんて、ことがあったからだろうけど。 ちなみに、その人はよく遊んでいた、グループの一人だった。 学生時代のことだけど。 あのときは……ゾッとしたものだ。 彼の女性に関する、いろんな噂を聞いていたし、それに……残念ながら。 彼と話して、その行動を見て。噂は本当なのだと、感じることがたびたびあったから。 ユズルがいやって、わけじゃない。 だけど……あの光景が、トラウマになってるっていうのも、事実だから。 冷や汗をかきつつ「今日はムリ」ときっぱり断る。「弟が来てるから」 ちなみに、弟は。 タクの短冊攻撃から逃れるために、数日前から私のところに転がり込んでいる。 ……タクが実家にいるのなら、教えて欲しかった。 タクのこと、一言も口にしなかったら、一年前のことなんて、すっかり忘れていたから。 ユズルは「……ホントに?」と疑いの眼差しを向けている。「ホントよ。 ……なんなら、携帯に電話して、聞いてみる?」 弟にかけようと、携帯を手にすると「いや、いいよ」と止められた。「それに。別に今日でなくてもいいから。 いつでも、いいんだけど」「……か……考えておく……」 尻すぼみになりつつ、そんな返事しか、できなかった。
2008年07月07日
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※「背中合わせにつなぐ手を。」の、本編完了後の話です※「何それ」 言いつつ、ソファに腰掛けたユズルは、怪訝な顔で私の手元に視線を落とす。「ん……。タクがね。 くれたんだけど」 私はソファの側にあるテーブルにたて肘をついて、手につまんだものを眺めていた。 黄色い縦に長い長方形の紙。「……短冊?」「そ」 つぶやくユズルに同意しつつ、少し首をめぐらせて彼に顔を向ける。 ここはユズルのマンション。 ルー目的で遊びに来るうちに。 ……家主自身に、会いに来るうちに。 身も心も、すっかりなじんでしまっていた。 ……だけど。 まだ、交際期間的には……そう長くない。 見上げる格好のまま、ユズルに手を伸ばしてつまんだ細長の紙片をひらひらと揺らした。「『おねーちゃん、あげる!』 って、実家に顔出すなり、嬉々とした顔でくれてね。 私が喜んでくれるって、思ってるから、期待に満ちたキラキラした目で見つめられてね」 ……はあ。と、息をつく私に、ユズルは怪訝な顔をした。「なんでそこでため息?」「困るから」「……困る?」 なぜ? と首をかしげるユズルを横目で眺めつつ、私はずるずるとテーブルの上に、上半身を横たえた。「それ、何だか、わかる?」「え? ……だから、短冊だろ?」「そ。 短冊って、何するもの?」「……願い事、書くんだろ? ……って、書くの?」「書かなきゃいけないの。 それをあのオチビさんは待ってるから」 七夕に。 短冊に願い事を書いて、笹の葉に結ぶと、願い事がかなう。 そんな言い伝えがあるって、私の子供の頃にも聞いていた。 まだ幼いタクは、それを信じていて。 良かれと思って、私に短冊をくれて。 それで私の願い事をかなうって思ってる。 ユズルはまだ怪訝そうな表情でいる。 私がなぜ、億劫になっているか、わかっていない。 私だって、フツーのなら、夢を壊さないものを適当に書いて、終わらせるんだけど。 タクの場合、それじゃ終わらなかった。「短冊に書いたのかって、さんざんせかされて、で、それらしいの、書いたら書いたで、それを見て点数つけんのよ?」「点数?」「そ。」「ふーん」と一応の納得をしてくれたものの、ユズルはそれから少しの間を置いて。「……ちなみに、どんなの?」「…………。 『ディズニーランドに行けますように』って書いたら『夢がない』って、20点くらった」 その答えに、ユズルは吹き出して笑って。 不機嫌な私に気づくと、すぐに口を手で覆って我慢していた。 ……遅いよ、そんなことしても。「こっちはさ。 タクにもわかるように、書いてたのに。 家族の前で点数つけられて。 恥ずかしかったのなんの。 だから、今年は逃げようって思ってたんだけど」「……七夕っての忘れて、実家に帰ったんだ」「…………そう」 重々しくうなずくと、ユズルは小さく笑っている。 そんなユズルを私はジロリと睨んだ。「人事だと思って……」 そんな私に、ユズルは肩をすくめる。「バカにして笑ったんじゃないよ。 家族の仲良くて、ほほえましいなって、思ったから。 あのチビって、お姉さんの子供だったっけ?」「そ。お姉ちゃん、なんか実家に頻繁に帰ってるみたいなのよね~。 …………ああ、夫婦仲はいいから。ご心配なく。 じゃなくて。 実家で作った夕飯をわけてもらって帰ってるの。 食事作るの面倒で、手抜きしてんの」 そう言うと、途中、驚いたユズルも安堵したようだった。「で。 どうすんの? 今度は何て書くの?」「……ユズルは? どうする?」 聞くと、考えたものの「……思いつかない」と肩をすくめただけだった。 そんなユズルに私はまた一つ、息をついて。「人事のように、話を聞いてたとこ、悪いんだけど」 言いつつ、再びユズルに手を伸ばした。 その手には、さっきの短冊をつまんでいる。 ユズルは話が見えずに、目をまたたかせていた。「残念ながら、他人事じゃないのよね」 言いつつ、短冊を指でこするようにずらすと。 黄色い短冊の下から、薄い緑色の短冊が、姿を現した。「タクからの伝言。『あの犬のおにーちゃんにも、あげてね!』 ……だって」 それを聞いてユズルは。 体を強張らせていた。
2008年07月07日
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「はす向かいの~」について少し。 基本、一人称形式をとってますが、空美と久坂(孝一)の二人で話を進めていきます。 久坂→空美→久坂 ってところに、いま来てますね。 まだ、前置き部分ですが。 そのあたりを書いておかないと、感情がついていかないと思うんですよね……。「そんなのいらない。核心だけでいい」 と、思う方もいるでしょうが。 私も、番外編を書くにあたって、その部分だけ書こうと思ってました。 が。 私自身、久坂と空美に関して、深く考えていなかった(表面上のキャラ形成しかしていなかった)ので、核心だけ書いても、さらっと流すような感じになりそうだったので、長くなりそうですが、細かく書いています。 ある程度の道筋は考えてから書き始めますけど、どちらかというと、書きながら話を作っていくほうなので。 ブログで掲載している分は特に。「背中~」のもう一つの物語です。 私の嗜好的には、こういう話、スキなんです。(笑) さて、今日は七夕ですね。 仕事でお客さんに言われて気づきました。 覚えていたんですけど、言われて実感したというか。 で。 もしかしたら「チサト」と「ユズル」で、七夕に関する話を一つ、書くかもしれません。 書こうと思ってるんですけど、書けるかな? 書けなかったら、すみません。
2008年07月07日
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久しぶりに見たソラには正直、驚いてしまった。 家が近くだし、これまでにも顔を合わせる機会もままあった。 けれど考えてみると、その時はざっくりとした……まあ、言ってしまえば普段着姿がほとんどだった。 仕事用にスーツを着込み、化粧も必要最低限ながらも、ほどこされている姿は、初めて目にする。 俺の中ではソラは、幼さの残る子供という印象が強いからか、会社で彼女の姿を、遠目ながらも初めて見たとき、どうしても違和感をぬぐえなかった。 別人のような気がして、ならなかった。 仕事をする姿も、少しながら見たのだが……。「どうした、難しい顔をして」 そう親父が声をかけてくる。 社長室の、応接用の席に、テーブルを挟んで、向かい合わせに座って。 ソファに深く腰掛け、無意識のうちに両の手の指を組み合わせ、また無意識のうちに眉間に皺を寄せていたものだから、怪訝に思ったのだろう。 問われて、はっとして「……いや……」と明言はしなかった。 変わりに「ソラは……」と聞いてみる。「ソラ? 空美ちゃんか?」「……まさか、社内でもそう呼んでるのか?」「まさか」 と、親父は肩をすくめる。「二人のときだけだよ」 その、二人のときと言うのも気なったが、追求はやめておいた。 親父の秘書は、確か秘書課の主任があたっているはずだ。 ソラと二人になるというのも、頻繁にあることではないのだろう。「なんだ? 空美ちゃんに、もう会ったのか?」「いや……さっき、遠くで見たから」「そうか。 ……声を、かけなかったのか?」「他に人もいたから。 いきなり声をかけても、驚くだけだろう。 それに……まだ、俺がここにいること、知らないんだろ?」「まだ、誰にも話してないからな」 そう言って親父は肩をすくめた。 この場合の「ここ」というのは、今この時に限ったことでなく。 これからこの会社に勤めることを意味している。 事情があってのことだが。 俺がこの会社にいること自体知らないソラは、驚くばかりだろう。 ……それも、理由としてあるのだが。 声をかけられなかったというのが、本音だった。 スーツ姿のソラは、何だか別人のように見えて、俺の知らない人間のように思えて、声をかけるのに、躊躇した。 ……人違いでは。 そう思ってしまうほど、彼女は身にまとう雰囲気さえ、違っていた。 どこか頼りなく感じていた雰囲気も、微塵も感じさせず。 むしろ、見ている限りでは頼られてる様相が強かった。 尋ねられたことにも、即座に答えて、対処法を伝えているようだったし。「そうだ。 久しぶりに空美ちゃんも一緒に、食事に行かないか? もちろん、お前も一緒に」 ソラがお気に入りの親父は、目を輝かせてそう告げてくる。 俺はそんな親父に、じとりとした視線を送って、静かに深いため息をついた。 あきれかえって、出たものだ。「今はそんなこと、言ってる場合じゃあ、ないだろ? どうして俺がここにいるのか、わかってるのか?」 そう、強くはねつけると、親父は「う……」と、言葉に詰まっている。 それを見て、俺は一つため息。 親父はいい意味でも悪い意味でも、人との垣根を、役職の立場にとらわれない性分だった。 それが時と場合によっては、周囲に困惑をもたらすというのを知ってほしい。
2008年07月07日
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「冷えた指」に関して少し。 以下はネタバレ含んでるんで、ご注意を~~。--------------------------------------------------------- 私の中では、迷走してんだか、きっちり進んでるんだかって、自分でもよくわかってない作品なんですが。 大筋の経過から見ると、ほかのどの作品より、思いどおりに動いてます。「謎」大好き人間なので、それがかえって自分の首を絞めていますが。 話の展開を難しくしてる(書く側として)んですよね……。 他のブログで掲載していた作品ですが。 やっぱり私は、楽天ブログの方が合ってるようです。 楽天だと、今回のように長文書けるんですよね。 以前書いてたブログだと、長くてもこの半分しか書けませんでしたから。 なぜだか、自分でもわからないんですが。 続いて日記を少々。 今日はとにかく暑い日でした。 そして。 仕事も大忙しでした。 う~~。日焼け止め塗ったけど、絶対焼けた~~。 おそらく、梅雨明けになってるんでしょうが、まだ宣言はでていません。 ってか、変化が急すぎるぞ、体も服もついていけてない。 この間までは「なんで6月なのに、こんなの寒いの~~!!」って、言ってたというのに。 さて。 これから資格試験のお勉強にとりかかります。 ……受けるつもり、さらっさら、なかったんですけどね。 半強制で、受けることになりました。 ……でも受験料払うの私なんだけど……。 でもって、受からないと、受験料、戻ってこない……。 受かれば、受験料、もどってくるんだけどさ……。 長いカタカナ覚えるの苦手なんですけど。 去年は余裕かまして、後悔した経緯があるので、今回は早めに取り組みます。 ……あと、1~2問合ってたら受かってたのにな……。
2008年07月06日
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それから佳奈美さんは、ぽつぽつと、ことの経緯を話し始めた。 和之と最初に会ったときのことは……よく覚えていない。 だから推測なのだが。 その友人(名を「亜美」というのだと教えてくれた)と、一緒に歩いているところを、出くわしたのではないかと、佳奈美さんは言う。 父親の経営する会社なので、出入りすることもまま、あったのだそうだ。 そのほとんどが、父親の小間使いとして、だったが。 家にある書類やら礼服やら。 まあ、とにかく、佳奈美さんに連絡をして、彼女が家にいて、それらの物を届けるのが可能なら、惜しみなく使いっぱしりをさせられるのだそうだ。 苦笑しつつ、佳奈美さんはそう話していた。「『使えるもは親でも使え』……そんな、わがままな父ですから」 それでも、佳奈美さんは父親の会社では「娘」という肩書きは伏せている。 近所の、暇なときに時々、家の家事を手伝う家政婦さんと、受付の人にはそう言うよう、父親とも話をあわせていた。「どうして、隠すの?」 単純にふと、思いついたことを尋ねると、佳奈美さんはまた微苦笑を浮かべた。「父の――社長の娘だからって、かしこまられるのが、いやで……」 子供の頃から、そうした目で見られ続けて。 いつのころからか、窮屈に感じるようになっていったのだという。「だから、必要に迫られる以外で、あまり素性を明かしたくないんです」 ……正直、彼女の気持ちは、わかるような、わからないようなって、曖昧なもので。 私は「……そう……」とだけ、返事をしていた。 そうした小間使いのとき、社内で偶然、亜美という佳奈美さんの友人と、出くわした。 亜美さんは佳奈美さんが社長令嬢だと知っている。 そのツテで、会社に就職したようなものだから。 そして亜美さんも、会社では佳奈美さんの素性を明かさないようにと、同意してくれていた。 おそらくこの時に、隣に和之も一緒にいたのだろうと、佳奈美さんは言う。 この時は、佳奈美さんは二人の関係を、フツウの同僚と見ていた。 必要以上に体を寄せることもなかったし、会話も、仕事の話が主だった。 その時は、佳奈美さんは亜美さんと、数分ほど軽いおしゃべりをして「ちょっと、急いでいるから」とその場をあとにしたという。 話している途中で、父親から催促の電話が鳴ったのだそうだ。 それから、しばらくたってからだった。 亜美さんから合コンの話が舞い込んだのは。 相手は亜美さんの仕事の同僚(こっちは男)と、亜美さんの友人(こっちは女)と。 最初、佳奈美さんは断った。 父親の会社の人間とは、できるだけ接触したくなかったから。 アルコールの入る席なんて、到底無理な話だ。 しかしこの時、亜美さんは「人数が足りないから」と何度も頼み込んできたのだという。 人の頼みを断るのが苦手な佳奈美さんは、しぶしぶながらその席に参加することになって。 その席で改めて、和之と対面したのだという。 その時、佳奈美さんは和之のことなど、すっかり忘れていた。 けれど和之は、彼女――佳奈美さんのことを覚えていて。 初め顔を合わせたとき、なぜか和之は、佳奈美さんを見て、小さく笑ったのだという。 口元の笑みでなく、思い出したように「クッ」とこみ上げてくる笑い。 最初、佳奈美さんが和之に抱いた印象は「失礼な人」だった。 顔を見るなり、笑うなんて。 誰だっていい気持ちはしない。 佳奈美さんは和之と話さないようしていたけれど、時の経過と共に、それぞれ、おもいおもいに席を移して。 そうした結果、和之の正面に、座ることになった。 しかたなく、失礼のない程度、話をあわせていたけれど。 その会話のさなかでも、和之は時折、笑いをかみ殺していた。 それも、佳奈美さんの顔を見るたびに。 さすがに頭にきて「いったい、なんなんですか。人の顔を見るたび笑うなんて」と、佳奈美さんが口にしようとしたとき。 和之が先に、口を開いていた。「今日はないんだ」 言いながら、自分の右頬の辺りで、人差し指でくるりと、豚のシッポのような軌跡をつくる。「……え?」「寝癖。この前は、キレイに一つだけ、できてたのに。 ……こんなふうに」 そう言って再度、指で形を描く。「……この、まえ?」 和之と会ったこと事態、忘れていた佳奈美さんには、何のことか、わからなくて。 そして和之から詳しく聞いて、赤面するにいたっていた。
2008年07月06日
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とりあえず……としか、言いようが、ないけれど。 私が知っていると言える和之は、数年前の彼だ。 一応、最近は会っていないと会話の中で告げているから「こっちに戻ってきてからは、よくしらないけれど」と前置きして、私も彼女――佳奈美さんと同じ見解だと述べた。 女性関係が華やかではないし、一度に複数の女性と付き合うというのは、まずないだろうと。 複数の女性と付き合うとなると、それなりに気を使う。 隠しているなら、会話の内容とか日程とか、いろいろと気にかけることが増えてしまう。 和之の性格から言って、それは「面倒」の部類に入るから。 それでなくとも、彼の性格上、複数の女性と同時期に関係を持つことを、好んでいなかった。 数年前の和之の話だけれど、そう彼女に伝えると、佳奈美さんは安堵したように、体の強張りを解いた。 そんな彼女を見て、小さな罪悪感も、感じていた。 和之が、複数の女性と同時期に関係を持つことを、良しとしなかったのは……。 もしかしたら、私に合わせていたのかもとの、想いが、少しだけれどあったから。 この前、和之が喫煙することを、初めて知った。 それまで、そんな素振り、かけらもなかったというのに。 それと同じように。 同時期に複数の女性と関係を持つ男性を、私が激しい嫌悪を持つと知っていたから。 ……私と、付き合う前から、知っていたから。 それにあわせていたのかもしれないと……そんな考えも、チラリと脳裏をかすめていた。 それから私も、彼女に少し聞きたいことがあったから、尋ねていた。「和ゆ――、本橋は、今はどんな仕事してるの?」「営業していると、言ってました」 ……あれ? と、その時に、小さな違和感を、おぼえていた。 言っていた……って……。「どう? 仕事には慣れたよう?」「まあ、徐々に慣れていっているようです。 なんでも、以前と畑ばたが違うので、最近コツがわかってきたと、言ってましたが」 そこで違和感は、確信に変わった。「おなじ……会社で働いてるわけじゃ、ないの?」 さっきから、彼女の物言いは、和之が言っていたことそのまま告げているといった感じだった。 実際、見たわけではなく。 なぜか私は、彼女と和之が、同僚なのだろうと、思いこんでいた。 私の問いに、彼女は困ったように苦笑を浮かべた。「勤めてる会社は……違いますけど。 私の、父が経営している会社の社員に、なるんです、和之さん」 驚いて目を見開く私に気づいて、彼女は言葉を続けた。 どうして。との困惑が、わかったのだろう。 彼女と和之との接点が、私には見えなかったから。「私の友人が、父の会社に勤めていて。 その友人を通じて、和之さんとも知り合って……」 そう、告げてから、なぜか彼女はつらそうに、うつむいてしまった。 肩がこわばっているのが、端から見てもわかる。 テーブルの下になっているから見えないけれど。 膝の上に乗せている両手を……ぎゅっと握り締めているように、思えた。「その、友人なんです……。 彼のことを……、その、中傷的に、言ったのが」「……え?」 なんだか、内容を把握できないうちに、また困惑する話をされて。 私は聞き返すように、そう口にしつつも。 ……なぜかこのとき。 彼女の――佳奈美さんの。 友人というのが、いつかの女性ではないかと、ふと思っていた。 初め見たときは、和之と腕を組んで歩いていた、白いコートの女性。 そしてついこの前。 駅のホームで派手な音を奏でて、和之の頬を叩いた女性。 その、彼女ではないのかと。
2008年07月06日
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梅雨明け? かな? ……と、思ったとたんの連日猛暑。 暑さにダレてます。 今日は、入院していた父が外泊許可が出て、実家に戻ったので、私も顔出しに実家に戻りました。 で、たまにはってことで、覚えたてのエビチリ(もどき)を夕食に作って。 自分で言うのもなんですけど、結構おいしかったです。 いや、味がどうっていうより、エビのプリプリ感が「ん~~~!! (>▽<)」って感じで。 参考にしたレシピが、エビを炒めたって感じのものだったんですが、作った後でよくよくかんがえると。「……エビって衣つけて揚げてなかったっけ……? (@_@)」 って、考えたり。 いや、確か揚げてた……。 ま、おいしかったからいいや。 揚げたりしてたら、時間かかって大変だったし。 さて。 明日は月一当番の日。 外の作業があるんで、普段帽子なんてかぶらないのに、仕事用に帽子を購入しました。 紫外線が怖いとかそういうんじゃなくて(いや、怖いのもあるけれど)、最近の日差しって、肌が痛くなるんですよね。(>_
2008年07月05日
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「……どんな……って……」 返答に、困った。 どういった意図で聞いているのかがわからないから、どう答えればいいものなのかって、考えてしまう。 単純に、性格のことを聞いているのか。 それとも――。 私の言わんとしたことを、彼女も察して、これまた言いにくそうに「……その……女性、関係の、ほうで……」ともごもごと口ごもった。「私は……誠実な方だと……思ってたんですが……。 ある人から、中傷的なことを……言われたので……。 その人の言ったことを、信じてはいません。 だけれど……ウソを言うような人でも、ないんです。 その人の勘違いだと、思うんですけど……だけれど……ずっと……気になって……。 ……それで……あなたのことを……ふと、思い出して。 話を、聞いてみたかったんです」 自分の周囲の人間は、和之に対して、彼女と見解は同じだった。 女性関係が華やかなタイプではないと。 彼女――佳奈美さんに対しても、誠実さを感じると。 それで、一応の安堵はしたけれど。 ふと、思い出したのは、いつだったか目にした、私と和之の姿。 その時の和之は、それまでの彼女が知っている和之と違って、砕けた様子が見えたのだと、彼女はそう告げる。 だから。 なぜか……踏み込めない雰囲気が、あって。 声をかけることができなかったのだと、彼女はそう告げた。「和之さんは……どういった方なんでしょう」 そう、再度彼女は尋ねてきた。 私はすぐには答えられなかった。 そんなの、私の方が教えて欲しい。
2008年07月05日
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「……え?」 気がつくと、そう問い返していた。 意味をすぐには、理解できなかった。 何か絵空事を聞くような心地がしてならない。 言葉は、耳に、頭に入っているのだけれど……実感が、なかった。 そうした私の反応を、彼女は予想していたのだろう。 たいして驚く様子もなく、小さな笑みを、口元に宿しただけだった。 ……一瞬、その瞳に寂しそうな色が映っていたことに、この時の私は、気づかなかった。「やっぱり……知りませんよね」 そう苦笑をもらす彼女に、私はハッとした。 そこでようやく、失言に気づいた。「和之とは、最近話してなかったから」 ウソではない。 ……ただ「最近」の期間を、一週間程度に短くしたけれど。 彼女――佳奈美さんは「いえ、そんな。気をつかわないでください」と恐縮したように言葉を続ける。「突然、声をかけたのは私の方なんですから」 それから彼女は、私に和之とはどんな関係なのかと尋ねた。「昔、付き合ってた」……なんて、言えるわけないから。 友人なのだと、答えていた。 そこで私も、気になっていたこと、彼女に聞いた。「私のことは……?」 誰から? どんなふうに聞いてるの? 暗に含ませて聞くと、彼女は困ったようにうつむいてしまう。 首をかしげる私に「……誰、というわけでは……なくて……」と、口ごもりつつ、言葉を続けた。「以前……駅で和之さんと話されているところを……目にしたもので……」 親しげな様子から、和之とは仲がいいのだろうと感じたそうだ。「駅で目にした」との言葉に、私は内心、どきりとした。 いつの、ことだろう? 手を、指を絡められた。……なんてところは見られてないよね? と、緊張しつつ、彼女の話を聞いていた。「ですから……志穂さんのことを、誰かから聞いたと、いうわけでは、ないんです」「……そう」 それだけしか、返事のしようのない私に、和之とはいつからの知り合いなのかと聞いてきた。 数年前……以前、転勤する前だと答え、こっちに戻ってきたこと、それからあとのことはよく知らないと告げると彼女は安堵したように「そうですか」と息をついた。「……何か、あったの?」 私から切り出していいものかどうか、少し迷いつつ、口にしてみる。 彼女は遠慮しているようで、何か聞こうと口を開きつつ、言えなくて口をつぐむのを、何度か繰り返していた。 そう私が声をかけて、彼女は驚いたように、目を見張っていたけれど。 再び視線を落として、それから意を決したように、口を開いてきた。「和之さんって……どういった方なんですか?」
2008年07月05日
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話が……聞きたいことがあるのだと、彼女は告げた。 立ち話もなんだからと、できればどこか、近くのお店に入りたいと、彼女は続けて。 それで私は、彼女と二人で、駅近くの喫茶店に行った。 店内の席はほどよく埋まっている。 私と彼女は、店員に進まれるまま、空いている席についた。 彼女は「木島佳奈美(きじま かなみ)」と名乗った。 そこで会話はとまってしまった。 アイスコーヒーを、私は頼んだのだけれど、佳奈美さんがメニュー票を持ったまま、なぜか固まっている。 初対面の人だし、あまり急かしてもなんだからと、注文をするのを待っていたけれど。 数分たっても、メニュー票を両手でもった姿勢のまま、ピクリとも動かない。 ……この娘、大丈夫? 心配になって、声をかけようとした時だった。「……あの……」 硬直していた佳奈美さんがおずおずと、私に声をかけてきた。「なに?」「……ウィンナーコーヒーって……」 困惑気味の彼女の声に、その言わんとしたことに気づいて「ああ」と私は言葉を継いだ。「ホイップしたクリームがのってるの。 ……ソーセージの方じゃ、ないから」 苦笑しつつ告げると「そうなんですか」と彼女は安堵したように笑みを浮かべた。 ウィンナーコーヒーの名を初めて見た人は、たいてい、同じような想像をしてしまうと思う。 かくいう私もその一人だったから。「じゃあ、ウィンナーコーヒーを」 そう、店員さんに頼んで、注文の品がそれぞれ届いて、互いに一口、二口、口にしてから、彼女は本題を切り出してきた。「唐突に、不躾なことを頼んですみません。 あなたにお伺いしたいことが、あって……」 恐縮しきりの彼女は、うつむいてそう告げたあと、まっすぐに私に目を向けた。 澄みやかで、真摯な眼差しだった。 年は……多分、私より下だろう。 だけど、何だかすごくしっかりした子だなとの、印象を受けた。 彼女に名前を聞かれて、正直に答えた。 それを機に、私も、彼女に聞いていた。「和ゆ――、本橋とは、どんな?」 関係があるのかと、暗に含ませて、そう聞いてみた。 仕事上の後輩との返事がくるものと、なぜかそう、無意識のうちに思い込んでいた。 だけど。 彼女が答えたのは――私の想像の範疇をこえていた。「あ……はい」 そう、一旦つぶやいて、視線を落として。 少し恥ずかしそうな表情を浮かべて、彼女はこう答えた。「本橋さんとは……お付き合い、させていただいています」
2008年07月04日
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今日……というか、昨日というか。 aikoのライブに行ってました。 で、帰りついたのが日付が変わってから。 そんなわけで、更新は昨日はできてません。 ごめんなさい。
2008年07月03日
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何でも、セントバーナードと遊びたかったタカ兄が、小太郎と私が遊んでいた庭に、こっそりと忍びこんで、それで私と小太郎と一緒になって遊んでいたのだという。 ちょっと家の中に行っていて、で、庭に戻ってその場面を見た両親は、ひどく驚いたそうだ。 面識はあっても、それまで声をかける機会なんて皆無に等しかった家の子供が、いつの間にか、自分の家の庭にいるのだから。 その時のタカ兄は、うちの両親に気づくと、なんの悪びれもなく、子供特有の無邪気な笑顔で、元気にあいさつしたのだという。 私も小太郎も、初対面だっていうのに、両親が庭に戻ってきた頃には、すっかりタカ兄になついていた。 それからタカ兄は、うちに遊びに来るようになって。 その付き合いの延長で、久坂家とも家族ぐるみの付き合いが始まった。 私が小学校に上がるころまで、タカ兄は頻繁にわが家に遊びに来ていた。 小太郎目あてに。 そんな昔のことを思い出しつつ、ため息をつくと、小太郎を呼んで、私の車に一緒に乗った。 今日は検査結果を聞くだけだから、私一人でも大丈夫だったけれど。 だけど、小太郎のことだから。 小太郎と、一緒に聞いておきたいと、思って。
2008年07月02日
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私の答えに、和之は何も言わなかった。 しばらくして、ため息をもらしただけだった。 話にならないとでも、言うように。 それから和之は、何も言わずに歩き出して。 私はその背を、見つめることしかできなかった。 バカなことを言ってしまったと、振りかえるたびに後悔してしまう。 それから……しばらくして。 和之とあの彼女との間に、何があったのか。 彼女がなぜ、あれだけ激しい怒りを、嫌悪を抱いた表情をしていたのか。 知ることになる。 会社の就業時間終了後。 和之に会わないようにと、不規則に帰宅時間を変えていたから、その日の乗車時間はいつも乗車していた時間より、2時間遅らせていた。 用もないのに、駅近くの商店街をふらふら見てまわって、時間をつぶして。 そうして適当な頃合かと、駅のホームに向かった。 目的もなく、お店をフラフラするのも、結構疲れる。 何か用があれば、興味があれば、それなりに楽しくすごせる。 だけど今日は、疲れが体に満遍なく広がっていて「お風呂でゆっくりしたい」「早く帰りたい」という思いでいっぱいだった。 ……今、和之と会ったら。 何か、絡んでくるようなこと、言ったりしたりしてきたら。 それをあしらうのさえ、面倒だろうなぁ。 なんて、思ってしまうほどに、疲れがひどかった。 その日。 和之と遭遇することは、なかったけれど。 けれど、そのまますんなり、家に帰ることはできなかった。「……あの……」 おずおずと、声をかけられて。 その声に呼応して、ゆっくりと声の方に首をめぐらすと、一人の女性が傍らに立っていた。 見たこともない、人だった。 女性というより、女の子と言ったほうがしっくりするような、清楚な雰囲気の漂う人だった。 ……誰? そう思いつつ、周囲を見渡す。 側に人がいて、私でなく、その人に声をかけたのではないかと、思ったから。 だけど近辺には私しかいない。 ラッシュ時をはずした時間帯だから、ホームにいる人も、比較的少なめとなっている。 改めて彼女の方に向き直ると「……私?」と問いかけるように小首をかしげなら、自分自身を指差した。 彼女は「はい」と少し緊張した面持ちで、うなずいた。 そうしてこう、聞いてきた。「本橋……和之さんの、お知り合いの方……ですよね?」 ……まさか、彼女の口から和之の名前が出てくるとは思わなくて。 私は息をのんでいた。
2008年07月02日
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前置きのない言葉だったけれど、和之は私が何を言わんとしているか、わかったようだった。「……ああ」 と、面倒そうにつぶやいて、一度軽く頬に手をあてた。「音は派手だったけど、痛み自体はそんなになかったから」「………………。 そう……」 それだけしか、言えなかった。 ケガがなくてよかったと心配することも、自業自得じゃないとののしることもできない。 彼女と和之の、二人の間に何があったのか。 私には、わからないから。 気にならないと言えばウソになるけれど、不躾に「何があったの?」と首を突っ込むほど、度胸もない。 和之から話してくれないだろうかと、チラリと伺い見ると、私を見ていた和之とバッチリ、視線が合ってしまった。 慌ててうつむいたけれど、遅かった。 和之はため息をついて、ぽつぽつと口を開いた。「関係について問い詰められたから、正直に答えたら……ああなった」 それは、私が予想して答えだった。 その答えを、たずねてもいないのに、和之は口にする。 私の考えてることなど、わかっているとでも言うように。「……そう」 先ほどから、同じ言葉しか、言えない。 他になんと言っていいか、わからない。 うつむいたまま、そう告げた私の言葉に、和之は再度、ため息をもらした。「あっちが勝手に勘違いしてたのにな」 そうつぶやいた声には「迷惑千万」とばかりに、不機嫌な響きが灯っている。 自分のことでもないのに、その物言いがなぜか、カチンときた。「誤解されてもおかしくないこと、したからじゃないの?」 当然の報いだと、そう想いながらの言に、今度は和之がムッとしたようだった。「返事もしていないのに、むこうが勘違いしたことをか?」「遠まわしに牽制はできたんじゃない? 腕組みをそれとなくはずすとか、断りにくかったなら、ウソでも防波堤を作っておくとか」「……防波堤?」 和之に、聞き返されて。 改めて失言に、気付いた。 和之は「防波堤」の意味を、どういったものがそれに該当するのかを、聞いている。 私は一瞬、言葉につまってから、我を張って答えていた。「自分には、彼女がいる……とか、想ってる人が……いる、とか。 ウソでも、そう言えばよかったじゃない。 あの子に、そのつもりがなかったのなら」
2008年07月01日
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